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ミストラ帝国

 ミストラ帝国、そこは世界最大のミスリルの採掘地であり風魔法に特化した国。


 国土は四大帝国で最も小さいものの、最も国防に長けていた。



 巨大な外壁?

 全てを消し飛ばす武器?

 違う。




「すごいですねぇー、それじゃ飛んで行きましょうか」


 ミストラ帝国は、宙に浮く最強の要塞帝国だ。


 僕達は咎森を蒼皎姫状態で楽々通過して宙に浮く大陸を見上げていた。


「密入国だから駄目だよ、それに蒼皎姫ってことは隠していくから」


「えー!?何でですか!?蒼皎姫だったら面倒じゃなくて済むじゃないですかー!」


「蒼皎姫は中立の立場なんだよ?それがいきなり帝剣を寄越せと言ったらどうなると思う?」


「あー、それは渡しませんねぇ」


「でもパパ、あれにどう入るつもり?」


 宙に浮く巨大な陸地、そこに入るには直接飛んで行くかその真下の転移陣からしかない。

でも転移陣は屈強な衛兵達に守られている。

 倒す事は簡単かもしれないけど僕達は戦争しに来たわけじゃない。



「大丈夫、それは心配無いよ……ルキ?」


 地面に降り立つとルキが座り込んでしまい、また体調が悪いのかと心配したけど違かった。


「こんな所に倒れてるなんて一体何があったのでしょうかね?」


 周囲には特徴的な碧色の鉱物であるミスリルが散らばり、ぼろぼろの布切れで辛うじて身体を隠していた少女。


 4つの国はその国を特徴する言葉と力がある。


 武と勇猛、炎従のイグニス

 知と策略、凪のオーヴァル

 絆と団結、血脈のグランディナ

 そして……血と伝統、樹牲のミストラだ。


「追放区に住む追放者だよ、彼らが犠牲になっているおかげで天空区に住む貴族や王族は平和に病も無く暮らせるんだ」


 まるで命だけを抜き取られたかのように少女は目立つ外傷がないにもかかわらず今にも息絶えようとしていた。


 追放者の運命を実際に目の当たりにすると、結構きついものがある。


 天に浮く天空区は追放区の魔力で成り立つ。


 それもそうだ、数万人が住める土地が何の代償もなく悠々と浮く筈がないのだから。


 そして生命。


 王族は皆若く健康、それもまたこの50万人の平民が支え、いや犠牲になっているからだ。


 ミストラ帝族のスキル、命犠サクリファイス、それは死の間際に発動させる魔術だ。


 老衰だろうと、病気だろうと殺されようと、死を迎えた時に追放区の人間が犠牲になる。

 そして蘇った帝族は若返り、病は完治し傷は完全に癒える。


 天空区に住むのは500人程の帝族、そして追放区には50万人の平民。


 ミストラ帝国は最も安全で最も危険な国だ。

 辺りに転がる7、8人の死体は綺麗な状態だったり、切り裂かれたかの様な傷があったり、枯れ木の様にカラカラになって死んでいる人もいた。


「ミストラのシャロ帝王はそんな怖そうに見えなかったんですけどねー、見かけによらないってことですか」


 どうにかしたいと思うけど、僕には治癒簡単にはいかない。


「パパこの子、息があるわ」


「本当!?ウル、今からイグニスに戻って治療を……」


「無理ですよ、すぐ行けるとは言えそんな瀕死の状態で護飛んで行くのはその子が耐えられません」


「でも見捨てるわけにはいかない、ウルでもルキでもいいから治療を……いや、確かポーションを持っていたからそれで」


 いや、それじゃあ助けらないことくらい僕にもわかる。


「ニース様、彼女を治す事は出来なくとも新たな姿で甦らせることなら可能です」


「それってルキと同じようにミスリルから錬成するってこと?」


「はい、ただ転生と違うのは今いる彼女は助けられません。あくまで新しい記憶をもった彼女を生み出すと言うことですがどうしますか?」



「……君はどうしたい?」


 辛うじてある意識の中で少女は声にすらならない一言だけ。


 ──おねがい


「やろう、彼女が死ぬ前に」


「承知しましたー、それではミスリルを集めてきますね!」


 それに1つ気になる点があった。

 見捨てることができない理由……それは。


「この子、王族だ」


「何故わかるの?」


「この姿だよ、それもかなり高貴な立場だ」


 ミストラの碧巫女。


 それは髪、瞳、肌が碧色のミストラ帝族女性独特の特徴だ。


 どれか一つが当てはまることもあれば全て当てはまることもある。


 間違いなく目の前の少女はその帝族の1人、髪、瞳、肌も濃い碧色でかなり高位のように見える。


 特徴が当てはまれば当てはまる程帝族の血が濃く、それだけ高い位のなんだけど。



「だとしたら何故こんな場所にいるのでしょうねー、あ!集めて来ました!」


「ありがとう、それはわからないけど天空区に行ってみれば何かがわかるはず……錬成の準備はいい?」


「ちょっと待ってください、今彼女の記憶をコピーしますから……はい、大丈夫です!」


 錬成炉状態のウルの中にはミスリル。


「錬成!」


 ウルの中に蒼炎を流し込むと、真っ青になりその場から動けなくなる。



「しばらくは動けませんねー、私に構わず先に入国しても大丈夫ですよ、何せルキがいますからね」


「そんな訳にはいかないよ、でもとりあえず入国処理だけしておこうか」


 ユガ王から貰った革袋から取り出したミストラ帝国への特級通行証だ。


 それは複製不可能な特殊な魔術が施されている。

 特級通行証を持っていれば優遇を受けられる。


「これでなんの心配も無く入れるよ……あれ?」


 だが、特級通行証をよく見てみると何ががおかしい。


「ウル、通行証についていたタグはどこ?」


「へ?タグですか?」


 特級通行証は数が決められ、それぞれ数字がついたミスリルのタグがついている。


「あれなら食べちゃいましたよ、いやぁあんな年季の入った熟成金属があるとは思いませんでした!」


「また食べたの?」


「え!?だって特級通行証だけ持ってくればいいんじゃ」


「ママ、食べていけないことくらい私でも分かるわよ」


 タグが無ければ特級通行証はただの高級な紙切れ。

 試しに行ってみてもいいけど、門前払いは確実だろうしそうなればまた入ろうとするのは難しい。


 新しいものをイグニスに戻って……いや、今ウルは動けないんだった。



「パパ、任せて頂戴」


「任せるって何をするの?」


 ルキは少女の額に手を当てると、身体が瞬く間に変化してゆく。


 そして少女と瓜二つに変化してしまう。


「これなら簡単に通してもらえるはずよね?でも魔力が尽きるまでだけれど」


 

「凄いよ、ルキがいれば安心だ」


「何を言ってるの?全てパパが凄いからよ、パパの力がなければ私は生まれなかったんだから」


 右腕に抱きつくその豊満な胸の感覚は間違いなく本物だ。


 とは言え元は一応娘のルキのせいか、可愛い以上の感情は湧いて来なかった。


「じゃあよろしくね、ルキ」


「パパって、性欲ないの?」


「な、動けないからって何を誘惑してるんですか!ママは許しませんからね!!」


「まぁいいわ、でもパパならいつでもOKよ?ママから乗り換えて私にしちゃう?」


「……行こうか」


「あ!否定しない!酷いですニース様!」


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