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第十八話 超強化

「粒子を螺旋状に混ぜるイメージでやってみて」


「……こうか?」


 言われたとおりに、神聖系スキルを発動する。

 それと同時に白の破壊光が的を貫く。

 というか粒子なんて言葉知ってるのかよ。

 転生者の知識かなんかなのかな?


「そうそう。やっぱりメルは飲み込みが早いわね。もう完全にマスターしちゃった」


 あれから3ヶ月、ミメレルの指導により、神聖系と勇者系を完全にマスターし終えた。

 ミメレルの指導はイメージに反して論理的だった。

 天才肌の人間は指導が下手なもんだと思っていたが、必ずしもそうではないらしい。


 しかし、3ヶ月程度で2つのスキル系統を完全にマスターした俺に対して『飲み込みが早い』程度で済ませるミメレルはやはり規格外なのだろう。


 礼法も覚えても良かった。

 あると便利だし。

 でもたまに王城に通っているうちに最低限はこなせるようになったからいいかなぁと思ってやめた。


 剣術系、その派生の魔剣系、聖剣系もあるとめちゃくちゃ強いが、魔槍で特に問題はないし最強武器の『勇剣メルディニアス』はミメレルから奪わないと入手不可能。

 同等の強さを持つ邪聖剣『メイゾ』はレードガログを殺さないと入手不可能。

 唯一の価値9武器。真の最強武器である魔勇剣『〇〇(プレイヤーが任意に入力可能)』は神魔王ルート限定武器なので今からだと入手不可能。


 というわけで全部入手不可能なのだ。

 もちろん他の価値8の剣でも良かったんだが、剣の最大の強みは武器が強いことなのであんまり意味がない。

 槍でも同じことができる。


 鍛冶屋の副業でもやれば魔勇剣を超える価値9の武器も作れるが、やはり剣に限定する必要がない。

 イセテン4に登場する全武器種で作れる。

 それなら槍のほうがスキルの使い勝手が良いのでこっちでいいやとなる。




 あと、愛称で呼ばれるようにもなった。

 曰く、「キルヒフィードという名前は私にはあんまり響かないけど、メルロンディアという姓はとても素敵。でも流石に長いからメルって呼ぶことにするわ」とのこと。

 メルロンと呼んでくれと言ってみたが、「なんかメロンみたいで美味しそうで嫌じゃない?」と言われた。

 たしかにそうかもしれない。納得しそうになった。納得するなよ。


 


 まあ、そんなことがあったわけだが今はミメレルと今まで使っていた練兵場を出て、家まで帰りがてら街に寄って買い物をしている。


「……で、なぜ手をつなぐのだろうか?」


「そりゃあ……察しなさいよ、鈍感……」


 ミメレルは顔を赤くしながらそう呟いた。


 いや、わかってるんですよそんなことは。

 好かれているということもわかってるし、俺がミメレルのことを好きだということも気取られているというか教えた。

 ちなみに3ヶ月前に話した、好感度が上がった理由の考察は多分間違ってると思う。

 一緒に温泉に行った帰りの時点でだいぶ意識されてたらしいから。


 ……だからといって告白したわけでもないが、ほぼ恋人みたいな関係になっている。

 それ自体には後悔はないし、めちゃくちゃ嬉しい。


 ハーレム願望も薄れた。なくなったとは言わないが確かに薄れた。

 それでもあることには変わりなく、不義理を働く可能性が高いことに、今から罪悪感も感じている。


 同性で子供も作れるし、立場もあるしで、この世界の観念や法律的には許されるのだが、それでも心を傷つけるクソみたいなことだ。

 人として、男としても女としても最低の部類に入る人間だよ俺は。




 ……それにしても俺みたいな万年童貞野郎にはミメレルみたいな美少女と恋人のように手をつないで街を歩くなんて刺激が強すぎる。


 ほら、街の人たちも俺に嫉妬の目を……あれ?


 変なものを見るような目だったり、ニヤニヤしてる目だったり、脳が溶かされたような顔だったりはしていたが、俺に対する嫉妬はないようだった。


「周りなんて見ないで私に集中してよ。……やっぱり嫌かな、私だと」


 急にうつむいてボソボソと喋り始めたミメレル。

 

「私は面倒くさがりだし、変人だし、同性だし……。メルとは釣り合わないわよね」


「そんなわけないだろう。前にも言ったが、私はミメレルのことを愛している。この言葉に嘘偽りはないぞ」


「でも……周りを気にしてたよね?やっぱり私がそばにいちゃ迷惑なんじゃ……」


 そこそこの期間を一緒に過ごしていたのでわかったが、ミメレルはだいぶ脆い。精神的に。

 幼少期の時点で他人と隔絶した才能があったばかりに、他の人の持つ苦悩がわからず、また、自分の持つ苦悩を共感してくれる人がいない。


 人間なんてのは生まれつきが30%、誰かの影響が60%で作られた生き物だ。

 真の意味で自分の意思でなんとかできる人間なんてそうはいない。

 もしかしたら一人もいないかもしれない。


 だから、他人とズレているがゆえに常にギャップを感じ、生き辛さを感じているんだ。

 他人と同じではない、というのがどれだけ苦しいのかは真の意味ではわからない。


 俺はごく普通か、それよりほんの少し劣っている程度という、マジョリティもマジョリティだったんだから。


 だが、ネット社会で生きてきたので生き辛さを抱えて生きている人との交流はあった。

 だから表面上は理解できる。


 それに、好きな人が困っていたらその不安を取り除いてあげたいというのは当然の感情だろう。


 だから、こういうときにすることは一つだ。


「……わ。えへへ……」


 下手な言葉で慰めるより、行動で示したい。ゆえに、思いっきり抱きしめた。


「大好きな人と一緒にいたくないなんて思う人はいないぞ。だから……もうそんなことは言わないでくれ。こっちも悲しくなる」


 朱に染まったその頬は、とても可愛らしかった。

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