エピローグ
ふわりと、何かに抱きしめられる。
ユグドラシル様?それとも蒼皎姫状態のウル?
安心する様な何処か懐かしいような。
そして僕の口に重ねられた柔らかな感覚と同時に、暖かな何かが流れ込んで来た。
……僕の幻覚だろうか?
見上げた先にいたのはユグドラシル様でもスライムでも蒼皎姫姿のウルツァイトでもなく、白い瞳と白髪の美少女に見えた。
涙を零すその少女は僕が今まで見た誰よりも綺麗な瞳と睫毛をしていた。
少女の柔らかな膝枕はとても良い香りで、それでいてまた感じた安心するような懐かしい感覚。
それよりも僕は、何をしていたんだっけ?
魔王を倒す為に旅をしていて……それで魔力を奪われて、何かに出会って家族が出来て……
なんだろう、あまり思い出すことが出来ない。
でも、いつも側に誰かがいた気がする。
そう、その名前は……
◇ ◇ ◇ ◇
「……ウル!!」
「あひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
そうだ、僕を護り僕を助けてくれた謎の白スライム、ウルツァイト。
いつの間にか僕はベッド、と言うよりスライム状態のウルの上に寝ていた。
「ニィィィィィィィイス様ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!死んだかと思いましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「……夢か、あれ?ここは?」
「聖塔のユグちゃんのお部屋です!安心して下さい、メルタザイトとリスティは今も氷漬け、もう動く事はできません!」
そう、そうだ。
リスティ、そしてメルタザイト。
真の魔王との決戦は……そっか、終わったのか……
徐々に意識が覚醒して行く。
そして周囲をよく見れば、泣き腫らしたであろう目でも、いつもの態度を変えない女の子がいた。
「パパ……」
「ルキ!無事だったんだね!?怪我はない!?いやあるよねでも立っていられる所を見ると平気そうでよかった!」
「だ、大丈夫よ!!私の偽物なんて楽勝だったんだから、と言いたいけどユガがいなければどうなっていたかわからないわ。それよりもママにお礼を言った方がいいんじゃない?1週間も飲まず食わずで看病していたんだから。まぁ、ママはそもそも飲み食いしないけど」
「え、まさか1週間も寝てた?」
「そうですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!だから死んでしまうかと心配したんですからぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「そっか、ありがとうウル……本当にありがとう」
死んだかと思ったのは僕もだ。
魔力侵蝕と爆発で瀕死だったはずなのに……
「ふっ、君達を見ていると我の入る隙は無さそうだ」
「ユガ王、本当に助かりました」
「それはこちらの台詞だ、ニース、蒼皎姫殿がいなければどうなっていたことか……ありがとう。当然ルキ、君もだ」
「ま、少しは認めてあげるわ。でもパパの妻って言うのだけはまだ認められないわね、精進なさい」
「はははっ、手厳しいな!もっと色々と話をしていたい所だが順番待ちがいるようだ。ニース、蒼皎姫殿、いや……ウルツァイト、ありがとう。いつでも我がイグニス帝国は君達を歓迎しよう、ではな……ああ、そうだニース」
「はい、っむぅ!?」
その直後、僕の唇にユガの唇が重ねられる。
「真の魔王を倒しはしたが君を帝族に迎え入れる準備はいつでも出来ている、それではな」
「…………」
「女狐めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!やはり今ここで蒼炎の灰にしてやりますぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「落ち着いてよ戦争する気?でも流石にバレたわね、ママが蒼皎姫だって」
「まぁ、そうだよね」
英雄の弟子の使い魔がスライム、なんてことで誤魔化せはしなかったみたいだ。
あまり深く詮索しなかったのはユガなりの気遣いなのかもしれない。
「あら?ユガはどうやら振られたようですわね……さてニース、わたくしが来ましたからにはどう言う理由かはわかっていますわよね?そう!貴方を我がミストラ帝国の新しき血族にゅぃぃぃぃぃぃい!?」
次に現れたのはシャロだったけど、ほっぺをスーリに思い切り引っ張られ涙目になっていた。
「はいはい勝手に話を進めないでください、貴方が父上の妻になるなんて不安しかありませんから却下です」
「な、何をいいなさるんですの!?わたくしと貴方であの魔龍を倒したではありませんの!?」
「それとこれとは話は別、そもそもギリギリだったじゃありませんか。僕の母上は1人だけですからね」
「スーリ!シャロ!無事だったんだね!」
「なんとかですが、姉上には負けていられませんからね」
「当然余裕ですわ!それでユガの誘いを断ったということはわたくしと一緒になりゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
「さてシャロ、母上と父上の邪魔をしてはいけませんよ?いきましょうか。第一、貴方は自身の国をもっと考えるべきで……」
無理矢理頬を引っ張られ、説教されながらスーリに担がれ去って行くシャロ。
「なんか仲良いですねー、共に死地を乗り越えた絆でしょうか……はっ!!であれば私とニース様は更に深い絆で結ばれたということですね!ということで更に深める為にベッドに行きましょうか!」
「ウルと僕は誰にも邪魔出来ないくらい十分深い仲だと思うよ、あと平気だからベッドには行かない」
「はえっ!?ニース様、そんなこと……ありますね!」
最初に会った時は奇妙なスライムだと思ったウルツァイト。
でも今は僕にとってかけがえのない存在になっていた。
それはルキ、スーリ、ミニも同じだ。
「そう言えば、リスティとメルタザイトは凍ったそのままなの?」
「はい、中のリスティからは切り離せなかったのでそのまま108個の欠片にして世界各地に封印したみたいです。場所は私も教えてもらえませんでした……が!封印地の記された地図を貰いましたので、私の力はいつでも取り戻せますよ!」
「そっか、あの時そのままウルが取り込む事は……無理か」
「すみません、あの時は私も満身創痍であれ以上動く事すら難しかったので……」
「ううん、とにかくウルが無事で良かった。ウルの力や記憶のことはこれからゆっくり思い出して行けばいいよ」
「はい!!」
「それで今言っていた地図は何処?」
「…………はい?」
「いや、だから今説明してくれた地図だよ、封印されたメルタザイトの場所が記された地図、貰ったんだよね?」
ウルがしまったと言わんばかりにそっぽを向いて口笛(全然鳴ってない)を吹き始める。
「そ、そんなこと言いましたかねー、地図なんてもらった覚えありませんねー」
「今から怒らないから言ってみて?」
「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁあ食べちゃいましたぁぁぁぁぁぁ!でもわざわざ地図を劣化しないからとミスリル製にしたフィルーダが悪いんですよ飲まず食わずでニース様を看病していた私の前にそんな美味しそうなものを置く方がわる……すいません」
うん、いつものウルだ。
「大丈夫だよゆっくり集めて行けば、本当にウルは変わらないね」
幸いにも今の僕は1人じゃない。
「全く、目を離すとまた母上はまた父上を困らせていたのですか?」
「いつものことじゃない、ママがパパを困らせてるのは」
「ママンとパパンはなかいいです!」
スーリ、ルキ、ミニ。
これからの旅は信用できる仲間と一緒だ。
「それじゃあ、最初はどこに行こうか?何か行きたい所はある?」
「あ、じゃあニース様ニース様!オーヴァルに行ってみたいです!!オリハルコンがどんなものか食べてみたいです!」
「いや、オーヴァルにはメルタザイトは封印されて無いはずなんだけど」
「ダメですか……?」
ふと見つめたそのまんまるとした瞳は、何処となく夢で見た白髪の美少女と同じだった。
「……わかったよ、仕方ないな」
「やったぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「じゃあ魔力を使って……あれ?」
蒼炎が出ない。
と言うことはまさか……
──────────
名前:ニース・ダグド
スキル:□
魔力:0/∞
魔術適性
地:F
水:F
風:F
火:F
──────────
「魔力が空っぽだ……」
「ありゃ?どうしたんでしょうね?まぁでもニース様が無事なことが1番ですから!」
「でもこれじゃあウルが蒼皎姫になれないし戦えない、僕は空っぽの無……むぐっ!?」
頭に取り付くウルが僕の口を塞ぐ。
「ニース様、私達がニース様と共にいたのは何故だとお思いですか?」
「それは……僕の魔力がいたっ!?」
「本当に父上はそう言う所は鈍感というか、馬鹿正直というか」
「ま、仕方ないんじゃない?それがパパの良い所で私達が好きになった所でしょ?」
「ニース様、私達は魔力の為に一緒にいた訳ではありません。ただニース様と共にいたいと、ただそれだけです。私は……ニース様が死ぬまで私はお側にいたいんです」
ルキもスーリも、そしてミニも頷き答えてくれる。
「ありがとう、皆」
「わかったならよしです!そう、ニース様は誰よりもお優しいのです!こんな方あっちの世界では見たことも聞いたこともありませんよ!」
「……え?」
「…………あ」
「あっちの世界?まさかウル、記憶が戻って……」
「な、何のことですかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ほら早くメルタザイトの欠片を集めて記憶と力を取り戻しに出発しましょう!!ほらほらぼさっとしていると誰かに奪われてしまいますよ!!」
「わ、わかった!わかったから勝手に身体共有して動かさないで!!」
走り出す僕の身体の中に感じるウルの存在。
「そうだ、あのさ……」
「はい?何ですか?」
白いし、スライムみたいだけどスライムじゃないし、変形するしよくわからないことが多い謎の存在ウルツァイト。
それでも僕は救われた、そしてこれからも死ぬまで一緒にいると決めた。
「……これからもよろしくね、ウル」
「はい!もちろんです!」
だから、僕が好きになった彼女との旅は……まだ続きそうだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
本作が初小説で非常に見苦しい所もあったかと思いますが、今の自分が書ける最高の小説だと思っています!
最後に度々のお願いとなりますが、星評価や感想を頂けると今後の執筆の自信となりますので、どうかお手隙の際でもよろしいのでお願い致します!
本当に読んで下さり、ありがとうございました!




