『□』
「あの、ウルツァイトっていったよね?」
「はい!何でしょうか!」
白スライムは僕にすりすりと寄り付いてくる。
こうしてみるとちょっと可愛いんだけどやけに馴れ馴れしい。
「魔王が消しとんで、それに魔龍も跡形も無いんだけど……」
「いや想像以上でしたねー、まさか一撃だなんて私もびっくりですよー!でもこれで世界は平和ですね!」
無数の魔族と魔王、魔龍が消し飛んだ後、ウルツァイトと名乗るそれは僕から離れて再びスライムのような形になっていた。
確かに平和になったのかもしれないけど。
「君は一体何なの?」
「私?私は変なスライムです!!」
「…………」
「じ、冗談ですよー、実は記憶が無くて説明出来ないんですよ……これは本当ですからね!?と言うか私の事よりニース様ですよ!英雄になったんですから、イグニス帝国に凱旋……って、どうかしました?」
理解できないことがある。
「何故僕を助けてくれたの?」
するとウルツァイトは、え?と声を上げる。
「あの、ニース様がわたしを助けて下さったんですよね?それにニース様が出すその炎、それは私に必要な力ですから」
「蒼炎が?これはそんな大層な力じゃ無いよ」
「それはご自分を過小評価し過ぎですよ?現にニース様は魔王を倒したじゃありませんか。それがニース様が最強英雄たる証拠です」
「でも僕は魔力を奪われたんだ、それなのに何故スキルが使えるんだろう」
「ん?ニース様の魔力無くなってませんよ?ちょっと解析しますねー」
「え、ちょ、うぶっ!?」
ぬめんと俺の頭にとりついたウルツァイトは何かし始める。
「スキル名『ギンコウ』ですか、なるほど……よくわかりませんね!」
「は?いや『空白』だよね?って僕も読み方はわからないんだけどさ」
「うーん、でも私には『ギンコウ』って読めるんですよねー、四角くてでも少しくびれがあって、歪な形で……まぁ、私にも『ギンコウ』が何かはわからないんですけどね!」
何それ……でも、このギンコウスキルが僕を助けてくれたのか。
「今まではニース様のお力を理解出来ない人にしか出会って来なかったかもしれません……ですが、それはもう今日でおしまいです。私を介することでニース様は力を扱え引き出せるようになります!!」
魔王を倒したのが僕の力?本当に?
そんな不安をかき消すようにウルツァイトが言い放つ。
「貴方は、皆が必要としている英雄ですから!!」
「…………うぅ」
「……あれ?あのー、ニース様?」
「ウルツァイトォォォォォォォ!!ありがとうぉぉぉぉぉぉ!」
「ニース様そんなに泣かないでください、貴方はやればできる人、いや誰よりも出来る人なんですから!!全く泣き虫で……あ、ちょ、そんな私の身体に顔を埋めないで……ひゃいん!?そこはダメです、ニース様聞いてますか!?ニース様!?」
………
……
…
「ふぅ……ありがとうウルツァイト、ある程度状況は理解したよ、ってなんだかさっきより色が赤いけど大丈夫?」
「はぇ!?大丈夫ですよ!?」
「そう?ならいいけど……」
とりあえず考えたけれど、まずは街に戻るのが先決だろう、イグニスの詳しい状況も知っておきたいし。
「ニース様!あれを見て下さい!」
ウルツァイトが僕の頭に取り憑くと残った魔王軍が散り散りになっていく姿、そして軍団は何かに統率された様に綺麗に逃げて行く。
「どうやら、人族の完全勝利と言うわけではなさそうですね」
「とにかく街に戻ろう、詳しく知りたいこともあるから」
そうして僕達はイグニス帝国城へ走り始めた。
「あ、私そんな早く走れません!ニース様抱っこして下さい!」
……本当にウルツァイトって何なんだ。
補足:ニースのスキル「□」はウルツァイトにのみ別になものに見えている。
それはある世界のある国の地図の記号である。
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