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災厄に備える勉強会②



 茶畑探偵事務所からの帰りに、カケルを連れて行こうとアパート・モーガオハイツへ。

「あれ? 居ない?」


無事に追い出されなかったカケルは今も稲荷堂の作業部屋に居る。


神眼で見付けたので輝竜家に向かった。

情報を纏めようと考えつつ歩いていると、

〈ヒビキ見っけ~♪〉

ユーレイに戻って生き生きしているショウが現れて、響の歩調に合わせて進み始めた。


〈ショウ、昼間は何してたの?〉


〈サクラとサーロンと探偵団♪

 お話の時間かな~? って戻った~♪〉


〈彩桜クンとサーロンくんは何してるの?〉


〈探偵団してるよ~♪〉


〈だから内容!〉


【あっちこっちで地面に手を当ててるよ♪

 そしたら怨霊が出ちゃうから戦うの~♪】


〈へ???〉地面から怨霊?


【魔女と闇禍(あんか)の置き土産なんだって~♪】


〈もっと詳しく!〉


【たぶん~、これからお話あると思う~♪】


〈あ、そっか〉


輝竜家の大門に着いたのでショウがスッと入ってしまった。


〈ショウってばぁ〉


〈ん? ヒビキも瞬移できるよ~♪〉


〈へ?〉


〈したの見たも~ん♪〉


〈いつ!?〉


〈土曜日の夕方~♪ おうちトコ~♪

 ソラ達おいて瞬移して来た~♪〉〈ええっ!?〉

〈無自覚は~トシ兄の仲間~♪〉〈ソレは嫌!!〉

〈迎えに行く~♪〉現れて響を連れて作業部屋。



〈あ……ありがとショウ〉〈うんっ♪〉


【つまり、ユーレイ移動も忍者移動も、瞬移(しゅんい)という能力的神力を発動して行う同じ移動方法なのです。

 ユーレイは魂のみ。存在そのものが常識の外にありますので可能だと信じ易く、発動も容易(たやす)くなるのです。

 信じる心は、己を伸ばす強い力となるのですよ。

 では今宵も始めましょう】


【えっと狐儀様、理俱様は?】キョロキョロ。


【彩桜様とサーロンが昇らせた魂達を導いております。

 間も無く来るでしょう。

 その件とも絡みますので、今宵は私共の敵に関してお話しします。


 地星は過去、幾度も崩壊の危機に瀕しています。

 人世は過去に二度、消滅しました】


驚きの声が重なる。


【その反応は当然とは思いますが、過去の事実をお話ししているのみ。冷静に。

 三度目の人世が現在の人世です。


 その、崩壊を引き起こそうとするものが、異界から飛来する『闇禍(あんか)』なのです。

 闇禍の真の目的は不明です。

 現状、判明しているのは、闇禍は負の感情を餌としているという事です。

 崩壊を引き起こせば爆発的に大量の負の感情が発生します】

【遅れて悪い。

 闇禍は負の感情を喰らい尽くしたら次の星へと動くだけなんだとよ。


 闇禍の手法は、その星で生きる者に取り憑いて崩壊へと動かす、ってモンだ。

 闇禍自体は胡麻(ゴマ)より小さい。

 マジで黒い点なんだよ。

 ソイツが魂に入り込んで(そそのか)して動いてくれりゃあ楽勝って寸法だ。

 そうはいかなくても乗っ取ったり、操ったりするんだ】


【そんなら昨日 言ってた災厄を起こす魔ってヤツは、闇禍に取り憑かれた神なんだな?】


【そう考えております。

 人に戦争を引き起こさせるのならば権力者に。

 神に大規模災害を引き起こさせるのならば神力の強い者に取り憑く筈です。

 人の側は阻止できました】


【あ! エルサムとロシア!】


【はい。

 マーズは ただの音楽ユニットではありません。人知れず戦う集団なのです。

 人の側の憂いは、人に憑いた闇禍をマーズが倒しましたので、もうありません。

 新たに闇禍が来ようとも発射できる兵器はありませんしね。


 ですが強い神は多く居ります。

 前回、人世崩壊を引き起こした神も生きております。その息子も。

 その二者が最も危険なのですが、他にも潜伏している可能性が有るのです。

 今も彩桜様とサーロンが人世の世界中を飛び回っているのは、その可能性を確かめ、憂いを消し去る為なのです】

【つまり響が拾った案件は、ただの行方不明事件じゃなかった、って訳だ。

 祖父母が死に至った病の原因は(わざわい)なんだからな】

禍は神の負の感情から生じる怨霊的なもので、神をも滅する凶悪な力を持つ。


【神様絡み確定!?】


【だよ。しかも悪神(ワルガミ)と絡んだ魔女の禍だ】

【その『悪神』とは先程お話ししました前回の人世崩壊を引き起こした魔です。

 名はオーロザウラ】


【名前、出していいんですか?】聞こえるんじゃ?


【強い結界の内ですので。

 それに人世には もう居りませんよ。

 それでも可能な限り出さぬのがよいと思いますので、以降は悪神で。


 悪神は大国の王でした。

 それも父王と兄王太子を禍にて滅して得た玉座なのです。

 子を成したのも己の為のみ。

 悪事しか成さぬ為に封じられた能力的神力を己から一時的に離す為に、そして、子に修行させて強化する為に生んだのです】

【その神力は特殊も特殊な『操禍(そうか)』と『支配』だ。

 操禍は自由に禍を発生させ、操る神力(ちから)だ。

 支配は他者を操る神力(ちから)

 つまり自分に反対する者は滅してよし、操ってよし、ってヤツだ。

 だから存在自体が邪魔な父と兄を禍で滅したんだ。


 オマケに悪神は隣国の美姫に執着していた。

 兄の妃に決まっていたサンティーナ姫、息子の妃になったルサンティーナ姫だ】

【兄王太子を滅したのは婚儀の前日。

 サンティーナ姫は自国に逃げ戻ったのです。

 悪神は我が王妃を返せと隣国に攻め込みました。

 サンティーナ姫は悪神が放った禍矢(かや)を全て集め受けて消滅したのです。

 消滅は神の死です。


 ルサンティーナ姫はサンティーナ姫に似た美しい女神でした。

 それ故に悪神は息子ザブダクル王を追放し、命を狙い続けたのです。

 ルサンティーナ妃が悪神の王妃とされても妻とはならず、ザブダクルを愛し続けた為なのです】

【悪神はルサンティーナ妃にも支配を使ったんだ。

 それが解けた時、ルサンティーナ妃が反撃したのは当然だろ?

 その両者の ぶつかり合いの結果、神世の半分は灼熱の地と化したんだ。

 その熱で人世は崩壊した】


【悪神は息子を追い回すうちに幾重にも呪っていたのです。

 次の魔となるように】

【ソイツは闇禍に動かされての事だろうよ。

 悪神の方はルサンティーナ妃との戦いで粉々状態だ。

 それでも生きてるのが神の厄介なトコなんだがな。

 息子、コイツを俺達は『敵神(てきがみ)』と呼んでいる。

 コイツは粉々とかじゃなく生きてるんだ。

 悪神の呪と、おそらくは支配も受けた最悪の状態でな】

【敵神はカケルとショウがユーレイとなった交通事故も、トシがユーレイとなった爆発事故も起こしました。

 徐々に落ち着かせ、悪神の呪を解きつつあったのですが……】

【『時流(じりゅう)』とかって超越者に近寄れなくされちまったんだよ】


【そんじゃあ時流ってヤツが黒幕なのか?】


【そうではないようです。

 時流を含む超越者達は定められた流れのままに全てを運ぶ存在、誰の敵でも味方でもない存在ではないかと……】

【ま、青生と彩桜の言葉なんだがな。

 で、今は得体の知れない超越者は置いといて、魔女についてだ】


【そうですね。

 魔女オーガンディオーネは悪神の母です。

 闇禍を地星に呼び込み、利用していたつもりで、私利私欲の為のみに生きた魔です】

【俺達は悪神こそが諸悪の根元(こんげん)だと思ってたんだが、更に大元が居たんだよ。

 (いただき)に上り詰めたい、って欲だけで多くの犠牲者を出し、戦を引き起こして長く長く生きていたんだ。

 理子(アヤコ)にも魔女が入ってたんだよ。

 けどま、コイツは倒した。

 あの案件のは過去に魔女が起こしたんだよ。

 これ迄なら権力者やら金持ちに絡もうと躍起だったのに、裕福でもない漁師に何故?――は調査中だ。


 で、もう1神、可能性が残るヤツが居る。

 前の敵神ダグラナタンだ。

 ダグラナタンは改心したという話も聞いたが、今、何を考えているのか感知できないんだ】


【それも超越者が妨害してるのか?】


【じゃなくて奴は今、今の敵神に封じられてるんだよ。

 今の敵神(ザブダクル)は古い神だし、いろいろあって魂のみになってたんだ。

 その魂は封じられていた。

 それを見つけたダグラナタンは強い神力を集めていたから、封珠の中の神力(のうりょく)のみを取り込んだつもりだった。

 だがザブダクルの方が上手(うわて)で、ダグラナタンの魂に入り込んでたんだ】

【そしてダグラナタンの魂を封じて、その身体を己がものとしたのです。

 その直後に交通事故を、少し時を経て爆発事故を起こしたのです】


【話を戻してダグラナタンが何をしたのか、だな。

 ダグラナタンは上級貴族の子だった。

 我が儘で、何事に於いても自分が一番でないと気が済まなかった。

 そんな我が儘お坊っちゃまが、孤児なのに明るく生きているティングレイスを知った。

 無性に腹が立つ、そんな理由で苛めたんだ。


 その後、青年神となったダグラナタンは王の勅使として父達『四獣神(しじゅうしん)』に近付いたが、役目を果たせずに追い返されたんだ。

 次に その役目に着いたのがティングレイスだった。

 ティングレイスは成功した。

 そこでダグラナタンはティングレイスへの逆恨みと四獣神への憎しみから、悪事の限りを尽くし始める。


 四獣神を順に狩り、神力を盗んで堕神にした。

 それを誤魔化す為に多くの獣神を同様に狩って、神力を盗んでは堕神にしていったんだ。

 堕神にする方法も変えた。

 人の魂で包んで、人ごと成仏――つまり消し去ろうとしたんだ。

 神世に残っている獣神には気付かれないように工夫までしてな。

 回収を早める為に、全ての人魂に死なせない程度に弱めた小さな禍を込めたんだ。

 ソイツを俺達は『弱禍(じゃっか)』と呼んでいる。

 弱禍は神力に反応して膨れ上がり『不穏』に化ける。

 より強い獣神力(ジュウジンリョク)に触れれば『不穏禍(フオンカ)』まで達しちまう。

 不穏禍は禍の一歩手前。本人の命も危険なんだがな。

 そうして人を暴走させるんだ。

 子供の場合は神力持ちを苛める。

 大人は……ま、より酷い事に至る。


 ダグラナタンはティングレイスも捕らえた。

 ティングレイスの神力を生きられるギリギリまで抜いて、全てを子に変えたんだ。

 そうすりゃティングレイスが気付こうが自分の神力に戻したりしないと考えたからだ。

 神力の大きなティングレイスの子は三千にもなったんだ。

 ダグラナタンは子神達をも罪深くしようと企んだ。

 術で成長させ、教育も何も受けさせずに、軽く支配と呪を掛けて従え、神力封じの縄という凶悪武器を持たせて獣神を根こそぎ狩れと命じたんだ。


 ティングレイスの方には濡れ衣を着せた。

 ティングレイスの姿で玉座を簒奪し、脱け殻ティングレイスに支配を掛けて座らせたんだ】

【そのような過去があるが故に、私共はダグラナタンも油断ならないと考えているのです】


【魔女の息子が悪神で、その息子が敵神。

 その3代魔のうちの悪神と敵神、それと前の敵神ってヤツが災厄を起こす最有力候補だってのは分かった。

 あの事故もかぁ、だけどな。

 とにかく時間がナイんだろ?

 今日こそは寝落ちませんので、ご指導ヨロシクお願いします!】


【お兄ってば、寝落ちたの?】


【分離以降ずっと具現化を維持してたら疲れたらしい。

 けど、この腕輪を貰って使い方もシッカリ指導してもらえたからな♪

 今日は楽勝だ♪】


【だから ずっと居座ってたの?】


【結果的に そーなった、ってだけだよ。

 無口な兄さん、イイヒトだったんだ♪

 弟子達もな♪】


【じゃあ明日も ここで修行しててね。

 本格的にレコーディングだから】


【時間ナイから仕方ナイよなぁ】


【お姉ちゃんに近寄ったら――】御札を構える。


【わわわかってるって!】【ウルサイぞ馬鹿者】

【ナンだよ犬!】【馬鹿者、瞑想しないのか?】

【する!】【イチバン遅れてるの自覚しろよな】


【兄様~、お兄の相手しちゃダ~メ♪】【ね~♪】


【だよな。

 お師匠様、騒がしくして申し訳ございません】

ペコリ。スンッと瞑想した。




【力丸の成長は嬉しいですね】


【だな♪ 王の話も自分達の話も静かに聞いてたのが健気だったなぁ】


【そうですね……】


【なぁ兄様、ショウは王子だってのは?】

【知ってる~】


【おや、中断ですか?】


【これだけ言わせて~。

 えっとね、父様と兄様達が心配なのは正直あるけど、ぜ~んぶ解決は災厄の後だと思うんだ。

 だから瞑想しま~す】フツッと静かに。



【そうですね。今は災厄を如何にして最小限に留め、如何にして乗り越えるのかを最優先にしなければなりませんね】


【ショウに教えられたかぁ。

 アイツ、シッカリしてるよな】


【父様の神力持ちですので♪】


【あ~そっか。だよな♪】







もうお分かりでしょうが、この章は前置き、背景やらの説明の章です。


ややこしくてボリューミーですが必要ですので見捨てないでくださいませ~。

m(_ _)m



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