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最『嬌』の槍(ランス)

「はえー、すっごいです!」


「これは、確かに凄いわ……」


 そして、僕も驚愕していた。


 ミストラ帝国、その別名は『宿樹の国(ミストルティン)


 名前の由来は当然その天空区、追放区の構造だ。


 地上数百mはあろうかと言う場所に広がる天空区は大抵の物はミスリルであり、その輝きは外部からはっきりと分かる程。

 そしてその真下で天空区を支える追放区は雑多な居住が所狭しと混雑していた。


 それは遠くから見れば大樹、葉と幹に見えていると言うわけだ。


 僕達は無事天空区に入り追放区を見下ろす。

 ちなみにウルを置いて行くわけには行かず、無理矢理ルキに引っ張って貰った。


「多分帝剣の場所ならシャロ帝王が場所を知ってるはずだよ」



「天空区の中心ですかね?まぁ、あんな美味しいものが捨てられているはずがありませんからね」


 帝剣が野放しにされているのはバディアの言いなりになっていたイグニスくらいだ。


 でも、帝宮の中心であれば難しい。


「あ、でもこれから生まれる私達の娘ならいけるみたいですよ?」


「てことは、帝族の中でもかなり位は高いんだね」


「かなりと言うのは違いますね。正確には《《最高位》》みたいです」


「……え?」


「現帝王その唯一の娘であり正当な帝王後継者、それが先程倒れていた少女、名前は……すみません、わかりませんでした」



「そんな話は聞いたことないけど……と言うよりなんでそんな人が追放区に?」



「うーん、それはちょっと他の人に聞かれたくは無いんで人気のない場所に移動しませんか?」




 ◇ ◇ ◇ ◇




 帝族専用の宿は全てが一流だった。


「最高ですね!ふかふかのベッド、ホコリ1つ無い部屋!美味しい食事……かどうかは私にはわかりませんがとにかく快適です!」


「料理も最高だったよ、イグニスより格段に良いし、しかもこれがタダなんて」


 帝族特権の凄さを改めて思い知らされながら本題だ。


「それでウル、話を聞かせてもらっていいか?」


「はい、あの少女はシャロ帝王の子供で同時にシャロ帝王が死んだ犠牲になったみたいですね」


 シャロ帝王は自分の為に生み出したのか?


「でも、第一ってことはこの子だけが犠牲になってるってのが不幸中の幸いじゃない?」


「それは違いますよ、1人がいなくなれば次を生み、またそれがいなくなれば次を生む。彼女もそのうちの1人、ちなみに今まで50人程がそうやって身代わりになった様ですね……あ」



「ウル?どうかしたの?」


「そろそろ産まれそうです……おぶぇぇぇぇぇぇぇえ!!」


「ちょっと突然、うわぁっ!?」



 吐き出されたのはルキの時と同じ灼熱の赤塊。

 徐々にそれは人型になる。


 ルキとは違う短髪、そしてミスリルの碧色をさらに濃くしたか様な髪と瞳。

 そして生まれたままの姿だけど当の本人は全く気にする様子は無い。


「……父上、ですか?」



「ええと……そうなるのかな?まずとにかく服を着てくれるかな」


 とっさに上着を渡す。


「すみません父上、僕の裸なんて見るに耐えないものを見せてしまいました。これから気をつけます」


「いや、そう言う意味じゃないよ?十分綺麗だしそんな卑下する必要はないから」


「……あ、ありがとうございます」


「あ、イチャイチャ禁止です!ニース様とイチャイチャするのは私だけなんですから!」


 どこがイチャイチャなんだよ、普通の会話なのに。


「あの父上、よろしいでしょうか?僕の名前は何というのでしょうか?自分自身どうしたものか困っていまして」


「自分が誰か覚えないの?」


「申し訳ありません、全く」


「おかしいですね、あの少女の記憶も継いでるはずなんですが……とりあえず今は名前だけでも決めてあげて下さい、理由は私が調べてみます」


 名前、ミスリル……そうなると……


「君の名前は……スーリだ」


「スーリ、ですか……とても気に入りました、凛としていて美しい名前で僕には勿体ないくらいです。この身、父上の武器として全てを捧げます」


 するとスーリは身体を碧色の槍へと変化する。


「物は試し、僕を投げてみて下さい」


 投げるって言われてもここは部屋の中。

 仕方なく言われるがまま投げてみると、槍が消えてしまう。


「ありゃ、消えてしまいましたね。どこ行ったんでしょうか?」


「何言ってるのよ、スーリなら部屋にいるじゃない」


「いや僕にも見えないよ?」


 感じるのは風だけ……まさか。


「もしかして、この風がスーリ?」


「はい、不可視神速の槍、それが僕です」


「ルキちゃんとは正反対ですねー、でも足りない所を補い合う、それでこそニース様の娘です!」


「ありがとうございます、父上の力になれるよう尽力致します」


 僕に向かって跪くスーリは再び裸。


「スーリ、だから服を……」


「僕の様な魅力の欠片も無い身体、特に隠す必要は無いかと思われますが」


 これは、きちんと教えないといけないみたいだ。




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