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蒼皎姫(アクリア)VS紅涅姫(ネムシス)後編

長いですが、どうか最後までお読み頂けると嬉しいです。

「ニース、今ならまだ許してあげるわ。私達と共に魔族を従え私達の時代を創りましょう?」


 身体共有(レゾナンス)を解除、というより無理矢理解除させられたかの様にリスティからメルタザイトが弾き出されると、周囲から紅炎魔王を出現させて僕達を取り囲む。


「断る、リスティは信用ならないからね。それはわかってるでしょ?」


「それでこそニース様です!あの偽物を倒しましょう!」


 ルトやスーリ達も頑張ってくれてる、僕達が裏切るなんてする気は全く無い。


「そう、ならここで死になさい!」


 再び紅涅姫に変化したリスティが放つ紅炎は一直線に僕に向かって来る。


 咄嗟に蒼炎でガードすると爆発の衝撃で吹き飛ばされてしまう。


「ニース様!大丈夫ですか!?」


「大丈夫だよ、でもこれなら作戦通り僕達以外に誰も巻き込むことはないね」


 わざわざ逃げながらここまで来た甲斐があった。


「ニース様、来ますよ!」


「行くよ!身体共有(レゾナンス)!」


 接近してきたメルタザイトの両腕が剣のように変化し、その剣閃を受けると僕達は衝撃を受け止めきれずに壁に激突する。


 強化されていても身体がバラバラになったんじゃないかと言うくらいの衝撃、それは明らかにウルツァイトとメルタザイトの実力の差が明確である事を表していた。


「あの偽物、認めたくはありませんが私よりも強いみたいです……恐らくは私達が得た冷却、換熱機能以外の全てを得ている様です」


 でもこちらには3つの帝剣がある。


「ウル、帝剣を全て使う!」


「了解しました!!」


 両手の帝剣ゴルドラとミスティガ、分裂した帝剣オリカルクに蒼炎を灯し、メルタザイトを狙う。

 身体共有(レゾナンス)も残り1分を切った、短期決戦で仕留めなければ勝ち目は無い。


「馬鹿デスネ、帝剣は4つ揃って初めて真価を発揮スルのデス、それではただの剣デスヨ!!」


 メルタザイトを全方向から襲うオリカルクは片手で容易に吹き飛ばされ、まばたきをする暇も無く間合いを詰めて再び斬りかかって来る。


 辛うじて目の前に現れた剣を弾き返すと、すぐに第二第三の剣閃が僕を襲う。


 計算されたかの精密無比の斬撃は僕の認識を超えて襲いかかり、それに対抗するのは同じく(ウル)の精密無比の斬迎撃。


 僕はまるで別人の様に動くことができた。

 認識するよりも早く、斬撃を受け止めそして更には反撃に転じる。


 それはウルあってのものだ。

 そして帝剣のお陰で均衡を保っていた互いの実力。


「……ぐぅっ!?」


 でも、徐々にだけれどほんの僅か、ウルとメルのその僅かな力の差が出始めていた。


 10回剣がぶつかり合うごとにメルの剣先が僅かにウルを傷つける。


 それが100回、1000回と増えていけばその差は明らかになって行く。


 ダメージの大半はウルツァイトが庇ってくれていたけれど、それでも僕にまで響く鋭い痛みと共にウルツァイトの体力が減って行く。



 ──────────────────────

 残エネルギー:50%

 予備エネルギー:100%

 ──────────────────────



「私達に従わない中身(ニース)は要らないわ、帝剣と私達の一部を持つウルツァイトだけを回収しましょう」


「了解デス!中身はひり潰して魔族の餌にして殺してしまいマショウ!」


 今度はメルタザイトの右腕が変化し、みるみるうちに巨大になって行く。


 僕達を一撃で潰せる程に巨大な槌が避けられない程に神速で振り下ろされる、

 これは……帝剣では防げない。


「ウル!全能力を防御に集中させて!」


 そして衝突すると同時、目の前で火花が飛び散ると大きく壁際まで吹き飛ばされる。


 ──────────────────────

 残エネルギー:10%

 予備エネルギー:100%

 ──────────────────────


 エネルギー表示が一気に減少し、ウルツァイトの呻き声も聴こえてきた。



「ウル!!」


「こ、これくらい平気です……それよりも次が来ます!」


 巨大槌を次食らえば致命傷になりかねないと、僕は咄嗟に両手から蒼炎を放つ。


「ニース様!間に合いません!」


 大丈夫、これは逃げようとしている訳じゃない。


「これは……何?」


 蒼炎で満たされた中、僕は更に魔力を放ち続ける。

 この空間と身体共有(レゾナンス)した状態なら僕の力が使える!!


魔力、侵蝕(マナイクリプス)!!」


 直後、リスティは蒼炎に包まれ大爆発が起こる。

 思った通り、リスティは紅炎(メルタザイト)を十分に制御出来ていない。


「凄い……ニース様やりましたね!でも魔力流量が物凄過ぎます、私もちょっと吐き気がするくらいです……」


 ウルを通して魔力を放ったおかげか頭痛はそこまで酷くない。

  魔力侵蝕(マナイクリプス)はメルタザイト達を侵食することはできないけれど、放つ反魔力に反応して攻撃することは可能だ。


「いや、まだだ」


「……中々やるじゃない、でもこれじゃまだまだね」



 メルタザイトは所々傷を負っていたが、今ので相当なダメージを与えられたはず。


 でもこれならメルタザイトは 魔力侵蝕(マナイクリプス)の範囲内に必然的に近づけない。

 僕達から近づいてまた吹き飛ばしてダメージを与えてを繰り返せば……

 頭は痛いけど、まだこれくらいなら大した事ない!


「……何だ、あれ?」


 痛みでぼんやりとした視界の中、メルタザイトが変形してその手に持つのは銃にも見える。

 けれどその形や大きさは僕の知るものよりも数倍も長い。


 それに僕とリスティの距離は銃で狙うには離れ過ぎていると様子を見ていた時だった。


 何かで思い切り右眼の辺りを殴られた、いや()()()()()()()


 意識は一気に飛びかけ身体は吹き飛ばされ、わかったのは身体共有(レゾナンス)が強制解除されて、激痛と共に僕の右眼が見えなくなっていたこと。



 そして僕の代わりに大半の攻撃をウルが受けてくれたのか、そばでスライム状態のウルが動けなくなっていた。



「ニ……様……」


「ウル!?くそっ!!」


 返事はなく、何をされたかはよく理解出来なかったけれど、とにかく今は身を隠すしかない。


魔力侵蝕マナイクリプス!」


 遠距離戦も近距離では分が悪いなら、僕に出来ることは1つしかない。


 最大限蒼炎を放出するのと同時、割れる様な頭の痛みに襲われながらもウルを抱きしめ、そして僕は蒼炎に逃げ込む。


 僕とウルを蒼炎で囲って身を守る。

 そしてこれはメルタザイト達の不可侵不認知領域。


 この方法なら僕達からは見えるけれど反撃を許さずに攻撃が可能だ。


 まだ僕の身体も動くし左眼は見える。


「はぁぁぁぁぁぁっ!!」


「ちっ、小賢しい!そんな攻撃が効くと思ってるの!?」


 ウルが傷を負ってしまった以上、僕の実力そのままで与えられるダメージはかなり少ない。


 僕は蒼炎から飛び出して攻撃するを繰り返す。

 当然簡単に攻撃は弾かれ、起こったことと言えば僅かな紅炎が削り取られる様に周囲に撒き散らされるだけ。


「消し飛びなさい!!」


「くっ、魔力侵蝕マナイクリプス!」


 攻撃される寸前、僕は再び魔力侵蝕マナイクリプスで身体を蒼炎で包む。

 メルタザイトは身に纏う紅炎で蒼炎には近づけない。


 激痛で蒼炎の中で吐いてしまう、しかし地道だけどやるしかない。


 もうウルに頼るだけではダメだ。


 ウルがピンチの時に僕が助けないでどうするんだ!



「それでも英雄の戦い方なのかしら!?いいわ、そっちがその気ならいくらでも方法はあるのよ!」


 メルタザイトの右腕が大砲に変化すると紅炎が集約して行く。


排除(エリミネーター)紅炎(バースト)!!」


 メルタザイトから放たれる紅炎を蒼炎で何とか防御する。

 それでも表面は大爆発を起こし、徐々に蒼炎が消えて行くと爆発の衝撃が、ダメージが蓄積されて行く。



「うう、ニースさま?ニース様!?大丈夫ですか!?」


「良かった!気がついたんだね!!でもごめん、僕1人じゃどうにも出来なくて……」


「何をおっしゃっているのですか、だからこその私、私とニース様がいれば出来ないことはないのです!」


「……ウル、僕のお願い聞いてくれるかな?」



 僕は()()()()()をウルに伝える。



「それは……わかりました、ニース様を信用します!ですからニース様、絶対に死なないで下さい!!」



 ──────────────────────

 残エネルギー:0%

 予備エネルギー:3%

 ──────────────────────



 先程の一撃と幾度とない攻撃でウルの体力も予備含めて10%を切り限界。


 これが最後の一撃。


「行くよ、ウル!」


「はい!私達が最高のパートナーだと証明してませましょう!!」


「別れの挨拶は終わったのかしら?なら……死になさい!排除(エリミネーター)全紅炎(フルバースト)!!」


 消えかけていた蒼炎から僕達は飛び出す。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 目の前では紅炎を放たれていたけれど、3つの帝剣を1つに集約した大帝剣が紅炎を割り進んで行く。



 このまま行けばメルタザイトを両断出来る。


「馬鹿ね、まだ私達は全力じゃないのよ!!」


 メルタザイトの左腕が紅炎を放つ右腕同様に大砲型に変化して行く。


 メルタザイトの力は間違いなく僕達よりも上だ。


 だから勝てない?そんなわけはない。


 力で勝てないなら……頭を使えばいい!


()()()()()()()()()


 大帝剣を握るウルツァイトが()()()()()()()()


「まさか!!」


 そう、今僕はウルツァイトの中にはおらず分離していた。


 そして、ウルツァイトの背後の蒼炎から飛び出て、在らん限りの蒼炎を両手に蓄積させて行く。


「メルタザイト!全砲撃(フルバースト)を中止しなさい!」


「そ、それは無理デス!!」


魔力侵蝕(マナイクリプス)!!」


 メルタザイトが紅炎を放つ瞬間に内部から爆破させれば致命的なダメージを負わせることが出来る。

 両腕の紅炎に蒼炎が触れれば間違いなく大爆発、再起不能。


「た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



 これで…………勝ちだ!!





「……なんてねぇぇぇぇ!メルタザイト、()()()()()()()()()!」


「なっ!?」


 その一言、僕達の希望を完全に消し去るかのようにメルタザイトの両腕は地面に落下して行く。


 そこには紅炎が灯されたまま。


「残念、あんた達は安易な作戦で負けて自爆するのよ!!それじゃあね、さ、よ、う、な、ら!!」


 蒼炎は既に放たれて、止める事は出来ない。

 これじゃあウルツァイトが爆破に無駄に巻き込まれるだけ。


「私達の勝ちよ!!」




 確かにそう思うだろう。




「……いや、()()()()()()()()()()()()()()


 メルタザイトが飛び退いた先、そこは壁だ。


 でもただの壁じゃない、僕が必死に斬りつけた時に飛び散った()()()()()()()()


 更にウルが紅炎を両断して壁には紅炎が広がっていた。



魔力、侵蝕(マナイクリプス)!!」



 真の目的は()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()だ!



 蒼炎と紅炎が触れると、壁が勢いよく爆発し穴が空き、外の空気が一気に流れ込んで来る。



「がっ、ぎっ、ぐっ!!」



 生身の僕は吹き飛ばされ、今ので身体の数ヵ所は間違いなく骨が折れて何かで頭を潰されたような頭痛でほとんど動けず、エネルギーが尽きてしまったのかウルも同じく動かなくなる。



「ギッ、だからどうと言うノデスカ!リスティ様!まだまだ私達には無数の武器がアリ……マ……ス?」



「ただ、破壊したわけじゃないよ……2人はわからないかも知れないけど、この聖塔を登ってきた時に違和感を感じなかった?やけに長いなって」


「それは、マサカ……」



「僕達が今いる場所は空の上の上のそのまた上、そこは……()()()()()()()なんだ、協力してくれたユグドラシル様には感謝だよ」


 みるみるうちにメルタザイトの動きは鈍くなって行く。


 ()()()()()()()()()()()ウルと同じ、メルタザイトも同様に動けなくなっていた。



 そしてウルとメルタザイトは表裏一体、ウルが()()()()()()()()()()なら、メルタザイトは冷気耐性を()()()()()()



「クソ……偽物ガァァァァァァァァァ!!リスティサマ!!紅炎を放ってクダサイ!!全身から紅炎を放つダケデハ間に合いマセン!それで周囲を暖めて……」



「さっき両腕を分離したじゃない!すぐには放てないわ!!それよりあんたが助けなさいよ、私まで凍え死ぬじゃない!!」



「クッ……使えナイ使えナイ使えナイ!!やはりただの魔術使いデハ……こうなっタラ」



 メルタザイトは勢いよくリスティの体内に侵入して行く。

 思った通り、リスティとメルタザイトの身体共有(レゾナンス)は無理矢理だったのだろうか、メルタザイトがリスティの身体に入り込むほどにその身体は灰の様にボロボロと崩れ去って行く。


 でも、そのお陰かメルタザイトは冷気から逃れられて、そのまま階段の方へ走り始める。


「だ、誰か……リスティを……メルタザイトを止め……」


 必死に身体を動かそうとするけれど、僕は魔力放出の反動と壁の爆破の衝撃で全く動けない。


 このままじゃあ……


 ここで逃がしてしまえば弱点を突いて倒す事は2度と出来なくなる。


 僕はどうなってもいい。

 全身の魔力、それを一点に集める。


魔力(マナ)…………侵蝕(イクリプス)!!ミニお願い、少しでいいんだ……足止めを……!」


「はい!パパン!」


「こ、コノチビガキ、邪魔するナァァァァァァァ!!」


 魔力侵蝕(マナイクリプス)を纏ったミニはメルタザイトの脚にしがみつくと、ほんの僅かな爆発が起きメルタザイトはよろける。

 でもミニでは数秒の足止めにしかならない。


「ミニ!!」


 吹き飛ばされたミニを辛うじて抱きしめる。

 気絶しているだけで死んではいない、つまりメルタザイトもそれだけ弱っていると言うこと。


 今なら、いや……今しか倒せない。


「それジャアサヨウなら、ニース!今回は油断シタけど、次会う時ハ全身全霊で消してアゲルワ!!」


 そう言い残し、リスティが勢いよく飛び降りた瞬間だった。




「何言ってるんですか……あなたは、ここで、凍え死ぬんですよ!!」



 僅かだった。


 ミニが稼いでくれた僅かな時間、そして注意を逸らしてくれたおかげでウルがスライム状態で身体を伸ばし、必死になってリスティの足に絡みついて逃げようとするのを妨害してくれていた。



「フ……ザ……ケ…………」



 目の前で動かなくなってゆくリスティ(メルタザイト)


 ……良かった。


 と同時に僕の身体も重く動かなくなってゆく。

 3回が本当に限度だって言われていたけど仕方ない。


 ──ニース様、ニース様!


「ごめん、少し休ませてくれると……嬉し……か……な……」


 誰かが僕を呼ぶけれど、それも徐々に聞こえなくなってきた。



「これで、終わりかな……」



 ……僕も限界みたいだ。


 不思議なことに、自分の呼吸と鼓動が止まるのを感じていた。


 そしてふいに僕は少し前を思い返していた。

 バディアに裏切られて死のうと思い、ウルに救われた時のことを。


 仲間が出来て、魔王を倒し、そして娘も出来た。


 帝王に関わることなんて一生ないと思ったけれど、まさか求婚されるなんて人生ってわからない。


 楽しかった、今までの報われない人生が吹き飛んだ。


 そうして色々あった時間だったけれど、今それがベアウルフに襲われて死ぬ元の運命に戻っただけなのかもしれない……そう思えば少し気が楽になった。



 僕が出来ることは全てやり尽くした。


 ありがとう、ウルツァイト、ルキ、スーリ、ミニ。


 ルキは少し言い方がキツかったけど、それでも誰よりも素直に話してくれたことが嬉しかった。


 スーリは皆を冷静に引っ張ってくれた、それに何度救われたことか。


 ミニが僕の力を引き出してくれた、空っぽ無能のこの僕の。


 ウルには感謝しかない。

 奇妙なスライムだったけど、最後にきちんとお別れだけは言いたかった。

 お別れと、そして本当に言いたかったこと。


 言い損ねたな……ごめんね……ウル。










 …

 ……

 ………











 スキル所有者、ニース・ダグドの生命危機を確認……(ギンコウ)スキル()()()()()()



 最重要、ニース・ダグドの生命()(ギンコウ)スキル内、金庫(セーフボックス)に保管した為、消滅しません。


 蘇生開始…………エラー、重度の精神、肉体損傷により蘇生不可能。


 緊急事態の為、全魔力を元に精神、肉体再構築を開始。

 魔力:∞/∞……………魔力0/∞、魔力全使用。


 蘇生開始…………エラー、魔力不足。

 重度の精神、肉体損傷により蘇生不可能。


 魔力債権者からの魔力回収開始……対象者死亡の為、回収不可能。



 …………エラー、蘇生不可能。

 …………エラー、蘇生不可能。

 …………エラー、蘇生不可能。





 ………

 ……

 …
























 ……外部からの経口での魔力供給を確認、精神、肉体再構築…………完了。


 

 蘇生を、開始します。







 

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