てるてる坊主へのお願い
梅雨の時期になり、雨の日が多くなりました。
そんなある日、家の中では、小学生くらいの女の子が、工作をしていました。
作っているのは、てるてる坊主。
「明日は遠足だから、晴れにしてね」
女の子は、てるてる坊主を窓に吊るしてお願いします。
すると、てるてる坊主が微かに揺れます。
『いいよ、任せて……』
「えっ?」
どこからか声が聞こえ、女の子は驚きます。
てるてる坊主を見ると、空を向いていました。
「めぐみーっ、そろそろ学校に行く時間よーっ!」
「はーい!」
母親に呼ばれ、めぐみはランドセルを背負って部屋を出ました。
次の日、昨日の雨がうそのように、外は雲ひとつない青空でした。
「すごい、本当に晴れちゃった……」
めぐみは驚きましたが、すぐ笑顔になりました。
そして、元気に遠足に出かけました。
遠足を楽しんだめぐみは、友達にてるてる坊主のことを話します。
「今日が晴れたのは、私のてるてる坊主のおかげなんだよ!」
「へぇー、すごいね!」
「そうでしょ? お願いすれば、いつでも晴れにできるんだから」
「本当?」
友達は、少し疑っていました。
なので、お願いしてみることにしました。
「だったら、あさっての日曜日、ドライブに行くから晴れにしてよ」
「いいよ、お願いしておくね!」
「ありがとう!」
家に帰り、めぐみはまた工作を始めます。
そして土曜日になり、その日は雨でした。
「今日は雨だけど、明日は晴れにしてね」
めぐみは、てるてる坊主を吊るし、お願いをします。
すると、またてるてる坊主は揺れます。
『いいよ……』
また声が聞こえ、めぐみは目を開けます。
そこには、笑顔のてるてる坊主がめぐみを見ていました。
めぐみもうれしくなり、微笑みます。
しかし、日曜日は雨でした。
しかも、どしゃ降りで雷も鳴っていました。
「うそ……晴れるようにお願いしたのに」
すると、家の電話が鳴りました。
電話の相手は、友達でした。
『めぐみちゃん、ちゃんとお願いしてくれたの?!』
「しっ、したよ。ちゃんと吊るしてお願いしたんだけど……」
『こんな天気だからって、ドライブできなくなったんだよ!』
「そんなこと言われても……」
『めぐみちゃんの、うそつき!』
そう言って、友達は電話を切りました。
一方的に責められ、めぐみは涙がとまりませんでした。
そして、走って自分の部屋に向かいます。
部屋に入っためぐみは、窓に吊るしてあるてるてる坊主を睨みます。
そして、強引に取りました。
「ちゃんとお願いしたのに、晴れなかった……」
ぽつりと呟き、めぐみは机の上のはさみを手に取ります。
「あんたなんか、こうしてやるっ!」
そして、てるてる坊主の首を、切り落としてしまいました。
その時、雷が鳴り、部屋はまっくらになりました。
「えっ、停電?」
すると、突然窓が割れ、鋭い物が飛んできました。
それは、めぐみの首を直撃しました。
やがて、明かりがつき、部屋を照らします。
しかし、めぐみの姿はありません。
残っていたのは、首を切られたてるてる坊主だけでした。
その表情は笑顔でしたが、とても悲しい顔をしていました。
『ふふふっ……』
小さな笑い声だけが、ずっと部屋に響きました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!