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暴走を止める



 視界が暗転し、浮遊感。

そして光を感じ――

「ああっ!」

――見覚えのある白亜の部屋でルサンティーナが目を押さえて踞った。


「ああ、悪かったねぇ。

 こっちは昼間だったんだねぇ」


「あ♪ ルサンティーナ様、これを使ってください。サングラスです」

「水中メガネみたいだな♪」

「お兄ウッサイ! ゴーグルも知らないの?」



 耳も鼻も覆っているので響が手伝い、どうにか光が漏れ込まないように掛けさせた。

「ユーレイと視線を合わせない為に改良した物ですので、大丈夫だと思います」


ゆっくりと目を開ける。

「ありがとうございます、救世主さま」


「その呼び名は、ちょっと~。

 お兄は平気みたいですけど、私とソラは恥ずかしくて。

 名前でお願いします。響です」


「貴女には また救われたのに……」ふふ♪

「ザブダクルがコッチを向いたよ!

 すぐ来るからねっ!

 皆でザブダクルを押さえ込むよ!」


その声で皆が身構え終わる前に暗くなり、禍々(まがまが)しさの塊が現れた。


「ルサンティーナ……」


部屋の中央に立つ女神へと禍を纏った塊が進んで行く。


皆は気も姿も消しており、何事か起これば一斉に攻撃できるよう、ジリジリと包囲を狭めていた。



「ルサンティーナ……無事なのだね?」


「ええ。生きているわ」


「私の元に……戻ってくれたのだね?」


「それは……できないわ」


「何故!?」


「あの時も私は そうお話ししました。

 私は もう、あなたが知るルサンティーナではありません。

 罪を重ね続けた醜い化け物なのです」


「ルサンティーナがした事ではない!

 全てオーロザウラがした事だ!」


「それでも……この身体がした事なの。

 その罪の証として、この身体は報いを受けてしまったのよ。


 あなたは……その子龍に何をしているの?

 させている事は、その子が望んでいる事なの?

 その子が あなたに何をしたの?

 そんな事をさせられなければならない罪って、いったい何?」


「マディアは私を裏切った……欺いたのだ」


「そう……最後に会った あなたは、誰も信じないという目をしていたわ。

 その子は、あなたが裏切ったと怒り狂う程の信頼を築いたのね。

 それなのに……可哀想に……」


「ルサンティーナ……私は……私は……」


「私の魂はオーロザウラに封じられ、支配の神力を込められた この身体は、オーロザウラの邪魔となる神達を喰らう器にされてしまったの。

 あなたの母である女神達も喰らったのよ。

 そして取り込んだ神力は(ことごと)くオーロザウラが悪用してくれたわ。

 全て私がした事としてね。


 あなた……その子にしている事は、オーロザウラが私にした事と同じではないかしら?」


「あ……ああっ……私は……あれ程に憎んだオーロザウラと同じ事をしてしまったのかっ!!

 この私が……オーロザウラと……」


「今の あなたはオーロザウラよ。

 意に染まぬ事をさせて、全ての罪を(なす)り付け、誰彼なく虐げる悪神――いいえ、神ではなく魔よ」


ザブダクルは龍の背で泣き崩れた。



 ザブダクルの嗚咽毎に纏う禍が消えていき、窓からの陽射しが戻り、碧龍の背に乗っている男神の姿が露になった。


「あなた……ザブダクルに戻ってください。

 私が愛した優しいザブダクル様に戻って……」


「しかし私は……罪を重ね過ぎた……」


「そうね。そういう意味では私と同じになってしまったわね。

 私は少しでも償おうと悪を全て喰らい、この身体ごと滅してしまおうとしたの。

 でも……それすら叶わなかった。


 オーロザウラは私と結婚の絆を結んだの。

 私は あなたと結ばれていると信じて疑わなかったのに……騙されて、知らぬ間に結ばれてしまっていたの。

 その強い絆を悪用されてしまったのよ。

 神力を全て共有するから……だから私は操られてしまったの。

 オーロザウラは私が取り込んだ神力を易々と使えたのよ。

 そして、夫婦は互いを(あや)められない。

 私はオーロザウラを憎んでも滅したくても手を出せなくされていたのよ」


「絆なんぞ関係ない!

 ルサンティーナは私の妻だ!」


ザブダクルは龍の背から飛んでルサンティーナを抱き締めようとした。


しかしルサンティーナは それを(かわ)した。


「ルサンティーナ!?」


その時、ザブダクルの腹の辺りで小さな爆発が起こった。

「やっと出られたわ!

 ザブダクル! 覚悟なさい!!」

「マディアとグレイにした仕打ち!

 許しません!!」

怒りで気を炎の如く立ち昇らせている2白龍と魂の光球を抱いた人神の男が現れた。


ザブダクルの前にルサンティーナが立った。


「許されるものとは思っておりません。

 ですが――」

床に伏すように身を低くして頭を下げた。

「愚かな夫がしてしまった罪、私も共に償わせてください」


「あら……」「まぁ……」顔を見合わせる。



「さてさて飛び入りの嬢ちゃん達、こっちにおいで。

 ザブダクル、アンタは罪神だ。

 一応 囲んでおくからね。

 フェンラーグ、近いから頼んだよ」


朱雀(フェンラーグ)が『すまんな』と言ってザブダクルを浄化結界に閉じ込めた。


「さて、先に龍の子と神の王を身体に戻してやんないとねぇ。

 ドラグーナ、ラピスリ。

 それと兄姉達、よ~く浄化して戻してやんなよ? ほれ頑張りな。


 カイダーム、クウダーム。

 アンタらは王の方だよ。

 狐達も手伝っておくれ」


「「はい?」」


「神の王はカイダームの孫だよ。

 ま、今は空っぽだし魂は眠ってる赤子だ。

 共鳴が弱くて分かる程じゃないのは当然だろうねぇ」



 オフォクスがティングレイスの身体を背に乗せて運んで来た。

マディアの魂をドラグーナに渡したダグラナタンも来て、ティングレイス王の魂をアミュラに渡した。


「ルサンティーナも手伝いな。

 最強女神なんだからね」


「はいっ」飛んで来た。


「龍っ子の方は記憶の写しを避難させてるからいいんだが、この子は ほぼ人神だからねぇ。

 ザブダクルが乱暴に消しちまった記憶はどうにもなりゃしないよ。

 同じようにザブからルサンティーナの記憶をキレイサッパリ消してやりたいくらい腹が立つねぇ」


「なんて酷い事を……」


アミュラとルサンティーナが睨むとザブダクルは縮こまって泣き始めた。


「今更 泣いたってねぇ」「ええ……」


呆れつつ睨んでいる女神達の足元に力丸とショウが寄った。

「ね~ね~女神様ぁ」

「父様、記憶喪失なのか? 赤子って?」


「アンタら……王子だったのかい。

 犬神にしちゃあ妙だと思ってたよ。

 そうか、父に生んでもらったんじゃないんだねぇ」


「あ~、はい」「そ~なの?」


「あ、あのぉ……」

ダグラナタンが おずおずと手を挙げた。

「その件は後程、私の方から……はい」


「どいつもこいつも男ってぇのは……」


「申し訳ございません」しゅ~ん。



 ティングレイスの魂に手を(かざ)して見詰めていたルサンティーナが顔を上げた。

「アミュラ様、皆様の御記憶から再構築してみてはいかがでしょう?


 古い記憶は写しが幻尾に残っております。

 おそらく消える前に写したのは龍の子と そちらの白い龍の女神様方。

 最近のものでしたら皆様の御記憶も新しく、鮮明でしょうから再構築も可能かと。

 空白が増えるのは即位の辺りからなのではないかと。

 戴冠などの儀式も見当たりませんので、その辺り以降を――」

「あのぅ……」おどおど挙手。


「またアンタかい」


「その辺りは元々ぼんやりスカスカな記憶しかないものと……申し訳ございません」


「ま~ったく!」


元気な泣き声が聞こえた。


「龍っ子の産声だねぇ♪

 元気で良い良い♪」



 反省しまくりなダグラナタンが、龍の集まりからユーチャリスを連れて来た。

「王妃様ですので……」


「キラッキラな絆だねぇ。

 ルサンティーナ、これが結婚の絆だよ。

 アンタとオーロザウラの絆は汚れてドロドロな錆びた鎖、粗悪な呪縛鎖だ。

 そんなモンは断ち切ってやるからね。

 さ、張り切って やろうじゃないか♪」


「はいっ!」


「ん? 救世主達!

 楽しく見学者してんじゃないよ!

 手伝いなっ」


「えっ?」「あっ!」「はいっ!」


「それと廊下の団体!

 気が散るから入っておいで!」


宰相を先頭に大臣やら執事やらがぞろぞろと入って来た。


「見学席はソッチだ。私語は禁止。

 座って静かに見るんだよ?

 んん? ザブダクル! ダグラナタン!

 サッサと支配を解きなっ!!」


慌てて飛んで行くダグラナタン。

結界の中から頑張るザブダクル。



 無事に支配が解けたらしい人神達が頭を振ったり軽く叩いたりしている。


「モグ、どこ行くの?」

「アフターケアするの~♪」てってって♪


「なかなか賢い犬っ子だねぇ♪

 ザブダクル、ダグラナタン。

 あの犬っ子にも謝りなよ?」


「は?」「え?」


「呆れたねぇ」


「モグは怨霊にされていたモグラさんなんです。

 つまり、そうしたのは――」

「申し訳ございません!!」

響の前でダグラナタンが土下座した。


「謝るべきは私にじゃなくてモグにでしょう?

 それに、ちゃんと償う方が謝罪の言葉よりも大事だと思います」


見学者達から支配の残滓を消したモグが戻って鼻先でダグラナタンをつんつんした。

「刃物は危険だけど、使い方次第なんです。

 ハサミや包丁がないと不便でしょ?

 って、神様には理解が難しいかな?

 人は不便なんです。

 便利な道具にするのか、凶器にするのかは使うヒトの心次第なんです。

 支配の力は刃物と同じ。

 神力そのものは善でも悪でもないんです。

 僕は、この神力を善にしますよ。

 どうやって?――は、これから ゆっくり考えます♪

 友達と家族がいますから♪」

驚いているダグラナタンに笑顔で尻尾を振ると、モグはタタッと離れた。



 ルサンティーナはモグの言葉を聞いて泣いていた。

その涙は、長く凍結していた心を融かす春のように暖かいものだった。







ザブダクルの暴走は止まりましたが、まだ問題が残っています。

ザブダクルだけでなくダグラナタンがした事も絡んでいますし、この2神よりも更に悪いのはオーロザウラです。

神世の正常化の為にも、これらの後始末をしなければなりません。

本章はそういうお話です。



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