災厄の後始末その1完了
視界が戻ったとたん、カケルとソラは思わず飛び退った。
そしてジッと手を見る。
それ程までにルサンティーナは美しかった。
囲んでいる獣神達から浄化・治癒・回復の光が降り注ぐ。
煌めきも取り戻したルサンティーナの髪が流れるように動き、やっと上げた顔を見て、皆、溜め息を漏らした。
ふらりとザブダクルが下り立ち、アミュラに向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。
ルサンティーナをお願い致します」
「んん?」もう老婆に戻っている。
「私は父を滅しました。
如何なる処分でも――」
「な~に言ってるかねぇ。
オーロザウラの残滓は封じられてた神達がトドメを刺したじゃないか。
あれでオーロザウラは死んだんだよ。
さっきのはオーロザウラの記憶を持ったただの支配核だよ。
それにしちゃあ大きかったけどね。
オーロザウラじゃないモンを滅して何が悪いのかねぇ?
それよりもアンタには、これから た~んと働いてもらわなきゃならないんだ。
処分ってなら、身を粉にして働くソレだろうねぇ」
「アミュラ様っ」
シャルダクルを抱いたルサンティーナが飛んで寄り、ザブダクルと同じように頭を下げる。
「私もザブダクルと同じく、今の神世で生き、力の限り尽くさせていただきます。
ありがとうございました」
「ルサンティーナ。
アンタはザブダクルを夫と認めるかい?」
「はいっ」顔を上げた。
「私の夫はザブダクルですっ」キラキラッ☆
「ザブダクル。
アンタはルサンティーナを――」
「愛しています!
ルサンティーナは私の妻です!
誰にも渡しません!!」
「あ~、分かった分かった。
続きは頼んだよイーリスタ」
「「は?」」「僕でいいのっ?♪」
「結ぶの、好きなんだろ?」「うんっ♪」
「アタシは休ませてもらうよ。
婆ァは体力なんてないからねぇ」
腰をトントンしながら離れた。
「ああそうだ。
シャルダクルから命の欠片を抜いたからねぇ。
支配核の芯にされてたんだよ。
その分はザブダクルから取って込めとくれ。
早くしないと弱っちまうよ」
そして見学者の方へ。
「王子達よく聞きな。
さっき滅されたオーロザウラは生まれついての悪神じゃなかったんだよ。
ただの怠け者だった。
勉強も修行も大嫌いで、楽する事ばかり考えてたんだ。
その上、自分は将来 王になれると信じて疑わない愚か者だった。
オーロザウラには兄が居た。
だから何が何でも兄を越さなきゃ王にはなれない。
けどオーロザウラは努力しなかった。
強い神から欠片か神力を貰おうと考えたんだ。
どこまでも愚かだよ。
そんなもん易々とくれる神は居ない。
王子の命令だと強要したオーロザウラは呪われちまったんだ。
懲りずに続けたから幾つも呪を受けたんだ。
その複数の呪は絡み合っちまったんだよ。
それからだよ。
君臨する事に固執し、他者を蹴落としてでも神世を手に入れようとし始めたんだ。
父と兄を滅して玉座に着いたんだよ。
呪の相乗効果で、そればかりを考えるようになったオーロザウラの初恋の相手がルサンティーナだったんだ。
隣国の王、つまりルサンティーナの父親よりも歳上。
そんな歳になって初めて恋をしたんだ。
その結果が、さっきのだ。
憐れな末路だよ。
愛し方すらも知らなかったんだろうねぇ。
けどね、許されない事をしたのは確かだ。
その影響は、遥か後――今の神世にも降っちまった。
王子達。これからがアンタらの正念場だ。
王を支えられる者になりな。
神世を立て直しておくれよ?」
騒めく王子達の中から、ぽつりぽつりと立ち上がり、また、手を挙げる者が現れ、意を決した者同士が微笑み合い、
「はいっ!」
元気に返事をした。
「よーし、いい目だ♪
手を挙げてる子も立ちな。
龍達の所に行って、お願いしますと言うんだよ?」
「はいっ♪」嬉しそうに飛んで行く。
「さて、愚か者は後々の憂いだと話しても解ってないアンタ達は、精製してティングレイスの神力に戻ってもらうよ」
水晶玉を掲げる。
「苦しみゃしないから、じっとしてな!」
散り散りになった。
「よろしくお願いしますっ!!」
アミュラの後ろで必死な声が合わさって聞こえた。
「さて、政を担うアンタ達。
さっきはマディアの事だけを言ったが、ティングレイスも神世を護ってたんだ。
同じように記憶を消されて、封じられていても王として皆を護ろうとしてたんだよ。
怒りで我を失ったザブダクルに邪魔だと感じられれば滅されちまう。
そこそこ神力を戻していたアンタらは邪魔でしかないよねぇ。
そう気づかせないように盾になってくれてたんだよ。
『何もするな』『知らぬ振りをせよ』は、そういう事なんだよ。
向こうの都――副都かい?
其処に前王や王子達が居るのも感づかれないようにしてたんだ。
自分が消えちまったら、後を任せられるのは彼らだからねぇ。
ホント……マディアもティングレイスも屈しない、芯の強い子達だよ。
アンタら、これからシッカリ王を支えな。
恩返しも出来なきゃ神じゃないよねぇ?」
「は、はい」バラバラバラ――
「シャンとし――泣いてるのかい?
その気持ち、忘れるんじゃないよ」
優しく言って振り返り、煌めく絆を確かめて目を細めた。
「本質は どうにもこうにも父子同じだけど、少しはマシかねぇ。
ま、これからはルサンティーナが諌めてくれるだろうよ。
アンタ達も疲れたろ。
もう休んでいいよ」
団体を回復光で包み、笑顔で瞬移した。
もういいと言われても大臣達は席を立たず、見続けていた。
子を抱いた美女神がふわりと飛んで来、追うように2白龍が飛んで来て、白龍達は光球からマディアとティングレイスを出して抱き、人姿になった。
「王妃様!?」
複数の声に女神達が笑顔を向けた。
そこに何故か慌てた様子のザブダクルが飛んで来た。
とたんにマディアとティングレイスが火が着いたかのように激しく泣いた。
「なんでもありませんよ。
ユーチャリス様は この国の王妃様なのですから呼ばれて当然でしょう?
あなたは向こうでお待ちくださいね。
省みれば、おふたりの反応は当然至極。
そうでしょう?」
「ぅ……」
ショックも露なザブダクルは泣きそうな顔で戻って行った。
離れたとたん、泣き声はピタッと止む。
「エーデぇ」「ユーチャぁ」ぴとっ。×2
「なぁに?」「はいはい♪」よしよし×2
そしてユーチャリス王妃は大臣達に微笑みを向けた。
「この状態は数日間だけです。
地下の皆様を救出し終える頃には元の――サティアタクス王様の補佐をしていたティングレイスに戻ります。
その間、よろしくお願いいたします」
―◦―
マディアとティングレイスに大泣きされ、ルサンティーナに追い返されたザブダクルが戻ると――
「逃げたわね?」「いっ!?」
――響に捕まった。
「ダグラナタンもよ。
休憩なんかしてられないんだから。
地下の皆様を助け出す為にも、大至急、神力射を片付けなさいよねっ!」
「「はい……」」
「お兄はコッチで蓋上げ お願い。
力丸とモグも手伝ってね」
「「おう」」「は~い♪」
「ドラグーナ様、サイオンジ達は無事でしょうか?」
「大丈夫だよ。もう回復したろうね」
「ああ。ユーレイのオッチャン達だろ?
元気になってたぞ♪」
「可愛いっ♪」子猫♡
「なっ、何しやがる! 俺は神だぞっ!」
ジタバタびょ~んと逃げる。
「マリュ~ス~♪」尾羽をススッ、ススッ♪
バッ――「また釣られちまったじゃねーか!」
「釣れた~♪」あははは♪
「マリュース、様?」モグを見る。
「ん?」視線に気づいた。「なぁに~?」
「おっ……トーヤか?」
「うんっ♪」てってって♪「マリュ?」
「そっか♪
引き千切られたが生きてたんだなっ♪」
「うんっ♪ マリュも生きてた~♪」
「俺は神だからなっ♪」
「ちっちゃい神様~♪」「うっせーっ!」
互いの無事を喜び、泣き笑い。
「それじゃあマヌルの里からユーレイさん達を連れて来たらいいのかな?」
にこにこドラグーナ。
「はい。お兄と一緒に蓋上げしてもらいたいんです。
私とソラは人世から応援を連れて来ます。
それと降臨神様も」
もう『堕神』だなんて呼ばせないとニッコリ。
「そう。ありがとう。
誰か人世との往復を頼めるかな?」
「儂が行こう。社も気になるのでな」
「キツネ様が!?」
「何を驚いておる?」
「サイオンジと一緒に行動なさるのかと~」
「里で話したのでな。また後でよい。
ラピスリ、ドラグーナを頼む。
此奴は直ぐに無理をするからな」
「はい、父様」「ええっ!?」
「ラピスリは俺とオフォクスの娘なんだよ」
「父と父と娘……神様って……」
「ん?」「何だ?」娘はクスクス笑っている。
「とっ、とにかく急がないと!
ソラ! ショウ! 一緒に!」
龍達の話を楽しそうに聞いていたソラとショウが向き、龍達に礼をして飛んで来た。
「人世からユーレイと降臨神様を連れて来るの。手伝ってね?」
「は~い♪」「うん。その神様も?」
「神力射を始末してもらって、人世でも謝ってもらわないとね。
それと私の結界も解かないといけないから手伝ってね♪」
「解くの?
死神封じを浄破邪に変えたよね。
次は禍封じに変えたら?」
「ソレいいわねっ♪ そうしましょ♪」
「ならば此れだ」宙に光で模様を浮かべた。
「ありがとうございます♪」
サササッと描く。
「覚えました♪」
「ふむ。流石だな」背を向ける。「乗れ」
後始末その1が終わりましたので、次は都やら街やらを元通りにしなければなりません。
後始末その2は復興です。
その応援部隊を連れて来るには神力射が邪魔なので~と、順繰り順繰り動きます。




