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巨大な支配核



 宰相や大臣達と話していたアミュラは振り返り、浮かんでいる光球の中で抱き合って眠っているマディアとティングレイスに目を細め、その向こうのルサンティーナを見た。

「そろそろ激痛からは解放されたかねぇ。

 おや?」


ワラッと獣神の団体が現れた。

「何かお手伝い――」「父様っ♪」大勢。


色とりどりの龍達がドラグーナの後ろに飛んで寄った。


「後で ゆっくり話そうね。

 皆も囲んで神力を注いでね」


「はい♪」一斉♪



「じゃあ僕達も囲もうねっ♪」

鳳凰を先頭に狐と猫達も囲みに行った。



―◦―



 3連の長い術が終わり、ルサンティーナを包む穏やかな光が収束すると――


「ふにゃあ、ほぎゃあ! あぁあっ!」

元気な泣き声が響いた。


――が、声を上げているシャルダクルの肌は深緑に茶色を混ぜたような色で、その姿は かろうじて人の形をした ぶよぶよの塊だった。


シャルダクルを抱いているルサンティーナは人姿ではあったが肌は赤紫で、骨格に皮膚が張り付いているだけのように細く、節々が歪にゴツゴツとしていた。


「ルサンティーナ、顔を上げても大丈夫だよ。人神達にゃあ見えやしないからね。

 周りで壁になってくれてるのは獣神だ。

 何色だろうが気にしちゃいないよ」


「ですが……」

俯いて髪で隠したままの顔を小さく横に振っている。


「ま、分からなくもないがね。

 さぁて、それじゃあ最後の仕上げだね。

 ルサンティーナとシャルダクルに込められているオーロザウラの欠片を消したら元通りになるよ。

 そのオーロザウラの欠片には嫉妬から生じた憎しみの禍なのかねぇ、ロクでもないモンが込められてるんだよ。


 これはアタシが唱えるよ。

 水晶に入ってる神達も手伝ってくれる。


 ザブダクル。

 アンタは欠片が浮いたら滅しな。

 禍も一緒にね」


アミュラはザブダクルをひと睨みすると半龍半狐の姿になった。


「何度見ても綺麗よね~♪」


「ありがとよ響ちゃん♪

 ラピスリも頼むよ」術を投じた。


「ぅ……はい」

兄弟姉妹の注目を浴びて困り顔のラピスリが今は仕方ないと半龍半狐姿になった。


姉、妹達と狐の女神達が綺麗だと歓声を上げる。

他の獣女神達も毛並みの美しさに羨望の眼差しを煌めかせている。


アミュラが『若さ』を纏った。

「では、始めます」



―◦―



 美しい女神達の二重唱が見目に負けぬ美しさで響く。


 ユーレイ達は聞き惚れていたいなどと思う余裕も無く、小刻みに震え、揺らめくルサンティーナを全力で支え続けていた。



 先にシャルダクルの胸から黒々とした塊(=支配核)が出てルサンティーナの頭上に浮かんだ。


ザブダクルが黒塊を滅する為に手を挙げ――

〈ザブダクル、まだだよっ〉

――ビクンと止まった。


 継承ピュアリラとしてではないアミュラの声が皆にも聞こえ、言われて よく見れば黒塊からは細い紐にも見えるものが尾を引くようにシャルダクルの胸に繋がっていた。


 ズズッ、ズズッと『紐』が巻き取られるように引き上がる。

それに絡まる禍がボコボコと引きずり出されていった。


禍が出る毎にシャルダクルの姿は少しずつ愛らしい赤子へと変わっていった。



 そしてようやく出る禍が途切れ、『紐』がスッと抜けきった。


〈今だよっ〉


ザブダクルは挙げた掌から禍を放ち、黒塊と、それに繋がり絡まる禍を滅した。


〈よくやったね。次はルサンティーナだよ〉



 上を向いていた視線がルサンティーナに集まる。

ルサンティーナは苦し気にシャルダクルに覆い被さるように前屈みになっており、ユーレイ達の支えがなければ立てていられないだろう事は明らかだった。


その背から黒塊の先端が生える。

すぐに抜けるかとザブダクルとユーレイ達が身構えたが、氷山のように下は どんどん大きくなっていった。



 ルサンティーナから堪えきれない呻き声が漏れた。


〈あと少しだ、ルサンティーナ。

 私が苦しみを終わらせてやる!〉


〈あ、なた……〉


〈ルサンティーナっ〉


「あああっ!」

径が最大の部分が抜けきると、残りはズルッと一気に抜けた。



 浮かんだのは大きな黒塊だった。

ルサンティーナの胴体と同じくらいの大きさの支配核が込められていたのだった。


その全体的なシルエットは菱形。

円錐が上下に合わさったような形だが、小さな突起が多く在り、易々と抜けないように食い込ませていたと見て取れた。


その黒塊からも、シャルダクルの時と同じように『紐』が繋がっていた。

皆、続けて禍が出るぞと、背に沈んでいる部分を見ていたが――


〈うなじと左肩!〉


――響の声で皆の視線が動く。

別の黒塊の先端が見えていた。



 新たな黒塊は握り拳2つ分程。

最初の黒塊よりは すんなりと抜け出た。


その2つが抜けるまでの間にも、大黒塊から繋がる『紐』に絡む禍は次々と引き出されていた。


「あっ!」

思わず誰かが声を上げた。


浮かんでいた禍と小黒塊が大黒塊に吸い込まれたのだった。


『ルサンティーナ……』


男の低い声が聞こえた。

何かに反響しているらしく、耳障りな余韻が木霊(こだま)のように残る。


皆の視線が大黒塊に集まる。


「ぁうっ……ああっ!」


ルサンティーナから大黒塊へと小黒塊や禍が次々と飛び込んでいった。


小黒塊からも『紐』が出ているので、吸収した大黒塊は不気味なクラゲのようになっていった。


『何故だルサンティーナ……何故お前はザブダクルなんぞを想い涙するのだ……』


〈嫌っ! 助けてザブダクル様!

 来ないでっ! 触らないでっ!〉


〈ルサンティーナ!!〉


『ザブダクルなんぞ滅してやる……儂は……欲しいものは全て手に入れるのだ!』


〈私の心だけは手に入れられない!

 私はザブダクル様の妻なのです!

 王妃とされても貴方の妻ではありません!〉


『儂に逆らうと言うのか……ならば!』

大黒塊が勢いよく降下し――


「させぬ!!」

――ザブダクルが止めた。

「ルサンティーナは私の妻だ!!」


『小癪なっ!!』


互いの禍が相手を呑み込もうとしている。

開き、閉じ、被さり、内から弾く――


〈まだだよっ! 出きるまで待ちな!〉

『ルサンティーナ!

 儂に逆らえぬようにしてやる!

 ザブダクルに会えぬ姿としてやるぞ!』


「させぬ! 二度とさせない!!」


しかしジリジリと下がっている。


『お前の神力は儂が奪った残り滓だ。

 儂に勝てよう筈が無い!!』


「禍操の神力は敵わずともっ!!

 私にはルサンティーナの愛がある!!

 故にっ、お前なんぞには負けぬっ!!」


『ルサンティーナは儂のものだ。

 醜い操り人形だ。儂の一部だ。手足だ。

 ルサンティーナは儂の元でしか生きられぬ。

 愛おしい操り人形なのだ!』


「どんな姿であろうが私の愛は変わらぬ!!

 ルサンティーナは私の妻だ!!

 ルサンティーナの愛は私だけのものだ!!

 お前になんぞに向いてはおらぬ!!」


〈ザブ! 上昇しなっ!

 魔法円の領域に入っちまうよ!〉


『「ルサンティーナーーーーッ!!!!」』


父子の叫びが遠ざかる。


ザブダクルが一気に押し上げ、何本もの『紐』も勢いよく引かれて抜けきった。

〈今だよ!!〉


「残り滓はお前だ!!

 ルサンティーナは私の妻だーーーっ!!」


ぶつかり合う禍で暗くなっていたが、一転して閃光に包まれた。


オーロザウラの絶叫が響き渡る。


〈とうとう極めちまったねぇ……〉


〈どういうことです?〉


〈禍を反転させたんだよ♪〉


〈それじゃあ……福?〉


〈そりゃあいいねっ♪

 響ちゃんは面白いねぇ♪〉あっははは♪


〈だって『災い転じて福となす』でしょ?

『災い』じゃなくて『禍』だけど~。

 眩しいけど、優しい光ですよね♪〉


〈確かにねぇ……〉



耳障りな絶叫が掠れて消え、眩しさも収束した。







ルサンティーナ様に込められていた巨大な支配核は、マディアにパンパンに込められていた支配や禍の闇玉を連想させます。


支配核に込められていたオーロザウラの意思とザブダクルとの戦いは、ザブダクルが勝ちました。

オーロザウラ自身だったら?

それでもきっとザブダクルは勝ったでしょう。


……たぶん。



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