魔法界には公衆浴場を設置できないらしい
現在朝の九時。
いつもなら授業を受けているんだろうが、今の俺は生憎謹慎中!いやぁ、授業受けたかったなぁ(笑)
とまぁ、寮に絶賛引きこもり中な訳ですが暇すぎる。
魔法界では通信技術がそんなに発展しておらず、テレビは愚かラジオすらない。
当然、フォークでタワーを作っていると飽きがやってくる。
「…暇だなぁ。」
暇になり始めたので、朝二人にどんな料理を夜ご飯にしてほしいかメモに書いておいてもらった。
『歯ごたえがあるモノ』とか『ジューシーなモノ』とか書いておいてくれているはずだ。
では、開封しましょうか。
「えーっと…」
『肉』『オススメ』
えぇ…
もうちょっとなんか書くものとかなかったのか…?
カレンが書いたのが『肉』でアンビアスが書いたのが『オススメ』だな。
超常界でよくあるゲームとか小説に出てくるエルフってだいたい草食だけど魔法界のエルフは食べるんだな。…ていうか食文化自体ないから肉食べたらダメとかないのか。
肉料理でオススメ…なんかハンバーグ食べたいし、ハンバーグにするか。
そうと決まれば素材屋にレッツゴー!待ってろひき肉ゥ!
ちなみに寮を学校以外の目的で出るときは外出届を出さないといけないのだが、届の紙がきれているらしく、出さなくてもオッケーと言われた。
で、素材屋に着きました。
「らっしゃい!…なんだあのお高い鍋を買ってくれた嬢ちゃんか…あんた学校はどうしたんだよ?」
「今謹慎中でして…」
「あぁ…そういうね…」
「ところで肉って置いてあるか?」
「今日はコカトリスの肉とオークの肉、ミノタウロスの肉があるぞ?ミノタウロスは在庫が少なめでコカトリスは在庫多めだ。」
「うーん。オークの肉一つお願いします。」
「あいよ。もってくるわ。」
この素材屋で肉を買うときは数字には気をつけなければならない。一つでだいたい三人分の肉だ。だから一人で何か作るときは三分の一と言わなければならない。
「ほい、オークの肉一つ。」
「ありがとうございます……あ。」
そのままの肉だな…これじゃあハンバーグ作れねぇぞ…
「あの…店長さん。」
「ん?どうした?」
「ひき肉って置いてないですかね…?」
「ひき肉……ってなんだい?」
料理文化が無いせいでひき肉無いのか!
「その…めちゃくちゃ小さくして液状にちょっと似てる感じの肉なんですけど…」
「ああ!ハズレ肉のことね!」
「は、ハズレ肉?」
「ダンジョンで魔物をいたぶりすぎて細かくなりすぎてベットリしてる肉のことだよ!ちょっと待ってな?持ってくるわ!」
ハズレ肉…魔法界ではそんなふうに呼ばれてるんだな。まぁでも、それがひき肉と決まったわけじゃないし…
「これこれ、これがハズレ肉だよ!」
「おお!」
ひき肉だ!まんまひき肉だ!
「五百グラムください!」
「そんなに!?」
「も、もしかして在庫そんなにないんですか?」
「いや、普通ハズレ肉なんて誰も買わないからさ、私的にはとても嬉しいけど、こんなの何に使うのさ。」
「…超常界の料理って言うのに憧れてまして…ちょっと作ってみようかなと。」
「へぇ、超常界にはハズレ肉を上手く活用する方法があんのね。面白い話ね。」
嘘は言ってないから…
「ほい、ハズレ肉五百グラム。お代はいらないよ。ずーーーっと倉庫に置いては腐らせてを繰り返してたからね。」
「ありがとうございます!」
「今後もご贔屓にねぇ〜」
とりあえず食材ゲット!
まだまだ時間あるし散策して帰るか…
「さぁさぁ!買った買った!ミルク風呂の素販売中だよぉ!」
ミルク風呂…牛乳を使った風呂のことか?
「この、ミルク風呂っていうのはミルクを使った風呂のことか?」
「お!そうそう!そういうことだよぉ!」
「でも、素ってなんだ?ミルクの風呂ならミルクを入れないといけないんじゃ…」
「チッチッチ…なんとこの素!普通の風呂をミルク風呂に変えることができるんです!」
「へぇ。」
「ちなみになんのミルクだ?」
「♀ミノタウロスのミルクですね。」
つまりは牛乳か…
昔ヨーロッパとかでは牛乳の風呂に美容効果が高いことを理由に女性が入ってた、と聞いたことがある。
ここだけの話なんだが、カレンは風呂が大好きだ。
いっつも二十分以上は浸かっているからな。
たまに俺も一緒に入らされるんだが、たまにはこういうミルク風呂とかに浸かってもらうのもいいかもな、恩返しにもなるだろうし。
「よし、買おう。」
「…え?今買うって言いました?」
「はい。何リルンですか?」
「え……四千リルンです…」
四千リルンか…さっきサービスしてもらったおかげで買えるな!
「じゃあはい、これ四千リルンです。」
「た、たしかにいただきました。では、これ素です…」
「ありがとうございます!」
よし、もうそろそろカレンたちも帰ってくるだろうしな!風呂沸かして待っとこう!
「あ、あの…」
「はい?」
「一応こんなこと聞くのは良くないってわかるんですけど、誰と入るんですか…?」
ん?誰と?別に一緒に入るとか考えてなかったんだけどまぁ、一応カレンと入るってことにしとくか。もしかしたら今日も誘われるかもしれないし。
「友達とですねぇ。」
「と、友達!?しゅ、種族の方は…」
「エルフですね。」
「え、え、エルフ!?」
「はい。何か?」
「い、いえ…」
?なんだったんだろう。とりあえず帰ろう!
「…最近の若い子って積極的だなぁ。」
-二時間後-
「コトハ、先に風呂に入らないか?」
「ん?良いけど。」
結局今日も一緒に入ることになったな…まぁでも、直で嬉しそうにするところ見れるからいいかもな。
さてカレンは喜んでくれるかな?
「なんか今日の風呂、ミルクのような匂いがしないか?」
「ん?ああ。浴槽見てみ?」
「え!?ミルク風呂!?」
おお、そんなに大声を出すぐらい喜んでくれたか。さて今どんな顔……ん?
なんかめちゃくちゃ赤面していらっしゃるんだが…
「こ、コトハ!これはどういう…!」
「いや、今日食材買いに行くついでに街でミルク風呂の素っていうのを見かけてな…ミルク風呂に美容効果あった気がするってなって思ってやってみたんだが…嫌だったか?」
「え?は?えっちょ…スウゥッ、そうじゃなくてさ…」
「?」
「み、ミルク風呂ってエルフ族の結婚の儀式だよ…?」
「……今、なんて?」
「だから、結婚の儀式………」
あーーーーーー…あの質問はそういう意味だったのか…
「…取り消しってできたりする?」
「取り消しも何も儀式っていうことにはなってるけど契約みたいな強制力はないよ。」
「ホッ…ならまだセーフか?」
「ま、まぁ一応ね…」
強制力はなくてもまぁ一緒に入ったっていう記憶はカレン的にはどうやっても消せないだろうからな。
このあとこういう結婚系の儀式についての本をカレンから渡されて徹夜で読んだ。ちなみに儀式ではないが裸で風呂に一緒に入るのは親友よりも堅い絆で結ばれていることを意味するらしいが、じゃあ今までのあれはいったい……?
ちなみにアンビアスは俺とカレンの間で何が起きたのかは何も知らないしミルク風呂に関してはたまにはこういうのも良いねとのことだった。
ハンバーグは風呂での事件のせいで少し焦げてしまったが、美味かったので良しとする。




