償う為に
「ねぇマディア、さっきの態度は何?」
「さっきって……?」
「ザブダクルは反省してたわ。
どうして拒絶したの?」
「封珠の中からは何も見えてなくて聞こえてなかったんだよね?」
「そうだけど……」
「僕がペットにされて、言いなりにされてたなんて知らないんでしょ?」
「ペット?」
「首輪されて、首輪から心話も考えも筒抜けで誰とも話せなくて、闇に染まれなんて言われてたなんて知らないよね?」
「それは知らないけど……でも反省してたでしょう?
父様の教えを忘れたの?」
「忘れてないけど……怒りが収まったら考えるよ。今は無理。ごめんね」
「マディア……変わってしまった?
本当に闇に染まってしまったの?
怒りだなんて……」
「エーデが封じられた時。
エーデを滅するか、僕の記憶を消すか選べって言われた時。
僕は2度も絶望を味わったんだ。
そう簡単には許せないよ」
「私が封じられたのは脱出の為だわ。
でも2つ目のは? 何があったの?」
「グレイさんもユーチャ姉様を封じられて僕と同じにされてたから、励ましたくて文通してて……バレたんだ」
「それでふたりとも記憶を消されて魂だけ抜かれて封珠に?」
「うん」
「それって……嫉妬なんじゃないの?
ザブダクルはマディアを信じてて、唯一の友くらいに思ってたんじゃないの?」
「友に首輪する?
エーデを滅するって脅して従わせて、どこが友?
僕のせいで人世では大勢 亡くなったんだ。
神世もボロボロになった。
僕……従わずにアイツに滅されてしまえばよかったんだね……」
「もうっ、そんな事なんて言ってないわ!
マディアが深く傷ついたのは分かったわ。
でもね、相手にも同じ傷を負わせるのは違うと思うの。
ちゃんとマディアに戻って。
私の大好きなマディアに戻って」
「エーデ……」
「一緒に償いましょう? ねぇマディア」
「エーデは何も悪い事なんて――」
「マディアがザブダクルを許せないのなら、私は封珠に引き込まれてしまった私を許せないわ」
「エーデは被害者だからっ」
「こんなにもマディアが変わってしまうくらい傷つけた原因になってしまったなんて許せると思う?
逆の立場ならマディアは自分を許せる?」
「それは……」
「許せないでしょう?
今すぐ己を滅したいくらい許せないわ」
「ダメッ!!」
「ええ。償わないといけないわよね。
その後にします。
マディア、もうザブダクルと友になんて言いません。
償いも私ひとりでします。
絆は断てないけれど、辿らないで。
さような――」「だからダメッ!!」
消えようとしたエーデリリィを抱き締めた。
「ごめんなさい、エーデ。
僕……みんなに元に戻してもらったのに立ち直れてなかった。
一緒にメチャクチャにしたんだから一緒に償わないとね。
ザブダクルと話してみるよ。
友達になれたら……なるから。
だから僕を見捨てないで。お願い。
ちゃんと立ち直るから。
これからを考えるから。
僕らしく、ちゃんと」
「マディア……お帰りなさい。大好き!♡」
「僕もエーデ大好き!♪」
―◦―
カケルが帰った後ザブダクルは、味方だと言ってくれた事や、励ましてくれた事に感謝や感動が湧き起こり、涙ぐんでいた。
神の皆にも許してもらえるよう
行動で示し続けなければならないな。
私はマディアを大切に思っていた。
裏切られるのを恐れていた。
それを伝えられていなかったのだな。
……当然か。
私自身その想いを認めていなかった。
伝えられよう筈も無い。
これからは伝えていこう。
しかし……酷い事をした私の行動を
マディアは見てくれるのだろうか?
私は……あれほど憎んだオーロザウラと
同じ事をしてしまったとは……。
オーロザウラがルサンティーナにした事、
私がマディアにした事……。
私はオーロザウラを許せない。
ならばマディアは私を許してはくれない。
……当然だな。
後悔の涙が溢れてしまった。
―◦―
「でも……ちょっとだけザブダクルにチクチク言っていい?」
「え?」
「二度と首輪なんて嫌だから。
ちょっとだけ。ね?」
「気が済んだら友達になってあげてね?」
「うん。それは、ちゃんと」
「それなら少しだけよ?」
「うん♪」
「いたずらっ子な目になってるわよ?♪」
「僕らしい?」
「それもマディアね♪
赤ちゃんな間に よく見たわ♪」
「え……?」
「覚えてないの?
この3日間、マディアもグレイも可愛い赤ちゃんだったのよ?」
「えええっ!?」
「全力で甘えてくれて、我が儘も言ってくれて、とっても可愛かったわ♪」
「ああああ~もぉっ!
チクチクマシマシ!」
「程々にしてあげてね?
それじゃあ私は死司域の様子を見てくるわね」
「え?」
「エーデラークは最高司にされてしまったのよ」
「えええっ!?
神世ボロボロにしたのに!?」
「サティアタクス様が、神世を破壊した禍龍はエーデラークではなくて、ナターダグラルが術で成した禍そのものだったと発表なさったの。
全てをエーデラークに擦り付けようと企てた事だってね。
エーデラークとグレイは封じられていて何も悪い事なんてしてなかったって。
そしたら死司神の皆様が次の最高司はエーデラークしかいないって……」
「龍なのに?」
「そうなの。
ルロザムール様が先導したみたいで担ぎ上げられてしまっていたの」
「そ……ぅ……」あははは……。
「だからマディアの好きな執務も続けられるわ。
あまりチクチク言わないであげてね?」
「う~ん……ま、イタズラ程度かなっ♪」
エーデリリィはクスッと笑って瞬移した。
―◦―
ソラは鳳凰親子の所に戻り、響もラピスリとルサンティーナの所に戻った。
〈ルサンティーナ様、さっきは驚いただけですよね?
本心からの拒絶じゃないですよね?〉
〈……顔向けできないのは変わっておりませんので……〉
〈そう思うのは好きだからこそですよね?〉
〈それは……〉
〈あんなに酷いことされても耐えていたのに支配や呪を込められてしまったのは、ザブダクル様への強い想いを知られてしまったからなんですよね?
オーロザウラを愛していないってバレたんですよね?
そんなにも愛しているのに拒絶なんてルサンティーナ様は辛くないんですか?
想いのままに飛び込んでいいと思います。
飛び込んでください〉
〈支配を込められてしまった理由は その通りですが……それでも……〉
〈マディア様とティングレイス様が元に戻った時、謝ってるザブダクル様の肩に手を添えましたよね?
私には、その時のルサンティーナ様が幸せそうに見えました。
だからマディア様もティングレイス様も あの場では拒絶できずに優しくしたんだと思うんです。
ルサンティーナ様が拒絶したのを見て、マディア様もティングレイス様もザブダクル様を拒絶したと聞きました。
王様としては未来を考えるそうですけど〉
〈そうですか。
私は……たとえオーロザウラが改心して謝ろうとも、許せるとは思えません。
ですのでマディア様とティングレイス様がザブダクルを許せないのは当然の事としか思えないのです。
おふたりの為にも、ザブダクルは幸せになってはならないのです。
私も同じです〉
〈同じだなんて、それはナイと思います〉
〈私が父に話さなければ……サミルに行くように言わなければ……ザブダクルは、ここまでの事をしなかったと思うのです〉
〈神様でも未来を正確に見るのは難しいって聞きました。
運悪く、こうなったんだと思います。
それと、マディア様もティングレイス様も今は幸せに戻ってると思います。
だからザブダクル様もルサンティーナ様も幸せになっていいんです。
結局、誰も滅されてないんですから。
建物だって神様がヒョイヒョイ戻すじゃないですか〉
〈ですが……〉
〈ヒョイヒョイではないのだが?〉苦笑。
〈ラピスリ様も説得してください♪
ね♪ 優しい瑠璃先生♪〉
地星の神様は負の感情を懐いてはならないのでエーデリリィは怒りも負の感情だからとマディアを説得していたんです。
神様は善であるべき、というのも上乗せで。
マディアは償う為に許そうと考え、ルサンティーナ様は償う為には幸せになってはならないと考えています。
ユーレイ探偵団はそういうのもコミコミで復興しようと考えています。




