第1.5章
俺が初めてユリアーナを見た時は12歳の頃。
小さなお茶会で初めてユリアーナを見た。
漆黒の長い綺麗な髪、赤く美しく輝く瞳、そして美しく白い肌。太陽の下にいた彼女はまるで妖精のようだった。
俺はユリアーナに一目惚れをした。
そしてすぐ父上である国王にお願いをした。けれど、それは認めてもらえなかった。理由はユリアーナの体の弱さのことだった。
「カリウス、子を産めぬ彼女との婚約は認められぬ。...わかるな」
俺は諦められなかった。ユリアーナはパーティーに出ることはなかったが小さなお茶会には偶に来る。だから王家でも小さなお茶会を開くようになり、ユリアーナを招待した。
それでもユリアーナはほとんど来ることはなく、来ても殆ど話せなかった。それでも姿を見られただけで俺は幸せだった。
「父上、どうかユリアーナと婚約させてください。」
そう言って2年かけて父上に進言し続けた。
そうして実ったこの婚約は、俺にとってなんの意味もなかった。
婚約者になったからと言って殆ど会えない。
お見舞いの品を渡しても、他の人も贈っていて、婚約者としての特権とはなんだと思うようになった。
そしてやってきた思春期に、俺は耐えられなかった。
ユリアーナを美しいと褒め称える男ども。
ユリアーナに想いを寄せる男ども。
触れることのできない俺のユリアーナ。
会うことのできない俺のユリアーナ。
年々俺の思いは歪んでいった。
ユリアーナと同じ髪色の女を後ろから抱く。ユリアーナの代わりに。
決してユリアーナ相手にはできない自分の欲望を吐き出す。
ユリアーナ。ユリアーナ。ユリアーナ。
そう心の中で呼び続けながら。
学園にユリアーナが入学した。
3年ぶりに見た彼女は一段と綺麗になり、たくさんの視線を浴びていた。
どす黒い感情が止まらない。それでも久しぶりの会話。幸せと共に優越感に浸る。ユリアーナは俺の婚約者だと。
綺麗な黒髪に、まっすぐな瞳。吸い込まれるようにユリアーナに手を伸ばす。
俺はきっと彼女に触れたら止まらない。めちゃくちゃにしたくなる。
その髪に触れてみたい。柔らかそうな唇に触れてみたい。頬を染めた蕩けた顔を見てみたい。沢山の表情を見てみたい。
でもきっと俺のこの気持ちをユリアーナは受け止めきれないから。
俺は触れる前に手を下ろした。
そして俺はユリアーナに会ったことで昂った気持ちを隣の女を抱いて落ち着かせた。
そして、俺は耐えて耐えて耐えてた気持ちが爆発したのはある日の昼休み。
「さっきユリアーナ様とぶつかっちゃったんだけど、髪の毛さらさらすぎたし、肌スベスベだった」
「うわ!羨ましすぎだろ!俺もぶつかりに行こうかな」
「いやわざとじゃねーし!」
と笑いながら話す男子生徒の姿を見てしまった。
俺の触れられなかったユリアーナの髪と肌をこんな男が触れた?気が狂いそうだった。
「ぁあ"!すみ...ませ...」
その日の夜、俺は男の手を切り落としていた。
「だめだよ。ユリアーナに触れちゃ」
切り落とした右手を持ち上げて、俺は聞いた。
「ユリアーナに触れたのは右手?左手?」
そう聞くも痛みで答えられないのか涙を流しながら悶えていた。
「...左手かもしれないから両方切るね」
そう言って俺は男の左手も切り落とした。
それから俺はユリアーナを閉じ込めることを考えた。
もう誰にも見せたくない。俺のユリアーナとしてだけでいてほしいと俺は望んでしまった。
そうして俺はユリアーナを永遠に失ってしまった。
「俺は....こんなこと望んでない....」
俺は卒業と共にユリアーナを幽閉して、永遠に俺のそばで閉じ込めるつもりだった。
「あぁ.....っ」
俺は崩れ落ちた。
それから壊れたようにユリアーナと同じ黒髪の女をユリアーナと呼び抱き続けた。
そして、俺は魔女に頼んでユリアーナの傀儡を作り出した。
レアでユリアーナと同じ顔を作ったのだ。けれど瞳の色と声は変えられなかった。だから俺はレアの目と喉を潰した。
そして、逃げられないように足の靱帯を切った。
それから俺はレアをユリアーナとして扱った。
「ユリアーナ?....逃げちゃダメだよ」




