世界中が揺れて曇り空
朝になってもまだ人世の空 全てが分厚い雲に覆われていた。
「世界中ベッタリ曇りだなんて……」
響がスマホを弄りつつ呟いた。
「地震と何か関連してるのかな?
地震も世界中だったし」
ソラが覗き込む。
「でもま、オオゴトならまた龍神様が現れるわよね?
偶然……じゃないとは思うけど、晴れるの待つしかないわよね」
〈響、ソラ。今いいかな?〉
〈あれ? エィム?
いいけど、どうかしたの?〉
〈頼みがある。避難所から離れてもらえる?〉
〈解った〉〈見つけた。行くよ〉
響を連れて瞬移した。
――利幸の家。
「わざわざ此処まで? ありがとう」
エィムが姿を見せた。
「それで人とユーレイに相談って?♪」
「街の結界を死神封じから浄破邪に変えてもらいたいんだ。
他は全て変えたんだけど、君の結界は特別だから君でないと変えられそうにないんだよね。
そんな不安そうな顔しないでよ。
今、人世に居る死神は皆、キツネ様と龍神様の配下だから心配しないで」
「って、ソラ達を拐ったりしないってこと?」
「そう。今まで通り結界から出された霊だけを回収するし、祓い屋だと言ってくれれば外に居ても連れて行ったりしない。
上に浮かんでいるのは、とうとう魔に堕ちた敵神を警戒しての事だから気にしないで」
「それじゃあ、すぐに変えるわね。
他にも何かある?」
「いや。今はそれだけ。
結界が変われば自由に出入り出来るから何かあったら行くよ。
ああそうだ。
この雲は神世の床が少し崩落したものだから暫く晴れないよ。
神として力は尽くしているけどね」
「って地震で!?」
「崩落も地震も敵神が暴れて起こしたんだ。
まだ調査中でね、そこまでしか判ってないんだよ。
敵神は破邪や浄化を嫌う。
奴には命取りなんだ。
だから急いで変えて」
「解ったわ!」
「エィム様、ありがとうございます!」
響を連れて街に戻った。
――サイオンジ公園。
響とソラは寿を呼び出してエィムの話を伝えた。
〈――だから手伝って?〉
〈ん♪ それにしても、すっかり死神様とお友達なのね~♪〉
〈いろいろ聞いちゃったから~〉苦笑。
〈それじゃあ先に東に行ってツカサちゃんと一緒に変えちゃいましょ♪
その後、一緒に西海に行って、最後に この街ね♪〉
〈うん♪〉
昼近く。街の結界を変え終えた響とソラは避難所に戻った。
バックヤードの1室を忍者専用として、忍者移動(=瞬移)する私服忍者用に貰っている。
すぐ近くには倉庫があるので、段ボール箱を持って出れば一般ボランティアにしか見えない。
「あっ、響!」奏が駆け寄った。
「お姉ちゃん、そんなに慌ててどうしたの?」
「中学生や高校生が頑張っているのに、ほらまた……」
奏が向けた視線を追うと、年配の男性2人が言い争っており、周囲の大人達は迷惑そうに遠巻きにしているだけだった。
そこに中学生達が割って入って仲裁を始めた。
「ずっとあちらこちらで、度々なのよ」
「ホント情けないわね。
そうだ♪ お姉ちゃん歌ってよ♪」
「え……」
「お姉ちゃんじゃなきゃ空気を穏やかにはできないわよ♪
ソラ、楽器 探しましょ♪
きっと売り場に何かあるわよ♪」
「それなら輝竜さん家のを借りて来るよ」
「いいの? 勝手に」
「こういう目的なら喜んで貸してくれるよ。
使わない方が悲しむと思うよ」
「それなら……ワタルさんが東京だから、アコースティックでお願い♪」
マネージャーの魁とドラムのワタルは出張で東京に行ったままになっているとリーダーの爽から聞いた。
「ん♪」マーズ専用室へと走った。
「それじゃお姉ちゃん、曲を選びましょ♪」
「それなら今から癒し系のを作ってあげるわ」
「店長♪」
「爽も炊き出しの手伝いしてるから呼んで来てもらえる?」
ジャーンといった感じに丸めた五線ノートをデニムの尻ポケから出すとニッと笑った。
「はいっ♪」
屋上から始め、出来上がったばかりの曲も含めて持ち歌2曲毎に広いフロアの場所を移し、下の階へと移動しての奏&響達のバンドSo-χのミニライブは無事に成功し、外の広場まで付いて来た人々からのアンコールの手拍子が鳴り止まなかった。
中学生がソラに何やら耳打ちした。
ソラから響へ。響から奏へと伝わり、
「それじゃあ一度 歌ってもらえますか?」
の言葉で中学生達が歌ったのは輝竜兄弟の『虹の絆』だった。
フルで合唱し終えると、
「祐斗クン、お願い」
ソラがキーボードを用意していた。
「えっ?」「彩桜クンの為に♪」「はい!」
「みんなもコーラスお願いね♪」
奏に歌詞を書いた紙を渡してウッドベースを構えた。
『それではリクエストにお応えして、キリュウ兄弟の『虹の絆』です。
歌詞に出てくる『遠く』は、物理的な距離だけではありません。
近くに居たとしても、心の距離が離れていたり、暮らしている環境の違いに良さを見つけられず落差を感じていたり、そういう『遠く』も表しているんです。
それではお聴きください』
響に爽がコードを相談していたのでソラが言葉で繋いだ。
曲が終わると、窓から聞いていた人々も含めて、多くが涙ぐんでいた。
うるうるな人々から再びアンコールの手拍子が湧き上がる。
それは最初のアンコールよりも大きな波となって押し寄せてきた。
次は何を歌おうかと頭を寄せていると――
その広場には大きなサーカステントのようなものが2棟 出来ていた。
その一方から走り出たミツマル建設の順志がマイクを貸してくれとジェスチャーした。
『簡易ですが、お風呂が出来ました!』
歓声が上がる。
入口に巻き上げていた暖簾が下がると
『男』『女』の大きな文字が見えた。
また歓声が上がった。
『いっぺんに押し寄せないでくださいね!
整理券を配りますので、慌てず、居住ブースでお待ちください!
コンサートは明日もしますので!』
「「「「えっ?」」」」
バンドメンバーの驚きの声に笑いが起こった。
楽器を撤収して居住ブースで休憩していると、嬉しそうに騒いでいる声が聞こえた。
首を傾げて神眼を向ける。
「晴れたみたいね♪」「夕陽だね♪」
「そういえばショウ達 見てないね?」
「そうだね。お兄も見てないね」神眼サーチ。
「忘れてた~♪」あははっ♪
「見つけたよ。稲荷堂の作業部屋で瞑想してる」
「ショウ達が?」
「お兄が。あ、ショウ達も来――」【おい、行くぞ】
【ガイアルフ様どこに!?】ソラが消えた。
〈ソラ!? 急にどうしたの!?〉
―◦―
響の声は作業部屋の犬達にも聞こえていた。
【探す?】
【だな。コイツと居るより修行になる】
【兄様ってば~♪】【でも修行になるなる~♪】
犬達は朝からずっとカケルが寝落ちないように見張っていたのだが、輝竜家の妻達に呼ばれて山の社に行っていた。
戻ってすぐ再び出掛ける犬達だった。
カケルは犬達が中座していたのにも気付いていなかったし、今も居なくなったとは気付いていない。
―◦―
〈ソラ? 急に消えたけど、今どこ?
もうっ、返事くらいしてよね〉
暫くは静かに待っていた響だったが、ソラが何も言ってくれないのでシビレを切らした。
「もうっ、瞬移しちゃうもんねっ!
ソラの気を目標にすればいいのよねっ!」
〈ソラってば――〉えいっ!
「――ええっ!?」
話し掛けながら瞬移するとソラで綱引きしている神達が見えた。
「ソラに何してるんですかっ!?
ソラを引きちぎる気ですか!?
それとも燃やすつもりなの!?
ソラが何したって言うのよ!!」
ソラのすぐ近くには火の鳥(に見える神)も居た。
「よく見よ。ソラの頭は下だ。
それに無理はしておらぬ。
儂の父を出そうとしておるだけだ。
静かに見ておれ」
響の方は見ようともせずにキツネが言った。
「でもキツネ様――あ、いえ、後でいいです」
気迫に圧倒されて、少し離れて座った。
よくよく見るとソラの頭は確かにお辞儀するような格好で下にあり、両手を床に突いて具現化した身体を支えていた。
ソラの肩甲骨辺りから、もう1人のソラに見える神が重なり生えていて、総がかりで抜こうとしているのだった。
あ、そっか。
ヨシさん出した時と同じようなものよね。
もっと大変そうだけど……。
キツネと二言三言話して頷いたサイオンジがソラから離れて響と並んだ。
〈心配なんざ要らねぇよぉ。
次はオイラだぁ。
力は写しが入るんだとよぉ。
響チャンやカケルと おんなじだぁよ。
神様とも話せるらしいしなぁ。
なぁんも変わりゃあしねぇよ〉
〈でも どうして今?〉
〈神世になぁ、ま~た災厄が降るらしいんだぁ。
此処にゃあ大勢 神様がいらっしゃるんだがよぉ、今は神様は上に行けねぇらしいんだぁ。
だからオイラとソラが行こうかと――〉
〈それならユーレイ探偵団が行くわ!〉
〈そぉかぁ。響チャンとカケルなら確かに写しだから行けるなぁよ。モグもなぁ。
だ~が、ショウと力丸は神様だぁ。
行けねぇぞぉ?〉
「あ……抜けた……」「だなぁよ♪」
抜け出た瞬間は、ソラに瓜二つだがソラよりは少し歳嵩に見える人姿の神だったが、すぐに黒い狐に変わり、青火を纏ってニヤリとした。
「サイ、ショウと力丸は通れるやも知れぬ。
その設定に気付かれていなければ、だがな。
要領は得た。次はサイだ」「おぅよ♪」
黒狐神に返事をしたサイオンジはソラが居る場所へ。
ソラと黒狐神も加わって、サイオンジと魂内の神との分離が始まったので、響は今度こそ静かに見ようと決めた。
どうやらまだ災厄は終わっていないようで、次は神世に降るらしい。
という事でユーレイ探偵団は神世に行きます。
かなり強引に、ですけど。




