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銀髪のエルフ  作者:
三章
15/22

銀髪のエルフ⑮

 エルリックが望んだ席は、酒場だった。店内は狭く、俺たちはテーブル席の一番奥に座った。この店にいる客は俺達を除けば二人と少なく、繁盛しているとは到底思えなかった。エルリックは席に着くと、ウェイトレスの注文に水と焼き魚と干し肉を三つづつと答えた。

「ファルと言ったかな。お主は、冒険者になる前は何をしていたんじゃ」

 エルリックは俺を見ながら、小さな声でそう言った。彼は腕をテーブルの上に乗せ、向かい側で俺とアリシアの真ん中の位置に座っていた。

「さあ、なんでしょうね」

 俺ははぶらかし、隣のテーブルを見つめた。

「まあ、そういわず。少しの余興というやつじゃよ」

 エルリックはやはり小さな声で笑い、テーブルに包みを置いた。金がこすれる音がする。俺はそれに視線が向きそうになるのを、何とかこらえた。

「金はあるから、わしが払うから、心配するな」

「別に心配してない」

 俺は、つまらないと思った。だが、俺はこの老人が依頼主である限り、この老人の機嫌を取らねばならなかった。仕方なく、前を向く。

「今の若いやつは、冒険者になりたがるからいかん。少し前、わしがまだ小さい子供だったころはそれほど多くはなかったんじゃがな」

 男二人の笑い声が、一斉に店内に響いた。

「そりゃまた、どうして?」

 エルリックは、俺の顔を凝視した。

「さあな。わしも正直知らん。ああいうのに憧れる者が多くいたんじゃろ」

 エルリックはそこで一度口を閉ざした。

「ファル、お主はどうして冒険者になったんじゃ?」

 エルリックの茶色い瞳が、俺の瞳を刺した。店内が熱かった。汗を掻き、額がかゆくなる。俺は二度瞬きをし、笑った。

「簡単だよ。職がなくなった。少し、言えない職でね・・・ほら、彼女。カナデラが少しやらかして、俺はその手伝いをしてたもんで・・・」

 俺は小さく息を吸い、呼吸を整える。手の甲で、額をぬぐった。アリシアは今、魔術師らしき怪しい人物で通っている。それを使った嘘だった。

「なるほど・・・訳アリ、というわけじゃな」

 エルリックは納得した風に腕を組み、椅子に深く座りなおした。

「ああ・・・言えないから、そのあたりは訊かないでほしい」

 誰かの足音が聞えた。エルリックが急に前のめりになり、分かったよ、と言った。ウェイトレスがテーブルに水と焼き魚と干し肉を三つ分置き、去って行った。

「それで、いつ出発するんだ?」

 俺は、エルリックが喋るよりも早く口を開いた。

「何・・・何時でもよい。お互いに準備が整ったら、出発しよう」

 彼は俺の質問に答えると、すぐにフォークで平べったい干し肉を刺し、白い歯を見せ、力いっぱい嚙みちぎった。目を細め、愉悦を感じている。

「野外の準備をしたい。そうだな・・・あと一時間後に南門前に集合するのはどうだ?」

「ああ、それでいいとも」

 エルリックはそれから、酷く楽しそうに口に多くのモノを含み、咀嚼した。俺はまたエルリックが質問をしてくると思ったが、彼は食事を辞めることは無く、二度、干し肉をお代わりし、パンを頼んだ。

文字数が少なくなってきました。あと数話で終わると思います。

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