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勇者は落ちぶれる〜ざまぁその1〜

 魔王を前にして俺の身体の震えは止まらなかった。


 これは武者震いだと自分に言い聞かせてもその震えは止まらない。


 そんな俺の手にリスティの手が重ねられる。


「落ち着いてよバディア、私達には奪った魔力があるわ、それに3つの帝国合わせて100万もの兵士が戦場にいる。だから負けるはずがないわ」


「あ、ああもちろんだ!!俺が、俺がいるんだからな!!」



 頭では分かっている。

 それでも、身体が言うことを聞かない。


「バディア、どうしたの!?貴方が一撃、たった一撃放てばそれで終わりなのよ!?」


 そうだ、あいつから奪った無限に近い魔力、そして俺のスキルが有れば一撃。


 やれるはずだ!いや、絶対に俺は魔王を倒して英雄になる!やれる、やってやるぞ!!



 蒼く煌々とした剣状の火柱が俺の右手から吹き出すと、ベアウルフすら秒で吹き飛ばせるほどの大きさのそれは一直線に魔王へと向かって行く。



 途中にいた雑魚魔族達は触れただけで燃え上がり、炎の勢いは全く衰えない。


 皆が俺の蒼炎の行方を見守り、そして……魔王は炎に包まれた。



 更に炎の勢いは強まって行く。

 魔龍は反応出来なかったのか微動だにせず、魔王は未だ焼かれ続けていた。


 目を閉じて更に蒼炎を放つと、()()轟音が聞こえ目を開ける。


 そこには魔王はいなかった。



 ……勝った。



 俺だけではない、隣にいるリスティも周囲の兵士達も驚きの眼差しだ。


 ()()()()()()()()()()()()()違和感があったが、あまりに偉大すぎる英雄の俺を直視出来ないのだろう。




 リスティを利用した甲斐が今ようやくあったと実感し始めていた。


 俺は感慨にふけ、後に残されたのは魔王の燃えかす。


 俺は英雄だ!


 ──あれが英雄か?

 ──彼こそが勇者だ!!


 そこかしこで上がる歓声を一身に浴びて、もう我慢出来なかった。


 声を上げて名乗り出る。


「よく聞け、俺はバディア・スイン!魔王を倒した者だ!お前達、今日から俺がもたらした平和な世界で魔族に怯えることの無い自由な生活を送ることが出来る、それも全て俺の功績だと言うことを忘れるな!!」


 ……最高だ。


 全く、リスティとニース様々だな。


「…………」


「…………バ、バディア……」



 何か、様子がおかしい。

 俺を歓迎するどころか一部では笑いが漏れ始め、俺を見るその目は羨望ではなく嘲笑、そして失笑。



 失笑、失笑、失笑。



 顔が熱を帯びる感覚ととも真っ赤になって行くのを感じる。


「な、何を馬鹿にしてる!俺が魔王を倒しただろうが!!」


「バディア、よく見て!」


 リスティに指を刺された先には魔王がいたはずの場所。

 当然魔王は消えていなくなっていた。

 だが、それだけではなかった。


「……魔龍が、いないだと?」


 俺は魔王だけを狙ったはず、それなのに何故魔龍までも?


 それだけじゃない、辺りを見渡せばまるで巨大な何かが()()()()()()()()()かのように地面がえぐられていた。


「一体何が……」


 ──今のは何だ!森から出た蒼炎が魔王を消しとばしたぜ!

 ──蒼炎使いって聞いたけど、あいつは偽物かよ……

 ──あいつの蒼炎、すぐに魔王が片手で消してたぜ、恥ずかしい奴だな



「さて……ご満悦の所悪いが、偽の蒼炎使い、君には少し話がある」


 イグニス帝国の軍団長が俺に声をかけると、兵士達が逃げ場を無くす様に俺を取り囲み、そして更に笑いは周囲に広がって行く。



「っ、糞がぁぁぁぁあ!!」


「え?嘘でしょバディア!?」


「何!?仲間を置いて逃げるとはやはり偽物か……追え!絶対に逃すな!!」


 背後から容赦なく弓や魔術が飛んでくる。

 どうしてこうなったなんて考えている暇すらない。


 偽物の蒼炎使い?

 違う、俺は本物、偽物はニースだ。


 だが兵士達は聞く耳を持たないだろう、捕まれば投獄され、恨みを持ってる奴らから狙われて最悪殺される。


 自慢じゃないがそれだけ恨みを買っている覚えはある。

 きっと今のでリスティにもな。


 こうなったのは全てあいつの策略に違いない。


「クソ!クソがクソが!やっぱり殺しておくべきだった!ニース!!」


 きっとあいつが俺に何かしたに違いない。


 次に会った時にはあいつに説明させて殺してやる。




 だがまずは失った魔力を補給しないといけない。

 とりあえずは手持ちの高級魔力ポーションで回復だ。


 味は糞だが効き目は保証済みだ。


「よし、これで……」



 ──────────

 名前:バディア・スイン

 スキル:奪取

 魔力:-∞/100

 魔術適性

 地:E

 水:F

 風:F

 火:SSS

 ──────────


「-∞だと!?」


 おかしい、1本5万ジルの高級品だぞ!?

 薬屋の親父め、俺に粗悪品を売りつけやがったな!


 だが慌てる事は無い、こんな時にと1本500万ジルの最高級品を準備していたからだ。


 1本でおよそ1年分の魔力を回復出来るこれがあれば問題はない。


 味わう事なく一気に飲み干し、ステータスを確認する。



 ──────────

 名前:バディア・スイン

 スキル:奪取

 魔力:-∞/100

 魔術適性

 地:E

 水:F

 風:F

 火:SSS

 ──────────


「あ……あり得ない!!」


 この最高級魔力ポーションが粗悪品と言うのは絶対にあり得ない!


「な、何が起こっている?」


 わからない、わからなかったが、震えが止まらない。


 魔力が一生使えなくなる。

 それは、全ての終わりを意味していたからだ。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 …

 ……

 ………



 スキル所有者、ニース・ダグドの魔力枯渇を確認……□スキル()()()()()()、魔力強制回収を開始いたします。


 魔力回収量計算中……計算完了。


 使用量1億9450万3500、本日から魔力吸収を開始してもよろしいでしょうか?


 …………スキル所有者返答無し、肯定と認識、対象者からの魔力回収を決定。


 長期滞納及びスキル所有者から魔力貸与を一方的に行った形跡を確認、悪質性最大と判断、通常回収(ノーマルモード)から人生終了回収(ブラックモード)に変更します。



 貸与分魔力及び利息分、【5328.8630年分】の魔力無限回収、開始します。



 ………

 ……

 …





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― 新着の感想 ―
[一言] ご、五千年!? うわぁ・・・。一方的に奪っていた魔力を、全部返済しないといけないのはキツいね。 しかも、回復した所から返済していく。これが、勇者がやっていた事のツケが回ってきたって事だな…
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