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死後、人は足裏に棲む  作者: Hakama
Epilogue & Prologue
1/3

Epilogue

4月1日。

桜が芽吹き始め、未来が明るくなるようなそんな日だった。

街は、何かを始めようと腰を上げ、足を働かせ、何かが終わると、すぐまたどこかで何かを始める。


僕は、マンションの屋上から、それをジロジロと見ていた。

しかしその忙しなく足を動かすその姿は、僕の服を後ろに引っ張っているようで、あまり気分の良くなるものではなかった。

流石に四月といえどこんな場所では、肌寒く「おぉ寒っ」なんて言いながら、パーカーのポケットの中に手を入れ、温めるのだがどうにもそれだけでも凌げないである。

「人は多いなぁ」

馬鹿っぽい。でも馬鹿だからそれくらいしか言葉に出せない。人は多いのである。それは上から一望しても、地上で生活していても日々感じることなのだが、それは今回全く不快感がなかった。なぜだろうと唸る。

考えることは好きだ。自分にしか存在しないソースを使って、誰にも思いつかないことを生み出せるからだ。そんな回り道をした考え方をしたのち、僕はそれがその大衆との関係性であることに気づく。

僕とは関係ない大衆を認識すること、観察することは実に面白い。しかし僕を認識、観察する大衆を認識、観察することは大変面白くないのである。それは僕の捻くれた中身が原因であり、僕は人の認識下にいる自分をあまりにも低く評価しているからだ。所謂卑屈というやつである。僕からはわからないその人の中にいる僕は、肯定部分を侮蔑されており、その人の優位性を保つため、低く低く評価される。やがて表面にそのこころは現れて、結果僕を腐ったもののように見始めるのだ。しかしそれは示したように、僕の中身が問題で、それは間違いなくそうとは言い切れないものではあるが、そう思ってしまうのは、自らの経験と性格から来るものであって、もうどうこうできる問題ではなくなってしまっている。考えないようにしようとしても、目の前にそれは現れて、手を招くようにして負の感情へと僕を導いていく。


もうわかった人もいるだろうから、伝えようかな

僕は今から自殺しようとしている


死後の世界。それは何かなのか。例えることさえ許される場所、もしくは意識なのだろうか。誰からも知られることのないそんな場所。僕は地獄と天国がぐちゃぐちゃに織り交ぜられた場所に足を踏み入れようとしているのだった。

昔、大人にいつなれるのだろうかと悩む時期があった。大人というものを今みたいに観察し、また自分のない頭で想像して考える。結局それはなれるものではなく、ならなくてはいけないものだと僕は気づいた。できるだけ頼らず、抱え込む。それが大人に必要なものだった。それゆえに他人を利用することに罪悪感を感じ、一人で作り上げることに満足を感じる感性が存在してしまうのだった。僕の大人は、あまりに子どもらしいと嗤われてしまうだろうか。しかし大人という鎧で覆われた体はあまりに非力なのだ。所詮人は、人に拾われて生きていくしか残された道は残ってないのだ。大人は子供を見習うべきだよ、全く。

本当は気づいたことが悲しくなった。人は成長できる。でも変われない。大人になっても、子供の方が人として、生きる術として正しい。なら僕は、孤独な僕は、両親すらも持たずに産まれてきた僕は、何をこれから望んで生きていけばいい…?


過去も未来も他人もない、ただそこに自分がある

ただそれだけでいいんだよ


僕は勢いよく地面を蹴り出した。

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