奪還作戦進行中
響は神王殿内部の図を描いている力丸とショウから少し離れて
【決行だけど……モグ、大丈夫?】
モグに寄って背を撫でた。
【大丈夫。ボク、もう大丈夫だよ。
ボク、龍神様を助けたい。
あの龍神様、赤ちゃんなんだ。
塊にした支配イッパイ込められてるから膨らんでるけど、小さな龍神様なんだ。
禍みたいな色にされてるけど本当は綺麗な青緑なんだ。
赤黒い目じゃなくて澄んだ青い目なんだ。
小さな龍神様、いっぱい泣いてた。
壊したくない、嫌だって。
サイの龍神様が獣神様じゃないと助けられないって言ってた。
きっと大きな力が必要。
だからボクは閉じ込められてる獣神様達を助けに行くんだ】
【けどサイオンジが助けるんじゃないか?】
上を指差してカケルも来た。
【たぶん悪神、隠れるよ。
さっきも副都で消えたんだ。
こんな近くだったのに、なかなか見つけられなかった。
たぶんそれも龍神様の力。
従いたくないって泣いてるのに、悪神が無理矢理 使ってるんだ。
龍神様、こんな言うコト聞いてくれない身体、滅してって泣いてた】
【トコトン悪神だな!】【できたよ~♪】
サッと頭を寄せる。
【開かずの間は3つとも最上階。
階段は、ここからだと手前な南と中央。
あと昇降通路が、階の真ん中な父様のお部屋の南の小部屋と、奥のこの小部屋】
【殿勤めの神はフツーに飛べるからな。
けど人神は二足歩行っての重要視してるんだ。
獣神様よりも偉いって示したいんだと思う。
だから緊急用の通路なんだ。
部屋の床と天井に穴があるんだ】
【最上階は空に抜けるのか?】
【馬鹿者は無視する】【確認しただけだろ!】
【開かずの間は、南階段の斜め前に1つ。
父様のお部屋の北隣にも。
それと一番北奥の大部屋~】
【父様の部屋の北のは、父様の部屋からしか入れないんだ。
南の部屋前には見張りが居るハズだ】
【夜中は扉前で寝てたよね~♪】
【今は起きて立ってるだろーな】
【つまり、その部屋に大神様とか、重要な神様の力とかが封じられてるんじゃないかな?】
【きっとそうね。
だから南の部屋にはソラとショウでお願い。
真ん中は王子様な力丸じゃないとムリよね。
私はモグと北の奥に行くわ】
【俺コイツとか!?】【それは俺が言いたい!】
睨み合う。
【バランス的に最善でしょ♪】
【ねぇヒビキ、モグも扉 開けられるの?】
【キツネ様から鍵だってフサフサ貰ってるのよ♪】
チャームになっているのを取り出して揺らした。
【あれれ? ソレ僕のニオイする?】
【前のショウのシッポから作ったんだって♪】
モグの首輪に付けた。
【そっか~♪】
【ショウ兄ちゃんの……嬉しい♪】
―◦―
王都上空では、ザブダクルが禍や支配の闇球を投げるだけでなくマディアの身体にも攻撃させるので、どちらも一歩も譲らない緊迫した鬩ぎ合いが続いていた。
トクと手を繋いでいるサイオンジが瞬移して迫り、浄破邪で成した大斬鉈をこれでもかとブン回した。
「マディア止めよ!!」
素早く攻撃体勢に――〈させないよ〉
青い瞳のマディアの身体は両手を広げて大斬鉈を腹に受けた。
続いて現れたナンジョウが、破邪の剣を胸に突き立てる。
〈ありがと……破邪……雷撃……〉
傷口から迸った破邪雷撃がザブダクルごとマディアの身体を包んだ。
ザブダクルの絶叫とマディアの咆哮が響く。
〖孫達! 捕縛しろ!!〗【【はい!!】】
エメルドとユーリィも瞬移して至近距離に。
【【魂縛龍牙破邪!!】】
破邪鎖が網の如くに包んだが、マディアが消えていた。
【何処!?】【上っ!!】
赤い瞳の禍龍が急降下して迫っていた。
ギリギリで躱すと、禍龍はそのまま降下して王都を半分近く破壊して消えた。
だけでなく、破邪鎖の隙間から禍が爆発的に拡がっており、禍龍の近くに集まっていた龍神とユーレイ達を瞬く間に包んだ。
〖滅禍浄破邪!! サイ、瞬移だ!〗
孫とユーレイ達をサイオンジの周りに引き寄せ集めたフィアラグーナは、目的地は任せろとサイオンジに瞬移させた。
―◦―
神王殿に入ったカケルと力丸は、玄関ホールすぐの中央昇降通路を昇っていた。
【なぁ力丸、瞬移は?】
【カケル連れてか? 神王殿内は防犯上、瞬移は制限されてるんだよ。
連れてなんて疲れるからヤだよ】
その制限を受けてしまうのは人神くらいのもので、獣神は易々と瞬移している。
【制限されてるのか】試しに瞬移。
――【最上階に来れたぞ】穴から覗き込む。
【やっぱ馬鹿者だよなっ!!
そんな大きな神力 使ったら見つかるだろっ!】
カケルの背後の扉が開いた。「誰か居るのか!」
【ったく!! どこまで馬鹿者なんだっ!!】
カケルは咄嗟に階下に隠れていたが、最上階には軍神が次々と入り、侵入者の有無を調べているようだ。
【子犬になれよ】【ナンで!?】
【王子様がペット連れで父様に会いに来た。
で、いいだろ】
【ったく~】偽装。【これでいいか?】ムッ。
【まぁまぁだな】人神に戻った。
【へぇ~、ホントに王子様だったんだな♪】
【王子なんかヤメだったのになぁ……】
そろ~っと穴から顔を出した。
「あっ! 王子様でしたかっ!」
「如何なさいましたかっ!?」
「父様の声が聞こえたんです。
コッソリ入ってゴメンナサイ」
帽子がよく見えるように気をつけて頭を下げた。
「ダイナストラ王子様、どうぞ此方に。
おや、その犬は? 獣神の子ですか?」
「たぶん人世の犬魂です。
拾ったのでペットにしたんです。
父様、最近ケモノ好きなので喜ぶかもと連れて来ました」
「然様で。では陛下のお部屋に」
「ありがとう」
―◦―
響とモグは北昇降通路を使おうと、1階の奥へ奥へと行ってみたが――
「何奴!?」
――壁から西洋鎧の軍神が出て槍を構えた。
どうやら巡回していた衛兵に見つかってしまったらしい。
【見回り? もしかして廊下を歩かずに壁の中とか歩いてるの?】
天井を背にして姿を消している。
【廊下を歩いてたりもするんだけどね~。
壁歩きが趣味なのかな?】
同じく消している。
「其処かっ!」長槍を更に伸ばして天井を突く。
しかし上だとしか感じ取れていないらしく、見当違いの場所を二度三度と突いている。
【長~~~い槍だね。眠らせるねっ】
【一緒に戦いましょ♪】
【ん♪ それじゃあ偽装♪】一緒にスタッ♪
【ちょっと! どうしてメイド!?】
【ん?
とりあえず穏便に抜けられないかな~と♪】
人姿なモグは執事服だ。
スマシ顔で丁寧に礼をして抜けようと――
「待て」
「何か御用で御座いましょうか?」
「奥に何の用だ」
「新神に清掃箇所を説明致しますまでで御座います」
「こんな遅くにか?
それに見掛けぬ顔だな。
どの部所長の所属かを言え」
【もう戦って眠らせない?】【ん♪】
サッと細身の剣を具現化して構え、軍神が声を発する前に迫り、前後を囲んで響が後ろから回した剣を喉元に突きつけると、前のモグが支配を発動した。
「っ……」
「何も見ていない。誰にも会っていない。
いいですね?」
「はい。何事も起こっておりません」
軍神はクルリと背を向けると壁に入った。
【壁の中まで気をつけないといけないのね】
【そうみたいだね~♪】犬に戻って進み始めた。
【ちょっとモグ! この服!】追って駆ける。
【似合ってるよ~♪】てってって♪
―◦―
ソラとショウは1階を南に向かい、階段を駆け上がっていた。
【ショウ、何か作戦があるの?】
【扉は瞬移で抜けられないんだよね~。
だから堂々と入らない?】
【ショウは王子様だからいいけどボクは?】
【だ~れも王子の顔も名前も覚えてナイナ~イ♪
3000も居るんだから~♪】
【確かに覚えられないよね。
でも顔パスなんだよね?】
【帽子パス~♪】
【え?】
【えっとね】人神に。【この帽子が目印♪】
【まさか帽子だけで王子様?】
【うんっ♪ だからソラも王子様なれる~♪
服だけ偽装でジュ~ブン♪】
【えっと……こう?】偽装(化ける能力的神力)した。
【うんうん♪ 帽子の前にネーム刺繍♪
横に王子マークがあるの~♪ コレ♪
名前もテキトーでいいの~♪
あ♪ ソラくらいの見た目年齢だったら白じゃなくて水色ねっ♪】
【服は?】
【服はど~でも~♪】
【ホントに帽子だけなんだね……】
【前にね、ダイン兄様と帽子とっかえてみたんだよね~。
そしたら、いつも会ってる大臣なのに僕に『ダイナストラ王子様』だって~♪
ホント帽子しか見ていないんだよね~♪】
【喜んでていいの?】
【今は利用できるからね~♪
それじゃ堂々と行こっ♪ 兄様♪】
最上階はすぐ其処なので、落ち着いて歩き始めた。
3経路それぞれ進んでいます。
サイオンジ達の方は心配ですが、神王殿内には伝わっていませんので続行します。




