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禍の滝とマヌルの里



 最果ての岩壁近くでソラと響は何も見えない空間を探っていた。

【この辺だったと思うのに~】ソラにだけ。


【ここで……いいのかな?】響にだけ。

ソラの手に何かが当たったらしい。


【獣神様の力をガツンと使って~~見る!

 見えたわ♪

 ソラの目の前に門があるわよ♪】


【うん。ボクにも見えたよ。

 問題は、どうやって中の神様に――】

【いらしたわよ♪】


響が指した方を見ると、神眼でギリギリ見える目の前の門ではなく、ただの塀に見える箇所に隙間ができていた。


【この話し方で聞こえるかしら?】


【獣神秘話法ですね♪ 大丈夫です♪】


知神(ちじん)を感じるのだけれど……?】


【私達、神様の欠片持ちだったユーレイです♪

 私は響。夫のソラです♪】


【不思議な気だと感じていたの。

 そう……ユーレイなのね。

 門を開けます。どうぞ】


隙間が閉じ、中で何やら指示しているとは感じたが言葉としては何も聞こえなかった。


門が少しだけ開いた。

【此方に】


【【失礼します】】


手を繋いで緊張気味に中へと入ると女神が優しく微笑んでいた。


(綺麗なお姉様ね♪)(う、うん……)

(ん? べつにいいのよ?)(そう?)


【どうぞ】

次の門との間に建っている塔を示した。


【【ありがとうございます】】


(あのね、そういう意味じゃなく見てたんだよ。

 バステト様の人姿に似てなかった?)

隠し社で分離やらをしていた間にキツネ(オフォクス)と話しに来たのを見ただけなので自信は無い。

しかも話しに来た人姿女神は複数いたので尚一層だ。

名を知っているのは無意識発動の探りの賜物だった。


(バステート様?)

響は気にしていなかったらしく、隠し社に出入りしていた女神達を覚えていなかった。

キャティスから聞いて知っている名を出しただけだった。


(じゃなくてバステト様。

 バステート様だったら響と共鳴するんじゃない?)


(あ、そっか。

 バステート様はキャティス様のお姉様だっけ?)


(だったと思うよ)



―◦―



 ショウは森を抜けた。

〈こんにちは~わわわっ〉ワン!


「滅禍浄破邪!!」

「禍が一気増えしたから待って!!」


〈うんっ!〉森の中へ!


【お~いショウ?】【どーした?】


【龍神様達、禍と戦ってる~。

 クッサぁ~いぃ~】


【ユーレイなんだからオフにできるだろ?】


【オフしちゃダメでしょ】【やっぱ馬鹿者だな】

【コレ敵神探知センサーなんだからぁ】【なぁ】


【犬にバカにされっぱなしだ……】


【兄様、警戒しててね~】【モチロンだ♪】



―◦―



 門を開けてくれた女神がカウベルルと名乗ったので、ソラと響は大喜びで塔に付いて入った。


「もう普通に話して大丈夫よ。

 それで、どういったご用件でいらしたのかしら?」


「私達、これから神王殿に行って、神様が封じられている水晶をいただくんです」


「まさか……」


「今、東に向かっている仲間の中に、開かずの間の鍵となる王様の欠片を持つ王子達がいるんです。

 それに神様は入れなくてもユーレイなら入れる筈だとキツネ様――」

「じゃなくてオフォクス様だよ」


「あら、オフォクスとも知り合いなのね♪」


「はい。小さい頃から♪

 御札の描き方も教えていただきました♪」

「ボク達、神王殿に行く前に西端の獣神様の里と、東端の禍の滝に行くように言われて二手に分かれているんです。

 あと、神王殿と貴神殿を見ている仲間も居ますけど。


 こちらがオフォクス様とドラグーナ様からの手紙です」

ちょこんスンと座った狐形の水晶を出した。


「読ませていただくわね?」「「はい」♪」



―◦―



「待たせたね。無事?」

「キミって……犬神じゃないよね?」


「ユーレイ犬で~す♪」ワン♪


「ユーレイ!?」「来てるんだよね~♪」

「神世にっ!?」「人6犬3だよね♪」「うん♪」

「とかって言ってる場合じゃないでしょ。

 滝は放置して早く行かなきゃならないんだから。

 濃い緑がエメルド。淡い緑がユーリィ。

 私はルビーナよ。久しぶりね♪」

紅龍の女神が緑龍達の前に出た。


「僕はショウ♪

 犬してたルビーナ様でしょ♪

 僕またユーレイなんだよね~♪

 で、オフォクス様とドラグーナ様の――」

「「「父様!?」」」

他の龍達も驚き顔で集まった。


「うんっ♪ からの~、お手紙~♪」

横向きになって背中の龍形水晶を見せた。

「ゴルシャイン様かシルバスノー様に、って言われたけど~。

 誰でもいいと思う~♪」


「兄様達、出掛けてるからな」「うん」

「読ませてもらうわね?」


「うんっ♪」



―◦―



『手紙』を読み終えたカウベルルが柔らかく目を細めて微笑んだ。

「わかりました。

 水晶が届く迄に獣神を集めて封印を解く準備をしておくわね」


「「ありがとうございます!」」


「それと説明不足なまま向かわせたと言っているから、神世について少し捕捉しておくわね」


「お願いします!」「はい♪」


「人神が住んでいた場所は、もう殆どが残骸でしかなくなっているけれど……」

テーブルに紙が現れた。


「紙?」「神様も紙を使うんですか?」


「人世の物とは少し違うのだけれどね。

 霊体も神体も、人世と神世では状態が異なるわ。もうお分かりでしょうけれど。

 どちらも人世では魂のみで身体は無いのだけれど、神世では身体が有る。

 他の物も同様なの」


「身体があるの不思議だったんです」

「具現化しなくても身体があるなんて……」


「神体も霊体も人世的に言えば魂のみと考えてね。

 魂の素材は神も人世生物も同じなの。

 今は、ここまでしか説明できないのだけれど……」


「そういうもの、として捉えておきます♪」


(響いいの?)(いいのよ♪)(本当に?)

(だって人に話せる内容には限りがあると仰ってるんだし、長々聞いてる余裕もないわ)

(確かにね)(終わってから聞きましょ♪)

(そうだね。今はスルーするしかないよね)


と、ソラと響が話している間に、女神は地図を描き始めていた。


「ですが、身体があろうともユーレイとして、人世と同様にも動けますよ。

 神力の強い貴殿方でしたらね」

そう付け加えて描き終えた。



―◦―



 禍の滝の龍神達は急いでいるとは解っているが、父によく似た水晶を順繰りに胸に抱いて、瞳を潤ませて『手紙』を読んでいた。


ショウは止めも(せか)かしも出来ずに待っていた。

父ティングレイスと話してみたいと思いつつ。


【待たせてしまって ごめんなさいね。

 私達も急いでいるのだけど……】


【ずっと会えてなかったんだよね?】


【そうでもないのよ。

 でも、手紙は特別感があるのよね。

 自分だけに話し掛けてくれているような……そんな感じなのよね。

 兄弟が多いから父様を独り占めなんて無理だし、してはならない事なのよね。

 でも……そろそろ行かなければならないわね】



―◦―



 カウベルルは現『神世』の輪郭の中に簡単な地図を描き終えた。


「ほぼ円な楕円ですか?」


「そうなの。東西軸が少しだけ長い楕円が、元々は獣神の地だったのよ。

 反対側には正方形に近い、角の丸い菱形の『人神の地』があって、間には雲海(うみ)があったのよ。


 楕円の『獣神の地』は、今は『神世』と呼ばれているわ。

 人神達は古の『人神の地』を知らないの。

 これが全てだと信じているのよ。

 今の『神世』は ぐるりと『最果ての壁』と呼ばれる断崖絶壁で囲まれているわ。

 その壁に接して、東の最果てに『禍の滝』、西の最果てに此処『マヌルの里』が在るの。

 東に向かったお仲間は禍の滝に何を?」


「ドラグーナ様からのお手紙がメインで、同じ内容のを運んでいるんです。

 ボク達は協力してくださる神様と一緒に神王殿に向かうんじゃないかと思ってるんです」

「中に入って奪還するのは私達ですけど、急いで沢山の水晶を運ばないといけないから、神様に運んでいただくんじゃないかなって話しながら来たんです。

 だから帰りは私達より先に、水晶が こちらに着くと思います」


「ドラグーナ様はお目覚めになられたの?」


「「はい」♪」


「ドラグーナ様すら神世には……そうですか」


「その道を私達ユーレイが作ります。

 その為に来たんですから♪」

「響らしくない抽象的な言い方だね。

 オフォクス様のお話からボクなりの解釈で話させて頂きます。


 敵神は神様に対しては警戒して罠とかを仕掛けていますがユーレイは眼中に入っていません。

 神世に居る筈がありませんので。

 ですので中枢であろうが入れる筈、と。

 封じられている神様を解放すれば反撃も叶う筈というのが第一歩なんです」


「第一歩? まだあるのですか?」

「ねぇソラ、何か言ってた?」


「だからボクの考えだよ」







ユーレイ探偵団は計画通りに動けています。

その裏側での出来事は全て外伝2の方ですが、明るいお話ではありませんので後回しでも、読まなくてもいいかな~とか思っています。



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