僕にしかできないこと
「はぁ、はぁはぁ……もういいんじゃないかな!?」
あたりは真っ暗、走り続けて到着したのは魔の咎森だった。
「だめです!ママンとパパンのため、ミニはこころをおににします!」
僕の身体から飛び出てきたミニは徐々に人の形を成してゆく。
現れたそれは、白色の肌、まだまだ幼い6歳程度の幼女……そしてもちろん裸だ。
「君達は裸に抵抗ないの?はい服着てね、それにお腹すいてるんじゃない、魔力あげる?頭撫でてもいい?」
「ありがとうございます、ふぇぇ……じゃないです!ミニはこころをおににするのです!」
「でもミニはそう言う鬼って感じはしなくてかわいいし」
「そ、そんなこといってもミニはやさしくしたりなんかしませんからね!」
そう言ってミニは手で空中を割くように手を動かすと、現れたのは真っ暗な空間。
「え、この中に入るの?それはちょっと……」
「いいからはいるのです!!」
ぽこぽこと殴られながらそのまま黒い空間に入ると、そこは今いた場所と何も変わらない森だけど、辺りの動きという動きが止まっているように見えた。
「ミニ、なんだか外の様子がおかしいんだけど」
「ここは喰魔の部屋、あらゆるかわりにまりょくをうしなう特別な場所です。パパンにはここで私と一緒に魔王をたおしてもらいます」
「魔王?それならもうウルと一緒に倒したけど」
「だいじょうぶです、今からまおーを呼びますから!」
ミニが指を鳴らすと現れたのは……魔王だ。
「う、嘘!?何で倒したはずの魔王がまだいるんだよ!?」
「これもパパンのため、ママンの力に頼っていたパパンが自分の力で倒せば、それは強くなったってことです、でもパパンは魔術がつかえませんからミニはパパンから最低限の魔力を引き出すぶきになります!」
僕が魔王を倒すだって?それは無茶だ。
きっと何日経っても、何年経っても。
僕にあるのは魔力だけ、それを1番わかっているのは僕自身だからだ。
「無理だよ、ウルがいなければ勝てる訳が無い」
「パパン、それでも英雄ですか?ママンが今の聞いたらかなしみます、パパンの持ってるものは誰よりも最高なのですからそれを活かせばぜったい勝てるです!!」
僕の目の前には魔王、黒と紅が入れ混じった鎧と僕なら一振りで真っ二つに出来そうなほど巨大な剣。
それを振りかぶり、そして僕は真っ二つ。
ああ死んだ、なんて思う暇も無く意識は闇に消えていった。
「……あれ?死んで無い」
「だからいいましたよ、ここはあらゆる代わりに魔力をうしなう場所、時間も、たいりょくも、せいしんも……そしていのちも。だから思うぞんぶん魔王に倒されて、最後には勝てばいいんです、簡単です!」
無限の時間だけでなく命、確かにそれならいつかは勝てるかもしれない。
初めて希望が見えてきた。
「やってやる、僕だって1人でも出来るんだ!」
「ようやくやる気出ましたね!がんばりましょー!!」
ミニが僕の中に戻ると確かに魔力を使える感覚が戻ると同時に右手に白い短剣が現れる。
「よし、行くぞ魔王!!」
僕でも、無限の時間と命があればいつかは魔王だって倒せる!
…
……
………
──そして1年後
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
「がんばれですパパン!1秒くらいで殺されていたのが2秒くらいに長くなってきました!せいちょうです!」
──10年後
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
「すごいですパパン!殺されるまでに10秒になりましたし短剣もまおーに触れるようになってきました!」
──100年後
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
「も、もうちょっとですパパン!まおーもなんとなくあせっているようですよ、たぶん!」
──1万年後
「無理だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「む、むりなんてことはないです……たぶん、この調子だったら5000兆年後にはたおせます!」
「いやそれを無理って言うんだけどね!?」
それよりもこの空間の凄さを思い知らされていた。
体力、お腹が空かないことはもちろん、汗もかかないし喉が乾かない。
更に同じことを何回もしていれば普通は精神を病んでもおかしくないけれど全くそんなことはなかった。
魔力を犠牲にこんなことが出来るなんて考えられない、やはりウルにはまだ僕の知らない力があるみたい。
「というか、この空間に敵を引きずり込めば僕無敵なんじゃ……」
「せつめいきいていましたかパパン?ここにいる全てはなくならないんです、それは敵でもです!とりあえずパパン、私をさかてに持つのはやめたほうがよいです、その分こうげきはんいが狭くなりますから!」
「いや、だって普通に持っても勝てないし、蒼炎を剣に纏わせても全く効かないし」
「蒼炎はママンがいないと真の力をはっきしませんからね……でも、ミニでもちょっとはパパンの力をあつかえるんですから!」
短剣から蒼炎が漏れ出すと、瞬時に巨大な大剣の形になるがすぐに消えてしまい、元の短剣に戻ってしまう。
「パパン、ごめんなさい……」
「それは違うよ、僕の方こそミニを扱えてないんだ。ごめんね?」
「そんなことはないです!ミニはママンと一緒にいる間パパとずうっとお話ししたかったのです!パパンかっこいいなぁとか、パパンの好きなものは何かなぁとか!それにパパンにはとっても才能あってびっくりしたのですよ!」
「僕に才能は無いよ、ウルがいるからで……」
するとミニは怒り出してしまう。
「そんなことないです!パパンのことをそう言うのはパパンでもゆるしません!」
でも僕にあるものと言えばスキルと魔力くらいのもの……いや、待てよ。
それなら、あれでいけるかもしれない。
手から蒼炎を出すと、それを更に大きくして行く。
ウルが以前にした奇妙な技。
攻撃でも防御でもない、僕にしかできないこと。
蒼炎もとい魔力は空間一杯に広がり、それは触れてもダメージを受けることはない。
魔術を放つ為に必要な魔力、それを空間全てに満たしたらどうなるか。
もっと濃く、もっと多く。
僕には戦いの才能はない。
なら、僕に出来る事をするまでだ!
蒼炎が空間に充満して行くと、魔王は苦しみ出しその身体が徐々に崩れ去って行く。
「グォォォォォォォォォォ!!」
雄叫びをあげ、向かって来るけれどそれでも僕はやめない。
聞いたことがあった、どれだけ身体に良い影響があるものでも大量に身体に取り込めば毒になると。
つまり、それは魔力も同じなのではないだろうか?
そして魔王は膝を突き崩れ去る。
「パパン、すごい!!さわらずにまおーを倒すだなんて!」
「いや、むしろこれでしか倒せなかっただけだよ」
空間に亀裂が入ったかと思うと、白黒だった外の風景が色を取り戻して行く。
「やりましたパパン!!これでパパンも1人で魔王をたおせます!!」
かなり条件は限定されているけれど、これは僕の武器になるはずだ。
「パパン、これはなんて言う魔術なのですか?」
魔術?そんなこと考えていなかった、というかこれは魔術ですらない。
でも強いて言えば、無限の魔力で敵の限界を超越する。
「魔力侵蝕……ってのはどうかな?」
「いいです!かっこいいです!!」
魔力を一度に放出し過ぎたせいか少し、いや結構頭が割れるような頭痛で倒れそうになるけど、これは僕にしか出来ない無限魔力での侵蝕攻撃。
きっと、いや間違い無くこれからの戦いに役立つはずだ。




