鳳凰神の新たな里長
朱雀に負けない真っ赤な鳳凰が飛び立った。
「お待ちください!」
詠唱が止まる。
「ほう、術に囚われぬ鳳凰が居ったか」
「この里を!
仲間達を滅するのはお止めください!」
「愚かな鳳凰なんぞ要らぬ。
鳳凰は賢神であらねばならぬ。
術に囚われなかった お前は助けよう。
お前が新たな里を作ればよい」
【朱雀様ぁ、僕ど~すりゃいいのぉ?】
【此奴等を仲間と認めるのか?
イーリスタを奪って両親を追放し、叔母までも追い出した奴等なのだぞ?】
【叔母様も!?】
【昨夜ガイアルフとフィアラグーナから保護するよう頼まれたのでな。
今はマヌルの里だ】
「此奴等を仲間と認め、護りたいか?」
「確かに僕は仲間だと認められてない。
でも……それでも僕は鳳凰神なんだ。
だから鳳凰の里は護らなきゃならない。
父様と叔母様が生まれ育った里なんだから。
僕も住んでた里なんだからっ。
フェンラーグ様! この里を、鳳凰達を滅するのは お止めください!」
「ならば、お前が改心させるか?」
【僕、月に帰りたいんですけどぉ?】
「お前が長となり、愚神達を改心させるのならば滅さぬ」
【僕を月から追い出したいのぉ?】
【行き来すればよい】
「僕が長だなんて認めてもらえませんよ。
長老様から改心させてもらいますから」
「ならば滅する」「お待ちください!!」【んもぉ~】
「鳳凰は修行せずとも基底が高い。
それが愚神ならば神世を滅ぼし兼ねぬ。
これ程までに大勢ならば早急に滅するより他に手は無い。
愚神達を見限った者、里から理不尽な理由で追い出された者達が居る。
その者達と新たな里を作ればよい」
「他にも追い出された鳳凰が居るの?」
「居る。皆、賢神だ。
理由は長から脅威と感じられたが故だ。
長の座を奪われると思われたが為だ。
イーリスタの父も然うだ。
兎と結婚したが為ではない。
兎の里を脅したのも鳳凰だ。
これでも里と愚神達を護りたいか?」
「でも……やっぱり仲間だから……そうだ!
父様を長に! お認めください!
里を出た鳳凰神様にも お戻り頂いて、シッカリ導いて頂きますのでっ!
僕は半分 兎だから……父様なら純粋な鳳凰ですからっ!」
「ふむ……長老よ。
首だけは動くようにしてやろう。
イーラスタを里の長とするか?」
長老は泣きながら大きく頷いた。
何度も何度も。
「ただの命乞いでは無かろうな?」
今度は横にブンブンブンッ!
「イーラスタの妻は兎だ。
受け入れるな?」
縦にコクコクコクッ!
【面白~い♪】【【【【イーリスタ様っ!】】】】
「他の鳳凰共もよく聞け!
よく学び、よく修行せよ!
1年の猶予を与える!
愚神が残っておれば里を愚神諸共 滅す!
よいな!!」
「ありがとうございます!!」
「イーリスタも父と共に指導せよ。
よいな?
ドラグーナ。
獣神の王として、鳳凰達を導け。
よいな?」
【俺も!?
王なんて引き受けていませんのでっ!】
【鳳凰達が王だと認めておる。
他族を認めるなんぞ、有り得ぬ程に珍しいぞ?
イーラスタとイーリスタの為にも頼む】
「ドラグーナ? 返事が聞こえぬが?
滅してよいのか?」
「解りましたよ」溜め息。
「長老様、龍なんかが介入してもよろしいのですか?」
縦に激しくコクコクコクッ!!
【ヘドバン~♪】
【【イーさまったら~♪】】
「我等は月より常に神世を見ておる。
此度、神世が滅亡に瀕したるは、我等の様子見が過ぎたが故と反省しておる。
故に次なる災厄が降り掛かろうとしておると見たならば即座に降りて参る。
愚かな子孫共よ、災厄に対し先手を打つが為、次なる猶予なんぞ無いと思え!」
魔法円が消え、呪縛から解かれた鳳凰達からバラバラと返事の声が聞こえた。
「気に入らぬな。
助けてくれたイーリスタに感謝すらも出来ぬのか?」
大慌ての面々からイーリスタに感謝の言葉が降る。
【もぉ、ど~でもなんだけど~】
「獣神の王と、新たな長に従えぬ者は此処に並べ!」
誰も動かない。
「従うと誓ったと見なす!
違えたならば即座に滅す!
よいな!」
真四獣神は上下を睨んで消えた。
【茶番バ バンバンバ~ン】降下して兎に。
【【イーさま♡】】ぴょんぴょんぴと♡
【うんうん帰ろ~ね♪】よしよし♪
「イーリスタ、長老。次はマヌルの里。
その次は兎の里だ」
「ガイアルフ様ぁ」も~ヤだぁ~。
「イーラスタ様も再建を終えてマヌルの里でお待ちだ。行くぞ」
「僕、鳳凰に化けちゃって負けちゃったから心を癒したいんですけどぉ~」
「いやいや、勝敗は決しておった。
皆を助けてくれた事、感謝するばかりじゃ」
「長老様……勝手に父を長にだなんて言ってゴメンナサイ!」
「いやいや。前の長老から聞いておるよ。
朱雀様が仰った通りの理由じゃよ。
イーラスタを追い出し、兎の里には受け入れたならば兎神を全滅させると脅したとな。
イーリスタを残させたのも前長老じゃ。
若い者達に虐めさせるが為にのぅ」
「叔母様は?」
「逃げ出したイーリスタを軍神達に処分させようとしたのを知られたからじゃ。
家も何もかもを燃やし、この里に住みたければ妻となって従えと言うたら、出て行ったそうじゃよ。
全て前長老がした事じゃが、儂も補佐として加担しておったからのぅ。
追放された者達に謝らねばならぬ。
兎達にも謝らねばならぬ」
―◦―
マヌルの里ではマヌルヌヌとカウベルル、前夜に集められた里を追放された鳳凰達と、ドラグーナ達が見守る中で鳳凰長の引き継ぎが行われ、イーリスタの父イーラスタが新たな里長となった。
「叔母様~♪ 見て見て♪
僕の お嫁ちゃん達~♪」ぴょんぴょん♪
「あら可愛い♪
イーリスタをよろしくね♪」
「「こちらこそヨロシクお願いします♪」」
「叔母様……僕のせいでゴメンナサイ!」
「何を謝っているのかしら?
護れなくて ごめんなさいね。
ガイアルフ様、フィアラグーナ様。
イーリスタを立派にお育てくださり、ありがとうございます」
「いやぁ、そんな~。なあ?」
「大した事しちゃいませんよ」
そんなこんな楽し気な横では、長老がイーラスタ達に ひたすら謝っていた。
【ん? 水飲み鳥?
ナンかそんな玩具あったよね~♪】
イーラスタは里長は継いだが、長老は長老のまま里長の助言役として残すと決めたのだった。
「儂なんぞに……朱雀様が仰った通り、鳳凰は傲慢な愚神ばかりになっておった。
酷い事ばかりしたのに……それなのに……」
「過去は過去。神とは許す者です。
ですよね? ドラグーナ王様」
「俺は王なんて引き受けていませんのでっ」
「またまた~♪ ドラグーナってば~♪」
笑いが湧き起こり明るく響く。
またひとつ蟠りが消えたという安堵も そこには込められていた。
【エィム、ミュム様♪
ね、大事な用だったでしょ♪】
【うん、確かにね】【父様も楽しそうだよね♪】
【そろそろ戻らないといけない】【そうだね♪】
【ミュムは明るくなったね】【嬉しいからね♪】
【……確かに】【エィムも素直に笑うべきだよ】
【そうかもね】くすっ♪ 【ほら、行こうよ♪】
相棒に戻れた親友で兄弟は小動物神を運ぶ為に下空へと飛んだ。
そこに新たな集団が飛んで来た。
「ほらほら~、ダグさんも、ザブさんも混ざって笑お~よ♪」
「あ♪ マディア~♪」ぴょんぴょん♪
「もしかして、ずっと見てた?♪」
「うん。鳳凰の里でのを流してたんだ♪」
「あ~、神眼強いもんね~♪」
「ついでにダグさんザブさんにも今後の為にね♪」
「ん? ついで?
えっとぉ、まさか父様も見てたの?」
「もっちろん♪
鳳凰の皆様に流すのが僕の役目♪」
「恥っずかし~っ!!」
「恥ずかしくなんぞあるものか。
立派だったぞ、イーリスタ」「父様てばぁ」
「だからこそなのですよ、ドラグーナ王様。
鳳凰達に向けた御言葉。
確と私の胸に刻み込みました。
後れ馳せながら、鳳凰の里も神世の復興に協力させて頂きます」
ドラグーナが恥ずかし気に天を仰ぐ。
「ドラグーナよ。そろそろ観念して前に座してくれぬかのぅ?」
「マヌルヌヌ様……観念してだなんて……」
「独立こそせぬが、獣神を纏めてくれぬか?
ドラグーナにしか出来ぬ事ぞ」
「マヌルヌヌ女王様の方がいいですってぇ」
「ワタシは王を諌める婆やじゃ♪
さて、今日のところは引っ込もうかの。
ドラグーナよ、兎の里も頼んだぞ」
ニンマリ笑って消えた。
「婆や、ね……。
マディアも行くかい?」「はい♪」
里を追われた鳳凰神様は大勢いたんです。
新たな里が十分できるくらいに。
ですから今度こそ良い里になると思います。




