古の人神の地へ
「それじゃあ留守の間、頼んだよ」
「畏まりましたアミュラ様」
「母様、お気をつけて」
古の人神の地に向かう為、カウベルルとカシスの力を引き上げたアミュラが部屋を出ると――
「昨日は大変失礼致しました!」
――ラピスリが勢いよく深々と頭を下げた。
「いいんだよ。
アタシが わざと怒らせたんだからねぇ」
「は?」
「ああ、この姿と声かい?
偽装だよ。
ま、おかげで若返ったから神と生き人を分ける術も極めるよ。安心しな」
「それは……はい。ありがとうございます……」
「じゃなくて、どうして怒らせたのか、だろ?
ラピスリは父親達に似過ぎて自分の事は最後でいいと他者に尽くす。
今のところ父親達は楽しそうにやってるからいいが、ラピスリは見てるコッチが痛々しくて やってらんないくらいだったかったからねぇ。
思いを吐き出させないと大禍の元だと思ったんだよ」
「……すみません」
「もっと素直になりな。
たまには夫に会わせろとドラグーナに言やぁいい。
ま、今日は無理だがねぇ。
向こうの目処が立ったら人世に戻るかい?
神世にも必要だから通ってもらわないといけないけどねぇ」
「通いで……宜しいのですか?」
「兄弟が千も居るんだろ?
ラピスリだけが背負い込む必要なんざありゃしないよ。
頼るって事も覚えな。
それじゃあ行くよ」
「はい!」
館から出た所でザブダクル、ルサンティーナと合流し、最外の塔に行くとユーレイ達が待っていた。
「「「おはようございます♪」」」
「毎日 大変だったろうに、今日も元気だねぇ。
それじゃあ風雪と灼熱の地に行こうかね。
ラピスリ、術移で一気に行けるかい?」
「はい。では乗ってください」龍になる。
背に皆が並ぶと、ラピスリは里の結界の外に出て身構えた。
「では、参ります」「待って~!」
「ん?」「あ♪ ショウ♪」「モグ♪」
「「僕達も連れてって~♪」」
「力丸、遊びに行くんじゃないんだぞ」
「っせー! 邪魔なのはカケルだっ!」
現れたマディアの背にはショウ 力丸 モグの3犬が乗っていた。
「マディアも行くのか?」
「うん。コッチの国の代表として。
グレイさんが行きたがってたんだけど、今コッチも大変だから無理でしょ。
だからエーデラークと王子達が代理として行くって決まったんだ。
モグは、もしかしたらオーロザウラが支配を使ってたかもだから一緒にって」
「ふむ」手を繋ぐ。「行くぞ」「うん♪」
――激しい吹雪の真っ只中!
「うっ……」「いーかげん慣れろよな」
「力丸コノッ!」「ナニしやがる!?」
カケルがマディアの背に飛び、取っ組み合い。
「ホント、仲良しだねぇ」「「違っ!」」
「マディア、落としても構わない」「うん」
「邪魔するなら封じるわよ」御札を構える。
「響コエ~よ」「悪いのはカケルだ」ケッ。
「お兄、兄様、恥ずかしいからヤメてねぇ~」
「お兄、いい加減にしないと相棒やめるよ?」
「ホントお兄ってば、いつまで経ってもコドモなんだから。
騒がしくて すみません」
振り返ってペコリ。
「あ……ルサンティーナ様、大丈夫ですか?」
「ええ。私の所為なのですから……気を確かに保たなければなりませんね」
ザブダクルに支えられていたルサンティーナが背筋を伸ばした。
「ま、仕方ないよねぇ。
これが現実なんだから。
夫婦で半分ずつ壊滅状態にしたんだ。
張り切って戻しなよ」「「はい」」
「いやいやまぁ、風雪は儂らじゃからのぅ。
アミュラ様、儂らも加わらせてくだされ」
真四獣神が揃って現れた。
「そうかい? 助かるよ。
それじゃあラピスリ、タートガイアにアタシと同じ術を頼むよ。
爺ィのままじゃ可哀想だからねぇ」
「あ……はい」目を閉じて気を高める。
「タートガイア、嵩高いから人姿で待ちな。
な~に、少しの辛抱さね」
「人姿で……よっこらせぃ」
眉毛と髭はタップリな爺様が胡座をかくと、その下に魔法円が輝いた。
「復輝降臨!!」
魔法円からの光が爺様を包む。
「スッゲー!」「「ぴっか~ん☆♪」」
犬達は楽し気に尾を振っている。
下からの光は貫くように昇って消えた。
「これは……」
驚きで見開いた目で両手を見詰める青年は、ひとつ頷くと涼し気な目を細めて笑った。
「ありがとうございます、ピュアリラ様」
「まだ継いでおりませんのでっ」
一瞬で染まった頬が見えないようにマディアの後ろに隠れた。
「エアラグーンと同じくらいになったかねぇ。
フェンラーグも受けるかい?」
「いえ。今は此方の地を優先すべきかと。
消耗させるのは得策ではないと存じます」
「ふむ。それじゃあアタシから少しだけね」
杖頭で素早く宙を掻くと光が飛び、朱雀の胸に入った。
「お……神力が……」
翼が艶めき、虹光を纏った。
「存分に発揮しておくれ。
それじゃあ始めるよ。
ルサンティーナ、最初は飛び込んだ火口に愛を注いで鎮めな。
後は順次、近い火口から鎮めていきゃあいいさね。
ザブダクル、支えてやりなよ。
愛ってぇのは、ふたりで注いだ方が強いに決まってるからねぇ」
頷いた夫婦が瞬移した。
「四獣神は噴火が収まったら吹雪を止めな。
全土、一気にだよ」
真四獣神は四方に散った。
「ラピスリ、それとマディア。
全ての火口が鎮まった直後が勝負だよ。
オーロザウラの置き土産と戦う事になるだろうからね。
救世主達、思いっきり やっとくれ。
相手は魑魅魍魎だと思っていいからねぇ。
ソラ、自信が無いんじゃなさそうだが、何か言いたいんなら遠慮なんか要らないんだよ?」
「もしかして……ルサンティーナ様を吊り下げて飛び回った時って、地に禍を込めていたんですか?」
「振り撒く為にルサンティーナを連れて飛んだんだろうねぇ。
己の濁りきった感情にルサンティーナの憎しみを加えた禍を込めたと見てるんだよ。
アタシの勝手な想像だけどねぇ」
「その禍にオーロザウラを感知したからルサンティーナ様は地を燃やし尽くしたんですね?」
「そうだろうねぇ。
意識を失ったルサンティーナは、本能だけで動き、憎いオーロザウラを滅し尽くそうとしたんだろうねぇ」
「それじゃあ噴火させてる力の根底にあるのはオーロザウラの禍なんですか!?」
「ルサンティーナ様の怒りじゃないのに愛で鎮められるんですか!?」
「ルサンティーナの怒りだけならルサンティーナとザブダクルの愛で鎮まるだろうねぇ。
だから、その蓋が消えた後にはオーロザウラの置き土産が噴出すると見てるんだよ」
「おっきな火山、凍っちゃったよ~」
「流石、最強女神だねぇ。
後の火山は早いよ。
四方、唱え始めたからね、構えときな」
「はいっ!」一斉!
「ん? アレ……」「キツネ様?」
「あ♪」「サイオンジ~♪」
近くに現れたオフォクスが目の前に瞬移して来た。
「オイラ達も混ぜとくれぇよぉ」
「精鋭ユーレイが増えるのは大歓迎さね。
オフォクスはドラグーナと一緒に月に居ておくれよ?」
「はい」
ユーレイ達が降りると苦笑を浮かべて消えた。
「ヨシさん、トシ兄は?」
「連れて来た方が良かった?」
「違う違う! 邪魔だから~」
「今日も楽しそうに炊き出ししてたわ♪」
「じゃあ存分に♪」
「頑張りましょ♪」
「トク、おもいっきりだぁよ」「はい♪」
「楽しいのかなぁよ?」
「あなたと一緒ですもの♪
愛を具現化するわねっ♪」
「コッ恥ずかしいからヤメろやぃ」
「任せてねっ♪」「おいおい……」
「ダーリン♪ 私達も愛を武器にしましょ♪」
「む"……」じんわり頬染まる。
「もうっホウジョウったら~。
恥ずかしがらないで~♪ ねっ?♪」
「武器は……任せる」
「ありがと♡」
「モグさん。俺は辰己 丈一、タツです。
何度か戦いましたが覚えていますか?」
「……はい」
「タカの代わりに俺の相棒してくれますか?」
「タカ……解りました。頑張ります」
「ンな顔しないでくださいよぉ。
タカはモグさんの中で生きてる。
ですよね?」
「はい。皆さん生きています」
「それならいいんだ♪ 頼みます!」
「はい!」
「あ、ナンジョウって呼んでください♪」
「はい♪」
「ダイン兄様、禍も神力だから縄が使えるんだよ♪ 頑張ろ~ねっ♪」
「おう♪ 任せとけって♪」
「網にしたら捕まえやすいんだよ♪」
「そーなのかっ!? どーやるんだよ!?」
「ん~~とね~、ポンッ♪」びろろ~ん♪
「そんなんで わかるかっ!」
「投げてから~、ポンッ♪」ぱあっ♪
「だから説明しろっ!」
「お兄、真剣にね」
「当ったり前だろ」
「力丸を視界に入れないでね?」
「どーゆー意味だよ?」
「ジャレるから」
「なっ――」
「早く帰って義姉さんに会いたいよね?」
「そりゃあな……会いたいよ」
「だから真剣にね」
「おう!」
風雪と灼熱の地と化していた『古の人神の地』を元に戻そうと、ユーレイ探偵団を中心とした精鋭集団が動き始めました。
鬼が出るか蛇が出るか……ですが、何にせよ全力で戦います。




