禍色龍神の涙
サイオンジとモグは禍色の龍神が現れたので副都から離れ、遠くから副都が破壊されている様子を見ていた。
【壊すのは直すだけだから見てりゃあええとは言われたが……】
【こんな泣いてるのに可哀想だよ。
ねぇサイ、助けに行こうよ】
【だぁな! 我慢の限界だぁよ!!】瞬移!
――「お前さんがワル神なんだぁな?」
副都の半分程を破壊して舞い上がった禍色の龍神と背の男神の真正面にサイオンジとモグは浮かんだ。
「誰が悪神だと?」
「さっき南西の都を破壊したろ~がよ。
昼間は四方の都を破壊してたなぁよ。
ワル神の他に呼びようなんてあるのかぁよ?」
「そう言う貴様は何者だ?」
「名乗る程のモンじゃあねぇよぉ。
お前さん、そ~んな小さな龍神様に何させてるだぁよ?
龍神様、嫌だと泣いてるじゃねぇかよぉ」
「泣いておるだと!?
マディアは自ら飛んで来て破壊したのだ!
儂が休んでよいと言ったのにだ!」
「その前に『全てを破壊せよ』と支配したんだろ。
お前さんの声でそう言ってるのが聞こえてるんだよぉ。
ソイツに従って動いてるんだぁよ。
オイラに見えてる小さな龍神様は綺麗な青緑だぁ。透き通った青い瞳だぁよ。
そんな真っ黒にしやがって。
赤い死んだ目にしやがって。
酷ぇワル神だぁよ!」
浄破邪の長槍を成して構えた。
「僕、貴方も知ってるし、支配も知ってる。
貴方の支配、人や人神用だよ。
それなのに滅茶苦茶イッパイ イッパイに込めて、術で膨らませたでしょ。
だから支配が禍化してる。呪もできてる。
龍神様の魂を抜いてるから禍になった支配が暴走してるんだ。
今、動いてるのはそれだけ。
龍神様の意志じゃない。
その身体、もう限界。
僕には目の色で分かるんだ。
術で魂まで蝕んで。
そんなにその龍神様が憎いの?
そんな小さな龍神様が何をしたって言うの?」
犬も毛を逆立たせて牙を剥いている。
「煩い!! 長々と勝手な事をほざきおって!
マディアは儂だけものだ!!
儂の可愛い腹心だ!!」
「嫌がって泣き叫んでるのも聞こえねぇのにナ~ニ言ってるだぁよ。
龍神様よぉ、浄めてやるから泣くなぁよ!」
張り詰めた間合いを保っていた男と犬が消えた。
「何処だ!」〈ありがと……〉「マディア!?」
〈僕の目を見て! 打ち消してあげるから!〉
〈ありがと犬神様……〉「話せるのかマディア!」
犬はマディアの鼻先に乗っていた。
「マディア! 犬を叩き落とせ!」
〈助けてくれてるのに……出来ないよ〉
「マディア!! 儂の命令を――」
〈聞きたくない。やっと楽になれた……〉
ザブダクルが男の行方を神眼で探していると、マディアの胸を槍で深く突いていた。
「儂のマディアに何をする!?」
「浄破邪で悪いモン消してるだけだ!!
身体にゃあ傷ひとつ付けてねぇよ。
この身体、保たせてやるから静かにしやがれ!!」
男の言う通りだと主張するようにマディアの鱗が碧色に戻ろうとしている。
〈このヒトの言う通りだよ。
クサくて黒いの消してくれてるの。
やっと僕の身体、僕のになってってるの。
さっきまで、ぜ~んぜん僕の思う通りに動いてくれなかったの。
次に魂に黒いの来たら、僕オシマイ。
パクッとオシマイ。
それだけは僕の声が教えてくれてる。
でもね、な~んにも覚えてないから……記憶、食べられちゃったから……もう、オシマイでもいいんだけどね……〉
青に戻った瞳から大粒の涙が溢れた。
「マディア……何故……?」
〈ナゼって僕に聞かれても知らないよ。
この黒いのも、術もオジサンのでしょ。
おんなじニオイだもん。
空っぽな僕にだって、そのくらい分かるよ。
やっと……ホントに楽になれる。
たぶん、長く……すっごく苦しかったから……〉
《させるかよ! 諦めるなマディア!》
〈お祖父様?〉
《だよ。約束通り戻って来てやったぞ♪》
〈約束?〉
《そっか。その記憶も喰われちまったんだな。
けど大丈夫だ。
マディアは俺の孫、ドラグーナの子だ。
強い子だ。
命の欠片に戻っちまってもシッカリとマディアに再誕させてやるよ》
〈ん……ありがと♪〉
《エーデリリィは?》
〈大好き♪〉「なっ――」
《ならいい。ソレだけ覚えてりゃあ上等だ♪》
〈ん♪〉「マディアは儂だけのものだっ!!」
怒りでザブダクルの瞳が赤く光る。
【支配の光だよ!】
〖また込められたら厄介だ!
先に魂を奪還しろ!
封珠はコイツの腹の中だ!!〗
光を纏ったモグが飛び、ザブダクルの腹に噛みつこうとしたが、ザブダクルが瞬時に膨らませた禍に包まれてしまった。
〖【モグ!!】〗【ボクは大丈夫!】
通り抜けていたモグがマディアの尾を蹴って反転し、光を強めて飛んだ。
モグに気を取られたザブダクルの背後に現れたサイオンジが槍で貫いた。
「滅禍浄破邪!!」「ぐぉうおがあっ!!」
槍から迸った浄破邪光に包まれたザブダクルの肩にモグが噛みついた。
〈破邪雷獅子牙!!〉「おぐぉがおぉあ!!」
《封珠を出しやがれ!!》
「破邪で……儂を……滅すればよい……封珠も……道連れ、だ……」
「ト~ゼン加減してらぁよ」「ね~♪」
「封珠ってぇのを出しやがれってんだ」
「マディアは……儂だけの、ものだ……」
《人神じゃあ助けられねぇんだよ。
マディアを助ける。だから渡せ》
「マディア、を、返して、くれる、のか?」
《それはマディア次第だろ。
だいたいなぁ、マディアに何したのかを考えやがれ》
「ならば渡さぬ……渡さぬぞ!!」〈イタイ!!〉
破邪を浴びてマディアの背に倒れ伏せていたザブダクルは、己が身体で隠した手でマディアに支配を込めていた。
「マディア瞬移だ!!」〔イヤーーーーッ!!〕
しかし再び黒化したマディアの身体は瞬移した。
―◦―
緑龍神エメルドとユーリィに乗った響達は王都上空で待機していたナンジョウとトクを見付けて話していた。
【――うん、だから夜中に奪還しに行くつもりなの】
【俺はずっと見張りかぁ?】
【モグも団員だから一緒に行くつもりだったんだけど~、代わりにナンジョウさんでいっかな~♪】
【おいおい俺を――うわっ!?】
真っ黒な龍神が現れた。
〔逃げてーーーーっ!!〕〈〈マディア!?〉〉
〈エメルドとユーリィ?〉
〈どーしたんだよ、その色〉
〈このオジサンがしたの。
こんな禍色なんてイヤ。
この身体、僕の言うコト聞いてくれない。
僕、もうすぐ消えちゃう。
だから……この身体、滅して……お願い〉
〈そんなの出来ないよ〉
〈元に戻すから泣くなよぉ〉
〈エメルドもユーリィもオトナだよね。
僕……赤ちゃん。魂、喰われてる。
だから消えちゃう。
身体、オジサンが悪いコトさせる。
だから滅してよ。お願いだから――イタイ!〉
〔イヤーーーーッ!!〕
〈おい、さっきから何してるんだよ!〉
〈マディアに何込めてるんだよ!〉
エメルドとユーリィは、痛苦しさで暴れ吼えるマディアの身体に黒い塊を押し込んでいるザブダクルを止めようと、鋭く飛んだ。
ザブダクルが黒塊を投げつけてきた。
〈〈マズッ!〉〉〈支配解還!!〉
緑龍達に黒塊が ぶつかる寸前、現れた犬が黒塊を滅した。
【ユーレイ探偵団は予定通り動け!!
早く奪還しに行くんだ!!】
サイオンジも緑龍達の前に現れた。
【サイ、ボク……】
【モグもユーレイ探偵団の一員だろ。
此処はオイラに任せてくれ】ぽんぽん。
【うん。行ってきます!】
ユーレイ探偵団員は一斉に消えた。
〖おい孫共〗【【お祖父様!?】】
〖だよ。
奴は強い。が、破邪に弱い。
禍の化身だと思えばいい。
だが滅するなよ。捕縛しろ。
ドラグーナの子は全て強い。
だから止めもせんが、サイの邪魔にはなるなよ?
マディアの魂は奴の腹の中だ。
マディアを取り戻すぞ!〗
【【はい!】】
―◦―
ユーレイ探偵団員は神王殿の南庭園に身を隠していた。
【寝静まった夜中にって考えてたのよね~。
ちょっと早いけど奪還作戦決行よ】
【【【うん!】】】【【おう!】】
【ショウ、地面に開かずの間の位置を描いて】
【ん♪】【俺は?】
【兄弟で相棒でしょ。一緒に描いてよ】【ん】
兄弟仲良く、でも急いで描き始めた。
マディアを助けようとサイオンジ・トク・ナンジョウとエメルド・ユーリィは戦い続けますが、ユーレイ探偵団は奪還作戦続行です。
外伝では悪神=オーロザウラですが、ここでは悪い神という意味で『ワル神』だとサイオンジ達は言っています。




