禍との激戦
モグが古の人神の地に行ったので、王都の避難所では、エーデリリィに抱かれたシャルダクルが人神達に掛けられていた支配を消していた。
〈シャルダクル様、お疲れではありませんか?
少し離れましょうか?〉
〈ねむってしまうかもだけど~、それまでは このままで~〉
〈ご無理なさらず……ですが、ありがとうございます〉
〈か~さまと に~さま、たたかってる。
ぼくも がんばりたいの。
モグ……くら~いの消して、あかるいの入れてるの。
あかるいの、すこししたら消えるの。
ぼくも そうしたいの。
だから……がんばるの♪〉
眠りそうになったが目を開いて笑った。
〈はい♪〉
エーデリリィは寝台の間を歩き始めた。
人神の手に触れては治癒を込めていく。
この状況を嘆く者が居ないのを
不思議に思っていたけれど、
モグが希望を込めてくれていたのね。
強いからこその優しさ……
見習わなければね。
モグが込めた希望が消えてしまう頃には
王都は元通りかしら?
そうできるよう、
努めなければならないわね。
―・―*―・―
ザブダクルはオーロザウラの禍を吸着しようと、己が生み出した禍に神力を注いで膨らませた。
【神様よぉ、それじゃあ諸刃の刃だぁよ。
圧倒的に強く、清くしなきゃなんねぇぞ?
そっち行って禍に傷を付けるからよぉ、待ってる間に福に転じててくれよなぁ】
【福?】
【その禍を清く、善くすりゃええだなぁよ。
響チャンが言ってたんだなぁよ♪】
声の主が現れてニヤリとした。
【あっ!】覚えている顔に驚いた。
【ナンだぁよぉ?
そろそろユーレイにも慣れて、オイラの声も聞いてくれよぉ?】
頷く。【善く……やってみます!】
【それでええんだよぉ。
そんじゃあ……暴れさせてもらうぞ!】
ユーレイがサッと動いた時、ザブダクルは初めて その周りで煌めいていた何かが防護壁ではなく、手にしている武器の素早い動きだったと気付いた。
【その……光は?】
【いやぁ、気にせんで――】【愛ですよ♪】
【は?】2人!?
【集中しててくれよなぁ】【夫婦なの♪】
一瞬だけ止まって姿を見せ、再び煌めきを纏い動く一塊と化す。
【早くしねぇと弱った禍だらけになるぞ!】
【は、はいっ!】
【お~い皆! 聞こえたなら禍をオイラの所に集めてくれぇよ~お!】
―◦―
【響ちゃん! 先生の所に集めるべきだわ!】
【そうね! ん? 空耳?
何か……でも確かに呼ばれたわよね?
あっ、それより動かさないと!
ソラ! お兄!
この塊、連れて行くわよ!】
大きな球状に広がっている御札を一気に萎ませて包んだ禍の塊を指した。
【転送されなくなったのは、転送先が限界になったからかもしれないよね。
お兄、殻を具現化しよう】
【殻か。だったら御札の外に作るから、その外側にも貼ってくれるか?】
【いいわね♪
1匹たりとも逃がさないわよ♪】
【【匹って……】】
【言ってないで具現化してよ】
【うん】【やろうぜ】
―◦―
【コレ……ど~する?】【ですよね~】
ナンジョウとモグが困惑しつつ見下ろしている地上には、辺り一面に禍が落ちている。
【とりあえず支配で眠った状態なのよね?】
【はい……】禍にどこまで効果があるのかは不明。
【全部に傷をつけたわよね?】
【プスプスしたよ】【うむ】【はい】
思案していたホウジョウがトウゴウジと目を合わせる。
【凍結を試しても?】【新技かっ!?】
【ま、そうだな】【コソ修行すんな!】
夫婦で話していたのに即座に寄ったナンジョウに捕まった。
【兄弟で遊んでないで試してよ】【ふむ】
―◦―
【また団体さん出たよ~】【多いぞ!】
大きく膨らんだ網をぶら下げているショウと力丸が噴出口から逃げる。
ユーレイ達が噴出口を囲んで遠隔攻撃する。
持久戦になる可能性を考えて神力を温存していたラピスリだったが、消耗の激しい闇を使うしかないと決断した。
ソラも同様に考えていた。
ソラの場合は相棒のカケルが彩桜と大違いなのも躊躇する要因になっていたのだが。
【やるしか……ないよね】【ソラ?】
己を鼓舞したのだが響には聞こえてしまっていた。
【うん。ちょっと大技するからね。
続けては無理だから、お兄をお願い。
術昇華、浄破邪雷千華掌!】
淡蒼の雷光を纏った白蕾を連射した。
蕾は禍に触れる直前で開き、パクリと閉じる。
禍入りの蕾が増えるとソラが手を薙いだ。
禍を追っている蕾は そのままに、禍入りだけがザブダクルの方へと飛んだ。
【ソラすっご~い!】【【すっごいね~♪】】
【彩桜なら もっと凄いんだ……彩桜なら……】
【ソラ兄 呼んだ~?♪
アミュラ様♪ 俺また来た~♪
昇華闇障暗黒、激天特大闇呼吸着!
封神力、雷迅闇浄破邪万華掌!!】
ソラと背中合わせになった彩桜からビシバシ桜色の雷光を纏う黒蕾が群れとなって勢いよく飛び、禍をパクリとしては反転して彩桜が掲げている闇呼玉へと飛び込む。
その黒蕾の動きが速い速い。
【ソラ兄、光矢お願い!】
まだ禍は噴出している。その噴出口に向かって
【術光矢封乱悪牢連射!!】
もう温存しなくても大丈夫だからと全神力で放った。
光矢は禍を追尾して、突き刺すと弧を描いて反転し、闇呼玉へと禍を押して入った。
【ありがとソラ兄♪
激天マシマシ闇呼吸着おかわり!!】両手に闇呼玉♪
―◦―
別の噴出口に居るラピスリは笑って
【昇華闇障暗黒、激強大闇呼吸着!
昇華光明光化、封乱悪牢!】
闇呼玉を周りに浮かせて光矢を連射した。
【姉様も闇だったの?】並行して浄破邪!
【少しだけな。私は青生と繋がっている。
青生は彩桜と連動する程に強く繋がっている。
故に彩桜が来てくれたなら私の闇神力も強くなる】
【父様は? 来てるの?】
【月に居る。青生も月で戦っている】
【分離?】
【彩桜は器用だからな】はははっ♪
―◦―
【カケルさん! 見てないで剣!】
【あ、ああ! ビックリし過ぎてただけだ!】
浄破邪の剣を振るい始めた。
そもそも随分と漂っていた上に噴出が続いているので大変だ。
彩桜は黒蕾を連射しつつ闇呼玉を交換しつつで、こんなにも続いたのは初めてだと思っていたが、ユーレイ探偵団の皆と一緒に、特にソラと一緒に戦えるのが嬉しくて張り切っていた。
それはソラも同じで、
【やっぱり彩桜がいいな……】
ついつい呟いてしまっていた。
【俺も♪ ソラ兄サーロンがいいの~♪
だから呼んでたし、来ちゃった~♪】
【やっぱり彩桜だったんだ♪ 聞こえてたよ♪】
【えへへ~♪】
噴出は長く続いたが永遠なんて有り得ない。
吸着は浄化を後回しにしただけだが、とりあえず静かになった。
【ん~~~、また出るかもだけど~、集めてピッカン☆しよ~♪】
【そうだね♪】
彩桜が周りに浮かせていた満腹闇呼玉と、力丸とショウの大きく膨らんだ網と、ホウジョウが凍結した巨大氷塊を集めたところにラピスリとマディアも来た。
【これも頼む】【うんっ♪】
ラピスリの闇呼玉も上に乗せて
【ソラ兄せ~のっ♪【滅禍浄破邪ピッカン!☆】】
白輝一色!!【うわあっ!?】
【ほえ?】【あ……お兄、初めてだった?】
【初めてだよっ!!】
【私も初めてだけど目も神眼も閉じてたよ♪】
他の初めて組も『ピッカン☆』と聞いて、この二人なら、と閉じていた。
【響、初めてだっけ?】
【朱里城とかのは映像だけだったから~】
【あ、そっか】
景色が少しずつ戻ると、ちょうど朝陽が昇り、風雪の無い大地が見えた。
【昼も夜みたいだった地に光って感動的ね♪】
【そうだね。やっと見えたね。
凍っているから固いのかと思ってたけど、何もかもが熱で融けて一枚岩になってたんだね】
【調べに来た時ね? 確かにね~♪】
【広大な……岩だね。
草木も建物も何もかもが消えたんだね……】
地平線まで多少の凹凸は有るものの、すっかり何も無い。
ぐるりと見渡し、昇っていく朝陽を追ってから晴れ渡った空を仰いだ。
【荒れてて何もないけど、ここからよね♪
神様の地なんだから生まれ直しでも なんとかなるなる♪】
【そうだね。再誕したばかりの神様の地だよね♪】
【暑いのは夏だからか?】
【お兄、温感オフってなかったの?】
【じゃなくてオンにしてみただけ!】
【ん? 中渡音支部長クンは?】キョロキョロ。
【俺は無視かっ!】【黙れ馬鹿者】【力丸コノッ!】
【何しやがるっ!】【黙れ犬っ!】【馬鹿者こそ!】
わやくちゃゴロゴロ転がって行った。
【彩桜なら、あそこ】
【アミュラ様とザブダクル様と話してる?】
【誰でも友達だからね♪】【そっか♪】
ハイパースーパー龍尾天使くん登場で一気に形勢逆転の好転勝利でした。




