第十七話 ありがたく頂戴いたす
「お前には世話になっている。というわけでこれを……」
「わぁ、プレゼント!?嬉しい!」
ミメレルにプレゼントの包まれた箱を渡した。
中身をまだ見ていないのに、ものすごく喜んでくれているので嬉しいのだが、渡した理由が見返りを求めた浅ましいものなので罪悪感がある。
そういえば、こんなに笑顔になったのは初めて見たな……。
一ヶ月も割と近い立ち位置で一緒にいたのでミメレルの喜怒哀楽も知っているが、ここまで嬉しそう……というか感情をあらわにしたのは今が初。
ゲームでもそんなところはあった。感情の起伏が平坦というか、基本的にダウナーなんだよ。
ツンデレヒロイン的な喋り方でごまかされる人は多いが。
そういえば、キルヒフィード・メルロンディアとしての前世だと、ミメレルのことは殺してしまったんだよな。
それ以外の周回では仲良くなったこともあったし、なんならそういう関係になったこともあったが、今の俺は直前の周回のメルロンとの融合体っぽいのであんまり関係ないと思う。
なんか不思議な気分だ。殺し合った相手とこうも仲良くしているなんて。
「開けてみてもいい?」
「ああ」
承諾を返すと、早速包装を取って箱を開けていた。
「魔道具?うーん、形から見るに飲み物関係かな?嬉しい!……いや、ちょっと待ってよ。……これ、『名物・篠川』じゃない!」
この世界のアイテムには、10つの区分が存在する。
まず価値0が量産品最低区分。
価値がほとんど存在しない、庶民用の道具だ。
これをプレゼントしたところでバカにしているのか?と思われるのが関の山だろう。
まあ、例外もあるがそれにしても大した効果はない。
価値1が量産品通常品質で、2もちょっと良い品という程度。
ここらへんは縛りプレイとして自分で使えなくはないが、プレゼントにはすることはまずない。
2ならば一般人の間でプレゼントとして使われることはあれど、好感度の上がりは良くない。
奴隷とかの極端に身分の低い人にならば、上げたら結構喜ばれるかな。
3は高級品で、4は量産品最高級品。
1〜4まではゲーム時代ではこの世にある数が無限だ。
量産品なのだからいくら高くても特殊な品ではないのだし。
4はそれなりの立場の人間に上げてもめちゃくちゃ喜ばれるので便利だ。
金稼ぎについて縛りを入れているときは、4あたりの武具は重宝するのもあって印象は良い。
しかし、ミメレルは『絶勇者』なのでかなり身分が高く、ゲーム中では4だとそこまで喜んでくれなかった。
身分が高いものほど高級な品でないと喜ばなくなる。
これはミメレルが強欲というわけではない。
ゲームの仕様であり、また実際に立場の高い人間なら金なんて腐るほど持っているだろうし審美眼も肥えているのだからおかしなことでもないと思う。
むしろ強欲な人間のほうがプレゼントしたときの上がりが良いわけだし。
5は一気に価値が上がり、後の世で国宝と呼ばれるようなものが多い。
そして、一品物しかない。この世に一つだけのものだ。
また、自分で使用する際にもグンと効果が跳ね上がる。
しかしそのぶん高い。
6も似たようなものだが、その中でも特に価値が高いものだ。
装飾品以外の俺の装備は全部これだし。
プレゼントしたのはこれ。喜ぶというより驚きのほうが強そうだが、ミメレルはすでに価値8の武器……勇剣を持っているんだけどな。
まあ、自分の好みのものとそうじゃないものなら反応も違うかな。
今後、プレゼントは4〜6が中心になるけど、果たしてミドロク商会の財布は持つのだろうか。
まあ、持ちそうだな。実は世界を股にかける大商人だし。
あれから思い出したが、ミドロクって商人プレイだとかなりの勢力持っているキャラだったな。
商人だと他の同職勢力との関わりが薄いから印象に残っていないだけで。
7はどんな者だろうと欲しがるであろう、魔性の妖気を漂わせるような一品だらけだ。
強欲で力のある王様ならば、これを巡って戦争を起こしかねないレベルだ。
8はこれを手にした者は世界を手に入れる、なんて呼ばれるようなものしかない。
なんつったっけ。……そうそう、地球で言うロンギヌスとかそういうレベル。
マジで高いなんてレベルではない。
金をだして買えるようなものでもない。
9は造物主愛用の道具とかそのレベルだ。
職人系プレイだと、これを作り出すのが最終目標になる。
プレゼントなんてされたら、一瞬で魂が抜けてしまうくらいには価値がある。
俺の装飾品はこれだが、使用不可になってるのであんまり意味はないだろう。
今の状態でも売れば大国の国家予算程度の金になるとは思うが、間違って機能を取り戻して、その持ち主に敵対でもされたら勝ち目が薄い。
だから売れない。
勝てないとは言わないけど。
まあ、ともかく後半のものをみたら6なんて案外ショボいのかもしれないが、プレゼント品としてはこれ以上なく素晴らしいものなんだ。
「こ、こんなもの、どこで買ったの?手放す人なんて居なくない?」
ミメレルにしては珍しいことに、本気で狼狽している。
正直新鮮でかわいい。
いいよな。こういう勝ち気な子が普段見せない顔を見せるのは。
胸が実にキュンっとくる。俺は実はSなのかもしれない……。
「なに、問題はない。それより笑顔を見せてほしい。せっかくプレゼントしたのに、そんな顔をされては悲しいぞ」
「そ、そうよね。ごめんね……。うん、ありがとう。大事に使うわ!」
そう言うと同時に、唐突に抱きつかれた。
俺のほうが身長が小さいので、覆い被られる形となる。
ミメレルの心音が耳元で聞こえるし凄いいい匂いがする。おまけに体が柔らかくて蕩けそう……じゃなくて!なんでこんな展開になってるんだ!?
……って、そういえばゲーム中では親交を深めるコマンドを使えば、一ヶ月程度で80(莫逆の友)程度まで好感度上がるんだったな……。
今までの行動を振り返るに、そのコマンドに相応することを実際にしていたと思う。
70(親友)もあれば、恋人として付き合うことが可能なんだよ。
ということは、このプレゼントで100(永遠を君と)まで一気に上がってしまった可能性がある。
そりゃあ、気持ちの高ぶりを抑えられませんわな……。
一ヶ月程度で一気に80まであがるっておかしくね?と思ってもゲーム中の都合だと受け流してきたが……現実になるとむしろ怖いよ!
ああでも、いい匂いするし安心する……。
こっちまで心音がバクバク鳴ってしまうし……。自制心が効かなくなってきてる!
好感度が上がってるのはミメレルの方だけじゃなくて俺の方もだったのかもしれない……。というかゲーム時代の仕様だと実際そうなんだけどさ!
ああ……どうしよう!




