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相性最悪の2人〜sideスーリ、シャロ〜

 遠くからでも良く見える天を灼く巨大な炎球を眺めていたのはスーリとミスリル鎧に身を包むシャロだ。


「あれならあちらは問題無さそうですね、後はこのミストラを守ればいいだけ。僕1人でも負けることはないと思いますがシャロがいれば心強いです」


「当然ですわ!敵が来ればとにかく殴る蹴る、それで勝てますわ!」


(……前言撤回、大丈夫だろうか?そもそもミストラは今まで1度も侵略された事がないのだから不安ですね)


「シャロ、まずは相手を観察して隙を見つけ、そこから崩して行くのが定石です」


「そんなの陰湿ですわ!こんな時だからこそ正々堂々戦うのです!」


「い、陰湿!?失礼ですがただ殴れば勝てると思っているあなたに言われたく無いです!」


 シャロとスーリ、この2人は最悪の相性だった。


 直感的で直線的、戦の経験も殆どないシャロに対してスーリは正々堂々や卑怯という点は全く考えずあらゆる勝利の道筋を視野に入れる。


(これは僕がどうにかしないといけませんね)


「まずは落ち着いて話をしましょう、これは人気(にんき)を集める為の見せ物ではありません、勝つ事が最優先です」


 シャロをなだめようとするが、直後異変は起きた。


「落ち着く?このボクが来ているのに随分と余裕だね?」


 ミストラの結界が破られると空から6つの淡い緑色の羽根を広げ、悠々と降りてくるのはミィス、その姿は天使にも似た姿で無数のグリフォンを従えていた。


「来ましたわ!行きますよ世界最強、ミストラの兵達よ!!」


 しかし、ミストラ兵達は皆怖気づき誰もが前に出ようとはしない。


「どうしたのです!?ほら、皆行くのです!!」



「……最悪だ」



「いいね、その表情!ボクがしない苦悶の表情、まるで自分が苦悶しているようで見るだけでゾクゾクするよ!」


「最悪のタイミングで最悪の性格の敵が僕の顔で恍惚の表情で現れるなんて本当に最悪です」


「降りて戦うのですわ、卑怯ですわよ!」


「馬鹿だね、有利な状況をみすみす捨てる訳がないだろう?さて、兄上に先を越されたく無いので即死んでくれると助かるよ」


 一斉にグリフォンが襲いかかり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 既に追放区のミストラの兵士達は襲われ、それを見たシャロは身動きを止めてしまう。

 天空区の兵士達も魔力を得たとは言え、グリフォン(SSランクの魔獣)の攻撃に耐えられず倒されて行く。


「無駄に魔力は使いたくありませんが、仕方ありません!」


 スーリは碧色の槍を出現させ天高く放り投げると槍は天で無数に分裂し、グリフォン達は次々に貫かれ絶命して行く。


「や、やりますわね、ですがわたくしもそれくらいの数なら簡単に射抜くことができますわ!嵐矢(ウインドアロー)!」


 ようやく緊張と恐れから解き放たれたシャロは風魔術を纏う矢を放ち高速で動くグリフォンを何とか射抜くがそれも焼け石に水、まだまだグリフォン達は待ち構えていた。


「さぁ、また来ますよ!」


 ミィスが手を挙げると、反魔力から再びグリフォン達が生み出さられて行く。

 その数は500体は下らない。



「そ、それではわたくしが300、貴方は200でお願いしますね?」


 シャロが碧色の弓を構え、矢を放つ。


 しかしその数は変わらず1本だけ、到底グリフォンの大群を倒すには至らない。


「出来ないなら出来ないと言って下さい!全て僕が倒しますから!」


 スーリは今度は槍を2本出すと同じく上空に投げ放つ。


(父上がいない以上、魔力の供給は不可能、無駄な消費は避けたかったですが……)


 上空で爆ぜる槍は再びグリフォンを穿ち倒すかと思われた。


「ボクのこと、忘れてない?」


 放たれた槍はミィスに鷲掴みにされ、そのまま握り砕かれてしまう。


 そしてミィスは同じく2本の槍を出すとそれをシャロ達の目の前に投げ放つ。


 それをいち早く察したスーリは咄嗟にシャロ達の前で盾に変化させた身体を展開する。


 直後、爆破し無数に分裂する槍。


 それはスーリの身体を幾つも貫通すると、スーリは仁王立ちで動かなくなってしまう。


「スーリ!?」


「はははっ!こんな雑魚を守って死んだよ!いやーあわよくばと思ってやって見たけど、こんな呆気ないなんてね!!」


「これは、そんな……」


「何悲しんでるの?元は君が出来ない事を出来るなんて嘘をついたのが原因だよね?あー、君が仲間じゃ無くて良かったよ本当に……じゃ、死んでくれない?」


 無慈悲にシャロにグリフォンと槍が襲いかかる。


 2人の姿は槍雨と魔獣の波に飲み込まれ、その姿は見えなくなる。


「呆気ないな、ボクに似てたから多少はやるかと思ったけど所詮は偽物か……早く帰って母上に報告をしようかな。それと……その前に君達、物足りないからぁ、ボクと遊んでよ」


 ミストラ兵士達は追い詰められて行く。


「それじゃあ君達、喰らい尽くしていいよ!!」


 グリフォンが襲いかかるその瞬間、どこからとも無く現れた暴風に驚きグリフォン達が飛び退く。


「何を勝手なことを言ってるんですの?ミストラの民に傷つけること、それはわたくしが許しませんわ」


「……へぇ」


 現れたシャロは無傷、そしてその全身を着飾っていた鎧は無くなり最低限の下着、しかしそれとは真逆に両腕には巨大なミスリルの籠手(ガントレット)脚甲(ソルレット)


「拳闘士というのをご存知かしら?わたくしは好きでしたのに皆が奴隷のするものだと止められて来ましたが……密かに訓練してきたのですわ」


「それなら追放区の皆も助けてあげれば……いや、失礼しました、今はとにかく殴る蹴る、ですからね」


 両手脚からスーリの声が聞こえると、シャロは顔を真っ赤にする。


「ひ、人には適正というものがありますの!!それよりアレを倒すのに協力してくださいますわよね?」


「勿論、それにシャロは図らずも僕を最大限活用してくれそうですから」


 シャロの防具となったスーリに魔力が流れて行くと、溢れんばかりの風魔術を両手脚に纏う。


「それじゃあ、行きますわよ!!」


「はっ、そんな距離から何が出来るんだい?そんなもの近づかなければなんて事はないよ」


 ミィスが宙に浮くと、手から現れた槍が再びシャロ達に狙いを定める。


「それはどうかしら?」


 シャロが構え、思い切りをミィスに向けて拳を振り抜くと空中にいたはずのミィスが地面に激突する。


 暴風を纏った拳は一撃で500体のグリフォンを飲み込むほどに巨大化し、それは幻覚かと思えるほどだったが、実際に全てのグリフォンは暴風に包まれ堕ちてゆく。


「やりましたわ!」


「接近戦ですシャロ!僕と同じであれば接近戦なら有利を取れます!!」


「わかりましたわ!!」


 シャロに言われるがまま距離を詰めて行き、ミィスの懐に入りそのまま構えをとる。


「待て!話を」


「吹き飛びなさぁぁぁぁぁぁぁぁあい!!」


 盾を出して防御するミィスだったが焼け石に水、拳は盾を粉砕しミィスの頬にクリーンヒットし吹き飛ばす。



「今、何かおっしゃっていたかしら?」


「僕には聞こえませんでしたね……それより警戒して下さい、まだ倒れてはいないでしょうし、きっと奥の手を持っているはずですから」


 瓦礫の下から這い出たミィスは笑っていた。


「ボクに傷をつけた?偽物の君が?世界で一番美しいこのボクに……ふふふっ、あはははっ!!あははははははははははははははははは……コロス!!」


「……貴方も実はああいう感じですの?」


「冗談を、僕が美しいと思うのは1人だけですから」


 ミィスの身体は瞬く間にグリフォン達に囲まれ、徐々に巨大にその姿が現れて来る。


 現れたのは魔王が乗っていた魔龍だ。


「魔龍の正体はミィスでしたのね……」


「いえ違います、これは……」


 魔龍と変わらない大きさとなってもミィスの巨大化は止まらない。



『ミシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!』



 その巨躯を犠牲に言葉も通じなくなったのか、ミィスの高さは1000mはあろうかと言うミストラ帝国の天空区を見下すまでに巨大化していた。


「化け物ですわ、これに勝てるのでしょうか……」


「勝てます、とはいえそれはシャロ次第ですが」


 断言するスーリにシャロは魔力を込める。


「ここでは死ねませんわ、ニースの妻として、そして王として!わたくしのミストラは壊させはしませんわ!!スーリどうにかできませんの!?」


「それなら魔力をもっと渡してください!!」


 更に魔力をスーリに注ぎ込んで行くと、両手脚のスーリはミィスと同じように巨大化して行く。


「僕の偽物が魔龍になれるのなら、僕も同じく魔龍になれるということです」


『これが、わたくし?』


「唖然としてる場合じゃないですよ!来ます!!」


 巨大な鋭爪と牙が互いを切り裂き、そしてその衝撃で天空区は大きく揺れ結界は完全に破壊される。


『ミシィジィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!』


「痛いですわ、でもこれならいけますわ!!」


 ミィスは魔龍化シャロに殴り飛ばされ魔の咎森に倒れ込むが、再び立ちあがろうとする。


「行きますわよスーリ!殴って蹴る、で勝ちますわよ!!」


「はぁ……全く、仕方ありませんね!!」


 性格の相性は最悪の2人(スーリとシャロ)、だがその力の相性は誰よりも最高だった。



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