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招かれざる者

 翌日、グランディナにいた僕達はナータに叩き起こされた。


「なっ、どうしたの!?」


「やって来たのです!私達の国を壊滅に追いやった災厄が!」


 ようやくなのかそれとも早すぎるのかはわからないけど、話の通り来てくれたのはありがたい。


「今はまだこちらに危害を加えるつもりは無いようですが、それもどうなるかはわかりません」


「きっとニース様を狙ってやって来たに違いありませんね!」


 ウルはそう言うけど僕は英雄の弟子だ。

 本当に用があるので僕ではなく英雄である蒼皎姫だろう。



「それが……災厄は蒼皎姫様では無くニース様に用があると」



「え?僕に?」


 何故だ?


「とにかく行きましょう!」




◇ ◇ ◇ ◇




 急いで案内されたのは玉座の間、そしてそこに座るのは当然ガリア……ではなかった。



 その人物を僕は忘れない。



「……リスティ」


 その姿は間違いなくリスティ、そして側にいたのはウルに似たスライム。


 ただそれだけだと思っていたけれど、僕の口からは勝手に妙な言葉がでていた。


()()()()?」


「パパ?誰を見て言っているの?」


 そう、確かにバディアはいなかった。

 でも僕はその黒いスライムからバディアに似た嫌な感覚を感じとっていた。


「久しぶりね、あれから私達大変だったのよ?魔王をどこかの誰かに横取りされるし、そのせいで無能扱い。挙句の果てには()()()()()()()()()()なったし」



「リスティ様、そんな話なんてどうでもいいデスヨ。それよりも目の前にいる私の偽物をブチ殺しマショウ、ついでにそこの男モ」


「ニース様、どうやら私達が偽物と言われているようですよ?これは痛い目に遭わないとわからないようですね!」


 ウルはやる気満々、僕も言われたままで引き下がるつもりは無い。


「待ちなさい、ここでやり合うのもいいけどこの辺りは焼け野原になるのはいいのかしら?」


 リスティは黒いウルツァイトに取り憑かれると、手から飛び出した紅炎が2つに分かれる。


「何か嫌な気分ね」


「同感です、母上と父上は下がっていて下さい」


 紅炎は人型に変わって行くと、見慣れた姿が現れる。


「ママ、こいつを殺せばいいの?なんだかひ弱そうな女、倒したら奴隷にしていいよね」


「兄上、弱いからといたぶり過ぎないで下さいよ?にしてもボクと瓜二つとは気味が悪いですね。とは言えボクの足元に及ばないクズでしょうが」



 現れたのはルトとスーリに瓜二つの()()



 その姿はほとんど全裸、辛うじて大事な局部を隠しており、瓜二つで男だとわかったのは下半身に特徴的な膨らみがあったからだ。


「はぁ?あんたの奴隷?私を好きにしていいのも触れていいのはパパだけ、それにひ弱ってそれ、自己紹介かしら?」


「クズとは酷いですね、それに僕の姿でその破廉恥な姿はたださないといけませんね、それにしても……ふっ、()()()()()()()()()()()()()



 ルトとスーリ、そして偽ルトと偽スーリはお互いに睨み合う。



「コル、ミィス、貴方達もやる気が出てきてみたいで良かったわ。でもここで貴方達とやり合う気はないわだって……」


「ニース、面倒なことはいりません、今ここで倒してしまいます!」



 目眩しの様に突如現れた蒼炎、その中から現れた蒼皎姫状態のウルはリスティに襲いかかる。


 誰にも、そして僕にもその姿は捉えられずリスティは組み伏せられる……はずだった。



「ハハハッ、なんですかこいつ、リスティ様に何しようとしてるんデスカ?」


「なっ!?」


 驚きの声はウルだ。


 黒いスライムは姿を変え、黒い鎧と所々から噴き出る紅炎、見た目は蒼皎姫と瓜二つのそれは襲いかかるウルの拳を正面から受け止めていた。


「流石ね紅涅姫(ネムシス)、そのまま潰してしまいなさい」



「邪魔をしないで頂きたいですね!」



「邪魔はアナタですよ?それに助けるノハ当然じゃナイデスカ、リスティ様はワタシの主人デスヨ?」



 ウルが蒼炎を放つと同じように偽ウルが紅炎を放ち、それは互いに触れると相殺されたかの様に見えた直後、その場で爆発した。



 とてつもない衝撃派と共に僕だけでなくそこにいたリスティや衛兵達が吹き飛ばされる。


「説明は最後まで聞きなさい無能、メルタザイトが直接生み出す反魔力(アンチマナ)は魔力とは正反対、互いに触れれば大爆発するわ。容易に攻撃出来ないでしょ?それに貴方達には相応しい場所を用意してあるのだからそれまで我慢なさい?」


 メルタザイト?反魔力(アンチマナ)

 確かに今までも紅炎を見てきたけど、その黒いウルが放つ紅炎は別格に見えた。。



 ウルに瓜二つのメルタザイトと呼ばれていた黒スライムは僕達を殺そうと敵意剥き出し、そしてリスティの背後からは続々と魔族が現れ始める。

 


「まずは雑魚を消し去るわ、この世界を魔族、いや私の支配下にする為に!」


 魔焉大戦の10倍は優に超える魔族の大軍、その身体の中心には紅炎を灯していたのが見えた。

 それは城を囲う様に現れ、僕達に襲いかかる。


「ウル、魔力をどれだけ使ってもいいから阻止して!スーリ、ルキも協力して!」


 吹き飛ばされたどさくさに紛れてウルを装備した僕は全力で魔力をウルに与え、そばにいたスーリとルキにも魔力を同時に与えると巨大槌(ルキ)無数の槍(スーリ)が現れた。


「わかりました!」


 蒼皎姫の両腕から極大の蒼炎が放たれる。

 それは魔族の大軍を飲み込み吹き飛ばし、巨大槌は人族を踏み潰せるほど巨大な大型魔族を一振りで潰し消し、無数の槍は飛び回るグリフォンやゴブリン達を一斉に刺し穿ち、倒して行く。


「すごいよウル、ルキ、スーリ!!」


「ありがとうございます……と申し上げたい所ですがすみません、どうやら全ては排除出来なかったようです」


 魔族を殲滅する眩い蒼炎に紛れ蒼皎姫の中から出て空をよく見上げてみると、魔族の3割程度は平然とこちらに向かって来ていた。


 ウル達でも全てを倒すことが出来ないのか……


 でも何とかしないと……ここにいる皆が殺されてしまう!



 その時だった。



「グランディナは闘う!土地と誇りを取り戻す!」


 声を上げたのはガリア、それにグランディナ兵士達も呼応して雄叫びをあげ始める。


「敵は私でも未知数、それでも共に戦ってくれるのですか?」


「当然!元からガリア、あいつらと闘うつもりだ!」


 そして、強風が吹いたかと思えば矢雨が降り注ぎ、飛びかかろうとしていた魔族が地に堕ちてゆく。


「ミストラも当然戦いますわ」


「シャロ!?何故ここに?」


「ニースは私の将来の夫、その危機と聞いて飛んできたまでですわ。久しぶりですわねガリア、私の夫が世話になっているようですね」


「ニースはガリアの男だ!」


 夫とかなんとか勝手に話が進んでいるけれど、今は来てくれるだけとにかくありがたい。


「何ですの!?」


 更に至る所で突如として火柱が上がり、無数の火球が魔族達を燃え上がらせる。


「どうやら()()将来の夫の危機らしい、さてニース、私が必要なようだな」


「ユガ!!」


 四大帝国の内3つ、イグニス、グランディナ、ミストラの王が集結していた。


「これもニースの人望の賜物、どうですか偽者?これでもまだ戦うと?」


 しかし、リスティに動揺する様子はない。


「それならこちらも本気を出してあげるわ」


 リスティが指を鳴らすと周囲が紅炎に包まれ、中から這い出る様に現れたのは魔族。


 その中にはただの魔族だけでは無かった。


「まさかあれは……魔王!」


 倒したはずの魔王、それが身体から紅炎を吹き出しながら現れた。


 それが1()0()()()


「これで五分五分、いえこちらがかなり有利かしら?」


 魔王を倒せたのはウルの力、そしてそれを容易に復活させるリスティの紅炎とメルタザイト。


 その力は魔王よりも遥か上かもしれない

 ……勝てるのか?

 そんな迷いがふと湧き上がった時、蒼皎姫(ウル)が僕の肩を叩く。


「大丈夫です。ニースには私達がいます、魔王など再び消しとばしてしまえばいいんです。でもそれにはニースの力が必要、私達なら必ず勝利を掴み取れます」


「……うん、そうだね!」


「……へぇ、少しは変わったのね?まぁいいわ、特別に決戦は明日にしてあげる。だから最後に大切な人にお別れを言いなさい……そして殺すときは大切な人の前で殺してあげるから」



「僕は負けないよ、僕が魔術が使えなくても仲間が使えるから」



「そう、じゃあその仲間ごと殺すわ。ただ殺すだけじゃ面白くないから……ふふふっ!あはははっ!!」



 リスティ達はそう言い残し、紅炎に包まれ姿を消してしまう。




「ごめん皆、これで後戻りは出来ない」


「何を言っている?我は、いやイグニスは蒼皎姫殿に助けられた身、その恩返しをするのは当然だろう」


「そうですわ、それにあの女は何か好きになれませんし……それとニース、もし私があの女を倒したら正式にわたくしと一緒に」


「ガリアは悪い奴倒すだけだ!それで皆幸せになる!」



「……ありがとう」



「パパ、私も忘れないでね?」


「当然僕もですよ?父上?」



 これだけの頼もしい仲間がいる。 

 なら、負けるはずがない。


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