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災厄に備える勉強会①



 夕方にはソラ自身がSo-χに加わるだろうという響の予想は大ハズレで、庭で犬達を撫でていたソラはサーロンとして彩桜と一緒に出掛けてしまった。


 あ~、また楽しく忍者してるぅ。

 ホントに見捨てられちゃうよ?


スタジオの隅で奏だけを見て緩みきったニヤケ顔のカケルに溜め息。


ズンズンと寄ってカケルの視界を塞ぐ。

「お姉ちゃんの邪魔しないでよね」

〈今夜から勉強時間を取るからね。

 逃げたりしたら探偵団からも祓い屋からも追い出すから成仏してねっ!〉


〈ナンで成仏直結なんだよ?〉


〈結界からも追い出すからよ!

 ソラにも見捨てられかけてるんだから!〉


〈え? ソラ? お~いソラ?〉


〈あれは狐儀様! ソラは探偵団してるわよ!〉


〈あ~だからイライラ?〉


〈じゃなくて! ホントに見捨てるわよ〉

声を低くしてジト~。


〈見捨てる見捨てるってぇ〉


〈ソラの今の相棒は彩桜クンなの!

 雲泥の差なんだからね!〉



―◦―



 そんなこんなで夜更けの稲荷堂に行き、小さな白狐神兄弟の狐儀(フェネギ)理俱(リグーリ)に連れられての作業部屋。


「狐が先生?」


「神様! お稲荷様よ!

 さっき説明したのに もう忘れたの?

 狐儀様、理俱様。今日の様子を見てトシ兄と同じ扱いにするのかも決めてもらえます?」


「解りました」「今の言葉だとトシと同じだな」

【獣神秘話法は?】


【使えます】【僕達も♪】【ね~♪】


【敵神に感知されてはならない話です。

 幾重にも結界は在りますが、念の為、全て獣神秘話法にて】

【力丸、普通にしてていいんだぞ】


【はい♪】

実は『とっても嬉しい』と尻尾が雄弁。


【では、カケルの返事はありませんが進めます。

 今は7月の半ばですが、この月中に地星が消滅しかねない程の災厄が降りかかると、予知的神力を持つ神 全てが捉えているのです】


【お兄、聞こえてる?】【あ、ああ】

【続けてください】礼。


【規模の大きな事ですので、少々ずれて8月となる可能性もありますが、起こるという事だけは確かなのです。

 ですが起こす者が誰なのかは特定できておりません】


【ま、待って、ください。

 地殻変動とかで『起きる』じゃなくて、誰かが『起こす』んですか?

 だったら戦争とか?】


【人が起こし得る戦争は阻止しました。

 ですので人としては自然災害と捉える類いの災厄となるでしょう。

 起こす者は神です】


【神様なんだろ?

 特定もムリ、阻止もムリなのか?】

【お兄、言葉!】自分の過去は棚の上の奥。

【だって腹立つだろ!】【静かにしろ!】

【お前もだろ、新参者】【お前、馬鹿者だろ】

【コノッ――!】【お兄ウッサイ!】黙らせた。


【神にも様々居ります。

 悪に染まった者を『魔』と呼びます。

 それでも神。

 巧みに潜伏している魔を探すのは、同じく神である私共には難しいのです。

 その上、魔は人で言えば無法者。

 神として守るべき事を無視しますので、阻止も困難を極めるのです】


【当然だが探しもするし、可能な限り阻止も試みる。

 けどな、それでも起こってしまったなら、を考えるべきなんだ。

 災厄は抑えるつもりだ。

 そうしようと大勢が動いているんだ。

 それでも地星が粉微塵になるくらいの大規模災害だからな、人世も神世も世界中が瓦礫の山になってしまう。


 だから、その先も考えなければならない。

 世界中が瓦礫しかない状態からの復興だ。

 普通に人の力で成せるもんじゃない。

 だからこそ神の力を持つ者を集め、鍛えている。

 カケルも その中の1人なんだよ。

 トシも同じくなんだが……アレは落第生だな】


【神様は? 人世を助けてくれないのか?】


【神と言っても様々だと言ったろ。

 神世で暮らしている一般神(いっぱんじん)は人と大差ない。

 災厄が起これば人と同じく瓦礫に埋もれる側なんだよ。

 それでも神だ。地星を維持するには欠かせない存在なんだよ。

 だから神は神世を復興しないといけなくなる。

 人世は神力持ちに任せるしかなくなるんだよ】


【ですから、短い時間しか残っておりませんが、修行をし、神力を高めて頂きたいのです】


【ん~、ま、わかった。

 ソラが言ってた『ユーレイは寝なくて平気』を発動すりゃいいんだろ?

 修行の指導を――ん? トリノクス様は?】


【貴殿方の分離は副産物です。

 不用意に近寄ったトシから、父トリノクスとアーマルを救出したかったのです。

 ですが結果、両大神の神力の写しが貴殿方に備わる事となりました。

 これは とても大きな力なのです。

 父とアーマルは修行に集中しております。

 ですので私共が実情をお話しし、指導もと考えているのです】


【トリノクス様って狐だったか?

 蛇に見えたんだけどな……?】


【両方だよ】ボッと白大蛇に。

【今日の話は此処までだ。修行に移る】


【【【【はいっ!】】♪】】


【カケルは?】


【やります! ビックリしてただけです!】



―・―*―・―



「ん? また新しい弟子か?」

「起こします?」

「だな。邪魔だしな」


そんな声でカケルが目を開けると少年達が覗き込んでいた。


「わああああっ!?」飛び起きて部屋の隅へ。


五月蝿(うるさ)い」「ぎゃああっ!!」炎に包まれた。


「赤虎師匠、コイツ大丈夫なんですか?」


「ユーレイは死なぬ。

 無視して構わぬ。平常心だ」「「はいっ!」」


少年達は道具箱を持って来て座り、何やら細かい物を作り始めた。


「む」輪を差し出した。「霊体のみを取れ」


「へ?」ぷすぷすぷす。


「意味すら解らぬか?」

霊体を抜き、カケルの手首へ。

「神力の補助具だ。

 それを頼れば具現化で寝落ちるなんぞ有り得ぬ」


「あ……俺、瞑想してて寝落ちたのかぁ」


「無駄にした時間分を早く取り戻せ」

背を向けて土間の方へ。


「って、つまり瞑想してても?」


「構わぬ。だが、雑念が多ければ追い出す」


「うわ。はい!」



―◦―



 So-χの方は西面(にしも)東面(ひがしも)からのGOを得て本格的な練習を開始した。

午後から録音も開始すると聞いている。

しかし、この日のソラも狐儀だった。

小休憩の今はメーアと談笑している。


そこに響も加わった。

「メーアさん、コラボ曲は どうなったんです?」


「アレは次のアルバムに入る。

 フリューゲル単独だが、キリュウとのコラボ、ソーカイとのコラボがある。

 ソーカイコラボは、このレコーディングの合間に声を入れてもらう。

 だから来たんだ♪」


「それって世界中に売るんですか!?」


「勿論だ♪ ジュークの許可も得ているぞ♪

 金銭面も契約済みだ♪」


「それって、それって……私達、世界デビュー!?」


「そうなるな♪ だが緊張は禁物だ。

 いつもの通り伸びやかに歌ってくれ♪」


「わああああ~」 「響?」「どうしたの?」

ドイツ語で騒いでいるので何事かとメンバーが寄って来た。


「私達! 世界デビュー!

 フリューゲルのアルバムにコラボ曲!」


「へ?」「は?」「え? 響、きちんと説明して」


「だって、だってメーアさんが!」

「So-χとのコラボ曲をフリューゲルの次のアルバムに収録するそうです。

 このレコーディングの合間に声が欲しいそうですよ」

代わりにソラ(コギ)が説明した。

「メーア、演奏はフリューゲルメンバーのみですか?」


「新曲を抱えた現状では無理だろ?

 だから重ねるのはサポートメンバーズだ♪

 けど可能なら参加していいぞ♪」


「ありがとうございます♪

 ボクと響は入れますよ♪」勝手に決めた。

「リーダーとワタルさんは演奏のみ、コーラスのみ、両方参加の選択肢がありますよ」


「うわ……「考えさせてくれ!」」


「ねぇ響、どんな話になっているの?」


「お姉ちゃんは歌うにきまってるでしょ。

 ソラ、私は?」「コーラスと演奏だよ」

【ソラ! ソラ!? ソラってば!!】


【聞こえないと思いますよ】


【だって学校すぐそこ!】


【今日は彩桜様もサーロンも私の分身です。

 今は……南米の魔女の丘で情報収集中ですね】


【南米!?】【はい♪】【何してるのよぉ?】


【ユーレイ探偵団として動いているだけですよ。

 団長殿が拾った案件なのでしょう?】


【西海村から何がどうなって南米に?】


【今は南米というだけですよ。

 昨日からずっと世界中を飛び回っておりますね。

 団長殿は茶畑探偵事務所に行くべきなのでは?】


【あ~、忘れてたぁ。確かめなきゃ!】



―◦―



 そんな訳で夜に入ったばかりの頃に、響は茶畑探偵事務所に行った。

「薫ちゃん、暎ちゃん、どう?」


「それがね~、中渡音市内の興信所とか探偵業をしている所、全てと」

「警察にも調べに行ったけど、全然なのよ~」

「だから明日は東合(ひがしあい)竜ヶ見台(りゅうがみだい)にも足を伸ばすつもりよ」

「それと物見(ものみ)(透視&情報収集)もしようと思ってるの」


「そっか。西海村からだと東に走って行ける『街』は中渡音だけじゃないよね。

 ソラの おばあちゃんが一番近い中渡音だと思っただけって可能性あるよね。

 でも大変なの持ち込んじゃったね」


「いいのよ~♪」「報酬は貰ってるから~♪」


「へ? 誰から?」


「「彩桜君とサーロン君からよ♪」」

ブレスレットをキラ~ンと見せた。

「「ソラ君からの依頼品だそうよ~♪」」


「それ、何?」


「物見水晶とその他諸々♪」

「たくさん石が入ってるでしょ。

 ほら、色の違う丸い石♪」

「物見の場合はスモーキークォーツね」

指先で撫でると石を拡大コピーしたような光球が浮かんだ。

「覗き込めば明瞭に見えるのよ~♪」


「他の色は?」


「金と銀のルチルクォーツは神力増幅だから気にしなくていいそうよ」

「ラピスラズリは治癒。

 切り傷 擦り傷なんて、あっという間よ♪」

「ガーネットは人が入れる大きさの球になるの。

 防護壁になるそうよ♪」

「アメジストは術や御札なんかの効力を強化してくれるそうなの。

 貰った御札とかにも効果があるそうだから、御札も貰ったのよね~♪」

「御札使いじゃない私達でも、御札で石を撫でてから投げるだけなの♪

 これは怨霊の動きを封じる御札ね♪」


「ホントだ~。誰が書いたの?」


「彩桜君がサッとね♪」

「無くなったら響ちゃんに書いてもらったらいいって言ってたわよ♪」


「うん、いつでも言ってね♪ この石は?」


「ローズクォーツは浄破邪だそうよ♪」

「対 怨霊武器ね♪」


「ソラとサーロンくんと彩桜クンが得意なヤツだ~♪」


「「そうなのね~♪」」







カケルを鍛える為の勉強会が始まりました。

探偵団活動は すっかり彩桜とサーロンが担ってしまいました。

レコーディングも進んでいますし、稲荷堂で何やら作っているのも備える為でしょう。

全てが進んでいますがカケルは?

寝てばかりだとユーレイは消滅するんですけどねぇ。




―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―



ソラが楽しく忍者していますので、マーズに関して もう少し。


マーズは忍装束(しのびしょうぞく)が基本で、神眼でも透過不可な忍面(しのびめん)を着けているので全身真っ黒です。

カラフルなのは垂れのヒラヒラ長い腰帯で、その個々の腰帯色をマーズカラーと言い、呼び名にも付けています。

他の衣装の時も黒かマーズカラーを基調としています。

顔を隠す面も衣装に合わせて変えます。

マスカレードマスクとか馬メン(競走馬のメンコみたいなマスク)とかですが、いずれにせよ神眼不可面です。


メンバーは演奏メインの音忍(おとにん)10マーズとパフォーマンスメインの舞忍(まいにん)5マーズ。

見習いパフォーマーの黄緑(わかば)マーズが4人、チビッ子マーズが3人の総勢22人です。


〈マーズメンバー〉

(きん)マーズ:金錦(きん)    (おさ)・音忍

(ぎん)マーズ:白久(はく)    副長(ふくおさ)・音忍

(あお)マーズ:青生(あお)    音忍

(くろ)マーズ:黒瑯(くろ)    音忍

(あか)マーズ:紅火(あか)    音忍

(ふじ)マーズ:藤慈(ふじ)    音忍

桜マ(さくら )ーズ:彩桜(さくら)    音忍

(みど)マーズ:慎介(しんすけ)(狐儀(こぎ)) 音忍

(むら)マーズ:慎也(しんや)(理俱(りぐ)) 舞忍

(かい)マーズ:リーロン  舞忍

(るり)マーズ:瑠璃之助(るりのすけ)  音忍

(そら)マーズ:サーロン  音忍

(しろ)マーズ:竜騎(りゅうき)    舞忍

(とう)マーズ:(さとる)     舞忍

(きぃ)マーズ:ジョーヌ  舞忍


黄緑(わかば)マーズ(パフォーマー見習い)

    :(めぐる)冴翔(さいと)瑠惟(るい)怜王(れお)


チビッ子マーズ(忍ノ里で生まれ育った5歳児達)

 赤装束:紗蘭(すずらん)紗之助(すずのすけ)

 青装束:飛鳥(ひちょう)飛鳥(あすか)

 緑装束:羽龍(うりゅう):ユーロン



と書かれても誰が誰なんだか、でしょうけど……。

詳しくはユーレイ外伝1でお確かめください。

m(_ _)m



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