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第二十二話 師匠ごっこ①

前話にそういや説明してなかったなと言うことで護衛に関しての説明を付け足しておきました。

最初の方ですので暇だったらそこも読んでいってください。

 アーソデ家の領地となる森の中、メルロンディアが言う。 


「いいですか?あなたたちにはスーパースパルタコースを受けてもらいます」


「なんで私とレグモくんがそんな辛そうなコースに……」


 モールはこれから起こるであろう地獄に嘆く。

 実力は知っているので、間違いはないのだろうがメルロンディアが如き実力者が言うスーパースパルタとはどんなものなのか想像するだけでも恐ろしい。


「時間がないのです。聞けば魔物の侵攻まであと半月の猶予もないというではありませんか」


「どうせ私達は死ぬ運命なんだから、意味ないじゃないですか……」


「そこをなんとか勝たせるのが私の仕事です」

 

 結局は万が一がないように自分の力で片付けるつもりだが、それ抜きでもなんとか騒動を終結させられるような実力をつけさせる気でいた。


 その理由は師匠ごっこが思いの外楽しそうだったからというものでしかないのだが。


「勝たせろなんて一言も言ってませんよ?」


「目覚めが悪いんですよ。あなたたちみたいな子供に死なれちゃ」


「あなたも同い年でしょうに……」


 モールがここまで突っかかる理由は単純。

 あのまま盗賊に拉致されていれば、どんなに惨めでもしばらくは生きていられた可能性が高いからだ。


 両親の言う、貴族の義務などというよくわからないものなんかに縛られずに、生き延びられる可能性があった。

 それをあとから理解してしまった。


 レグモ以外に汚されるのは絶対に嫌という理由で、モール自身は自害する予定ではあったが。

 それでも、大切な人が生きられた可能性が消え去ったというのは彼女にとってとてつもなく大きい事案だ。


「……これから、一切の口答えを禁じます。返事はすべて肯定(イエス)肯定(ヤー)で答えなさい。わかりましたね?」


「イエス!」


「イ、イエス!」


 念押しした際に流れた妙な迫力の前にモールも屈してしまったようだ。


「で、まずは体力作りから……と行きたいところですけど、そんな悠長なことはしていられませんので。『遠き影よ。写し給いて守り示せ』『神聖分身』」


 祝詞を唱えた途端、メルロンディアの体が『ブレた』。

 そして、2つに完全に分かたれてしまった。


「キ、キルヒフィードさんは本当に凄いですね」


「言っておきますが、強敵には使えない技なのでこれを覚えても今回は役には立ちませんよ」


「そ、そうですか……」


 パン、と手を叩いて気を引き締め直すようにする。


「では、今から二手に別れて修行をつけます。レグモくんはここで、モールくんは近くの渓谷で、ですね」


「……レグモくんになにかしようとしたらただじゃおきませんよ、アバズレ」


「返事はイエスかヤーだけですよ」


 そう言いながら、遠慮なく高圧電流の魔法をモールへと浴びせる。


「あばばばばば!!!!」


 衝撃に耐えきれず、素っ頓狂な悲鳴を上げるモール。


「モール!流石にこれは……」


「大丈夫です。死にはしません。後遺症も残りません。たとえ死んでも治せますしね」


 レグモはとんでもない人を引き止めてしまったのではと、若干後悔していた。





「『兵線突き』はそうじゃありません。もっとこう、腰を右にひねりなさい」


「『兵線突き』!!!!……こうですか?」


「まあ、さっきよりは理想に近くなりましたね。ですが驕ってはいけませんよ」


「ひぃ〜、しかし疲れました!アドバイスはくれたとはいえ、アーマーラビットといきなり戦わせるとか酷いですよ師匠!」


 レグモには槍術を教えていた。

 レグモの専門分野は本来双剣だったわけだが、メルロンディアはあまり剣の扱いが上手くない。

 となれば、一から教えるつもりで槍を教えよう、となったわけだがなかなかに筋が良かったことが判明した。


 これはメルロンディアの指導のレベルがとてつもなく高いというのもあるが、レグモの素質も十分に高いというのも一因となっている。


「(でも、なんかイマイチなんだよな)」


 半月も鍛錬を積ませたらそこそこの達人にはなっているだろうけど、それでもスタンピードを相手取るには遠い。


「(……一朝一夕とはいかないのは当たり前か)」


 半月で一般基準の達人にさせられるだけ、その指導は優れている。否、優れすぎている。

 それでも満足できないのは元・プレイヤー故なのだろう。


「じゃあ、時間も惜しいので次は『超撃槍』を覚えましょうか」


「ええっ!?あの中堅どころの槍術師御用達の!?」


 メルロンディアの基では中堅、というのは首を傾げる表現であった。しかし、この世界ではこのスキルはどうやらこういう表現をされるらしい。


「返事は?」


「あばばばばばば……イ、イエス……」




「じゃあ、今から動きを見せるので…できるならば完璧にトレースしてほしいです──『超撃槍』」


 できるだけスピードや動きのキレを落とし、スキルを放つ。


「うわぁ……凄い技だ……。こんなの本当に俺にできるのか?」


 しかし、レグモにとってはそれでも凄まじいキレがあるように見えたようだ。


「出来ますよ。少なくとも明日には、ね。私は少々規格外ですから。さすがにここまでのレベルで、とは言いません。積んできた鍛錬の日々も違います。ですので、できる範囲でやってくださいね」


 今のメルロンディアにはもう一つの前世におけるスキルの修行の日々が蘇っている。

 槍術と魔術あたりに関しては特に鮮明に。

 なので、この発言は別に積んでもいない鍛錬を自慢しているとかいう残念なものではない。


「……できる範囲とは言っても、やっぱりきつい修行はこなさないといけないんですよね?」


「当たり前じゃないですか。今日やっているのは基礎の基礎ですから、明後日辺りからは本格的にキツくなりますよ」


 レグモは本格的に後悔してきた。

 恋心などはとっくに消え去り、やっぱり身近で自分に甘すぎるほどに優しいモールが一番だと考え始めていた。


 呪いの域と評されるほどに見た目が良くても、自分に対して厳しすぎたらそりゃあ苦手意識を感じる。

 おまけに態度からして明らかにチャンスがなさそうと来た。

 故に、完全に諦めたようであった。


 しかしそれでも指導をやめてくれと頼まないのは……一日目にして目に見えて実力が付き始めたことに楽しさを感じているからなのだろう。

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