偽物
「おい!さっさと歩け国賊が!」
そのまま逃げることも出来たけど、全裸で倒れていたシャロ国王を放って逃げれば何を言われるかわかったものじゃなかったので大人しく捕まることにした。
「全く、頭の固い連中ですね!私達がガキおっぱいを救ったと言うのに犯人扱いとはこれだから人族は」
「仕方ないよ、僕だってあの状況じゃ犯人だと思うし。ていうかその呼び名やめなさい」
吹き飛んだ小屋、倒れているシャロ、そしてそれを襲おうとする白スライム。
実際には助け起こそうとしていたんだけどそんなこと通用しなかった。
「何よこれ、こんな鉄檻で閉じ込められるとでも思ってるのかしらね」
ルキは鉄檻をまるで粘土の様にぐにゃりと曲げてしまう。
「駄目だよ大人しくしてて、逃げたら益々面倒なことになるから」
「わかっていますが、本当に出られるのでしょうか……」
スーリの言い分もわかる。
シャロ国王が目覚めなければ僕たちはきっとこのままで悪くて死刑だろうし、目覚めたとしてもきちんと説明してくれるだろうかわからない。
「今出来るのは大人しく待つことだけだよ」
「そーですね!それじゃあ時間もあることですしニース様と私の親交を深めましょうか!」
ウルがカーペットの様に身体を広げて覆い被さって来ると息が出来なくなる。
と、その向こうで誰かの声。
「おい早く出ろ、国王が目覚めた。お前達に会いたいとおっしゃっている」
「ちっ、あなたタイミングが悪いですよ!それと閉じ込めたことを後悔しますからね!」
「助かった……」
「母上の愛は重いですから」
「うまいこと言ってないで助けて欲しかったな」
そうして地下牢を出た僕達が衛兵に連れられやってきたのは、僕達4人が寝ても十分過ぎるほどのキングサイズ以上のベッドのある寝室とその周囲には回復術師らしい人が何人か。
「良かったですわ、無事でしたのね」
そしてベッドにはシャロ。
「シャロ王こそ大丈夫ですか?それと覚えてらっしゃいますか?」
「ええ大体は……ごめんなさい、貴方達に迷惑をかけただけでなく無礼なことを、それと私のことはシャロと呼んで敬語もやめてくださいまし、貴方は大切な方なのですから」
「何ですかこいつ!そう思うなら今ここで土下座ひぎゃぁあ!?」
「わかった、それよりもシャロが持っていた黒羽根はどこから手に入れたの?」
シャロは一瞬言い淀んでその後、意を決したように口を開く。
「そこにいる彼女、私はその彼女から黒羽根を頂いたのですわ」
僕達の中で彼女と一眼でわかるのは、そう。
「……私?」
ルキだ。
「姉上、まさか魔王側だったのですか?」
「ルキちゃん!そんなニース様を裏切っていたなんて!」
「ち、ちょっと待ちなさいってば!パパならわかるわよね、私がその魔黒器を渡した相手じゃないってことくらい!」
「シャロ、それを貰ったのはいつ?」
「帝国会議があったその日の夜ですわ、突然現れては私を誘惑するように……それ以上は話せません、お分かりでしょう?」
シャロ国王は赤面しながらルキを見つめていた。
「……姉上」
「だから違うって言ってるじゃ無い!!」
「シャロ、これだけは言えるよ。ここにいるルキは魔黒器を渡しした人物とは別人だって」
それは当然、なぜならルキは帝国会議の翌日に僕が錬成して生み出したのだから。
「いえそうですね、そうだとは思いましたわ。見た目は一緒でもあまりに格好がちがいましたもの」
「そのもう1人のルキについて教えて貰えない?他の国に行くだとか、誰かを狙っているとか」
「そう言えば……確か他の仲間がグランディナに同じ力を与えていると言っていましたわ。すみません、これ以上はわかりませんわ」
「そっか、ありがとう」
次なる国はグランディナらしい。
「ニース、今回はありがとうございました。貴方は逃げたと思っていましたけれど、いち早く私の元に来てくれたのは貴方、何処からか助けてくれていたのですね?ニースがいなければ今頃私はこの国をどうにかしていたかも知れませんわ」
「気にしないで、助けられて良かったよ」
「私はニース、いえ蒼皎姫を我がミストラに懐柔する為に誘惑しましたわ。ですが今は貴方本人に興味が、そして貴方と生涯を共にしたいと思っていますわ……今なら貴方にユガが惹かれた理由が分かりますわ、あの……いつでもこの国に戻ってきてくださいましね?」
社交辞令でもはいと返事をしなければいけなかったんだろうけど、隣で殺気を放つウルの前では苦笑いしか出来なかった。
◇ ◇ ◇ ◇
「父上、グランディナにはどんな国なのですか?」
僕達はシャロ王と別れた後、すぐにグランディナに向かうことにした。
「イグニスやミストラよりも優しい人が多いはずだよ、なんせ団結と絆の国だからね」
「ところで帝剣はどんなものがあるのですかねー」
「帝剣ディアマンテ、ダイヤモンド製で今もグランディナの城に飾られているみたいだよ。そう言えばウル、新たな力は目覚めたの?」
「え?ああ!忘れてました!!えーと……耐冷性能のようですねぇ、それと新たな帝剣も扱えるようになりました!」
ウルの一部が僕のにまとわり付き剣に変形する。
「ただの剣ではないみたいですが……」
「試しにそれでママを斬ってみたらいいんじゃない?私達の中では1番硬いし」
「そうですね、って何言ってんですか!?第一その剣は私の一部でもあるんですからそんなことはさせませんよーだ!」
ウルの意思なのか勝手に動く剣。
ウルを斬るのは置いといて、確かに試してみたい気もする。
黄金と碧色の双剣はまるで持っていないかの様に軽い。
試しに目の前にある木に向けて軽く一振りするだけで目の前の木は真っ二つになる。
「凄い切れ味だね……あれ、どうしたの?」
「父上、あれを」
真っ二つになった木が倒れ、その先に広がっていたのは奇妙にずれたミストラ城。
そのずれは徐々に大きくなって行き、そして崩れ落ちる。
「あーやらかしましたねニース様!いやぁニース様もシャロが嫌いだったんですねぇ、でもまぁ分かります!」
「母上、いくらシャロが嫌いだからとやり過ぎです。斬れ味を知っていましたね?」
「な、何のことですかねー?」
とんでもない威力、と言うか!
「大丈夫なの!?今の!?」
「検索しまーす……死者はゼロで大丈夫みたいです、もうニース様はおっちょこちょいなんですからー」
「……ごめん」
何で僕が謝っているんだろう。




