蒼皎姫(アクリア)VS紅涅姫(ネムシス)前編
「さーて、これで殲滅できましたかねぇ」
僕の右手から放たれた蒼炎は目の前にいたダモンとウィゴに間違いなく直撃した。
後には何も残らず、ウルツァイトにかかれば四魔皇も全く相手にはならなかったようだ。
「ニース様、それでは子供達を助けにいきましょうか!」
「そうだね、ルキとスーリが負けるとは思えないけど心配だからね」
地面を踏みしめ飛び立とうとした時だった。
反射的に右手から蒼炎を放たれると、目の前にいたのはダモン。
「待ちなさい?まだアタシは倒れてないわ、ウィゴもねぇ!!」
ウィゴは無傷、ダモンも蒼炎に包まれながらまるでダメージを受けてないかのようだ。
確かに直撃したはずなのに……
ウィゴの身体は周囲の風景を反射させ、ダモンは全身がギラギラと透明な石の様なもので覆われていた。
だから消えたと勘違いした。
オリハルコンとダイヤモンドは蒼炎で焼け尽くす事は無理なようだ。
「メルタザイト様に反魔力を与えられ強化されたアタシ達にただの蒼炎は効かないわ、今なら魔王なんて片手で簡単に殺せちゃうんだからぁ」
と言うことは今ルキやスーリが戦っている相手も強敵、のんびり相手をしている暇は無さそう。
「更に本気で行きます!」
猪突猛進のウィゴに向けて手を向ける。
全身から噴き出る蒼炎が一層強さを増して中にいる僕にまでその熱が伝わってくるほどだ。
「狙撃、蒼炎!」
手から放たれる蒼炎は周囲を焼き払う広範囲なものではなく、一点を貫く精密なものだ。
思惑通りにウィゴを貫通するが、それでもウィゴは何事も無かった様にこちらに突進するのをやめない。
「来ます!衝撃に備えて下さい!」
直後、僕は吹き飛ばされグランディナから一瞬にして聖塔付近の森にまで吹き飛ばされる。
「はははっ!雑魚雑魚ねぇ!ママンには注意しろって言われてたけで全然強くないわぁ!!ウィゴ、殴り潰してしまいなさい!」
「大丈夫ですかニース様!」
「何とかね……それよりウルの方は?」
「私は大丈夫です、いえ本当の事を言うととっても痛いです!!」
地面に埋まり、更にウィゴの拳を幾度と無く受け、ダモンの刺突攻撃を受けると今まで減ったことの無かった視界のエネルギーの数字が徐々に減ってゆく。
このままだと潰され、いや刺し殺されてしまう?
「仕方ありません!ニース様お願いがあります!大変失礼なのはわかっているんですが、いやでもこれは失礼すぎて……」
「今更だよ!何でもいいから言ってみて!」
「はい!ニース様の身体を私に貸してくださいませんか!?」
身体を貸す?今でも僕はウルに身体を任せてるようなものだけど。
「わかった!」
蒼皎姫状態を解除すると、ウルは僕の手首を斬りそこから僕の体内に入って行く。
「うーん、ニース様の身体……すんすん、いい匂いです!!」
不快では無いけれど奇妙にむず痒い感覚が全身を襲い、ウルが完全に僕の身体の中に取り込まれてしまう。
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身体共有を開始しますか?
はい or いいえ
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視界に現れたその選択に僕ははいを選択していた。
自分でも驚いていた、だってそれは僕の身体の自由をウルに渡すと言うことだからだ。
それでも僕はウルを信じていた。
僕を信じてくれた相手を信じれないなんて、カッコ悪いから。
徐々に身体の感覚が無くなって行く。
でもそれは嫌な感覚では無く、むしろ心地良くて何故か懐かしい気持ちにさせてくれた。
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共有完了、時間内に再共有を完了させて下さい。
3:00
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「さて……ニース様と真に1つとなった以上傷一つつける訳にはいきません、さぁ、どちらから来ますか?」
「ちょっと待った、この時間って何!?」
「ああ、それは共有後ニース様に身体を返さないと2度と元には戻らないってことですよ、でも大丈夫です!私がニース様の身体を奪う訳はありませんから!」
「あらあら!何かと思えば鎧を捨てやがったわよ?負けを認めたのかしら?」
今の僕は着の身着のまま、武器も防具もない。
でも異常に身体が軽い、本当に自分の身体かと思えるほどに。
「ニース様、どちらから倒しましょう?私としてはあのピーチクパーチクうるさい男から倒すのがオススメです」
オススメって……でも確かにダモンがウィゴに指示しているし、倒すならダモンかも知れない。
「ダモンから行くよ、ウル!」
「承りました!」
僕は腕から蒼炎を生み出すとそのまま直接全身に纏う。
熱いかと思ったそれは全く熱くはなく、心なしか蒼炎が更に蒼く見えた。
「うふっ……舐めるなよ、若造が」
ダモンの口調が急に変化すると同時に身体もみるみるうちに変化し、全身をダイヤモンドの針で覆ってしまうと、周囲に炎と雷魔術を放ち始める。
「綺麗でしょう?でも触れれば火傷では済まないわよ?それ以前に、アタシに近づくことすら出来ないわねぇ」
高熱で真っ赤に変化したダモンは平然と雷魔術を纏い身体を見せびらかすように迫ってくる。
炎熱耐性を持ち雷魔術を無効化する。
ダイヤモンドの特性をそのまま利用しているようで、これでは近づけない。
「綺麗って言うのはニース様の清らかな心を表したかの様な蒼炎の事を言うのですよ、貴方のただ腐った血の様な炎やとりあえずピカピカ光らせばいいみたいな雷なんて、気持ち悪くて汚いだけですよーだ!」
「そんなキッパリと言わなくても」
「アタシが汚い?……舐めるなよぉぉぉ!!」
ダモンの身体は更に赤く変化して行く。
同時に全身からダイヤモンドの針が宙に舞いその矛先は全て僕に向けられ、そして放たれた。
先程よりも多く、鋭く、熱く、疾いダイヤモンドの刺突。
それを全て僕は全て片手で弾き飛ばし、全てをダモンに弾き返していた。
「……へ?ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
……強い。
僕が起こしたことだけど、まるで他人事の様にそうかんじていた。
「忘れている様ですけど、私は最硬なんですよ?やっぱり一つになった私達の敵ではありませんね、それじゃ拷問してあのメルタザイトとか言う私の偽物の場所をはかせますかー」
ウィゴは呆然とその様子を見ていた。
自分で考えて行動する知能がないのか、もしくはの命令にだけ聞くようになっているのか、もしくは……
「あら?そこにいるでっかい貴方も死にますか」
「Ugaaaaaaaaaaaaaa!?」
「……逃げたね」
「逃げましたね、ですがあれなら追う必要は無さそうですね。やはりニース様の身体は素晴らしいです!……さてと、メルタザイトの場所を吐いて下さいね?黙っていてもいいですがそれは互いにいい事はありませんよ?」
自身のダイヤモンドの針で磔にされ絶対絶命のはずのダモンは余裕の表情だった。
「貴方にアタシは傷つけられないわよぉ、メルタザイト様から力を得たアタシを傷つけられるのはアタシだけ、最硬のこの美しい身体は最強なのよぉ!!」
高らかに笑うダモンを僕は冷徹な眼で見ていた、理由はわかっていた。
「それじゃあまずは右脚からですかね」
僕の右腕が刀の様に変化し、そして横一閃。
「あ、脚がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
切り跡から黒い液体が流れ出て行く所は痛々しく見るに耐えないけど、それは間違い無く致命傷を与えていた。
「何故よぉ!?アタシはこの世界で最硬、傷つけられることなんて」
「だから私が最硬だって言ったじゃないですか、はい次は右腕ですかねー、その次は左脚で左腕、後は耳と……」
「待ちなさいよぅ!!わかったわ、メルタザイト様の居場所教えるから命だけは助けてお願いよぉ!」
「えー、居場所だけですか?他に何か知ってるんじゃないですかねー?そうですね、弱点とか教えてくれると助けるかも知れませんよ?」
両腕を剣状に変化させ、笑顔のまま僕は問い詰める。
「そんな事話したらメルタザイト様に……はっ!?」
それはつまり、メルタザイトの弱点を知っているということに他ならない。
「そうですねー、私に切り刻まれて魔族の餌にされて糞になって土に還る方とメルタザイトと言う私の偽物の怒りを買う方好きに選んで下さい。ですが私は貴方が絶命する迄いや、極力絶命しないように徐々に切り刻むつもりです。あ、ちなみに斬れ味が良すぎると斬られた事すら認識出来ないみたいですよー、ほら」
「そ、そんな……」
そう言いながらふとダモンが左腕を見ると、指が全て切り落とされていた。
それを認識した瞬間ダモンは青ざめる。
「わかっわぁ!実はメルタザイト様は」
メルタザイトの弱点を話そうとしたダモン。
でも何故かその姿が一瞬にして消えてしまう。
「あれ?いなくなりましたね、まさか逃げられた!?」
「……違うよウル、お出ましだ」
僕達の背後、聖塔の壁にダモンはいた、でもダモンは逃げた訳ではなかった。
その姿は何かに潰されたらしく黒い液体が流れ出ていただけ、更にウィゴも全身を切り刻まれて絶命していた。
「裏切り者には罰を与えないとね、そう思わない?」
「その通りデス!四魔皇だから使えるかと思いマシタガ、所詮は魔王の手下、リスティ様の足手纏いデシタネ」
黒々とした身体に翼の様に背中から紅炎が噴き、両腕の剣からは反魔力を糧に紅炎が噴き出て、その姿は自分の中の反魔力を抑えきれてないかのようにも見えた。
でもオリハルコンのウィゴを容易に斬り捨てるその強さはウルと同等か、もしくはそれ以上なのは間違いない。
「ウル、予定通りに行くよ!」
「はい!任せて下さい!」
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共有解除、残り時間 1:58
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身体共有を解除して、僕は全速力で逃げる。
僕達の意外な行動に呆気をとられたのか、リスティ達は遥か後方に見える。
「リスティ様、逃げると言うコトハ私タチに勝てないカラでしょう。ここは追いマショウ!」
「そうね、何かを考えているみたいだけどそんな姑息な手段、私達に通用しないということを教えてあげましょう?」
そんな声がきこえるけど無視だ。
予定通りに動いてくれるなら何を言われても僕達には好都合。
螺旋階段を瞬時に飛びながら登って行くその後からメルタザイトが螺旋階段を破壊しながら登ってくる。
「敵ながら凄いですねー、まるで私が失った力を持っているかの様です」
「その通りだろうけど感心してる場合じゃないよ!頂上に着くまでに追いつかれたら作戦が台無しなんだから!」
「わかっています、それではまた少しだけお体を借ります、ね!」
再び身体共有を許可すると、迫っていたメルタザイトとの距離が少しずつ離れ始める。
これなら頂上迄間に合うかも知れない、そう思ったのも束の間、目の前に現れたのは紅炎を纏ったリスティだ。
「空っぽニースに出来て、私に出来ない筈ないデショ?」
身体共有、メルタザイトも出来たのか!
リスティの脚が僕の鳩尾に叩き込まれると一気に塔の半分以上を急上昇して最上階に辿り着く。
急激な上昇負荷と身体共有で強化されている筈にもかかわらず鳩尾にじんじんと痛みが走り、もし生身なら無事ではすまなかなかっただろう。
でも不幸中の幸い、今は目的地だ。
ここなら誰も巻き込む事はない。
「登るのが思ったより長過ぎて殺そうと思ったけれど、雑魚を追い詰めるのは楽しかったわよ?」
「決着をつける、リスティがここから出ることはもう無いよ」
「へぇ、口だけは一人前ね……外も見えないこんな所に閉じ込めて何のつもり?ニースが死ぬ所を皆に見てもらおうと思って場所を用意したけど、まぁいいわ……ここで死になさい?」
「ウル、行くよ!!ウルと僕で……勝つ!!」
「はい!!」




