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決戦前夜

「みんなありがとう、まさか昔の仲間が真の魔王を従えていたなんて思わなくて」


 三帝国の国王と僕はグランディナ城に集まっていた。


「気にする必要はありません、それに弟子が狙われていれば助けるのは当然のことです。そして決戦は明日……であれば私達も準備が必要でしょう」


 蒼皎姫状態のウルがそう言うと皆も頷いてくれるけれどそれだけじゃない。

 自らの国を護る為に決心したんだろう。


「そうだな、それでは作戦だが……我が考えるに恐らく敵は正面からの総力戦を挑んで来るだろう。正直言ってそれだけ我らと真魔王軍の差は歴然としている」


 いくらウルでも超高速で全ての帝国を周り魔族を倒して更にメルタザイトを相手にするなんてのは流石に不可能だし、それに現れた魔族を吹き飛ばされても平然としていた所をみればまだまだ余力があるのは間違いない。



「そうだね、でもそれなら僕に考えがあるんだ。いいですか蒼皎姫様?」


 ウルに一応許可を取り言葉を続ける。


「蒼皎姫様は何処にも行けるように聖塔で待機、他の皆が自分の帝国で待ち受けるって言うのはどうだろう?蒼皎姫様なら全ては無理にしても1つの帝国に行けるだけの力はあるし、あの黒いスライムがどこに現れても四大帝国を見渡せる聖塔なら対応できるし、それにどう戦うかも実は考えてるんだ」


 皆は互いに思う所があるのだろうけれど、頷いて納得してくれたようだ。


「蒼皎姫様が来るまでは耐えて、そして各個撃破、メルタザイトが現れたら蒼皎姫様との一騎打ちに持って行く。魔族はメルタザイトの反魔力を核にしているから、メルタザイトさえ倒せれば魔族はそれ以上現れない」


「なるほど……それなら任せてくださいまし、私達ミストラの民は魔族如きに負けませんわ」


「僕が同行します。何となくですが僕の偽物がミストラに現れる気がするのです」


「ガリアが全てを守る!」


「グランディナは私達にお任せ下さい。失ったものが大きいですが魔族に対抗できる戦力は残されていますから」


 でもそれだけでは心配だ。


「ミニ、ガリア達を手伝ってくれないかな?」


「はいパパン!まかせてください!」


「イグニスは我に任せるといい。魔王が来ても安心しろ、そもそも本来は我が魔王を倒す役割だったのだ。周囲が五月蝿くて叶わないから仕方なくバディアとか言うよくわからない奴に任せたが」


「あんただけじゃ心配だから私が付いてあげるわ、偽物が現れるかもしれないし」


「ルキ、スーリ、さっきからその気がするって言うのは何か感じるの?例えば反魔力(アンチマナ)とかが関係してる?」


「そうですね、簡単に言ってしまえば心が通じていると言うか……非常に不快ですが」



 コルとミィスと言ったあの2人、ルキとスーリと同じくウルと似たようなメルタザイトから生み出されたからかもしれない。



「それにグランディナはフィルーダ、ミストラはヴァレンとフィルーダ、イグニスには我の()()3()()がいる、大抵のことでは負けはしない」


「ユガが勇者?」


「ああ、本来なら我が勇者の素質を持っていたが、周囲が煩くてバディアを代わりに勇者にした。だがあいつはその力で数々の悪行を行い勇者の名を地に堕としていた……今はどうでもいいが」


「人を無理矢理力で従わせていたと言うのは勿論、借りた金や装備は返さないと私達の国でも有名でしたよ」


 グランディナでも()()だったなんて……バディアをよく思わないのは僕だけじゃなかったのか。


 そして僕は今まで誰にも言わなかったスキル『ギンコウ』について皆に話すことにした。

 蒼皎姫様に僕が魔力を供給していることも含めて。


 ウルが正体だとは言わなかったけど。


「ギンコウは我も聞いたことが無いスキルだ、第一ニースにはそれがただの空白に見えて、それは蒼皎姫殿の糧となり別の何か(ギンコウ)に見えているか……不思議な力だな」



「ギンコウスキルも調べてみたいけど今は置いておいて、とりあえず皆に戦う前に僕の魔力を皆に分け与えたいんだけどどうだろう?」



「なるほど、イグニス、ミストラ、グランディナの兵その全てが蒼皎姫様の様な力を持てば勝るとも劣らないでしょう」



「リスティが言っていたのは僕の魔力と反魔力が触れた時だけだから僕の力を分け与えて使うには問題ないはず」


「成る程、だがその魔力を分け与えるにはどうすればいい?決戦は明日、三国合わせて兵数は100万は下らない、1人で行うのは無茶無謀だと言うものだぞ?」



 僕たちで出来ることをする。

 そう、()()()()()()()()()



「だからここにいる皆に協力して欲しいんだ、まずは僕の力を今ここにいる3人に分け与えて、その後分ける事が出来れば効率的なんじゃないかな?イグニスはユガのスキル永炎が、ミストラはシャロのスキル樹牲を使えば、グランディナは血脈があるよね?」




 永炎(えいえん)樹牲(ぎせい)血脈(けつみゃく)




 最強のスキルと呼ばれるこの3つはそれぞれ自分に服従した者から魔力を吸収する、追放区の人々を強制的に犠牲にして魔力を回収する、家族と認めた対象から魔力を共有すると言うもの。


 つまり3人の帝王は全国民と繋がっている。




「確かにそれなら出来る!早く魔力をくれ!」


 とはいえ魔力譲渡はウル、ルトとスーリにしかやったことがない。

 触れればいいはずなんだけど……

 


「ニースさまぁぁぁぁぁぁあ!呼びましたかぁぁぁぁあ!?貴方の妻が来ましたよ!」


 現れたウルはいつの間にかスライムに変形していた。


「何だこいつは?ちょっと!?何をしようとしてるんだ?」


「何って魔力の譲渡ですよ?魔力を特別に分けてあげるんですから早く皆さん脱いでください」


「何を言ってるの!?別に触れれば脱がなくても出来るよね!?」



 いきなり何を言い出すかと思えば変態スライムだ。


「どこぞの女狐とガキおっぱいには直接体内に注入するしか方法はありません!ってのは嘘ですけど大量の魔力注入なら体内に直接が1番ですねー、あ!ちゃんと変換して注入しますのでその点はお気になさらず!流石の私も蒼炎を直接注入するほど鬼畜じゃないので」


「なっ、出来る訳ないですわ、私は一国の王女、そんな破廉恥な姿をニース以外に見せるわけには……」


「ならばシャロは黙って座っていると良い、我は行うとしよう。何故白スライムを介さねばならないか分からないが、魔力譲渡に必要ならば拒否する理由にはならないからな」


「ガリアもやる!脱いだ!フィルーダも脱げ!」


「え!?私は必要ありませ、いや、ガリア様!?」


 ウルが布状に変化した仕切りの先で何が行われているのかとでも気になる。


「それでは皆さんその布から顔を出して下さい、ニース様は私の(触手)を握って皆さんの瞳を見ていて下さいね」


「え、何で?」


「魔力が完全に補給されたからどうかは瞳の色で判断するのですが、私は供給に集中しますからニース様が見たら手を離して下さい。もしも瞳の色が変わっても供給し続けると……」



「し続けると?」



「魔力過多で死にます、なのでくれぐれも気をつけてくださいね!……まぁ私はニース様を奪う女狐がいなくなるので嬉しいですけどね!!それではユガからいきますよー、はい!」



 するとユガはうっ、と言う呻きと共に顔を赤らめて口をパクパクし始める。



「すまないが手を貸してくれないか?想像以上に苦しくてな……ここを夜伽に使う輩もいるらしいが、私は無理そうだ」


 深くは聞かない、うん。

 僕に出来ることは顔を赤らめながら頑張るユガの手を握るだけ。


 そして徐々にではあるけど、ユガの瞳に蒼色が混じり変わり始めていた。


 苦しそうでいて妖艶なその声は聞く人が聞けば興奮するだろうけれど今の僕はそんな余裕はない。

 なんせ僕が変化を見逃せば死んでしまうのだから。


「……ニース、そこまで見つめられると恥ずかしいのだが……そんなに君は女性が苦しむ姿を見たいのか?」


「違います!これはあ、ウル!もう大丈夫!」


 瞳が蒼くなったことを確認して僕は合図する。


「はーい、では……とう!」


 到底聞きなれない音とともに()()()()()()()()()()()



「げ、限界だ……」


 ユガが倒れると、侍女らしき人達が集まり、僕達(主に僕)にまるで道端で死にかけた害虫を見る目で睨みつけてくる。


 何もしてないのに……


「これであと3人ですねー、はやくやっちゃいましょ!」



「待って下さいまし!ユガがこれだけ苦しんだのです、もっと別な方法は無いのですか!?」


「ありませんよー、ありますけどありません。もう1つの方法はニース様が直接体内に体液を入れる方法ですが、それは私が許しませんからね!」



「私は構いませんわ!ねぇニース?貴方もそちらの方がいいでしょう?」


 まぁ、それはそうですけど……


「なんだ!楽しいならガリアもやるぞ!」


「待ちなさい!これはきちんとした大人同士が、いやこれは特殊でしない方が多いかもしれませんけれど……とにかく、貴方のような子供には早いんですの!」


「ガリアもう大人だ!馬鹿にするな!」


 純真無垢なガリアとするわけにはいかない。


「……やめませんか?」


「し、仕方ないですわね!ですが貴方!お手柔らかにお願いしますね!」


「何かいいましたか?それじゃ、いきまーす!」


「ひぅん!?」


「うぐっ、これもガリア様、グランディナのため……」


「何だこれは!気持ち悪いぞ!!」


 フィルーダも含めて3人は三者三様、だが何故かシャロだけは1人だけ恍惚の表情だった。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 魔力を分け与えられた4人はルキとスーリ、ミニと共に自国に戻って行った。


──魔力助かった!ありがとう白スライム!でもあまり美味しくなかったぞ?


 別れ際にガリアにお礼を言われたけど、あれ?


「魔力は口からも渡せるの?」


「はい、ガリアちゃんは素直で可愛いので口からにしました!それよりニース様、私達も準備しましょうか!ミニとの成果を是非見せて下さい!」



「成果といってもそんなに変わってないと思うけど……」


 僕が魔力侵食(マナイクリプス)を行うとウルはびっくりした様に身体をみょんと伸ばす。


「やっぱりニース様成長しています!あれだけの短時間でここまで強くなれるなんてやはり私のニース様です!」


「それはミニがいたから、僕だけの力じゃないよ」


「またまた謙遜を!あ、そういえば私に瓜二つのあのメルタザイトとか言うスライムは何者なんですか?リスティってあいつも何なんです一体?」



「リスティについては詳しく話してなかったね、リスティもバディアと同じ元仲間なんだ。僕の魔力を貸して旅をしていて裏切られてからはほとんど関わりは無かったんだけど」


「なるほど、そこで私が現れたと言う訳ですね!やはりニース様と私は不思議な運命の糸で繋がって……ニース様?」


 正直リスティがどうなろうと構わない。

 でも、そのせいで誰かが僕と同じように傷つくのはとても嫌だ。



「……みんな大丈夫かな」



「平気ですよ、私達の娘がどこぞの馬の骨に負けるはずないじゃないですか!」



「うん、そうだね……それじゃあ作戦通りに行こう。リスティを、メルタザイトを一緒に倒そう!!」


 悩んでいても仕方ない。

 今は僕のやるべきことをやろう。


「はい!!」




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