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第四話 絶対皇帝

 あれからあれよあれよのうちに王城へ連れてこられた。

 今は謁見の間にいる。

 なんでも、顔見せらしい。


「神の直系にして、千年王国を受け継ぐ絶対皇帝、エインファ・ミストルディ三世陛下の御成」


 ちょうどいいタイミングで体が勝手に臣下の礼を取った。

 さっきさんざん仕込まれたからな。

 幸い、体が優秀なようですぐ覚えてくれた。


 この長ったらしい祝詞的なものは何なんだろうといっつも思うんだよな。

 ファンタジーでありがちな悪徳な宗教国家っぽいイメージしてしまう。


 ただそのイメージに反して今の絶対皇帝陛下……主上は今代一の軍略家だ。

 配下も無難にこなせる人ばかりだから相当勢力を伸長させる。

 宗教国家という他国に侵され難い要因、それととんでもない力を持つ勇者たちを抱えているのも大きいけどね。


「面を上げよ」


 スッと頭を上げる。ただし、気持ち顔は隠したまま。


「良い。許す」


 今度こそちゃんと頭を上げた。これがこの国、ミストルディ聖皇国のマナーらしい。

 いちいち言っていないが、実行していた一挙一動にも意味があるらしいが、よくわからん。

 説明されてもちんぷんかんぷんだ。ただ、形だけは覚えられた。


「……ふむ、やはり勇者は戦装束こそが似合う。そして美しい。そうは思わんかね」


 主上の言うとおり、今着ているのはさっきまでの服と同じだ。

 状態異常魔法でストレージを封じられたので、武器は取り出せなくなっている。

 

 そのため防犯はバッチリとのことだが、俺レベルに強ければ素手の真っ裸でもこの王城くらいパンチ一つでぶっ壊せそうだ。

 近衛騎士も形無しだね。

 やらないけど。自分の首締めるだけだし。

 というかこれ、どう答えればいいんだ?

 否定したら、周りの臣下に主上を愚弄するか!とか言われそうだし、肯定したらしたでこのような待遇に甘えておるとは不敬な!叩き斬る!とか言われそうだし……どうしよ。

 ……いや、主上はそんなこと言わないし大丈夫だろう。

 思った通りを述べるか。


「はい、臣もそう考えております」


「かつての勇者の死に際の格言……『勇者たるもの、常在戦場の覚悟であれ。戦装束こそが死装束ぞ。たとえ主上の前だろうと譲ってはならぬ』、だな。当人も戦装束のままに逝ったが、その精神は受け継がれているようで安心だ」


 ニコニコしている。答えは間違っていなかったか。

 主上は威圧感のある眼光の鋭い大男だが、どこか親しみやすさを感じる。

 年齢は未だ23歳だが、かなり老けて見える。

 このお方を大陸の覇者に盛り立てて魔王軍との最終決戦を行ったプレイヤーは多いだろう。


 信仰と民の幸福の間で揺れ動くシーンなどもあった。

 ただ、主上の信仰する造物主ってぶっちゃけ別に悪いやつでもないのだ。

 神魔王ルートBエンドではメルロンディアが徹底的にこき下ろしてたけど、あれは操作を間違えてエルデナを粛清してしまったことにより、造物主に対する知識と理解が足りないから起こった結果だ。


 武将・聖皇国エインファルート(言っておくがギャルゲのルート分岐とは違う。エインファがヒロインというわけではない。結婚も可能ではあるけど)でAかSの評価を取れば、八方丸く収まってハッピーエンドを迎えられる。

 プレイヤーからも主上と呼ばれ、結構人気のある人物だった。

 

 しかし、自分で理解を深めるために頭の中で説明してて思ったが、このゲームルート分岐やテキスト数が心配するほどに多い。

 ほぼモブ状態の国に仕えたりすると汎用エンドや汎用イベントに差し替えられるシーンも多々存在するが、それでもえげつないテキスト量だろう。

 制作側の熱意が高すぎて自分なんてこのゲームの3分の1も遊びつくせてない。

 

「さて、早速ではあるが……む?」


 城壁が突如として破壊され、突風が吹きすさぶ。

 ……あー、普段初手で選定の剣にはいかないから、この条件でイベント参戦できるのすっかり忘れてたわ。


「くひひっ!魔王軍第六軍団・死隷大隊の長、ウーマウルが代理のヘキナスでございます。お見知りおきを」


 骸骨紳士とも言うべき魔族がうやうやしく礼をする。

 ただし、慇懃無礼という言葉が似合う態度ではあるが。


「ふむ、なぜお主のような強者がここまで?闇の波動は現世に馴染んでないだろうに」


「ひひひっ!教えるわけないじゃないですか、そんな大切な情報」


 ヘキナスがドヤ顔で嘲笑する。でもさぁ、俺はそれの答え知ってるんだよねぇ。

 ゲームで習ったし。


 まあ、この場でわざわざ言ったりはしない。なんで知ってるんだという話になるし、別に知らせなくても問題はない。この問題に関してはこいつを殺すか無力化すれば済む話だ。


「……であるか」

 

 主上が近くにあった燭台を手に取り、巨大な剣へと変化させる。

 そして、間合いを見計らいつつヘキナスへ近づいて行く。


「陛下!お下がりを!」


 近衛兵士がヘキナスへの恐怖でガクガクと震えながら、嘆願する。


「下がらぬ。下がったところで生存確率が下がるだけだ」


「陛下ともあろうお方になにかあったら、この国は立ち行かなくなります!」


「……では、お主らが奴と戦ったところで勝ち目はあるのか?そもそも傷すら付けられないだろう」


「くっ……しかし」


「我はこのような場所でお主らのような忠臣を失いたくないのだ、下がっておれ」


 なんて言葉の合戦が繰り広げられているけど、実際ギリギリのところで勝利を掴むんだからここは主上に任せたほうがいいのかな?

 しかし、このイベントに自分が関わるのなんて超久しぶりだ。

 どんな条件なら生きるのか、死ぬのかがわからなくなってるんだよな。


 イベントにそもそも絡まない場合は確定勝ち。

 関わって、主人公もバトルに参加した上で勝利した場合もオーケー。

 でも、他がわからない


 関わって、主人公がバトルに参加しなかった場合は確定勝ちだった気もするし、確率の問題になってきた気もするんだよな。


 それにここは現実になっているからどんな影響があるかわからない。

 うん、自分も戦闘に参加しよう。

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