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探偵団活動の報告



【では、今宵の話は四獣神(しじゅうしん)についてです。

 四獣神は神にとっての大敵、(わざわい)と戦う選ばれし獣神です。

 その名の通り、4神で組んでいるのです。

 初代は目的が異なっておりました。

 2代目以降の四獣神が月に転送した禍と戦っていたのです】


【また不公平ですか? 人神は?】


【人神と獣神は相反する者でもあります。

 人神は禍を生み易いのです。

 獣神は禍を容易(たやす)くは生みません。

 それは禍に関する知識量とも絡みますが、現在の人神では戦おうにも太刀打ち出来ないのです】

【劣化していると話してただろ馬鹿者】


【お前も半分人神なんだろ?】

【どちらの父様も強い。

 他の人神と一緒にするな】フン。


【続けますね。

 人神は禍を恐れるばかりなのです。

 しかも禁地にも暮らしておりますので、絶えず禍を生じさせてしまうのです。

 獣神は人神を護ろうとしているのではなく、神世を護る為に禍と戦ってきたのです。


 3代前から四獣神は月だけでなく神世でも戦うようになったのです。

 人神が軍の訓練用にと作った滝が失敗作であったが為です。

 その滝で四獣神をしていたドラグーナ様、トリノクス様、マリュース様を前の敵神ダグラナタンが堕神としてしまったのです。

 オフォクス様はドラグーナ様が堕神とされた未来を垣間見(かいまみ)て人世に降りたのです】


【じゃあ禍は?】


【現在、滝ではドラグーナ様の御子達が戦っておりますよ。

 月の四獣神は無事ですしね。


 四獣神は大神中の大神です。

 大神とは修行を重ね、大神力(だいじんりょく)を得た上に、(おの)が能力的神力を極めた者。

 または他者から認められ、大神称号を得た者です】


【トリノクス様も、ですよね?】

【四獣神様は大神中の大神だと言ったろ】

【確かに。

 大神様の欠片持ちってのは?】


【小さな欠片であっても大神力を秘めております。

 故に開いていない状態でもカケルはユーレイになれたのです】


【そっか。それでか……】


【納得したのでしたら修行に専念なさい。

 その大神力を修行不足のまま持っていたからこそ魔に狙われ、呪を掛けられたのですからね】


【はいっ!】【もう一度、深く眠らせるわね】

【はいっ!】【隅にいらっしゃい】

ふわりと運ばれ、即、爆睡させられた。

【導きはお任せを。続きをどうぞ】



【では彩桜様、ソラ。

 ユーレイ探偵団の活動報告を】


【【はい】響、レコーディング優先にさせて勝手に進めてゴメンね】


【仕方ないよね】でも不機嫌。


【あの件もトシさんやお兄と同じく災厄の『鍵』だったんだ。

 だから災厄の被害を大きくしない為には、どうしても急がないといけなかったんだよ。


 魔女オーガンディオーネは何人もの女性に憑いていたんだ。

 邦和では理子さん鳳子さんの他に2人。

 漢中国では祖母・母・双子の娘に。

 南米の魔女の丘にも居たし、ロシアにも、中東にも居たんだよ。

 マーズは5月末から7月初め迄ずっと魔女達と戦ってたけど、過去を見ていなかったんだ。

 だから今回、魔女の置き土産と戦ったんだよ】

【過去を見る余裕なんぞ無かったのですよ。

 次々と現れる魔女と悪神とに対処するだけで手一杯だったのです】


【全部マーズが? 戦っていたの?

 本当に ただの音楽ユニットじゃなかったのね……】


【魔や禍と戦う忍者なんだよ】

【成り行きなんだけどね~】

【うん。でも今はマーズの経緯は置いておいて、磯前(いさき)さんの件ね。

 磯前さん一家は人神の大神様で医師のフレブラン様を持っていたんだ。

 魔女はフレブラン様の知識が欲しくて持っている人を集めて、フレブラン様の部分を取って食べる事で得ていたんだ。

 その知識で毒薬や惚れ薬を作っていたんだよ】


【毒薬は魔女ならって納得だけど惚れ薬って~】


【魔女は最終的には地星全てを()べる女王になりたかったんだ。

 でも人世に来てしまったから先ずは人世全てをと考えたんだよ。

 だから王様とか大金持ちとかと結婚して、夫を毒殺して国や財産を奪い、戦争を起こして抵抗勢力を潰して人世を得ようと考えたんだ】


【結婚するのに惚れ薬を?】


【そう。神様の惚れ薬だから確実なんだよ。

 実際に使われてしまった王子様も居てね、フレブラン様と藤慈お兄さんに解毒薬を作ってもらわないと解けなかったんだよ。


 魔女達が磯前さんのお爺さんとお婆さんを最初に見つけたのは20年くらい前なんだって。

 高校生だったカツおじさんを連れて引っ越して、大学は人が多くて隠れ易いだろうと東京に進学させて。

 それからも引っ越しは続いてたけど、ようやく西海村で落ち着いたんだって。

 西海に隠れて平穏に暮らしてたのに、15年目で逃げないといけなくなったんだ。


 フレブラン様は医の大神様だから欠片を自力で移せたんだ。

 磯前さん一家が修行していたからこそなんだけどね。

 だからお爺さんとお婆さんの欠片を沙由(さより)おばさんに移して、カジ兄ちゃんと一緒に逃がしたんだよ。

 魔女が来た時には沙由おばさんには入っていなかったし、カジ兄ちゃんのは封じて見えなくしていたからね】


【やっぱり偽装離婚だったのね。

 それは分かったの。

 勝士(かつお)さんは奥さんと息子さんの居場所を知ってたから捜さなかったんじゃないかってのは『かも』じゃなくて確信。

 合流しようとして、魔女に尾行されてて捕まったんじゃないかって】


【うん、その通りだよ。

 沙由おばさんとカジ兄ちゃんが拐われてしまったから、追っていたカツおじさんは次々と現れる魔女と戦ったんだ。

 世界中を瞬移しながら何ヶ所もでね。

 その途中でカジ兄ちゃんを助け出したけど、カジ兄ちゃんのフレブラン様は盗られてたから意識は無いし、魔女が追って来るからカジ兄ちゃんを隠して戦ったんだ。

 どんどん場所を移して戦って、最終的にはグリーンランドで相討ち。

 だからカツおじさんはユーレイになってるんだ。

 カジ兄ちゃんは漢中国の病院に保護されてたよ。

 沙由おばさんは魔女の拠点に監禁されてた。


 お爺さんとお婆さんは魔女と戦って禍に包まれたんだ。

 魔女としては痕跡しかないから腹を立てたんだろうね。

 ボクのおばあちゃんが葬式したから普通に成仏してたけど、エィム様が人世に戻してくださったよ。

 だから今、彩桜の部屋で一家団欒中だよ】


【ソラも入りたいんじゃないの?】


【もう入って話を聞いたから、響にも話せたんだよ。

 ボクのお父さんはボクが2歳の頃に亡くなってるから記憶が無いんだ。

 ボクにとっては実質的な父親はカツおじさんなんだよね。

 カツおじさんはボクにも強い神力を感じて、魔女に見つからないようにと封じてくれていたんだ。

 カジ兄ちゃんと同じようにね】


【そっか。磯前(いさき)さんにとってもソラは可愛い次男だったのね♪】


【うん。だから これからは『父さん』と呼んでいいって。

 カジ兄ちゃんも喜んでくれたよ】


【あ、意識 戻ったのね♪】


【うん、それも父さんとフレブラン様がね】


【フレブラン様って食べられて減ったんじゃないの?

 話せるの?】


【うん。一番 大きな欠片は白久お兄さんに入っていたんだよ。

 だから皆さんのを神力と置き換えて白久お兄さんに集めたんだ】


【ドラグーナ様だけじゃなく入ってたの?】


【うん。ドラグーナ様が大神様過ぎて、堕神にしようと分割しても普通の人魂じゃ包めなかったんだろうね。

 だから人神様用の再生魂材を使って包まないといけなかったみたいだね。

 その再生材料にフレブラン様が居たんだ。

 魔女に知識を狙われて浄魂刑という魂の材料に戻す刑を受けたけど、大神様だから残っていたんだよ】


【神世にも魔女が居たの?】


【随分と前にね。浄魂刑は時間が掛かるんだ】

【と~~~っても掛かるの~】


【って、そんなに長い長い計画だったの!?】


【うん。億年単位の気の長い計画】


【神様の時間感覚、壊れてるわよぉ】


【人とは違うからね。

 人の尺度での想像じゃ追いつかないよね】


【う~ん、そっか~。

 本来は別世界だもんね~】


【磯前さんの件は以上だよ。

 響、明日は? レコーディングは?】


【レコーディングは午前中で終われそうよ♪

 最終チェックの間に、買い物に行きたいのよね~♪】


【うん、行こうよ。

 終業式だから早く帰るからね】


【ん♪】


【じゃあ、おやすみなさいなの~♪

 俺、青生兄トコ行くの~♪】瞬移♪


【彩桜?】


【ソラ兄も ゆっくり休んでなの~♪】声だけ。


【ありがと彩桜♪ 響、帰ろう】【ん♪】



―・―*―・―



 翌日の午後。夏らしく眩しい晴天。

なので夕方にしようかとも考えたが、実家で昼食を終えたソラと響は約束した通り、ショッピングデートに出掛けた。


「なんか、こういうの久しぶりよね♪」


「確かにね♪」


【サーロンくん しなくていいの?

 彩桜クン出掛けたよね?】


【キリュウ兄弟はオーストリアのご両親の所で音楽修行なんだよ。

 だから今は機内だね。

 サーロンも一緒に行った事になってるんだ。

 ボクは夏中フリーだよ】


【レコーディング、前倒しにならなかったらソラも参加できたのね~】


【そうだけど、狐儀様は音神様だからボクより良かったんじゃない?】


【上手だけど……でもソラと一緒が良かったな~】


【レコーディングは これから何度でもあるよ♪】


【あ……そうよね♪】


「ところで何を買いに?」


「衣装にできそうな服♪」


「紅火お兄さんに伝えればイメージ通りに作ってもらえるのに?」


「そうなの!?」


【マーズの衣装は全部 紅火お兄さん作だよ】


【ホント何でも作るのね♪】

「でも買い物は楽しみたいし~♪

 今回はコッチ♪

 あ♪ ノワールドラコのスティックチーズケーキ買って食べよ~♪」


「響ってば急に走らないで!」


「ソラも早く~♪」

ちょうど歩行者用信号が青だったので、響は止まらずに走って行った。


「もうっ」

言いつつ笑いながら追い掛けた。


【ん? 黒瑯さんが居ないのにノワールドラコ休みじゃないのね……】


【リーロン兄さんが頑張ってるよ♪】


【稲荷堂は?】


【キツネ様と慎也さん♪】


【動物病院は瑠璃先生だけ?】


梅華(うめか)先生と♪】


【ちゃんと考えてたんだ~♪】


【当然だよね♪】


【買ったから大通りに戻ろ♪】【そうだね♪】

ちょうど追いついたので一緒に食べ歩き。

【ひんやり~♪】【美味しいね♪】


大通りに戻る頃には食べ終えていた。

「響、紙」「ありがと♪」

信号待ちの間にと、包み紙を浄化してポケットへ。


「あっ!」「えっ!?」


地面が大きく揺れた。







とうとう起こってしまいました。

中学校が終業式の日です。


狐儀と理俱からの話は終わっていなかったようですが、災厄が来てしまったからには最善を尽くさなければなりません。


次章に移ります。



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