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そして俺は入部した。

俺は、その日の部活見学が終わると、『生物研究部』への入部届を持って、すぐに1階の職員室へと向かった。


こんな会話があった。


『それで、夏瑪くん。どうする? 《《ここ》》に入部するかい?』


『あたしはイヤよ。なんで男のあんたがココに入れると思ってんの?』


水仙(すいせん)、この部活は性別不問だよ。それに、私たちとしても人数が増えたほうが都合が良いことは理解しているだろう?』


『……そうだけどぉ……。』


『……あの、失礼かもしれないですけど、こんな部活で『人数』とか重要なんですか?』


『ああ、言っていなかったか。というか、君も『部を設立する条件』があるのは、担任や部活関係の書類で見聞きしなかったかい?』


『ああ……えーっと……。』


『ふふっ。まあ、君が気にするようなことではないかもしれないね。……端的に言うと、『部活を継続するのに部員が4人以上必要』なのさ。それも、アクティブな部員がね。』


『アクティブ……籍を置いてるだけじゃダメなんですか?』


『そうだね。いちおう、部活の維持にも経費がかかる。『ハムちゃん』や『金太郎』たちの世話もあるからね。……


『現在、この『生物研究部』には3年生が2人、そして2年生の私たちが2人の、計4人在籍しているが、活動してるのはこの通り、私と水仙だけなのさ。活動……つまり、生物の世話もそうだが、部費を出しているのも私たちだけ。』


『……別に、飼育するためのお金なら、あたしたちだけでも出せるのに。』


『……まあ、それはそうだが、学校側が定めた規則……『部費を納める能力がある人員』を『部員』と定めている以上、この『人数』についての問題は、私たちの我儘(わがまま)でどうにかなることではない。』


『……人数が必要な理由は分かりました。俺で良ければお力添えしますよ。』


『ふふっ。ありがとう、助かるよ。君としては不本意かもしれないがね。』


『……いや、そんなことないです。なんか、おもしろそうですし。』


『……ふん、どこがおもしろいってーのよ。テキトー言ってんじゃないわよ、ったく。……あれっ、電源つかない……あれっっ!?』


『そのスマホ、防水じゃ無いのではないかい?』


『はあっ!? 先に言ってよッッ!?』


『いや、てっきりウェットシートなどで拭くのかと思っていた矢先、蛇口のハンドルに手をかけたから、こちらも驚いてしまってね。』


『バカっ!! 青蓮(せいれん)マジありえないっっ!! アホッッ!!!』


『ははっ。すまないね、私にも非があるのは認めよう。修理費を半額ほど負担するよ。』


『要らないわよ!!』


かくして、入部の許可を得た俺は、担任へ書類を提出し終えて帰路についた。


あのとき、あまりに混沌とした空間から逃げるように退室したわけだが、訊きそびれたことがある。


活動している部員が《《4人》》以上必要、ということは、俺以外に入部する人が1人以上必要なはずだ。彼女らの口ぶりから、他に見学しに来るような人はいなかったようだし、いったいどうするつもりなのだろう。


彼女らの感じからすると、あの2人だけで活動していた期間は決して短くは無いだろう。ということは、部員が4人を下回ったその時点で、すぐさま部活動が解体されるわけではない。更新があるのはおそらく、《《この》》時期。1年に1度、新入生の入部申請の時点で更新されるのだろう。


つまり、《《明日》》。入部届の提出期限である、明日の18時に、決まる。


もし『生物研究部』が解体されたとなれば、俺は二度と青蓮と関わることは無くなるだろう。……そんな気がする。


これまで意図的に避けていたのが嘘のように、俺は彼女に強烈に惹かれてしまっている。彼女との接点である『部活』を失いたくない。


どうにかして、もう1人見つけ出さなければ。


俺は帰路の途中、たしかな決意を胸に秘めた。

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