冒険者デビュー!
遅れてすみません
「さて、ダンジョンに潜って行きますか。ちょうど良い依頼はあるかな〜」
今俺は金を稼ぐべく、ダンジョンに潜ろうとしている。金を稼ぐためには依頼をこなす必要があるので、今は依頼書を探しているところだ。
「お金をまぁまぁ稼げて尚且つ食材が手に入る場所…」
この前特訓で入ったダンジョンはゴブリンとかぐらいしかいないからな〜できれば鶏肉とかが獲れる場所…お、ここ良いかもな。
基本的に出てくるのがコケッチョーという鶏型の魔物で、依頼がオークの棍棒を一から三つ持って帰るというものがあり、依頼達成料が一本につき千リルン。この前渡した金の最大五分の三は補うことができる。
よし、じゃあこの依頼にしよう。
依頼書を手に取って…
スッ
「あ。」
「あ。」
……偶然同時に依頼書を取ってしまった。
「ど、どうぞ…他の依頼やりますんで…」
「いや、別にどうしてもこの依頼をやりたいってもんでもないし、あなたがやってくれても良いんだけど…」
…困ったな、ここで譲り合いは良くない。魔法界だからペコペコしようとしたらちょっと面倒くさい。この沈黙の間どうしてくれんだよ……
「お困りですか?」
「いや、どっちがこの依頼をやるのかで困っていまして…」
「じゃあ、二人で依頼をこなせば良いのでは?」
「二人で……?」
「はい、このダンジョンに生息するオークがたまに群れていてここの常連でも死ぬ時があるので二人で行っても安全かどうか…」
オークってそんなに強いのかよ。
「なら、一緒に行ってみます?」
「私は良いっすけど…」
「じゃあ行きましょう。この依頼二人で受けます。」
「はい、ハンコ押しますね。」
ポン
「これでオッケーです。このダンジョンにはロープウェイを使って向かってください。」
チャリン
「これは…?」
「ロープウェイの乗り場の従業員に渡してください。」
このコインにはそういう切符的な意味があるのか…
「じゃ、行ってきますね。」
「お気をつけて〜」
一旦どっちが依頼を受けるか問題は解決したし…次はお互いのこと全然わかってないし自己紹介的なこと出来たらいいな。
「コインは?」
「これでいいですか?」
「…よし、乗っていいぞ。」
ロープウェイに二人で乗り込む。ダンジョンに着くまでにアイスブレイクできたら良いんだが…
「とりあえず、今日はよろしく。私はチトセ、あなたは?」
「俺はコトハ、こちらこそよろしく頼む。契約はしていて、ユニーク魔法は富嶽三十六景だ。」
「あ、ユニーク魔法についても言うのね。」
「え?ああ、別に言いたくないなら構わないが…」
「いや、言うわ。私のユニーク魔法は【魁題百選相】自分の血を固めたりすることができるわ。」
「自分の血を固める…?」
「ええ、簡単に言えば瘡蓋ができるのがめちゃくちゃ早くなるってだけの能力ね」
何その弱そうな魔法…
「まぁ、とりあえず潜りましょうよ!あ、それと…」
「ん?どうかした?」
「道中コケッチョーがいると思うんですけど、ちょっとそのお肉だけ回収させてもらって良いですかね?」
「実験でもするの?」
「まぁ、そんな感じです。」
料理知らないやつに『料理します!』なんて言っても意味ないからな。
ん?待てよ?チトセのユニーク魔法は血を固める魔法だよな?確かに瘡蓋を作るのは早くなるけどそれ以外でも戦闘面で何か使えないのか?例えば採血しといて戦闘中に使う…とか。
でも、本人の魔法だし俺がなんか口を出すのは何か違う気がするな…
『ゴケェ!コココッゴガ!』
「コケッチョーいましたよ。」
「あ、あざます…」
いや鳴き声いかつッ!
「【ファイア・ボール】」
ボォッ
『ゴケェ!』
キンッ
「え?は?おかしいな…今魔法使ったんだけどな…」
「いや、コケッチョーは魔法あんまり効かないよ?」
「あらら、そうだったの…」
魔法耐性があるのか…困ったな。物理攻撃なら…
「【アイアン・ソード】これあればどうにかなるだろ。」
「…なに?その魔法。」
「ん?ああ、学園のやつが使ってた魔法でな、パクらせてもらってる。」
「学園…やっぱり学園は面白そうね…」
「?」
まぁ良い!とりあえずこれで一匹ぶっ倒してやんよ!
「喰らえ!オラッ!」
『ゴゴゴッケーッ!』
「なッ!ナニィ!?」
し、真剣白刃取り、だと…馬鹿な!?そんな翼でどうやって…!
「コイツ!翼を土魔法で覆ってやがる!」
魔法まで使えるとは…恐れいったぞ…
「いや何してんのよ…」
「え?」
「コケッチョーが土魔法を使えるなんて常識中の常識じゃない…あなたここにくるの何回目よ…」
「初めてデスッ!」
「あっ、そっかぁ…」
この発言からしてこのダンジョンには何回も来ているらしいな。
「その剣貸してくれる?」
「え?良いけど。代わりにやってくれるのか?でもそいつ真剣白刃取りするぞ。」
「よっこいしょッ!」
『グエ、グエエエエエエエエエエエ!』
「おお、死んだ…」
「あなた、剣握ったこと全然ないでしょ?」
「おお、よくわかったな。」
そら、平和な世界に居たんですもん。剣なんてそんな、物騒なもの握ったことないですよ…
「縦がダメなら横から斬ればいいじゃない。」
「うん、そうなのか?そうなのかも…」
「とりあえず剣は練習しておいたほううが良いわ。特にこの剣を作る魔法を使うなら、ね。」
「はい…毎日三十分は練習します…」
「うーん、足りないかもしれないけどやらないよりはマシね。」
「もっとやらなきゃいけないのぉ!?」
とりあえずコケッチョーを袋に詰めよう。袋は超常界ではありふれたポリ袋!よく海に捨てられてるやつね。
宿泊イベントで持って行ってたんですよ…旅行とかにはポリ袋二、三枚持っていく人間なんで。
よいしょ、あと二匹入りそうで、あと袋は二枚だから…あと八匹は持って帰れるな!
「あと八匹、頑張って狩るぞ!」
「じゃあ、剣返すね。」
「いや、持っといてください…」
「え?なんで?あなたの魔力で作ったものでしょう?」
「いや、また自分の分は作るんで…」
「いやいや、そんな魔力消費キツそうだし、返すよ…」
「俺一人じゃ狩るスピード遅いんですゥ!お願いしますゥ!一緒に狩ってくださいよォ!」
「え、まあ…良いけど…」
結局俺が狩ることができたのは二匹だけで、残りの六匹はチトセが狩ってくれた。マジで感謝しかないので、魔法で作った剣はあげた。解除の仕方わからないし、持って帰るのもなぁって思っていたら『この剣結構手に馴染むから持って帰って良い?』って聞かれたので渡りに船だったのだ。
さて、やっとオークのいる階層に来たわけなんだけど…今の俺でも通用するのか?
「お、あれがオークか?」
「そうね、魔法に耐性は無いから物理で殴らなくても良いよ。」
「おっしゃ!なら…【フレイム・ランス・フォルテ】!」
ゴォッ
『グアアアアアアア!』
パタリ
「…あれ?もしかしてコケッチョーより弱い?」
「…そうね、魔法は効くし、威力が高めの攻撃で攻撃したから…でも変ね…頑丈さが売りのオークがこんなにあっさり倒れるなんて…嫌な予感が…」
「でもまぁ、とりあえず棍棒回収しようぜ。三本取った瞬間にこのダンジョンからトンズラすれば良いじゃん。」
「確かに…そうだけど…」
「あっちにあと二匹いる!行こうぜ!」
「…考えすぎかもね。」
『グオオオ!』
『ググオ!』
「【サンダー・ランス】!」
「ふぅ、【ウォーター・バレット・コーダ】」
ん?コーダ?繰り返しって意味だけど…
「うおっ、めちゃくちゃ生成して間髪なしに打ち込んでる!」
「三年の間ずっと研究したのよ、別に使ってくれても構わないわ。」
「お?じゃあ、試しに一回【サンダー・ランス・コーダ】」
おおすげぇ!いつも一発一発に詠唱が必要だったのに連続して撃てる!一発一発撃つごとに魔力は消費されるのね。
「うおおお!改革だぁ!」
「それは良かった。」
「そんじゃ、この重い棍棒持ってダンジョン出ますか!」
「そうね、今日はありがとう。」
「いえいえ、また機会があれば一緒に依頼受けましょう!」
『そうは問屋が下さないんやなぁ、これが!』
「「!」」
なんだ、この声は…!
『うちのガキやってくれた礼したろやないの、逃さんで?』
「なんだ、こいつ…オークっぽいけどゴツすぎるッ!」
「…運がなかったわね…」
「?どういうことだ?」
「コイツは『オークジェネラル』オークの上位種よ…」
上位種!?そんなものもあるのか…!
「どうりでオークたちが弱くなっていたわけだわ…上位種が生まれる時は辻褄合わせのために周りのモンスターが弱めに生まれてくることが多い!あの段階で気づいていれば…」
『タラレバなんてどーでもええねん。あ、そうそう前のジェネラルがなぁ相手に逃げられた挙句報告され、大軍相手にして負けたっちゅうから、対策させてもらうで。』
ブオン
「!これは…!」
『ワイのユニーク魔法【漆絵鳥籠図】や。ワイの代で貰えたもんがこれとは、ワイも随分ついてるもんやなァ!』
ドゴッ
「危なっ!」
クッソ、逃げ道はあいつのユニーク魔法で塞がれた。どうする…
これが本当に魔法なら魔力切れまで待つのも手だが…さすがにジリ貧すぎる。
だったら…
「チトセ、あいつって俺たちだけで倒せるか?」
「…あなたの力量によるわね。」
「じゃあ、倒せるな。」
「コケッチョーもろくに倒せないあなたが?」
「う、うるせえ!」
『会話は済んだんか?』
「わざわざ待ってくれたのか、優しいな。」
『なぁに、何も言えずに一方的に死ぬことが一番の苦痛やってことは、ジジイどもから死ぬほど教わったからなぁ!』
「いくぞ!」
「ええ!」




