分厚い岩壁
王都から東へと飛び、少しだけ南へ。
龍の里を抜けたゴルシャインの背のユーレイ探偵団は、最果ての岩壁の上に降り立った。
【後は真っ直ぐ東だ】指し示す。
【はい。行ってきます】
【ありがとうございました♪
それじゃみんな、行くわよ♪】
【【乗って乗って~♪】】
ショウとモグがソラと響の上着の裾を引っ張った。
【【ありがと♪】】乗る。
【って俺またコイツかよぉ】【悪かったな】
【カケル遅っせーから仕方ないよな】
【悪かったなっ!】
【サッサと乗れよ。置いてかれただろ】
【ったく。王子様、ヨロシクな】【おう】
ユーレイ探偵団は古の人神の地に向かって出発した。
―◦―
サイオンジが目を開けると白銀の狐神が微笑んだ。
【おんやぁ?】
「此処はマヌルの里。普通に話せますよ」
「トクとナンジョウも居るなぁよ。
ありがとよぉ」
よっこらせと起き上がった。
「もう少しお休みくださいね。
神でも命取りな禍に包まれたのですから」
「龍神様方は?」
「龍は丈夫ですので。
他の兄弟と一緒に、もう普通に動いておりますよ。
ああ、自己紹介が遅れましたね。
私はオフォクスの弟でテトラクスです。
月から人世へ。人世から神世に戻りましたところです」
「ま~たウンディ様が神力射と戦いなさったのかよぉ?」
「はい♪ ですので安心なさってくださいね。
治癒もお任せくださいね」
―◦―
ユーレイ探偵団は瞬移を交えつつ順調に進んでいた。
が――
【あっ、モグ待って!】【ん♪】
【何か落としちゃったのよぉ】キョロキョロ。
ソラを乗せたショウが引き返して来た。
【響、どうしたの?】
【何か落ちたのは確かなのよね……】
【あ♪ 丸いの【落ちてる♪】】
ショウとモグが向かう。
【【鈴?】】
モグが拾った。
【あ~エィムの鈴だわ♪ ありがと♪】チリン♪
【呼んだ?】【【エィム】様!?】
【呼んでおいてその反応って何?】ムッ。
【鈴、落っことしちゃったのよ。
でもどうしてエィムが神世に?】
【精鋭部隊を連れて来たんだ。
今は下空で駐屯してる。
僕はマヌルの里に行こうとして呼ばれた】
【来れたのね♪ 良かった~♪】
【神力射は破壊できたんですか?】
【神力射も、現世の門の結界も自己修復するから今のところ無理だよ。
でも兄様姉様の力で次の部隊も来る筈】
【現世の門の結界?】
【そんなのあったんですか?】
【そうか。ユーレイは通れるのか。
で、現世の門を抜けた時に軍神達に囲まれなかったの?
無事に通り抜けたんだろうけど】
【軍神さん?】【【だ~れも居なかったよ♪】】
【彼らにもユーレイは感知されないのか……】
カケルを乗せた力丸が追いついた。
【誰かと思ったら死神師匠!】力丸 大喜び。
【その呼び名やめて。
この向こう……古の人神の地に行くの?】
【行ってルサンティーナ様を捜すの♪】
【ピュアリラ様かアミュラ様も、です】
【そう……。
どうやら敵神が近いみたいだね。
明確には位置が掴めないけど、動いてないみたいだから気づかれてはなさそうだね……。
僕も見つかる訳にはいかないからね。
あまり遠くまでは行けないけど、せっかく呼ばれて来たんだから少し進めてあげよう】
【ありがとエィム♪】
【ありがとうございます!】
【【やった~♪】】【助かった~♪】
【向こうで呼んでも行けないからね】
片膝を突いて座ると、死司杖を出して伸ばし、横にして突き出した。
【犬達、これを咥えて】
3匹がパクッと咥える。
【行くよ】術移!
――術移3回で止まった。
【これだけ離れれば十分かな?
それじゃあ僕は此処で】
【ここって……?】
【壁の3/4くらい進んだかな?
次は獣神の地で会おう。
君達は向こう】
東を指し示してから西に数歩下がり、術移した。
【エィム様って優しいね】【そうね】
【【進も~♪】】【おう♪】
【なぁ、奪還しに神王殿に向かってる間、二人で何 話してたんだ?】
【馬鹿者は夫婦の会話にも首を突っ込むのか】
【そういう内容なら聞かない!】
【そういう内容じゃないから話すよ】
【災厄前に狐儀様と理俱様から聞いた話とフィアラグーナ様から聞いた話、カウベルル様から聞いた話を比較してただけよ。
違和感って言うか、ちぐはぐ?
なんだか違ってたから】
【たぶん狐儀様と理俱様は彩桜から最新を聞いたと思うんだ。
磯前さんの件でボクと探偵団してた間中、彩桜の拾知は超越者様から妨害されてて無関係情報だらけだって言ってたし、狐儀様や理俱様に会うと情報を渡してたから。
たぶん彩桜はサイオンジとは話してなかっただろうからフィアラグーナ様も知らないし、神世にまでなんて伝わってないだろうからね。
そんな話だよ】
【ふぅん】
【馬鹿者には意味不明なんだな】【兄様ってば~♪】
【簡単に言えば、闇禍や魔女に関してとかが最新情報ね。
何にせよ敵神が魔に堕ちたのは、どの話からも確定ってトコに落ち着いたのよ】
【その原因が闇禍だとしても悪神の呪だとしてもね】
【そっか。で、あの黒くされた龍神様は?】
【何が聞きたいんだ馬鹿者】
【この岩壁の上の何処かに居るみたいにエィムが言ってなかった?】
【助ける為にボク達は向かってるんだけど?】
【頑張って走るからねっ】【端っこ見えたよ♪】
やっと分厚い岩の『壁』が終わった。
「寒っ!! 今度は吹雪じゃないか!!」
【お兄、ユーレイだって自覚なさすぎ】
「っさいなっ!
ナンでソラはフツーなんだよっ!?」
【ユーレイだからね。行くよ】
スイッと吹雪に突入した。
【ホント、どーしよーもないわね。
行きましょ♪ ショウ、モグ、力丸♪】
【【は~い♪】】
【コイツいいのか?】
【気がつかなければ足手纏いなだけ。
少し向こうなんてガンガンに噴火してるんだから】
響と犬達も吹雪の直中へ。
「だから待てって!!」地団駄!!
と、暴れようが叫ぼうが先に行った者達は瞬移アリで どんどん離れているとだけは感じた。
「ったく容赦ないヤツらだな……」
暫し考え・・・「そうか!」ポンッ♪
外気温を遮断し、風雪が通過するがままにして飛んだ。
「よし♪ ユーレイ便利だよな♪
けど、どこまで行ったんだ?
方向は……合ってそうだな。
うん。ずっと向こうに相棒が居る♪」
せっせと小刻みな瞬移を繰り返して飛ぶ。
そして連なる火山。
響が言った通りガンガンに噴火している。
迂回しているとソラ達を見失いそうだ。
「上、飛ぶったって……」
止まって考えている間にもソラの気はどんどん遠ざかっていた。
「まさか……山、、通過しろってか?」
当然ながら正解だと言ってくれる者もツッコミを入れてくれる者も居ない。
「よーし! 突っ切ってやる!!」突入!!
そして火山を通り抜けた。
「真っ赤だった……ひたすら真っ赤だった……」
これ以上 死なないユーレイならではの貴重な体験をしたらしい。
【お兄~♪】ワン♪
「ショウ♪ 迎えに来てくれたのか♪」
【あんまりにも遅いから~♪
ソラ達、1コ目 掘り始めたよ♪
ね、こんな吹雪の中なのに、ど~して普通に話してるの? ずっと話すの?
み~んな聞き取るのに神耳 使わないといけないんだよ?】
【あ、つい。すまん。
なぁショウ、火山も突っ切ったのか?】
【お兄、火山の中なんて通ったの?】
【他にどーやって?】
【瞬移♪ お兄も途中、使ってたでしょ】
【あ……】
【も~行くよ~♪】咥えて瞬移♪
――瞬移して飛んで瞬移して、を繰り返す。
【うわ、もっと高い火山だ……】
しかも今度こそ物凄く連なっている。
【カウベルル様オススメはカリューの地だったけど、響が先にサミルを調べたいんだって~】
山脈寸前で瞬移した。
【すんごくデカイ火山あったな】
【あったね~♪ ソラ~♪】【お帰りショウ♪】
【俺には?】【【【【ん?】】】】【あはっ♪】
ソラと響は凍てついた地面に座り、目を閉じて、両掌を氷面に当てていた。
【何してるんだ?】指差し首傾げ。
【だから掘ってるの~。
僕達は『ここ掘れワンワン』しなきゃだから頑張ってね~♪】
【は?】
見渡すとモグと力丸は遠くで地面を嗅いでいるようだった。
瞬移したショウも加わっていた。
【お兄、そっちお願い】
ソラが具現化ナイフを投げ、氷面に突き刺して場所を示した。
【どーやってるんだ?】
【神眼で見ながら掌握の具現化ドリル。
目的物は水晶玉だから壊さないでね】
【お、おう】とりあえず座った。【で?】
【え? ……ここのを出したら教えるよ】溜め息。
この古の人神の地は呪われていて、神様は長居できなくなっているんです。
どうやらユーレイは それも平気みたいですね。
力丸とショウも平気そうなので獣神様限定なのかもですね。




