元に戻って元通り?
マディアとティングレイスを元に戻すアミュラの術が中盤に差し掛かった頃――
〈呼んでくれなかったぁ~〉
各々が背に兎を乗せた鳳凰父子が高い天井近くに現れ、子鳳凰がクルクルクル。
父鳳凰の背にはソラも乗っている。
〈其処から神力を注ぎな。
それがイチバン効果的さね〉
〈は~い♪〉
〈ここまでは順調だが、何か起こったら頼んだよ〉
〈まっかせて~♪〉
ティングレイスとマディアは すくすくと育っており、狭くなった籠ベッドは既に消していて、床に座って瞑想でもしているかのように目を閉じていた。
ザブダクルは術の為に何度も大きく神力を吸い取られており、立っているのがやっとの状態だった。
〈あの男神は もう無理なのでは?〉
〈みたいだね~。だから頑張ろ~♪〉
〈そうだな〉
〈父様と母様の馴初め聞きた~い♪〉
〈こんな時に話す事ではないぞ?〉
〈じゃあ後でねっ♪ 僕も話すねっ♪〉
〈ここからは一気に加速するよ!
全神力で注いどくれ!〉
〈はい!〉一斉!
〈ビックリした~♪ 僕も全神力~♪〉
獣神達の気が清々しく立ち昇る。
そしてとうとうザブダクルが倒れた。
〈あらら~〉
少年から一気に青年になったティングレイスとマディアから淡く黒い靄が浮いて昇った。
が、まだ繋がっている。
〈これが魂を蝕み続けてたんだねぇ。
ザブダクル! 寝てる場合じゃないよ!
サッサと消しな!〉
よろよろフラフラのザブダクルは立とうとしたが、崩れるように倒れた。
〈消せるなら寝たままでもいいさね〉
返事も儘ならないようだが、どうにかこうにか座って弱々しく両手を挙げた。
が、消す前に更に靄が浮く。
〈また出るとはねぇ。何度重ねたんだい?
もう無いだろうね?〉
〈支配も……〉
〈安心しな。それはモグが消したよ〉
〈そう……で、すか……〉
〈情けないねぇ。ほら立ちな〉光で包んだ。
〈回復……? こんなにも強いとは……〉
〈アタシを誰だと思ってんだい?
アンタだって修行次第だよ。
ほらサッサと消しな。
それで終わりだからね〉
〈はい〉
どうにか立ち上がり、しっかりと両手を掲げたザブダクルは禍ではなく光を放ち、靄を跡形もなく消し去った。
それを機にティングレイスとマディアの神力が爆音を轟かせそうな程に上がった。
〈見た目は然程も変わらないが、王の方は王妃から聞いた歳相応になったみたいだね。
だが……龍っ子は……〉
〈あ♪ マディアは僕の仲間だから~♪
成長遅いの~♪ コドモのままなの~♪〉
アミュラが上を向く。
〈なるほどねぇ。
羽を毟られた鳳凰と鱗を毟られた龍ねぇ。
そのままでいいのかい?〉
〈僕はいいよ~♪
お嫁ちゃん達もチビッ子だからね♪〉
〈僕もこのままでお願いします。
これで元通りですので♪〉〈マディア!?〉
〈うん♪ エーデ、心配かけてゴメン!〉
〈ユーチャ、僕もゴメンね!〉〈グレイ♪〉
詠唱が終わった。
〈もういいよ〉
「マディア!」「エーデ♪」
「グレイ!」「ユーチャ♪」
飛び込んだ妻を抱きとめた。
「「心配かけてゴメンね」」
「良かった……ちゃんとマディアだわ……」
「ちゃんと記憶も尾から戻したからね。
ありがとうエーデ。
これからは僕が護るからね」
「僕の記憶……これって……?」
「最強の美女神様が再構築してくださったの」
「再構築? って考えるよりお礼言わなきゃ!
どの女神様なの?」
「再構築はルサンティーナ様。
元に戻してくださったのはアミュラ様よ」
視線を向けつつ話した。
「「ありがとうございます!
ルサンティーナ様! アミュラ様!」」
「アタシだけじゃない、皆で戻したんだよ」
「私は償っただけ……」
「「皆様! ありがとうございました!」」
ペコリペコリしながら回る。
「「あっ!!」」
突然その動きを止めると、妻を庇って戦闘モードで睨み据えた。
「「もう恐いものなんか無いっ!!」」
「マディア、グレイ。もう終わったのよ」
「改心して償いの最中なのですよ」
決死の形相でザブダクルが駆け寄って跪き、祈りの姿勢で見上げた。
「お許し頂けるとは思っておりません。
償いを果たすまで生きさせてください。
どうかお願い致します」
「償い、ね……」
「では神王としてお話しさせて頂きます。
貴方の償いは永遠に終わりません。
どうか生きて償い続けてください。
僕達は貴方の命を奪ったりしませんので」
「ま、そうなるよね~。
僕達はもう自由なんだし好きにしてよ」
「あ……ありがとうございます!」
ルサンティーナが夫に寄り、肩に手を添えた。
「私も共に償わせて頂きます。
ありがとうございました」
「「あ、そうか!」」顔を見合わす。
「覚えのあるお名前だと思ってたんだよ~」
「うん。マディアが教えてくれたよね♪」
「まだ記憶が定着してないのかなぁ」あはっ。
「生きてたんだね♪」「見つかったんだね♪」
「「良かったね~♪」」うんうん♪
「「お幸せに~♪」」
「なんて……お優しい……」
「それは……」「ねぇ……」照れ照れ~。
「「トーゼンでしょ♪」」
「「ありがとうございます!」」
と、ザブダクルと一緒に礼を言ったルサンティーナだったが、その後はザブダクルを見もせずに離れてしまった。
ザブダクルはルサンティーナを追う事も声を掛ける事も出来ずに、皆が楽し気に騒いでいるのを離れて見詰めていた。
そんなザブダクルにルサンティーナは集まりの反対側から神眼だけを斜に向けていた。
〈ルサンティーナ様?
すっごく待ってますよ?
飛び込んでいいと思いますよ?〉
〈響ったら、女神様に失礼だよ〉
寄って行った響の腕をソラが引いた。
〈ソラ、いつの間に来てたの?〉
〈鳳凰様と一緒に。同じ班だから。
そんなことより、お節介やめなよ〉
〈お節介じゃなくてアフターケアよ♪
もう敵でも悪神でもないんだから、幸せ掴んでもらわなきゃ依頼受けて遥々来た甲斐がないわ〉
〈でもね――あっ、ルサンティーナ様っ〉
〈お待ちください!〉
各々がルサンティーナの腕を掴んだ。
〈復興の途中でしたので……〉
〈私も同じ班です。
ラピスリ様もいらっしゃいます〉
〈ですが……〉
〈飛び込みたいんですよね?
大好きなんですよね?〉
〈ですからこそ……なのです。
私はザブダクルに顔向けできないのです〉
〈あんな姿を見られてしまったからですか?
それなら少しは納得ですけど。
私もソラに見られたら死ぬしかないと思ってしまいます〉〈響!?〉
〈それも……ありますね……〉
〈ソラ、女同士で話したいから離れて?
私も ちゃんと恋愛が解るようになったから心配しないでね?〉
〈……うん〉
手を繋ぐ。
(お兄と一緒にお狐様の神力使って聞いてて)
(うん。解った)消えた。
今度はルサンティーナの手を取って隅へ。
〈それも、ってことは他にも何か?
無関係なユーレイになら話しても大丈夫じゃありませんか?
神様は負の感情を持っちゃいけないんですよね?
抱えず、話していただけませんか?〉
〈誰にも伝わらないよう、手を繋いでも?〉
〈もっちろん♪〉
〈私は……何があろうとも耐えて待つとザブダクルに約束したのです。
ですが……耐えていたのですが……〉
〈酷い事されたんですね?〉
そっと包み込むように抱いた。
〈記憶を……言葉では辛過ぎて……〉
〈どうぞ〉
〈気分が悪くなると思いますが……〉
〈身体は人世に置いて来ましたので大丈夫です♪〉
〈ありがとう……〉
うわ~、ヘンタイ!?
オーロザウラって、どヘンタイだわ!!
〈おそらく……私が本当に従う気なのかを試していたのでは……と。
神には不要の行為を強要したのです。
望む反応をし、望む言葉を叫ばなければ、いつまでも終わらせてくれなかったのです。
人の夫婦が愛を確かめる為の行為だと――〉
〈しないしない!!
フツーの夫婦はしませんからっ!
この行為に愛なんてありませんからっ!〉
〈そうなのですか?〉
〈恥ずかしいけど~、私とソラは……〉
【ちょっと響!?】【見ないで!!】
【だって!】【お兄 殴ってもいいからっ!】
静かになったので、ほんの少しだけ流した。
〈これがフツーの夫婦です。
さっきのは、ただの虐待です。
ですから負い目とかナシでいいんです。
神様はフツーしないんですよね?〉
【もういいよ】【ん……】【後でね】【うん】
〈人がしている行為でしたら、近いことはします。心が自然に……〉
〈好きだから、くっつきたいですよね♪〉
〈ええ……〉
恥じらう姿もキレイ!
ってボーッと見てる場合じゃなかった!
〈ルサンティーナ様、飛び込んであげてください。
幸せ、掴み直してください〉
〈ですが私は……多くを不幸にしてしまいましたので……〉
〈それはザブダクル様も同じです。
一緒に償ってください。
手を繋いで一緒に〉
〈一緒に……〉
〈そうですよ。ザブダクル様と一緒に神世を元より良くしてくださいね♪〉
〈元より良く……〉〈ルサンティーナ……〉
「「えっ!?」ああっ!!」
驚いたルサンティーナは響からスルリと抜けて消えた。
「ルサンティーナ……」
「もうっ、説得してたのにぃ。
もう少しで雪解けだったんですよ!?」
〈ルサンティーナ?〉〈来ないで!!〉
「ったく~。
あ、向こうも解散みたいですよ?
行かなくていいんですか?」
「あ……」
「マディア様とティングレイス様とも仲直りしてくださいね。
ルサンティーナ様は私が追いますから。
たぶんビックリしただけですから」
響が消え、カケルが現れた。
「帰っちゃいますよ?
いいんですか?」
ザブダクルは ふらりとマディアに向かって飛んで行った。
姿は元通り。記憶もまずまず元通り。
でも、なかなか元通りとはいかないものです。
マディアとティングレイスは『お幸せに~♪』とは言っていましたが、本心はどうなんでしょうね?
ルサンティーナ様も妻らしくしてみたり逃げてしまったりで、どうなることやらです。




