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災厄に備える勉強会③



「あ~またユーレイが寝てやがる」

「昨日、もう寝落ちないとか言ってましたよね?」


 ん? 俺――「わああああっ!?」燃えていた。


「お~い紅火、機材を頼むだとよ」「む」

赤虎師匠は出て行った。


「今日は俺が代わりだからな」慎也な理俱が睨む。


「「はい! ご指導ヨロシクお願いします!」」

弟子達は また細かい物を作り始めた。



「おいカケル、神力ダダ漏れだ。

 今日は徹底的に その修正だ」

〈あ~♪〉〈お兄ぷすぷす~♪〉

〈やっぱ馬鹿者だな〉犬達登場。


「お前らなっ!!」「カケルより遥かに上だ」

「っ」「修行しないのなら成仏させるだけだ」

「します! しますからっ!」「気を鎮めろ」


カケルは正座して目を閉じた。「だけかよ?」


「え?」もう開けた。


「そもそも瞑想になってない。

 集中しなければ意味が無い。

 雑念が多すぎる。それが神力漏れの原因だ」


「そんな次々言わなくても……」


「もっと言っても足りないくらいだ。

 真面目にヤレ。

 不真面目な大神力(だいジンリョク)持ちも災厄源になり得るんだからな」


「って、一昨日と昨日の晩の話を合わせた?

 ナンで知って――」

〈お師匠様、馬鹿者は不要です。

 成仏に導いてください〉「なっ!」


「マジで修行しないと成仏させるからな」

死神装束(結界内なので形だけ)になって三日月鎌を振り上げた。


「しますしますしますからっ!」



【お~い紅火、昨日は どうやって指導したんだ?】


【神力漏れには気付いていたが、修正すらも出来ぬ程度にしか導けなかった。

 理俱の好きに指導してやってくれ】


【うわぁ。兄様も笑うなよなぁ】


【頑張ってくださいね】ふふ♪



―◦―



 レコーディングは順調に進み、ソラ(サーロン)と彩桜は戻らないままに、また夜を迎えた。


【今宵は『地星の真の歴史』についてのお話です。

『神について』にも触れながら進めますね。


 太古の神は混沌でした。

 混沌神達は最初の人世を作り、育みました。

 とても大きな神力(ちから)を持っていたのです。

 人が思い浮かべる『神』。全知全能の存在とは混沌神なのです。

 それでも差が生じます。神力にも考え方にも。

 考えが幼稚な者や、神としての道を外れようとする者が大きな神力を持つのは危険です。

 故に太古の神々は神力を分け、人神(ひとかみ)と様々な獣神(けものかみ)を生み出しました。


 神が子を生む、というのは、人が子を産むのとは異なります。

 神力から発生させた『命の欠片』を育み、強化を重ねて新たな神とするのです。

 雌雄で成さずともよいのです。


『欲』を持つ人神は世を乱し易い存在となってしまいました。

 ですが混沌神と同等の強い神力を発揮するには、人神と獣神が協神力(きょうりょく)する必要があるのです】

【今の神世の一般神(いっぱんじん)は全て人神だ。

 神力持ちの人以下な神力しかない人神達でも必要なのは、協神力する為でもあるんだよ】


【その声……昼間の死神?】【馬鹿者は黙れ】

【ナンだよ犬!】【お兄ウッサイ!】額に御札!


【申し訳ございません、続きをお願いします】

響と犬達、揃ってペコリ。


【ま、固められても聞けるから続けるぞ。

 太古の人神達も修行を(おろそ)かにして劣化していった。

 勿論、修行し続けた人神も居た。

 当然の結果だが、神力に大きな差が生じた。

 そうなると劣化した人神達は、己の行いは省みず、劣化していない者達を(ねた)み憎んだ。

 (おとしい)れ、上に立って(しいた)げようと禁忌満載の無茶な攻撃をし始めたんだ】


【それは無謀も甚だしい愚かな行為です。

 しかも全ての愚者達が夢幻(ゆめまぼろし)が如くな、独裁する為だけの『王』を目指していたのです。

 あまりに古い事であるが為に確かな記録は残っておりません。

 ですが、この愚行の裏には闇禍が存在したと、私共は確信しているのです。

 その愚行から地星は最初の災厄を迎えたのですから】


【崩壊しかけた地星を救ったのは異界の龍神様だった。

 鳥翼を持つ青い龍神様は宇宙中の闇禍退治をしているらしい。

 その時の闇禍を退治したら、次の災厄に備える為に、自身が到着するまで耐えられる神力(ちから)を選んだ神に与えて去るそうだ】


【最初に異界の神力を与えられたのは、混沌の名残のある、つまり当時最強の龍狐の女神ピュアリラ様でした。

 ピュアリラ様は次に起こった災厄の際、自らの命と引き換えに地星を救ったとも、闇禍に憑かれた神と共に月に隠れたとも言われております】


【何にせよ地星全体としては崩壊消滅には至らなかった。

 しかし神世はギリギリ状態。人世は消滅した。

 人世でも戦争が起こってたんだ。

 今現在の人世よりも文明レベルは高かったと言われている。

 今の兵器でもブッ放されたら粉微塵だろ?

 そういう消滅だ】


【その戦争は神世の乱れの余波だと言われておりますが、神世から脱出した闇禍が起こしたのではないかと私共は考えております】


【その災厄後、ボロボロの神世を『人神の地』と『獣神の地』に分け、雲海(うみ)で隔てたのはピュアリラ様の娘アミュラ様だ。

 神世の復興を成し遂げ、神世を見守り続けた偉大なる龍狐の女神様は、悪神が起こした次の災厄の際に、ルサンティーナ妃と共に姿を消す】


【灼熱の地と化した人神の地を風雪で閉ざしたのは、初代四獣神様方なのです。

 逃げ惑う人神達を月に逃がし、干上がった雲海(うみ)であった地を高く厚い岩壁として、神世の半分を完全に閉ざしたのです】


【40億年を経た今も尚、岩壁と風雪とで閉ざされた神世の半分は氷雪の下で燃え盛っている。

 そんな強い神火の影響で、前の人世は燃え尽きたと言われている。

 今の人世の芯にも神火が入ってるんだ。

 愚かな人神達が、鎮火を待てと言った獣神達の声を無視したからだ。

 つまり今の人世は、そもそもが不安定なんだよ】


【新たな災厄が起こったならば、人世に居る神が全神力(ぜんりょく)で崩壊を食い止めます。

 ですが、その後の復興はお願いしたいのです。

 かなり粗い説明でしたが、歴史の流れは理解できましたか?】


【地星には神世と人世があって、神様には人神様と獣神様が居て、災厄が繰り返されてるのは。

 最初のに来た異界の龍神様は、2回目以降は来なかったんですか?

 今回は?】


【宇宙中の闇禍と戦ってる龍神様だから間に合わない事もあるんだろうよ。

 それでも地星は崩壊消滅していない。

 備えとして残してくれた異界の神力が功を奏した結果だと思う。


 今回は魔女と闇禍との合体魔と戦ってた間に来てたらしい。

 地星の神には闇禍を滅する神力(ちから)は無い。

 与えてもらった異界の神力で封じるのが精一杯なんだ。

 その封じてた箱が(カラ)になってたんだよ】


【じゃあもう地星に闇禍は居ないんですか?】


【それがなぁ、次々と来ちまうんだよなぁ】


【だから災厄は来る、ですか……】


【そう考えている】


【あっ、ちゃんと修行してる人神様って居ないんですか?

 これまでの災厄って全部 人神の魔が起こしてるんですよね?

 人神様に魔と戦ってもらうとかないんですか?】


【先ず、修行してる人神、人神の大神は居る。

 キツネ様のお社で災厄に備えてくれてるよ。

 一番の懸念は人世の芯の神火だからな。

 今回は人世を護りきるつもりだからな】


【災厄を起こした魔は、これ迄は全て人神です。

 ですが、つい先日、魔となる運命にあった獣神を見付けたのです。

 彼女には闇禍に憑かれた異界の神の残滓が入っておりました。

 そこから、魔女にも同類のものが入っていたのではないかと。

 ですからこそ闇禍を呼べたのだろうと至りました】


【そういうのもアリなんですか……】

【ねぇ、お兄が騒がしいよ~】【ね~】

【だよな。封じられてるのに単独ガヤガヤだ】


【もうっ】ベリッ。【落ち着いて話しなさいよね】


【落ち着いて、か。うん。

 いくつか聞きたいんだけどな。

 さっきの話は神世の半分だろ?

 人神の地が燃えたんだよな?

 獣神の地は?】


【現状、人神達が『神世の全て』だと思い込んでいる場所です】

【月に逃がしてもらった人神達が、あんな何にも無い場所で満足するなんて有り得ないだろ。

 ちょっと落ち着いたら神世に戻りたいと大騒ぎ。

 だから獣神は仕方なしに『獣神の住処(すみか)』と『人神の住処』と、様々な理由で誰も踏み込まない『禁地(きんち)』に等分したんだ】

【ですが人神達は獣神の場所も禁地も無視をして領地を拡げ、国を乱立させ、戦を起こし、と古の獣神の地を荒らしていったのです。

 かつては緑豊かで爽やかな地だったそうですが、今では荒地ばかりなのです。

 獣神は今の『神世』の端に追いやられ、種別に『里』を作って暮らしております】

【人神には見えなくしてな。

 何度も何度も『獣神狩(じゅうしんが)り』が行われて、食われた者も多いらしいからな】


【ナンで倒さないんだよ? 劣化してるんだろ?】


【カケルを見守っている理由と大差ありませんよ。

 私共 獣神は神なのです。獣ではないのです。

 神は『神として』を重んじるものなのですよ】

【馬鹿者でも何でも見捨てないのが神なんだよ】


【おい犬。黙ってろよな】


【犬ではなく、力丸は私の子なのですよ。

 この姿はショウ・モグと共に修行する為のものなのです】

【だよな♪ 俺と同じ、半分狐だよな。

 ショウも、だけどな♪】よしよし♪


【僕も?】【理俱様くすぐったいですよぉ♪】


【ショウは生まれながらに父トリノクスからの狐神力を持っておりますので】


【なんか嬉し~♪】【僕は?】


【モグにも差し上げましょう】【わ~い♪】


【これで本当に3兄弟だな♪】


【【うんっ♪】】【俺も嬉しいです♪】

尻尾フリフリが見事にシンクロ。

【【【ありがとうございます!♪】】】



【犬のヤツ、神様だったのかよ……】【力丸だっ!】

【犬でいいだろーがよ】【僕も犬~♪】【僕も~♪】

【ショウとモグまで俺に味方してくれないのかよ?】


【お兄に味方なんて居ないの!

 話を脱線させないで!】


【あ~そっか。俺の質問タイムだったな。

 神様なのに今も国と国が戦争してるのか?

 それも災厄の原因とか?】


【小国が乱立していた戦乱期が10億年。

 2大国が対立していた期間も10億年。

『神世』が1つとなって20億年です。

 今は支配が解けたティングレイス王が治める平穏な国となっておりますよ】


【人神にとっては、なんだろ?

 獣神は相変わらず隅っこで姿消して細々(ほそぼそ)と、なんだろ?

 不公平じゃないか】


【そう思ってもらえるのは嬉しくもありますが、獣神は自由が好きなのです。

 国に縛られずに生きたいのです。

 姿を消している事は何の苦でもありません。

 ティングレイス王が獣神狩りを終わらせてくださいましたので十分なのです】


【ふ~ん。だったら戦争とかは無関係で、人神は平穏に満足してて、獣神は隅っこ自由を満喫してるんだな?

 その点はいいか。うん】


【まだ何かあるの?】

【考えても無駄なんだから時間を無駄にするな】


【だから犬は黙ってろ!】【ウルサイんだよ】


【【いいコンビ~♪】】


【【なワケないだろっ!】】


【【ほら~♪ ピッタリ~♪】】


【そうですね。

 力丸、神として相棒となってあげてください。

 ソラの相棒には程遠いので】


【モグの指導は終わりですか?】【僕がする~♪】

【もう探偵団は終わったのか?】【あと少し~♪】


【では明日も此処で一緒に、お願いしますね】


【モグだけの方が捗るんですけどぉ……神として頑張ります!】


【はい♪ それでこそ獣神ですよ】【はいっ♪】

カケルに向き直る。

【カケルが秘めている神力は大きいのです。

 ですが使えなければ無に等しいのです。

 そうなれば魔化する前に封じるより他になくなります。

 ソラの相棒を目指して修行に励んでください】


【ソラって、どのくらい?】


【大神に匹敵する天使です】


【天使?】両手でピヨピヨ。


【やっぱ馬鹿者だな】

【天使はユーレイの上、神の補佐だよ~♪

 ソラなら(キラ)天使だよ~♪】


【その大神ってのも……ちょいちょい出てくる四獣神も……】


【では明日、人に話してもよい部分だけですが、お話ししましょう】

【修行を始めるぞ】


【はいっ!】【【は~い♪】】【今日は私も!】


【響は眠るべきでは?】


【二晩続けて寝落ちてるから、お兄を見張ります。

 治癒を浴びれば大丈夫ですので】


【そうですか。では始めましょう】







力丸が何度も『馬鹿者』と言っていますが、これはカケルを奮起させようとしている力丸なりの優しさなんですよ。

カケルは怒るばかりなんですけどね。



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