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可愛い娘(スーリ)の実力

 スーリに案内された場所は意外な所だった。


「帝国博物館だね、こんな所に帝剣があるの?」


「はい、帝剣はここで年1回展示されているようです。そして地下には帝剣が保管されています、ですから入りたいのですが」



「それじゃ行きましょうか!さて私達の栄光に向かって一歩を踏み出しまぶぅぅぅぅぅぅ!?」



 博物館に入った途端に目の前でウルが爆発した。



「待って下さいと言おうとしたのですが……貴重な国宝を展示している博物館に魔族が入れば攻撃されるに決まってるじゃないですか」


「私は魔族じゃないですよ!!」


「それは知っています、ですがこの結界は関係ないようです」


 ウルが攻撃された事で警報が鳴り響くが、スーリが自分の使い魔だと事情を説明すると『スライムなら問題ない』と簡単に入る事が出来た。


「全く、いきなり攻撃とは酷すぎませんか!?私が何をしたって言うんですか!」


 魔族を歩かせるなと帝国兵に言われ、ウルはスーリに抱かれながら文句を垂れ流していた。


「まぁ、これから帝剣を盗みに行くんだけどね……それにしてもスーリには反応しなかったね」


「僕は身体は四大物質ですので、魔族でも人族でもありませんし入るのは問題ありません。さてもうすぐ着きますよ」



 地下へ続く階段、そこを下って行く。


 途中に何度も帝国兵の検問にあったがその度にスーリの姿を見て平身低頭といった感じだった。


 更に降りて行くと、ミスリル特有の緑色の発光が見えて来る、そしてその最下層にあったのは。


「美味しいそうな剣、はっけんです!剣だけに!」


「母上…………」


「……かなり強力な結界が張られてる、触れたら警報がなるだけじゃなく攻撃までされる入り口のものと一緒だね」


 碧色の剣、帝剣ミストラガルの刃が輝きが目の前だと言うのに。


「大丈夫です父上」


 そう言いスーリは結界に触れると、何の問題も無く帝剣を引き抜いてしまう。


「魔術すらも通さない、ですがミスリルだけは通す特殊結界です。僕以外がどう取り出すかまではわかりませんが、確かにこれなら安心でしょうね」


 周囲に兵士はおらず、強力な結界だからこそ衛兵はいらないと言うことなのかもしれない。



「いただきまぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!」


 うまいうまいと泣きながら帝剣を食べるウルを止める気にはなれなかったというか止める時間もなかった。



「はぁーお粗末様でしたー、熟成された中にもミスリル独特の若草の様な青臭さもあり、かと言って強すぎない最高のミスリルでした!」


「スーリも帝剣は美味しそうに見えるの?」


「いえ全く、母上は特別ですから」


 特別と言うか、変というか。


「それじゃあ戻ろうか、これで後はグランディナとオーヴァルだけだね」


「あー、水を差す様で申し訳ないんですがニース様、そう簡単には行かない様ですよ?」


 視界に入ってきた何かを認識する前にスーリが寸前でそれを弾く。


 結界の外にいつのまにかこちらに弓を引く兵士。

 その背後で指揮をする壮年の男性、恐らくは隊長だろうか。


「そこまでだ英雄の弟子よ、まさか噂通り本当に帝剣を奪いに来るとは、街の噂も馬鹿には出来ないと言うことか」


「……噂?」


「ああ、どうやら帝剣を食べてやると豪語する使い魔が現れたと聞いてな」


 ウルに問いただそうとすると、ウルのまん丸な目が更にまん丸になっていた。


「母上……」

「ウル……」


「す、すみませーん!!だってようやく食べられると思ったらつい口が……」



「なるほど、英雄の力の正体は帝剣という訳か。イグニスの帝剣も何者かに奪われたと聞いたが貴様達がそうだったとは」


 微妙にあっているようで合ってないと言いたいけど、今の状況でそれを言えるほど肝は座っていない。


「大人しく捕まれば命は取らない、だが……帝剣のありかを吐くまで拷問するがな」


「仕方ないか、蒼皎姫で脱出するよウル!」


「あの、実は……今お腹いっぱいで蒼皎姫になれなくて……」


「嘘でしょ……」


「大丈夫です父上、手出しはさせません」


 僕と兵士達の間に割って入るスーリ。


「子供を盾にするつもりか?だが……そんなもの無意味だ!!」



 兵士達は遠慮なしに僕達を捕らえるべく襲い掛かる。


「盾?確かに僕たちは父様を護ることもありますが……」



「スーリ!!」



 スーリは至る所に矢と魔術を放たれ、更に斬りつけられている……が、それにも関わらず無傷。


 肉弾戦を挑む兵士もいたが、そちらは更に悲惨だ。

 何せ急所である腹や顎を狙い殴ったその拳の骨は粉々となり、阿鼻叫喚の地獄になっていたからだ。



「貴方達の攻撃は父上には届きません、ですから盾になる必要すらありませんね」



 ──や、やばいぞこいつら!

 ──あいつだ、あの男を狙え!人質だ!


 圧倒的な力の前に兵士達は標的を僕に変えたことで兵士に囲まれるが、それもウルがスライム状態でぼこぼこに殴り倒してゆく。


「楽勝です!後はあの大男だけですねー」


「楽勝か……確かに圧倒的だな。だが総隊長としてここを通すわけにはいかない、帝剣を奪われ逃しましたでは済まされないからな」


 ミスリルの鎧、兜に大剣。

 男はやれやれと肩をすくめていた思い出した、あれは総隊長ヴァレンだ。


 1人で1000人規模のイグニス大隊を壊滅させたのは有名な話で、バディアと同じくミストラの勇者であり魔王を倒す最有力だった人物。


「俺も英雄には()()がある、英雄の弟子がこんなガキとは拍子抜けだが油断はしないが、一瞬でカタをつけてやろう」


 絶対の自信と魔王を倒せなかった逆恨み、とんだ迷惑だ。


「父上には母上がついていて下さい、馬鹿にした報いを受けてもらいましょう」


「やめとけ、怪我しない内にパパと一緒に帰るんだな」


「なら力づくでどうぞ、僕は素手で今がチャンスですよ?」


「……ガキは相手にしたく無いが仕方ない」


 ヴァレンは大剣をくるくると振り回し迫るが、スーリは避けようとはしない。


「吹き飛べ!!」


 そのままスーリは大剣の直撃を受けると、動かなくなってしまう。


「口先だけの餓鬼が、歯向かうからこんな事に……」


 異変に気づいたのはすぐだった。


「君達を解放する、もうモノとしての役割は終わりだよ」


 その言葉を聞いた次の瞬間にはもう変化は起きていた。

 ヴァレンが身につけていたミスリル装備の全てが溶け始めていた。


「貴様、何をした!!」


「何って、装備の力を自分の力と過信していた人間からミスリル達を解放しただけです」


「ミスリル達?何を言ってる!?」


「無能な人族にはわからないでしょうね……これと父上が同じ種族とは、全く信じられません」


「てめぇ、ふざけた事抜かしやがって!」


 だがヴァレンは素手、そんな状態でミスリルのスーリと殴り合えば結末は明白だ。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあ!手が、手がぁぁぁぁぁあ!?」


「安心して下さい、拳は砕けましたが安静にしていれば治癒するはずです。まぁ完治まで1ヶ月程はかかると思いますが……それとも、全身を砕かれて一生ベッド暮らしが良いですか?」



「……クソっ!!」



 ミストラの兵士達はこれで全滅、後は逃げるだけ。

 呆気ないけれど1000人のイグニス兵を相手に出来るヴァレンが弱い訳じゃない、あまりにもスーリが規格外なだけだ。


「素晴らしいですわ!!流石蒼皎姫様の弟子なだけはあります」



 圧倒的なスーリの力の前に兵士達が静寂に包まれた、その時現れたのは見覚えのある少女。


 碧眼碧髪、小さな身体とは対照的にはちきれそうな大きな胸、少し高圧的な態度の少女、突如聞こえてきたのはシャロ帝国王その人の声。


「ガキおっぱいめ……」


「何てこと言うのウル……」


 兵士達が入り口を塞ぎ、そして奥にも今いた数とは比べ物にならない数の兵士達。


「どうやら帝剣を奪われてしまったようですが……それはどうでもよいことです、強き方に強き物が集まるのは自明の事、むしろ歓迎させて下さいまし!」


「わかりました」


 すんなりと納得してくれたのは逆に怖いくらいだ。


「大丈夫なんですか?彼女を信用して」


「今は従うしかないし、話が通じるなら無駄に騒動を起こす必要は無いしね」


(弟子の方、ぜひ貴方と2人でお話しさせていただきたいことがこざいますわ)


 去り際、シャロ王は僕に小さな鍵を渡すと去って行く。


「……ニース様、今何か貰いましたか?」


「何も貰ってないって、それより残りの帝剣食べたくない?」


「食べたいです!!」


「じゃ、部屋に戻ってゆっくりしようか」


 楽しみですーと喜ぶウルの声を聞きながら、まだ温もりの残る鍵を握り、僕はただシャロの背中をじっと見つめていた。


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