目覚めたらそこは(2)
「…気分の方はどうですか、ベラ様」
青髪の黄色い目のイケメンに聞かれる。
は…?話しかけてもらえてしかも気分がどうか尋ねられるとかご褒美?前世でそんな徳積んだっけか?
いかんいかん、とりあえず会話は成立させなきゃね。異世界転生なんてそうそうできる体験じゃないし、楽しまなきゃ。
「心配ありがとう。気分はとてもいいわ。……不躾な質問で申し訳ないのだけれど、貴方の名前を聞いてもいいかしら?」
イケメンは一瞬目を見開いたが、すぐに先ほどのポーカーフェイスに戻って答えてくれた。
「…俺の名前はリアムです。どうしましたか、ベラ様」
不審そうな目で見られ、「いえ、なんでもないわ…おほほ」と言って誤魔化した。
「そうですか。では、気分もよろしいようなので、俺はここで失礼します。待女がもうじき来るはずなので大人しく待っていて下さい」
「あっ、はい」
リアムはまた驚いたような表情をしたが、丁寧にお辞儀をして静かに去って行った。
彼が出て行き、足音が遠ざかっていくのを確認してからため息をつく。
「っ、はぁぁぁ…イケメンって凄いわね…!中高一貫女子校に通ってた私はイケメンどころか若い男すら遠い存在だったのに!
温泉に来るおっちゃん以外の男性とあんな話したのは十年ぶりくらいよ!」
大人しく待っていろ、と言われたけど、ただソファやベッドで待っているのもつまらないし、身の支度をしようにも、どこに何があるかまったくわからない。
私は大きな窓のカーテンを全開にしてみた。
「わぁぁ…っ!」
パステルピンクやブルー、イエロー、グリーンなどの色とりどりのお家が、だいぶ下の方に沢山並んでいる。
少し先の方には漁港のような場所もある。朝市で賑わっているようね。
それにしても、海が真っ青で綺麗。もう少し遠くの方にはピンク色の場所がある。サンゴ礁かな?
窓を開けると、潮風が気持ちいい。
こんなふうに安らげるのは何年ぶりだろう。ずっと親の介護に勉強に学校に仕事に…。ここ数年はずっと動きっぱなしだった気がする。
気持ちいい潮風で完全に目が覚めた頃、コンコン、とドアがノックされた。
「ベラ様、おはようございます。サラです」
サラ…誰だ?まぁ、リアムがさっき待女がそろそろ来るとか言ってたし、多分待女さんなのだろう。
「はーい、どうぞ!」
「えっ!?」
「!?」
返事をしたら、ドアの向こうからすっとんきょうな声がした。
急いでドアに駆け寄り、そっとドアを開ける。
「だ、大丈夫ですか?」
「おっ、お嬢様が…!!」
「?」
「お嬢様が喋ったぁぁぁぁ!!!」
ん?私が喋るとなんか変なのかしら…?
ドタドタと走ってくる足音が聞こえる。
「お嬢様が喋った!?!?」
髪を乱した一人のメイドさんがスライディングしながら私の前に来た。
「お嬢様、お嬢様、喋ったんですか!?本当に!?声聞かせてください!!!!」
「えっ、あっ…」
あまりの勢いに驚いて固まっていると、わらわらと部屋の前にメイドさんたちが集まってきた。と言っても5人ほどだけれど。
「なんの騒ぎだ?」
廊下の右の方からまたもや知らない男性が来た。待って、この人…私の推しの主人公のお兄さんに超似てる!!
そういえば、この見た目も主人公の妹に似てない!?
おぉ〜…これは、私が知っているアニメの…正確にはゲームからアニメになった超大ヒットゲームの主人公の妹になれちゃったということですな!?
「ああああ、リドルさまぁぁお嬢様がぁぁぁ」
「……ベラがどうかしたのか」
「おはようございます、リドルお兄様」
推しが画面から出てきてくれないと嘆いたあの日々の願い、いっそ私が画面の中に入りたいという願望が叶ったのだから、存分に推しに媚を売らねば!
そう思って満点の笑顔で挨拶したら…。
リドルがフリーズした。
「リ、リドルお兄様?どうなさったのですか、急に固まって…体調が優れませんか!?」
慌てて駆け寄ると、リドルは「あぁ、いや」と言って後ずさった。
「きゃっ」
女の子らしい可愛らしい叫び声と共にぱさっと布が地面に落ちるような音がした。
「っ!ユカ!すまない、大丈夫か!?」
「え、えぇ…大丈夫ですわ、お兄様。こちらこそ真後ろから近付いてしまい、申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げると、金色の髪がさらさらと揺れた。
とても綺麗…。
見惚れていたら目が合った。挨拶をしようとしたら、キッと睨まれ、目を逸らされてしまった。
「お兄様、食事の時間ですわ!行きましょう!」
そう言ってユカがリドルと腕を組んで引き摺って行ってしまった。
「お嬢様のお食事も用意されていますよ。お部屋に戻りましょう」
二人はあっちの方に行ったのに、私は部屋?
少しだけ違和感があったが、私は大人しく部屋に戻った。
すみません章分けがへったくそなのは私の顔に免じて見逃してください