神王殿へ
「封じられている神様を解放すれば反撃も叶う筈というのが第一歩なんです」
「第一歩? まだあるのですか?」
「ねぇソラ、何か言ってた?」
「だからボクの考えだよ。
次が、ボク達の移動力では不安なんですけど、最果ての向こう側に行って敵神を止められる神様を探すんです。
その菱形の地に行けば いらっしゃる筈。
楕円の地にも人世にも月にも いらっしゃらないのだから、そうとしか考えられないんです。
ですから行って、人世の神様達から聞いた女神様を探すんです」
「そう。壁の向こう側の話も聞いていたのね。
この里から壁を越えると東海岸に着くわ。
滝からの方が西海岸に着くから良さそうね。
人神の地には高い山脈が南北に連なっているそうだから。
オフォクスからの手紙には敵神の眠夢も入っていたわ。
重複するのかもしれないけれど聞いてね?
敵神は古の人神ザブダクル。
ザブダクルは中央部から南に広がる大国カリューの王だったの。
ザブダクルの妃ルサンティーナ様はカリューの東、カリューよりは小さいのだけれど東海岸に至る大国サミルの王女だったそうなの。
ですから探すとすれば、この2国を先にすべきでしょうね。
ザブダクルはルサンティーナ様をとても愛していたようね。
でも……ザブダクルは、父であるオーロザウラに玉座と妃を奪われて追い出されてしまったの。
カリューの軍だけでなく多くの軍に追われ、命を狙われ続けたようね。
ルサンティーナ様はオーロザウラに操られ、ザブダクルを追い詰めたりもしたようだけれど……正気を取り戻してオーロザウラを雷で串刺しにして連れて、姿を消してしまったようね。
その時ルサンティーナ様はザブダクルにサミルに逃げるようにと仰ったのだけれど、ルサンティーナ様の父であるサミル王はザブダクルを保護しないどころか、他国や獣神にまでもザブダクルを捕らえるよう働きかけたようね。
最終的には、当時の四獣神様方が封珠に鎮めて地中深くに置くのだけれど……。
神王殿を建てた際に掘り出されてしまったようね」
「出てきたザブダクルは、その怨みで神世を滅ぼそうとしているんですよね?」
キッカケは嫉妬みたいだけど。
「おそらく、そうなのでしょうね」
「そのルサンティーナ様が敵神ザブダクルを止められる神様なんですよね?」
「かもしれないのだけれど……古の人神達はピュアリラ様という龍と狐の混獣女神様を信奉していたそうなの。
ザブダクルも何度か龍と狐の混獣女神様に助けられているわ。
アミュラ様と名乗られているけれど……ピュアリラ様なのではないかしら?」
「龍と狐のピュアリラ様またはアミュラ様と、ルサンティーナ様の他には?」
「あとは……ザブダクルの弟シャルダクル様かしら。
女神ではありませんし再誕したばかりの赤子でしょうけれど、兄弟仲は良かったようよ。
いずれにせよ灼熱と吹雪の地になっているそうだから、神が逃げ込めるのは地中くらいのものでしょう」
「凍てついているか、灼熱かの地中……」
「捜すのは大丈夫だよ。
ボク達はユーレイで探偵団なんだから。
現状に話を戻したいんです。
楕円の地の方で敵神が暴れていて、もう大半が残骸になっているんですよね?
今、攻め込まれているのは人神様の都や街ばかりなんですか?」
「獣神の里は人神には見えなくしているの。
ザブダクルも、その前の敵神ダグラナタンも人神ですからね。
ただ……ザブダクルが乗っている龍は此処を知っているわ。
来ないと信じているのだけれど……」
「操られて……いるんですか?」
「心が読めないから……きっと、そうね……」
「獣神様は、こちらと滝にしかいらっしゃらないんですか?」
「いいえ。種族毎に里を作っているわ。
森や平原を好む種族は壁近くに。
穴を住処とする種族は壁に穴を穿って。
山地や岩地、砂地を好む種族は壁の上にね。
ですが今は、小動物神達は特別な場所に避難しています。
その特別な場所も含めて、この里は、全ての里と繋がっているの。
何処かが襲撃を受ければ伝わるようにね」
「ボク達は急ぐべきですよね。
地理的なことと敵神について、だいたい分かりましたので神王殿に向かいます。
ありがとうございました」
「急ぐとは解っておりますが……姉に会ってください。
ソラと響には神の欠片すらも見えません。
ですが神力は、とても強いものを持っています。
魂の内に封じられていた神が脱したのでしょう?
その方法が分かれば、救出した獣神達を早く復帰させる事が叶うでしょう。
どちらも、封じた術は人神のみの術でしょうからね」
「そうね。水晶のままじゃ窮屈よね。
ソラ、お会いしましょ♪」
「うん。カウベルル様、お願い致します。
ですが、かなり無理矢理だと聞きました。
いいんですか?」
「構いませんよ。改善しますので。
でもそれは……オフォクスやドラグーナから聞いたのかしら?」
「いえ、ボクの中にいらっしゃったガイアルフ様からです。
まだ ほんの少し繋がっていて――」
《カウベルル様、ご無沙汰しております。
マヌルの婆様と話させてくださいよ》
「あら、ガイアルフとも話せるのね♪
では参りましょう」
―◦―
「それじゃあ行こ♪」
笑顔のエメルドが背に乗れと身を低くした。
「いいの? 禍またワラッて出ない?」
「転送道全開にしてるから吸い込まれるよ♪」
「そ~なんだ~♪」
「月の兄様達は大変かもだけど~」
「今は仕方ないよねっ♪」
「それじゃあマヌルの里へ♪」
「あっ、森の外に兄様とお兄いるから拾ってね~♪」
「兄と兄?」「ま、いっか♪」
ショウを乗せたエメルドを先頭に、禍の滝に居た兄弟は出発した。
―◦―
大きな大きなマヌルヌヌにソラからガイアルフを抜いた方法を伝え、最近のドラグーナと器達の様子をと求められたので話していると、ショウ達を乗せた濃淡緑の2龍神が来た。
マヌルヌヌは動かず労いの微笑みを向けた。
カウベルルが出迎える。
「エメルド、ユーリィ、ありがとう。
これからはユーレイの皆さんと行動を共にしてね。
王都は朝よ。少し休んでから出発なさいな。
何をするのかは団長の響さんと参謀のソラさんから聞いてね」
「「はい!」」
(日付け変わってたのね?)
(そうみたいだね。
王都って邦和の上くらいらしいから)
(ユーレイってホントに疲れないのね♪)
(実感したんだ……)
(一晩中 動いてたのよね?
でも元気なのよね~♪)
(でも少し顔色が疲れてるよ)術治癒で包んだ。
(ありがと♪ 最近ちょっとね~。
でも身体は置いて来たし♪ 元気よ♪)
(そう? 無理はしないでね)
(ユーレイ元気だから大丈夫よ♪)
―◦―
ユーレイ探偵団がエメルドとユーリィの背に乗せてもらって王都を目指して出発したのは、禍色の龍神が小都を破壊し始めた頃だった。
不穏が流れてくるが、敵に気付かれては元も子もないし、神眼視線を通じて攻撃を受ける可能性もあるので迂闊に確かめられない。
奪還は人神が眠る夜にと決めているのもあって、姿も気も全消しで瞬移もせずに、ゆっくり慎重に飛んでいる。
【ルビーナ様、オパール様と結婚したの?】
ユーリィに乗っているショウは、人と同じく跨がって座っている。
【だよ。行方知れずだったんだけど、エィムが連れて来てくれたんだ】
【その時がエィムとも初対面♪】
【兄弟いっぱい?】
【兄弟なんだろ? 初対面て?】
力丸は犬らしく伏せている。
【僕達ドラグーナの子は10子1組で人神が住む場所の『守り』をしてたんだ。
人神は『護り』とか『守護』とか言うけどな】
【仕方なく守ってるだけで護りたくないよね。
で、他の兄弟とは会えないんだよね】
【あ……ソレ聞いてたよ~な……】
【俺達も上の方とか知らないけどな】
【あ! アーマルから聞いたんだ~♪】
【【アーマル兄様から!?】】
【うん♪ 一緒に居たから~♪
アーマル、タカシの中に居たの~♪
僕の中、トリノクス様~♪】
【【えええっ!?】】
【お兄の中にもトリノクス様だったの~♪
だから、み~んなで重なってたの~♪】
【それでアーマル兄様は!?】
【トリノクス様は!?】
【人世で元気~♪
あとね、ルリはラピスリでしょ♪
トシ兄はウンディ♪】
【同代だらけだ……】【あっ、オニキスは!?】
【楽しくゴハン作ってる~♪】
【【はあ!?】】
【神世も曇るのね~。雲の上なのにね】
エメルドの背の響が天を仰ぐ。
それまではソラと沢山聞いた話を整理していた。
【神世は上下に空が在るから曇るのもアリなんだけど、こんなベッタリな曇り方は初めてだよ】
【また何か天変地異とか?】
【【どうだろうな……】】
ポスンと軽い衝撃が宙をも揺らした。
ユーレイ達は大地震の前震かと身構えた。
が、何事も起こらず、空が晴れていっただけだった。
【夕陽が綺麗ね~♪】
【ボク達は、これからが勝負だね】
【そうね♪】
【また楽しんでる?】
【モチロンよ♪】
水晶化された獣神様を奪還する為に神王殿に向かったユーレイ探偵団ですけど……神王様は味方なんじゃ?
マディアの身体が敵神に使われているのなら神王様も可能性は高いだろうと、ドラグーナ様とオフォクス様が考えての作戦なんです。
敵神は開かずの間を知りませんでしたが、もしも見つかったら悪用されるか滅されるか、とにかく大変ですので。




