飛ばされて来た異界の竜
カケルが不用意に掘った穴から噴出した禍群の遥か上へと術移したA班メンバーだったが、この禍は重いらしいと判断して、戦う為に少し降下した。
【飛べずに落ちるが、弾み転がるのだな。
ふむ。先ずは拡がるのを防ぐべきだ】
【結界なら任せて!】御札を成して構えた。
【僕と兄様は網する~♪】【だなっ♪】
ショウと力丸も身構えた。
【浄破邪、頑張ります!】
ソラは具現化剣に浄破邪を込めた。
【ヒビキ、ソラ。此方に】【【はい!】】
【王子達はコッチだっ!】【【はい!】】
ゴルシャインとシルバスノーが更に降下しようと防護を纏った時、朱雀と青龍が現れた。
【これは? 何したの~?】
【掘り当ててしまったようだな】
【まだ噴出し続けておるのぅ】
【一気に深くまで掘れるバカ神力持ちが居るらしいなっ♪】
青龍の背には人姿の玄武と白虎が乗っていた。
【僕達は一度では鎮められなかった熱の処理をしに来たんだけど、離れようとしている禍を四方から中央に追い込むね~】
青龍の言葉で玄武と白虎も獣姿になって頷き合うと、真四獣神は瞬移し、四方の空に小さくなった。
【では、触れぬ事が最優先だ。攻撃始め!】
【全て滅した筈では――?】
増え続ける禍と戦い続けて暫く。
そんな声が聞こえた。
【地下の深層から噴き出したんです!】
【もうっ! どれだけ埋めてるのよ!】
響が御札で禍を閉じ込め、ソラが具現化剣から浄破邪を放って戦っている。
【地雷~♪】【おいショウ! ふざけるな!】
【お兄が掘っちゃったのに?】【うっせー!】
【ショウ、馬鹿者の相手をする余裕は無いぞ】
【だよね~。パーでグーでギュッ! 積む♪】
ショウと力丸は犬姿で投網しており、カケルはトリノクスの背から具現化槍で禍に傷を付けて落としている。
その、包まれたり萎んだりで動けなくなった禍を狐神と龍神達が浄滅していた。
【あなた早く!】
ザブダクルはルサンティーナに頷いて、浄めた神力を高め始めた。
【えっ?】
が、直後に驚きで声を上げた。
他も口々に声を上げている。
古の人神の地――岩壁までの全てが、眩しく爽やかな光に包まれていた。
ゆっくりと光が収束する。
見えるようになると禍の噴出は止まっており、まだまだ熱を含んでいるが穏やかに吹き抜ける風に そよぐ低い草が広がるばかりだった。
「闇禍は空中も地中も含め、全て滅しました。
皆様ご無事ですか?」
声の主を求めて見上げると、瑠璃鱗鳥翼の龍が降りて来ていた。
「青身神様!♪」
白虎の声で真四獣神が瑠璃龍の周りに集まった。
「此処でも……あの、青身神様は俺じゃなくて別にいらっしゃいますので。
俺はただの竜です。天竜のアオ。
此方の域に飛ばされてしまって――」
「アオ~♪」「――えっ?」
珍しく鳳凰姿でイーリスタが現れた。
「ホントに来た~♪」
「えっと……域王様ですか?」
「うん♪ み~んなを助けてくれて ありがと♪
だから次~って言いたいトコなんだけど~、残念ながら此処、経路じゃないんだ。
だから元の場所にしか戻せないんだよね~。
同じトコで大丈夫かな?」
「時も同じだと、また飛ばされてしまいますけど……」
「コッチで経過した分だけズレるよ♪」
「でしたら大丈夫だと思います。
元の場所にお願い致します」
「ん♪ この鏡、通ってねっ♪」
「ありがとうございます域王様。
では皆様、失礼致します」
瑠璃竜アオは鏡の向こうへと去った。
「イーリスタ、どーゆー事だよ?」
白虎が怪訝全開で迫る。
「ちょっと待っててくださいね~~~あ!
やっぱり また来た~♪」
飛んで行って瑠璃鱗鳥翼の竜を受け止めた。
「アオ、だよねっ♪」
「はい。此方は?」
「経路じゃないから答えられないんだよね~」
「そうですか。
あの……域王様ですか?」
「うん♪ 手伝ってくれたら元の場所に戻してあげるよ♪」
「はい! ありがとうございます!」
「ん~~と、あのグルリの岩壁を無くして、雲海にしてくれるかなっ♪」
「それだけでいいんですか?」
「いいよ~♪」
「この地……下に雲地がありますよね?
とても不安定な」
「あるね~」
「地底の熱が原因だと思います。
少し前まで物凄く熱かったのではありませんか?」
「見えてる?」
「はい。
随分と冷めたようですが残存熱が自然に冷めきるには万年くらい掛かりますよ。
雲地には魂生体の動物も見えますし、地熱は雲海も不安定にしますので、冷ましてもいいですか?」
「とっても助かる~♪ じゃあお願いねっ♪」
「はい」
スッと降りて地に両手を突くと、瑠璃光の魔法円が拡がって人神の地を覆い尽くした。
翼を大きく広げて光を纏い――
「余剰滅却!」
――ひと声で地から伝わっていた熱を消した。
吹く風がより爽やかになり、草が艶やかに生き生きとしてピンと張った。
今度は上昇して、
「成物解還!」
岩壁を一気に消すと、両掌から放水を始めた。
その水を地に近い所で霧状の雲水に変え、雲海を成していった。
少し溜まると何やら投げ入れて、地の上を飛び、川や湖などの水跡を見付けては雲海と同様に雲水を注ぎ、キラリと陽を反射する何かを投入して回った。
「あとは勝手に雲水が増えます。
溢れたりはしませんので、ご心配なく。
雲水を増やしているのは小さな増幅鏡です。
雲海や雲湖の最も深い場所に落ち着きますので、不要になったら引き上げてください」
「至れり尽くせり~♪ あっりがと~♪
それじゃ、この移動鏡ねっ♪
コッチで経過した分、向こうの時も経過してるから、そのつもりでねっ♪」
「ありがとうございます域王様。
では皆様、失礼致します」
「まったね~♪」翼を振る~♪
また瑠璃竜アオが鏡の向こうへと去った。
「で?」白虎が睨む。
「睨まないでくださいよぉ。
ユーレイ達もルサンティーナちゃんもザブさんも集まって~♪」
皆、降下して爽やかな地に落ち着いた。
「この前 地星がブッ飛んで~、アオ達に戻してもらったんだよね~♪
その時アオから貰った壺に手紙が くっついてたんだ~♪
ザックリ言うと~、アオにとっては過去に地星に来たらしくて、鳳凰の域王に元の時空に戻してもらったんだって~。
僕が最初にアオに会った時、兎だったんだ。
で、戻る時に急ぐから鳳凰になったんだよね。
それでアオはもしかしたら、って思ったらしいんだ~♪
でぇ、地星を戻してもらう時、大きな力が必要だからって一番近いパラレルワールドから、もう1組アオ達が来てたんだ~♪
その、も~ひとりのアオが僕を見て、あの時の域王様だって言ったらしいんだ♪
それで確信して手紙をねっ♪
アオは三界域の天竜らしいんだけど~、地星には『域』って概念ナイでしょ。
トーゼン域王なんてのも居ない。
だから過去の自分達が未来の地星に飛ばされたら域王のフリして元の時空に戻してって、この通路鏡も入ってたんだ~♪
で、ふたりのアオ達は、と~っても近いパラレルワールドだから~、同じようなコト経験するらしいんだよね~♪
だからアオが続けて来たんだよ~ん♪」
「ふ~ん。そんじゃあ俺達が会ったのは、もっと未来の青身神様かぁ……」
「そうかもね~。
夫婦だったし、弟も一緒だったよね~」
「ソレっていつですかぁ?」「うわわわわっ」
その話は聞いてないと、ちょっとムッとしたイーリスタが兎になってペタンと座ると、青生と彩桜が弾き出されたように現れた。
「イキナリ小さくならにゃいでぇ」んもぉ~。
「忘れてた~♪ ゴメ~ン♪」あははっ♪
「お前ら何してたんだよ?」
「通路鏡さん発動しなきゃだったの。
でも青生兄と俺、まだアオ王子に会っちゃダメなのぉ」
「ふ~ん」「話、戻してくださいよ~」
「僕達は青身神ブルー様には何度かお会いしたんだよね~。
さっきの白虎の話は此処が灼熱になって、前の人世が崩壊した直後のだよね~」
「来てくれたから神世は崩壊を免れたんだよな」
「我等の岩壁や風雪が災厄を終わらせたのではない」
「最初はピュアリラ様、二度目は青身神様が地星を救ったんじゃよ」
「初耳なんですけどぉ~」むうぅ。
「我等は灼熱を風雪で蓋をするので精一杯であった。
それでも伝わる熱を岩壁で防ぐくらいしか出来なかった」
「熱は下に逃げ、真下の雲地を溶かし、人世へと伝わったんじゃよ」
「時間差でジンワリなっ。
俺達はザブダクルの所に戻ってたからな、知らんうちに人世が噴火と地震と嵐でメチャクチャになってたんだよ」
「母様が行方知れずになってたからねぇ、誰も気付かなかったんだよ~」
「ん? 母様?」「お兄、話の邪魔だってば~」
「「「アミュラ様」」じゃよ」
「えええっ!?」「お兄、静かにね~」
「話を戻してもよいかのぅ?」
「「「お願いします!」」」
「あっ! お願いします!」
「人世が崩壊した影響で神世が揺れて、初めて気付いたんだよね~」
「けど人神達は気にも留めてなくてな。
まぁ、支配で操られてやがるんだから仕方ねぇけどなっ」
「地が揺れようが何が起ころうが攻めて来おったのだ」
「支配を受けておらぬ人神達からの禍で、神世が埋め尽くされてしまうかと思うた その時、青身神様がいらしたんじゃよ」
「で、さっきみたく光一発で禍は全滅。
人世の場所は空洞として保ってくれたんだ。
獣神の地の揺れも鎮めて、下空の雲地も戻してくれたよ。
で、灼熱も一旦は鎮めてくれたよ。
けど大元を解決しねぇと無理だと仰った。
だから少ししたらまた熱くなったんだ」
「その、いらした時にのぅ、弟のサクラ様が瑠璃鱗の男神を青身神様、女神を青女神様じゃと仰ったんじゃよ」
「でも内緒の名前で、アオとルリって呼ばないと返事もしてくれないとも言ってたよね~」
「あ……忘れてた……」
「来てたの、アオとルリとサクラだけ?」
「そうじゃよ。二度目ものぅ」
「やっぱり~♪ もうひと組だねっ♪」
「今思えば、じゃがのぅ」
「また溜まった禍を滅して、人世跡の空洞と雲地のアフターケアして、もっぺん熱を鎮めてくれたよなっ♪」
「そうだったね~。
ずっと居てもらいたかったよね~」
「サクラならと話してみたら、青身神を待ってる所が多過ぎるくらいだからって、シュ~ンとしちまったんだよなぁ」
「しかし、いずれ地星の者が力を合わせて解決すると断言なされた」
「そりゃあ過去に来てるし~、地星を押し戻した後だもんね~♪」
「それだけでは解決したとは断定できぬ。
この先、またいらっしゃるのだろう」
「そっか~♪
今度はフルコンプで来てくれるかな~♪」
「フルコンプ?」一斉。
『な~にがフルコンプだよ?
集まって無駄口かい?』
「ん?」一斉に声の方を向いた。
三界と地星との接点。神より凄い『ただの天竜』が飛ばされて来たお話でした。
それにしてもカケルって~ですけど、この事を起こす『鍵』だったんでしょうか?




