真の英雄、凱旋する?
「これは……」
「すごい!凄いですよ、お祭りじゃありませんか!」
僕達が森からイグニス帝国城に向かう途中、城下では至る所で歓喜に沸く老若男女が踊り宴を始めて歌っていた。
四大帝国の1つであるイグニス帝国は『炎の帝国』と呼ばれ、スキルも火に関係し、火のランクが高い人が多い。
帝剣と蒼炎の伝承があるように、魔王を最も倒す可能性が高い国でもあった。
とは言え他の3つの国は帝剣と蒼炎の伝承なんて信じていなかったけれど。
帝国は他に4つ。
風のミストラ帝国、水のオーヴァル帝国、土の帝国グランディナ帝国。
そのどの国も魔族との闘争に明け暮れており、そして魔王を倒した国がオーヴ大陸の統治国となると言う協定を結んでいた。
蒼炎で魔王を倒した、それはイグニス帝国が世界最大の大陸の統治国、つまりは世界を掌握したと言うこと同然。
だからこそイグニス国中お祭り騒ぎだったと言うわけだ。
「英雄の正体がわからないままこんな騒いでいるなんて不安じゃないのかな」
「いいじゃありませんか!だってニース様が倒したと名乗り出るんですよね?とりあえずお城に向かえばいいんですかね?」
「いや、それは……ん?」
イグニスの伝統色である真紅で彩られた中、黄土色と濃紺、そして碧色の軍団がぞろぞろとイグニス城に入って行くのが目に入ってきた。
間違いなく、グランディナ、オーヴァル、ミストラの三帝国の兵士達だ。
イグニスの魔王討伐を歓迎しに来たのか、服従を示しに来たのか、それとも……
「ウルツァイト、僕は少し城の中に入ってくるね。だから少しだけここにいてくれない?」
「なんでですかお断りします!私はニース様を護る鎧、ニース様あるところに私ありです!」
「でも、その真っ白な身体じゃあ目立つし魔族は入れないから……」
スライムが街にいるのは珍しいことではない。
魔族でも単純思考で害のないくらい弱い魔族は人族に飼われているなんてことはよくあるからだ。
だが、城内は別。
どんなに弱く調教された魔族だろうと入ることは禁じられてている。
一国の主がいる城だから当たり前と言えば当たり前だけど。
「わかりました!私に任せて下さい!」
ウルツァイトは近くの衛兵をじっと見つめると、瞬く間にその身体を変化させて行く。
「はい、どうぞ着て頂いて結構です!通気性も保温性も自由自在に調整できて、あらゆる攻撃を防ぐ究極の軍服です!」
真紅のイグニス帝国軍服に変化したウルは勝手に僕の身体に纏わりついてくる。
服が1人でに動き出し、僕の服を脱がせる姿は奇妙で誰かに見られて説明できるものではない。
「わかったから服を脱がさないで!自分で着るから!」
そんなこんなで着替えると、僕の身体は勝手に動いてしまう。
「さて、行きましょうか!英雄の凱旋です!」
「いや、まだ僕言うって決めてないんだけどな……」
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