鳳凰神vs兎神
「先に俺だけで長老様と話すよ」
果物の森から かなり離れた場所でドラグーナは そう言って降下した。
「どうして瞬移じゃなくて飛んで?」
「此処までは人神が住む場所を確認しながら飛んで来たんだ。
で、鳳凰の里に飛んでったのは、相手が飛んでナンボだと思ってやがる鳥だからだよ」
響の呟きにフィアラグーナが答えた。
「ついでに鳳凰は、力こそ正義だと信じてやがる。
だからこそ考えを改めさせねぇと神世の未来は真っ暗だ。
昔々、初代の四獣神を選んで人神にケシカケた長老ってぇのは鳳凰だからな。
愚息を王だと言ってくれてるうちはイイが、そうでなくなれば、また悪い歴史を性懲りもなく繰り返すだろーよ」
「オイラ達も その勝負、見てていいのかぁ?
神様と神様の戦いなのによぉ?」
「信頼の置ける仲間だ。
神世の救世主に見せなくてどーするよ?
カケル、ソラ。
お前らがイチバン俊敏だと見た。
里に残ってるような鳳凰ってのは、勝負に負けたら卑怯なコトしかしねぇからな。
孫娘達を護ってくれよな?」
「「はい!」」
ドラグーナが昇って戻った。
「3本勝負に決まったよ。
ミルキィとチェリーは先鋒。一緒にね。
向こうから そう言ったんだから、連携と協力の強さを教えてあげてね」
「「はい♪」」
「オフォクス、イーリスタ様と続くよ。
何でもありの勝負だから気をつけてね」
「ふむ」
「卑怯なのはジューブン知ってる~」
「それじゃあ行こう。
兎になって俺の背に乗ってね」
イーリスタ夫妻は楽しそうに、オフォクスは渋々、兎になって乗った。
―◦―
「では、3本勝負ですので、先鋒、中堅、大将戦として進めます。
先鋒戦、鳳凰神フレアーグ。
兎神ミルキィとチェリー。前に」
審判は鶴神。里は近いが鳳凰とは仲が良くも悪くもないので中立として最適だと、ドラグーナと鳳凰の里長の息子が呼んで来た。
ドラグーナは審判をするつもりだったのだが、兎神達を連れて来たので そうなってしまい、貴賓席に着かされた。
大きな黒光りの鳳凰と愛らしい薄桃色の双子兎が勝負の場としてドーム状の結界で囲まれた闘技場で対峙した。
「双方、構え――始め!」
【『参った』って言わせるか、戦闘不能にすれば勝ち♪】
【術でも何でも使っていいのよね♪】
ぴょこんぴょこんと前に進むと黒鳳凰はバッと飛び、上から炎を放ってきた。
【鳳凰さん、まだ様子見よね?】
【だったらコッチも様子見ね♪】
サッと両端に離れて躱すと手に光の弓矢を成し、タンッと跳ねて同時に放った。
黒鳳凰がギリギリで躱す。
【遅っ!?】【もしかして弱い?】
連射しながら素早く動く。
【【ウソ、当たっちゃった!?】】
グラリと落下しそうになった黒鳳凰の背に瞬移して、首根っこに手刀を打つ感じに竜巻を放つ。
気絶した黒鳳凰が落ちた。
あっけなさ過ぎてミルキィとチェリーはキョトンとしている。
【終わっちゃった?】つんつん。
【これからなのにぃ】つんつん。
「長老様、如何ですか?」
ドラグーナは鳳凰の長老と里長に挟まれている。
「兎の勝ちじゃな。
フレアーグを運び出せ!」
「勝者、兎神ミルキィとチェリー!」
【【物足りなさ過ぎっ!!】】
【そう言わず戻ってね】
【【は~い】】
「中堅戦、鳳凰神ライボルト。
兎神オフォクス。前に」
黒鳳凰より更に大きな黄金鳳凰が入り、しかめっ面の白兎も入った。
「では双方、構え――始め!」
黄金鳳凰も先ずは上を取る。
空かさず雷撃が槍の雨のように降る。
「破砕。加重」ボソッ。
一瞬で雷撃が全て弾けて消え、黄金鳳凰がボテッと落ちて動かなくなった。
「何をしておる!?」思わず長老が叫んだ。
「う……ごけ、ない……潰、れる……」
確かに押し潰されているらしく地面に めり込んでいく。
テンテンテンと近付き、
「追加してよいか?」
低く言った。
「まま、参った!」
「長老様、里長様、よろしいですね?」審判。
「フンッ。参ったと言うたからのぅ」
「勝者、兎神オフォクス!
兎神が2勝しましたが続けますか?」
「次こそ勝て!! よいなっ!!」
「続けるのですね?
では大将戦、鳳凰神スカイウィン。
兎神イーリスタ――」
「イーリスタじゃと!?」
「――長老様、何か?」
「其奴は鳳凰と兎の子ではないかっ!!」
「今は兎ですよ? 翼はありません。
それとも鳳凰兎は強いとお認めになるのですか?」
「純粋な鳳凰が負ける筈がなかろう!!
鳳凰に化けたならばイーリスタの負けじゃ!! よいなっ!!」
「はい。それで構いませんよね?
では、兎神イーリスタ。前に」
「ヨォ♪ 弱虫イーリスタじゃねぇか♪
とうとう鳳凰はヤメたんだな?」
「ヤメてないけど今は兎なんだよ~ん。
僕は負けないからね」
「双方、構えて――始め!」
イーリスタが消えた――のではなく青鳳凰の頭に乗っていた。
「力が正義? 笑わせないで!」
正拳突き一発!
青鳳凰は崩れ落ちた。
「治癒~♪
イタイのイタイの飛んでけ~♪」
「長老様?」
「何をしおった!?
正々堂々と戦えっ!!
認めぬ! 認めぬぞっ!!」
「ですが既に兎神は2勝しております。
大将戦が認められなくても兎神の勝ちですよ?」
「ええい! 不正を働いたのであろう!!
鳳凰は負けぬ! 負けなんぞ認めぬ!!」
長老が乱暴に羽ばたくと、結界が消え、鳳凰達が一斉に飛来した。
兎達を掴もうとする者達が急降下する。
「「破邪一閃!!」」「防壁!!」
兎達の上に現れたユーレイ達が鳳凰達を阻止した。
「マジ卑怯な奴らだなっ!!」
「正々堂々と勝負してください!!」
「邪な心を滅してあげるわ!!」
鳳凰達は気圧されて後退る。
下では兎達が身構えて鳳凰達を睨んでいた。
ドラグーナが ふわりとユーレイと鳳凰の間に浮かんだ。
「双方そこまでだよ。
互いに獣じゃなくて獣神なんだよ?
神なんだから小さくても強くなれる。
強くて当たり前なんだ。
神力は ただの力じゃない。
特別な力なんだよ。
神としての共通の正義の下でのみ使うべき力なんだ。
大きいとか小さいとか、飛べるとか飛べないとか関係ないんだ。
神は皆、等しく強くなれるんだよ。
神とは強き者。
だからこそ互いを認め、許し合わなければ神世は忽ち崩壊する。
今、崩壊寸前から立ち直ろうとしているんだけど、ご存知かな?
この里は人神の地から最も離れているから知らなくても仕方ないけど、協力は呼び掛けた筈だよ?
互いを認めるのは獣神同士だけの話じゃないんだ。
人神とも手を携えていかないと、これからの神世は成り立たないんだよ。
どうかお願いします。
神世の立て直しに御協力ください」
ドラグーナが鳳凰達に頭を下げた その時、真四獣神が現れてドラグーナを囲んだ。
朱雀が長老を見据える。
「情けない。今の鳳凰は傲慢の塊なのか。
我が名は朱雀フェンラーグ!
愚か者が長を名乗るなんぞ許さぬ!
誅する為に古より甦った!
愚か者の里なんぞ滅してくれよう!
覚悟せよ!!」
鳳凰達は逃げようと羽ばたいているが宙に縛りつけられているかのように全く動けなかった。
巨大な魔法円が現れて降り、里を覆った。
詠唱が低く轟く。
魔法円から蔓のような光が上へと伸び、鳳凰達に絡んだ。
【響、なんか変じゃない?】
【ゆっくり、、過ぎ?】
【そうか。そうだね。待ってるとか?】
【何を?】キョロキョロ――【あっ】
フィアラグーナの背からサイオンジが下を指していた。
響とソラが下を見ると、長老はボロボロ大粒の涙を流しており、イーリスタは考え事をしているのか躊躇っているのか、ただ上を見ていた。
【これって……わざと?】
【そうみたいね~】「イーリスタ様!!」
イーリスタがビクンと響を見た。
「今、鳳凰の里を救える鳳凰はイーリスタ様しかいません!!」
「術を止めてください!!」
【僕にソレ言う~?】
「「イーリスタ様っ!!」」
【朱雀様が待ってるうちに!】【早く!】
【仕方ないなぁ。
あ、ドラグーナまで笑ってるぅ】
【【お早くなさってください】】
【オフォクスまでぇ。
僕、鳳凰に化けたら負けなんだよ?】
【【言ってる場合ですかっ】】
【ソラも響ちゃんもヒドいなぁ、もぉ】
朱雀に負けない真っ赤な鳳凰が飛び立った。
「お待ちください!」
傲慢の塊な鳳凰神に天誅。
朱雀様達も待機していたくらい卑怯な事をするのは確定だと思われている鳳凰神。
これまで魔化しなかったのが不思議なくらいです。




