3つの作戦
リーダー爽も加わって練習しているのを居住ブースから神眼で暫く眺めてから、響はソラへと瞬移した。
――隠し社。
ソラの隣に座る。
【ソラと私の代わりは狐儀様と奥様がしてくれるわ♪ ドラムも先生の姿で♪】
【狐松先生で!?】
【狐儀様って凄いのね♪】
【音神様だし。緑マーズだし。
それに輝竜兄弟を育てたのは狐儀様だからね】
【キツネ様じゃないの?】
【実際に育てたのは狐儀様らしいよ。
父がキツネ様、母が狐儀様って感じじゃないかな?】
【へぇ~♪】【サイオンジ♪】尻尾フリフリ♪
【やぁ~っと終わっただぁよ】
トクと手を繋いでいる。
【ナンジョウさんも?】
呼ばれて来て即、抜かれている。
【トクと同じだぁよ。
抜けたからよぉ、連れて行くつもりだぁ】
【なんだかお邪魔みたいでナンですけどねぇ】
もう抜き終わった。
【他の皆さんは?】
【キンギョにはコッチを任せる。
だからトウゴウジが補佐だぁ。
そんならホウジョウも残さねぇとなぁ】
【ヨシさんは?】
【堕神なんだとよぉ。夫婦揃ってなぁ】
【へ?】【タカシと同じ?】
【だぁよ】「そろそろ説明してもよいか?」
少し離れた所からキツネが睨んでおり、黒い狐と爽青の龍が笑っていた。
「はい!」揃ってピシッと姿勢を正した。
「先ずは神世までの道だ。
案内を兼ねて途中までは神を同行させる。
神世と人世との境、現世の門の手前に神力射という大型武器が設置されておる。
神の力に向けて追尾し続ける矢を放つものだ。
皆も神そのものは内に居らぬが神力を持っておる故な、放たれるは確定だ。
その矢を案内の神が囮と成り、引き付けておる内に通り抜けよ。
現世の門は見えておる。
真っ直ぐ全力で向かうのだ。
以降は力丸とショウならば神世の地まで行けるのであろう?」
「はい。巡視経路でしたので」
「僕も思い出した~♪」
「ふむ。では次に、神世の地では――」
「ちょい話していいか?
まだまだ頭に『?』が乗っかってやがるからな♪」
フィアラグーナが遮った。
「ふむ。敵神について、ですか?」
「だな♪ ある程度は聞いてそうだがな。
だが戦うには情報は多けりゃ多い方がいいってのは常識中の常識だ。
俺はドラグーナの父でフィアラグーナ。
コッチの黒いのはオフォクスの父でガイアルフだ。
敵は古の神ザブダクル。
俺達には、この敵の知り合いな友が居る。
その友から聞いた話をする。
ザブダクルはカリューという大国の王だった。
ルサンティーナという美神の妃が居た。
だが、父オーロザウラに国を追われ、妃を奪われて、命を狙われ続けた。
ザックリだが、それで性格がヒン曲がって全ての神に復讐し、神世を滅ぼすと決めたみたいなんだな。
ソイツが今になって現れやがって、俺の孫マディアをムリヤリ従えてるんだ。
マディアは魂を抜かれて封じられてる。
だから従えてるのは身体だけだ。
マディアの魂を封じた珠は奴の腹の中だ。
だからって奴を滅するなよ?
滅したらコロンと封珠が出てくるなんざ甘い考えだ。
奴ほどの卑怯さなら封珠は道連れになるように縛ってる筈だ」
「それは確定なんですか?
卑怯さもご存知なんですね?」
「いい質問だ♪
俺は奴と戦ったからな。
俺は堕神とされる前の状態で保魂されていた。
4分割、ぶつ切りにされてな。
マディアが逃げろと吼えたのを聞いて目覚めたんだ。
助けに行かねばと、近くにあった他の欠片を集めて身体を成そうとしていたら、嫌がるマディアを連れて奴が来やがったんだ。
中途だが俺は出て行った。
で、マディアの魂と身体を繋ぐ糸みたいなのを見つけて辿ったら奴の腹だった。
だから滅さずに手を突っ込んだんだ。
そうしたら見抜かれたと思ったんだろうな。
術攻撃を乱射しやがったんだ。
俺は復活途上だったし、マディアはそんなだから万全じゃあない。
マディアを庇った俺は時空の彼方に飛ばされちまったんだ。
けどマディアは随分と引き戻してくれた。
だから落ちたのは生まれたばかりのサイの中で済んだんだ。
マディアは細い細い糸でしか繋がっていなくても、奴の目論見には従わず、全力で拒絶していた。
だから奴は大量の『支配』を闇球にしてマディアの身体に込めてたんだ。
全く効いてなかったがな。
効きもしねぇソレはマディアの鱗を黒く染めていたんだ。
オフォクスが纏ってる光みたいな綺麗な青緑だったのに、汚泥を被って煙の中で煤まで被って燻されたみたいに斑で汚ならしい色にな。
龍の鱗は命そのものなのによぉ……」
「そうですか……。
そもそも龍神様を捕まえた時点で卑怯な方法を使ったんでしょうね。
敵であっても倒せないのも解りました」
「ったく何して捕まっちまったんだろうなぁ」
「妻エーデリリィを封じられてしまった為に従わざるを得なくなったのです」
オフォクスの怒りは纏う光を炎に変えた。
「己が妃を奪われて嘆き悲しんだのにか?」
「だからこそ、なのでしょう。
ティングレイス王も妃を封じられ、従っておりましたので」
「父様に妃!?」「兄様ソレ後だよぉ」
飛び出した力丸の尾をショウが咥えて引き戻した。
「妻は大切だと知ってて遣りやがったのか。
ったく卑怯な奴だな!
けどマディアは反抗してたぞ?」
それは私が、とラナクスが手を挙げた。
「そうなる前に、職神皆を連れて逃げろと咆哮で伝えてきたのは、余程の事が起こると思っての事でしょう。
魂を抜かれただけでなく、他に何か、例えば記憶を抜かれたとか、されたのではないでしょうか。
それまでマディアは最高司補エーデラークとして、死司最高司ナターダグラルをしていたザブダクルに尽くしていたのに、何が起こったのかは分かりませんが」
「王とお喋りしてたのバレちゃったかな~?
ザブダクル、マディア大好きだったから~、嫉妬したのかも~」
皆の驚きの視線をイーリスタが集めた。
ラナクスが納得したと頷いた。
「驚きましたが辻褄は合いました。
ザブダクルは大好きなマディアの為に獣神狩りを終わらせ、浄魂方法を元に戻し、理不尽な禁忌も一部撤廃したのですね」
「マディアはザブダクルと友達になろ~としてたんだよね~。
そ~すれば神世を滅ぼすとかしなくなるんじゃないかってね~。
エーデちゃんも返してもらえるかな~って。
そしたらザブダクルが勘違い?
ず~っと孤独だったから~、沼にドップリくらいに大好きになっちゃったんだよね~」
「マディアとグレイの過去も知らず、話しておっただけで嫉妬に狂い、地星を飛ばしてしまうに至った、か……」
「えっ?」「地星が?」「飛んだって!?」
「今、地星は宇宙の何処に在るのかすら分からぬ状態だ」
「そ~なんだよね~。
地星も時空を越えちゃったみたいなんだよね~。
だからソレも解決しなきゃなんだ~。
ソッチは僕達がするけどね~」
「「もしかして大地震は!」」響とソラ。
「そ~だよ~。飛ばされた時の衝撃~」
暫し絶句。
最初に気を取り直したのは、戦った当事者のフィアラグーナだった。
「敵神については、こんなモンでいいか?
そんじゃあサイ。俺の代わりに孫を助けてやってくれ。
必ず戻ると約束したからな。
写しだけでなく、俺とも繋がってるんだから存分に神力を使ってくれ」
「任せとけってモンだぁよ。
そんじゃあキツネ殿よぉ、策を頼むなぁよ」
「うむ。人世から大神が行けぬ今、魔の暴走を止め得る強き大神を神世の地にて集めねばならぬ。
その為に先ずはマヌルヌヌ様と、禍の滝に居るゴルシャインとに儂からの手紙を渡してもらいたい。
神王殿には力丸とショウが案内する。
其処から西の果てに行けばマヌルの里。
東の果てに行けば禍の滝だ。
マヌルの里は隠れ里。
獣神の神眼でなければ見えぬ。
神力を存分に使い、見付け出せ。
禍の滝は森に囲まれておる。
最果て唯一の緑豊かな森だ。
但し其の森は弱き者を喰らう。
枝や根が延びて来たならば入るな。
手紙を渡したならばマヌルヌヌ様またはカウベルル様からと、ゴルシャインから話を聞け。
此れが1つ目。同時進行で速やかに頼む」
「東西、二手になぁ。ふむふむ。
最果てと言うからにゃあ遠いんだろ?」
「遠い。
瞬移を使うのならば、敵神に見付からぬ様、小さな神力で小刻みに行え」
「皆、気ィつけるだぁよ。
バラバラな時に見つかるなぁよぉ」
「はい!」一斉。
「ね、敵神ってクサい?」
「あの悪臭は、支配や操禍といった強い神力を持つ者が悪化した時に放つ禍隷臭だ。
現状、敵神は魔化しておる。
故に更に強い悪臭を放っておる筈だ。
犬ならば遠かろうが位置を把握 出来るであろうよ」
「ん♪」「あ~、あのクッサイのかぁ」「……」
「では進める。
禍の滝に行った者は龍に乗せてもらい、マヌルの里に行け。
マヌルの里に集結したならば、2つ目だ。
神王殿の開かずの間から、獣神が封じられておる『水晶』を全て奪還し、マヌルの里に運んでもらいたい。
水晶石の置物が如くに見えるが、其等は全て神力の結晶体だ。
内の神力に依り形は様々であろう。
開かずの間は3室。
力丸、知っておるな?」
「ショウと一緒に入りました!」「うん♪」
「ふむ。頼んだぞ。
此の1袋でも全ての水晶が入る。
3室同時に頼む」
麻に見える袋の束をサイオンジに渡した。
「3つ目は、副都の貴神殿から前王サティアタクスと、前王の護衛兵士4神を助け出してもらいたい。
貴神殿は力丸とショウが暮らしておった場所。
また案内を頼む」
「「はい!」♪」
「前王サティアタクスと兵士達は、神王殿の神王ティングレイスの所に頼む」
「連れてって大丈夫なんですかぁ?
父様の簒奪、前王様は誤解してませんか?
前王様に成敗されるんじゃないですかぁ?」
「問題無い。
簒奪したティングレイスは偽者であるとサティアタクスも気付いておる。
兄弟なのだからな」
「えええっ!?」「そ~なんだ~♪」
「何事も起こらなければ此の順で頼む」
「つまり何事か起こったら、その場で好きに考えろってぇこったぁな?」
「然うだ。サイ、頼んだぞ」
「そりゃあ勿論だがよぉ、チィと練って詰めさせてもらえるかぁ?」
「無論だ。
響、モグ。其の間に身体から魂を抜く。
ユーレイとしてで無くば行けぬ故な」
「はい」
「ソラと一緒にユーレイできるのね♪」
「響、嬉しいの?」
「ソラと一緒だから~♪」「そ、そう……」
「キツネ様、俺は?」
「力丸は神ではないか」「そっか♪」
「ラピスリ、響を頼む」「はい。では此方に」
そしてユーレイ探偵団は神世へ、です。




