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最『硬』との出会い

 遠くからはイグニス王国の皆が一丸となって声を上げていた。


 魔龍とそれに乗る魔王。

 膨大な魔力は遠く離れたここからでもよくわかる。



 ──勇者バディア様万歳!

 ──その蒼炎でどうか私達に勝利を!



「何でこんな目に……」



 スキルだって選べるわけではない。

 叶うことなら他のスキルが良かった。


 遠くで行われているのは世界を左右する大戦、僕にはそこに参加する資格すらない。

 いや、本来なら資格はあったのかもしれない。



 失望の中、僕はイグニス辺境の森を彷徨っていた。

 ここにいれば大戦に巻き込まれることはないから。


 無能な僕だけど、足手まといにはなりたくなかった。


 ……もうわからない、生きている意味も。



 ドゴォォォォォン!!



「……何だ?」


 そんな時だった、突如激しく地面を揺れ動かす音と振動に振り向くとそこにいたのは魔族。


 全ての魔物は魔焉大戦に参戦していると思っていたがどうやらそうでもないらしい。


 ベアウルフ、四足歩行の巨大なそれは魔獣の中でも一際危険なSランク認定の魔獣だ。

 魔獣のランクはどのランクの魔術で倒せるかで決められる。


 SSSランクは1000年に1人現れるかどうかのSSSランク魔術、つまり蒼炎を使える超世魔術師でしか倒せない。

 同じようにSSランクは100年に1人の世紀魔術師、Sランクは10年に1人の現れる十世魔術師、と言った感じだ。


 魔王についてはSSSランクと言われている。


 ちなみにEランクの魔族を倒せる五等魔術師より下の僕の様なFランク魔術師は無等魔術師と言われまず魔術師として扱われていない。



 ベアウルフだって相当な魔獣だ、こんな森にいるはずが無いと思って見てみると、何かを相手にひたすら殴り続けていた。


 Sランクのベアウルフが苦戦している?

 そんな魔族がこんな所に?いや……あれは……


「スライム……?」


 スライムは色々見てきたけどそれは真っ白。

 初めてみるそれはそのまん丸とした形、ツルツルとした見た目、スライムだと思うんだけど確信はない。


「全く、これだから理解力の無い魔族は嫌いなんですよねー、聞いてますかー?私の言葉が理解できますかー?……はぁ、だめですねこれは」


 それにスライムが言葉を話しているのは初めて見た。


 一殴りで人族10人は吹き飛ばされるベアウルフの一撃をぷよんぷよんと身体を震わせるだけで全く意に介していない。


 スライムの中でも上位種?

 いや、それこそ聞いたことが無い。


「……いや、どうでもいいか」


 そう、もう魔焉大戦も世界の命運もどうだっていい。


 どうせならベアウルフに消し飛ばされて痛みも感じずに死ぬのもいいかもしれない。

 そうと決めたら気分が楽になった。


「おい!そんなスライムなんて相手にしてないで僕の相手をしろよ!」


「ガルゥゥゥゥヴ」


「貴方は?ち、ちょっとうるさいですよ!」


 一応覚悟を決めて話しかけたんだけど、ベアウルフは全く僕を相手にせず白スライムを殴り続けている。

 相当な執着、全力で殴っているのに倒れないスライムにプライドをが傷ついたのかもしれない。


 魔力があれば蒼炎を飛ばして気を引くことができるんだけど…………ん、あれ?


 右手に力を込めると()()()()()()()()()()()()


 魔力は奪われたはずだし、魔力はポーションを使わない限り睡眠時に回復するもの。


 確かに先程まで魔力は……いや、それでも。


 どうせ攻撃すらできないこんなもの、何の役にも立たない!


 八つ当たり気味に蒼炎をベアウルフに投げつける。


「おいこれでも相手しないってのか!?この臆病魔獣が!!」


「……ガゥォォォォォォォォォン!!」


 言葉は理解できないだろうがそれでも挑発されていたことは理解出来たようだ。


 完全にこちらに敵意は向いたようだ。

 あとは殴られたら終わりだ。


「まさか、貴方は私を庇って下さったのですか?それにその炎は……」


 へんてこ白スライムは何か話しかけて来ているけど、それより早く殴り殺してほしい。


「私を庇う、その勇姿、そしてその力……決めました、貴方を殺させはしません!」


「いや、えっと……僕は死にたいからあの魔族を挑発しただけで助けるつもりは」


「いえ!貴方のような人を探していたのです!それにその炎、間違いなく私の求めている力です!運命、そしてこれは…………恋です!」


 うん、馬鹿かな?


 でも、人族の女なんて信用ならないことは身をもって知れたし、こいつならもしかしたらまだましかもしれない……性別不明だけど。


 そして、へんてこ白スライムはらしからぬ速さで瞬時に僕の前に移動してくるとその身体を盾のように変形させてベアウルフの拳を受け止めていた。


「さぁ!私に触れてください!顔でも胸でもどこでもいいですよ!」


 どこも一緒に見える。


「なるほど、そこまで謙遜するなんて紳士ですね!わかりました、それでは私が触れさせていただきます!」


「え、あっ、うわっ!?」


 白スライムはにゅるりと触手のように僕の身体に触れると変形して行き、何をしようとしているのかはすぐに分かった。


 全身にまとわりついた白スライムは鎧のように僕の身体を守る。


「これが私の真の姿です!」


「いや、何がなんだかわからないんだけど!と言うかこれ単に君がまとわりついただけじゃない?」


 全身隙間無く白スライムに覆われ、ガンガンとベアウルフに殴られる中で俺は目の前に映された奇妙な文字が現れてくる。



「まぁ、説明は面倒ですからとりあえずさっきの(蒼炎)を出してみてください!」


 何が起きてるかはわからないけど、ダメなら死ぬだけだと右手に力を込めると、僕の身体と白スライムの鎧が蒼炎に包まれ目の前に文字が次々に表示されて行く。



 ──────────────────────

 残エネルギー:100%

 予備エネルギー:100%

 装備覚醒率:1%

 ウルツァイト…………起動

 ──────────────────────



 白スライム、もといウルツァイトはキュインという音と共が再び形を変えて行く。


「ニース様、貴方に1番相応しい姿に……強く、優しく、そしてその自らを犠牲にして他人を守るその姿を」


 みるみるうちにウルツァイトは変形して行き……そして。


「これが、僕?」


「はい、これが……ニース様です!」



 純白と白銀の甲冑の様なロングドレスにも燕尾服にも似た防具、その関節部分からはアクセントの様に蒼炎が吹き出ていた。


 蒼き姫という言葉がぴったりのその姿は僕だとは到底思えない。


「んじゃー早速試し撃ちでもしてみましょうか、目の前の魔族に手を向けてください」


 言われるがままベアウルフに掌をむける。


 感じるのはまるで何もつけていないかのような身軽さと、ベアウルフに殴り続けてられているのにもかかわらず衝撃や痛みは全く無いこと。


 そして、何より驚いたのは不自由だった右腕が動いた事。


 真正面に向けた右腕は蒼炎を纏い始める。


形態モード:排除(エリミネーター)です!」


 視界に捉えたベアウルフを取り囲むかのように目の前の画面に長方形の模様が現れる。


目標ターゲット捕捉、後はニース様がお願いします!」



「いや、お願いしますって言ってもどうするの!?」



「なら一緒にやりましょう!百聞は一見にしかず、行きますよ……」



 その直前、僕の頭の中にこれを言えと言葉が入ってくる。


 すうと深呼吸、そして一言言い放つ。




排除エリミネーター蒼炎バースト!!』




 僅かに手のひらに熱を感じた瞬間だった。


 右腕から蒼炎の奔流が放たれると目の前が真っ白に変わり、先程までいたベアウルフはおろか闇夜は明るく照らされ視界に入る木々すらも見えなくなる。


 呆然としているうちに、徐々に光は収まっていく。


「……なんなんだこれ」



「あ、自己紹介が遅れましたね!私はウルツァイトです!ベアウルフを一撃で倒したんですね!まぁ、私の力とニース様の力があれば当然ですが……って、どうかしましたか?」


 Sランク魔獣のベアウルフを倒したのは当然驚きだが、それ以上に驚愕せざるを得ない光景が目の前に広がっていた。




 遠く遠く、僕とは関係の無い魔焉大戦。

 先程まで嫌でも目に入っていた魔王と巨大な魔龍、それは今。




「…………無くなってる」




 魔龍は両脚を残し、消え去っていた。


 魔王は魔龍に乗り魔族の指揮をとっていたはず。


 遠くで魔族軍がもの凄い勢いで散り散りになり退いて行くのが遠目にも分かるくらいだ。

 魔王に忠誠を誓う魔族が逃げ出す、それが示していたことは1つ。



「あー、えっと…………魔王、倒してしまったみたいですね……」




 魔王を倒す蒼炎(英雄)




 それは、僕だった。

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