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全力で償いなさい



 ティングレイスと共鳴する者達が囲み、手を添えて暫く。


「父様。マディアがどうしても、って……」

マディアを抱いた困り顔のエーデリリィが戻って来た。


「グレイさ~ん♪ あっそぼ~♪」

「眠ったと思ったら起きて騒いで……あっ」

マディアはエーデリリィの手から抜けて全力でティングレイスに向かって飛んでいる。


「ほら、エーデもマディアと一緒に」

「そうね。姉様も一緒にグレイを目覚めさせましょう」


「はい――えっ!? ラベンベール!?」


「姉様♪ 早く此方に♪」


「みんな……無事だったのねっ♪」

エーデリリィが飛んで寄ると、先に着いたマディアは光球に入ってティングレイスと手を繋いでいた。



「お義兄様、この子……マディアがグレイの親友なのです。

 同じように赤子に戻ってしまったのです」

ユーチャリスの瞳が潤む。


「そう……」



「マディアも弟……?

 姉様が連れて来たわよね?」


「弟よ。でもね、私の夫なの」


「姉様……」


「そんな顔をしないで。戻れるから。

 もしも戻れなくても、私が育てるから大丈夫よ。

 生きているだけで私は幸せなのだから。

 今はマディアよりもグレイに集中しましょう。

 目覚めてくれなければ進まないのだから」


皆が頷いた その時、マディアがティングレイスに抱き着いた。


「もうっ、どうしようもなく可愛いんだからっ」


「そうですね」

ユーチャリスが涙を浮かべながらも笑顔を作った。



「ほらほら! ちゃんと整列!

 静かにしなさい! 揃ってるわよね!?」


唐突に騒がしくなった。


「なんだい? この神モドキの集団は」


「み~んな王子様です!」


「つまり、手伝わせるってのかい?」


「兄が有効なら、子も有効ですよね?」


「そうだけどねぇ……ま、やってみな」


「はい♪

 皆様~♪ あの龍神様の周りを囲んで、めーいっぱい真ん中に神力を注いでください!」


「え~」「ナンで?」「めんどくさ~」

ざわざわざわざわ――


「ウッサイ!

 王子様で居られなくなるわよ!

 文句言わずサッサとしなさい!!」


ぞろぞろぞろぞろ――


「嫌々やるなっ!!

 これから復興で人手――じゃないわね。

 神様手が たっくさん必要なんだからね!

 王子様じゃなくなったらコキ使ってやるわよ!」


ザザッと動いて囲んだ。


「いっせーのっ!」


全神力(ぜんりょく)照射!!



「これで全神力とはねぇ」呆れ溜め息。


「近くに寄るだけで共鳴するんですよね?」


「そうだけどねぇ……。

 それにしても粗雑だねぇ。

 どうしてまた こんな生み方なんかしちまったん――ダグラナタン!!

 またアンタの仕業なのかいっ!!」


コソコソと大臣達の後ろに隠れようとしていたダグラナタンがアミュラに捕まった。


「命を(もてあそ)ぶなんざ許される事じゃないよ!

 これから身を粉にして働いてもらうからねっ!!」


そしてダグラナタンをプラ~ンと()げたまま、ザブダクルへと飛ぶ。


「アンタも同じだよ。

 壊したモン全て元通りにしてもらうよ。

 神力が尽きようが容赦しないからね!」


「「……はい」」


「聞こえないよ」


「「はいっ!!」」


「ボロ雑巾みたくなったら、各々がしたのと同じ酷い事をしてやるからね。

 ダグラナタンは随分と反省してるみたいだから王にさせていた恥ずかしい事を皆の前でさせるくらいに留めてやろう。

 ザブダクルはルサンティーナに見限られただろうから、記憶を消しても問題なんか無いだろ? そうしてやるよ」


「見限られても……ルサンティーナを忘れたくない……」


「ま~ったく!

 どうしようもなく自分勝手な男だね!」


「どうして『大切なもの』を知っているのに奪ったんですか?

 自分がされたくないことを他者(ひと)にしちゃダメって教わらなかったんですか?

 たかがユーレイですけど、依頼を受けて来たからには言わせてもらいます。

 貴方が奪おうとした友情も愛情も貴方よりも ずっと強かったから壊されなかったけど、それでも私は貴方を許せません。

 もしも私がソラの記憶を失ったら……そんな恐ろしくて悲しいことなんて想像すらしたくありません!

 貴方も同じなんでしょう?

 ですから貴方にはシッカリ償ってもらいますからね!」


「おや……それじゃあ任せて、向こうを手伝おうかねぇ」


「まずは、酷い事をした貴方には全力で解かなければならない義務があると思います。来てください」


「確かにねぇ。結界を解いてやろう」


囲んでいた光が消えた。


「ダグラナタンも、ほれ、全力で やりな」

2神を王子達よりも内側に放り投げた。


〈響、何をして――〉飛んで来た。


「私達も手伝います♪

 見張りを兼ねて♪」

ソラと手を繋いで瞬移した。



―◦―



「ふえっ……ふえっ……あぁああぁん!」


歓声と響動(どよ)めきが波紋のように広がり昇っていく。


「泣いちゃダメ~」よしよし♪


「……マディ、ア?」


「うんっ♪ グレイさん遊ぼ~♪」


「うんっ♪」


そんな子神達を優しく見詰める妻達にルサンティーナが寄って、水晶玉を差し出した。

「皆様の御記憶からティングレイス様をお探しし、ティングレイス様の目線に構築し直しました。

 ティングレイス様の主観は作れませんし、所々、抜けが……どうしても埋まりませんでしたが……これでお許しくださいますでしょうか?」

ルサンティーナはユーチャリスの後ろでずっと記憶の再構築をしていたのだった。

寄り添うモグに励まされながら。


「「ありがとうございます!♪」」

エーデリリィとユーチャリスは嬉しさが溢れるままの笑顔で受け取った。



 ルサンティーナは光球の中で抱き合って跳ねている子神達に目を向けた。

「おふたりの姿は、これからの神世ですね。

 更地に近くされてしまった神世は赤子と同じ。

 再び生を受け、立ち上がり、成長しようとする……強き強き命。

 手を繋ぎ、抱き合う人神と獣神。

 これからの神世も、そうあらねばなりませんね」


「「はい♪」」皆、大きく頷く。


「では……私は、これにて……」


「あっ」「あのっ」


「後程、全てお話し致します。

 今は……少し休ませて頂けましょうか?」


「はい」「ごゆっくりなさってください」


ゆらりと去っていく後ろ姿を見、

「消えてしまわないわよね……?」

エーデリリィが呟いた。


耳敏(みみざと)く聞き取ったザブダクルが追おうと動いた。


「行かせないわよ」

響がガシッと襟首を掴む。

「もしもルサンティーナ様が赤ちゃんに戻されてしまったら、貴方なら?

 全力で償いなさい」



―◦―



 意識が戻ったので一段落。

さあ次だと皆が動いた。


「さて、この中で一番偉いのは誰だい?

 それと記録係は?」

アミュラが見学者達の前で仁王立ち。


大臣やらの後ろには王子達も居て、響が目を光らせている。


「記録でしたら私が」

執事長が手を挙げた。


「ふむ。で?」


大臣達が宰相を見る。


「アンタだね?

 居るんならいいんだよ。

 これからナターダグラル達の懺悔を聞いてもらうからね。


 ティングレイス王とエーデラークは今は、あの通りだ。

 魂だけにされて封じられ、空っぽの身体は操られていたんだよ。

 ま、その辺りはナターダグラル達にシッカリ話してもらうからね。

 ダグラナタン! ザブダクル!

 嘘偽り、誤魔化し無く、全て話しな!」



―・―*―・―



 ドラグーナと子供達は、禍の滝と森を ただの滝と森に変え、集まっていた禍を滅した後、神王殿の広間ではない部屋に戻った。


「さっきも使ったから分かっただろうけど、もう、獣神の術は禁忌じゃない。

 神として正しく使う。それだけが掟だよ。

 だから皆で力を合わせて、一気に月への道を作るよ。

 神王殿(ここ)には真四獣神様の痕跡が在るからね」


「はい!♪」一斉♪


「月に行ったら古の方々を解放してあげようね」


「はい!♪」父と一緒が楽しくて仕方ない。


【真四獣神様、イーリスタ様。

 其方側、宜しくお願い致します】


〖まっかせて~♪〗


広間は過去を清算しているが、皆が皆、それに付き合ってはいられないと踏み出したのだった。







『ヒビキ最強~♪』とショウの声が聞こえそうな――あ~、いえいえ。



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