第十六話 たんまりと
「……なぜそれを?」
「へっへっへ……まあ、勘でございますよ」
「この世界では異世界なんてものはおとぎ話程度に考えられていると思ったのですがね……」
「知っている人間は知っているものですよ。まあ、私の場合は先祖が転生者の奴隷だったため、家伝に残っているだけでしたけどね」
別に見抜かれたところでどうということはないんだけど、バレないならバレないほうが良かった。
この世界の住民はもとはただのゲームの世界の住民です、なんて説明するような人種に頭にこない人はいないと思うし。
しかし奴隷……。そういうのが存在することはわかっていたけど、それはそれとして悲しい現実だ。
思わず目を伏せてしまう。
「奴隷、とは言っても格別のご配慮を頂いておりましたので、我が家は異世界人の方に対しては感謝のようなものを抱いているのですよ。我々が今こうしているのも彼らのおかげですしね。そう気に病むことはありません」
……そういえば、古代エジプトの奴隷は割と普通の人生送っていたとか聞いたけどそんなものなのかな?この世界でも。
だったら良いけど、多分ミドロクさんのご先祖様への配慮は特別という部分はあるんだろうな。
俺がやったわけでもない。そしてそもそも迷惑はかけてない。同じ地球人のやったこととはいえ、あんまり悲しむ必要もないか。
うん、そうだな。それで良いしそれが良い。
「……しかしですね。あなたはその中でもどこか特別に見える。なにか、妙な知識を持っているような……そんななにかを感じ取ってしまうのですよ」
妙な知識?
「地球人としての知識とかそういうことではないのですよね?」
「ええ、もちろん。どこかこの世を俯瞰しているような……」
俯瞰?よくわからないな。
しかし……待て。
ゲーム時代は異世界転移者の類が主人公と言っても、ゲームの知識を持っている人間はいなかったな。
今まで忘れてた、というか勘違いしてたけど言われてみて唐突に思い出した。
転生者を送り出す時代は、2049年の日本だ。
俺が死んだのも同じ年となる。
そして、ゲームの発売は2037年で、リメイク版は2044年。
つまり未来となるわけなので、ゲームの知識を知っている転移者の類がいてもおかしくない。というかいるべきだ。
それなのに、主人公を含めた転生・転移者たちは0から異世界生活を始めるわけになる。
しかし、俺はゲームの知識を持っている。
これの意味するところは……つまり。
……俺以外の転生・転移者は、平行世界かなんかの日本から送られてきた、と考えられるのかもしれない。
あるいは、別の歴史を歩んだ日本。それはわからないが、一つ言えることがある。
俺は他の日本人……いや、異世界人と比べてもかなり異質な存在なのでは?ということだ。
いままで他の異世界人の存在なんて気にも留めていなかった。
重要キャラには初周プレイ主人公以外の異世界人なんてあまり存在しなかったから。
「確証は持てません、正しいのかもわからない。ただ……私は他の異世界人とは似て非なる世界から送り出されたのかもしれません」
「へっへっへ、私の見立ては間違えていなかったようですね」
ミドロクさんが指を鳴らすと、金髪の美人さんがどこからともなく現れて、紙を渡してきた。
……俺でも見切れないって相当な技量だなこの人!
直感からして戦って負けるとは1ミリも思わないから、隠形の技術に長けているだけなんだろうけど、それにしてもヤバい。
ちなみにヘキナスが現れる直前に一瞬反応していた。
敵意がないと見抜いたのか顕現するのはやめていたけど。
流石はヘキナス。頼もしいぞ。
でも、早いうちに神聖系を習って『隠形破り』か『看破』あたりも取得しないとな。
強者にこれやられると流石にヤバい。
まあ、俺を倒せるほどの強者なんてそうは存在しないがな。
文章に目を通してみた。
やたらと難解な文章だったが簡単に言うと、資金を提供するからその代わりに世界を救ってくれ、ということだった。
正直怪しい。なんで『大商人』が『俺』にそんなものを頼むんだろう。
この世界の『正史』……主人公プレイヤーが現れなかった場合においては、ミメレルと魔王が一騎打ちをして両方が死に、その後は人間優位の世界が続いていく。
そしていずれは人間が意思を持つ三種族の頂点に立った、現代社会に似た世界が実現する、みたいな感じだったはずだ。
いずれ平等の世に向かっていくとも聞いた。
「……この内容くらい、ミメレルかロウ様にでも頼めば良いのでは?」
ミメレルは実際どうかはともかくとして、今の時点でも魔王を倒しうる逸材だと評価されている。
もう一人の絶勇者、ロウも似たような評価を受けている。
ミメレルに関しては、洗礼を受けて聖勇者として覚醒したら実際に魔王を倒せるくらいの力は持っている。
どっちかに頼むのが筋ではないのか?
「ミメレル様には頼んだのですがね、金には困ってない、と言われてとりつくしまもなく……。ロウ様に関しては、『私の使命は元より世界を救うこと。金など貰う必要はない』と言われ……」
「ならば、そのままロウ様に救ってもらうのがやはり良いのではないでしょうか?」
「……まあ、隠す必要もないから言ってしまうのですがね、我が社の援助のおかげで世界を救えた。という方向に持っていきたいのですよ」
……はぁ、あきれた。そんな理由かよ。
要するにこの俺に広告塔になってもらおうと。
でもまあ、便利ではあるな。
正直転生当初に話した『米詐欺』のテクニックを使わない場合、金は慢性的に不足すると思う。
スキルを教えてもらうためにはまずプレゼントを買うためのお金が必要なわけだし。
そしてプレゼントはとても高い。
未来で国宝扱いされるようなレベルの品も多いのだから当たり前だが。
そしてこの店は、ゲーム時代からかなり儲けているみたいな設定があったはずだ。
その時の店主の名はミドロクなんてものではなかったはずだけど、それでもかなりたんまり融資を受けられそうだ。
この体だと、元からそれなりのスキルは持っているが……。
……乗っちゃうか?うん、乗っちゃおう!
提案に承諾した。
ミドロクさんは嬉しそうに笑んでいる。
しかし、プレゼントを買うだけだったはずなのにこんなことになるなんてな……びっくりだ。
不適切かなと思ってオリジナル戦記タグを外しました。
まず戦記もの感はない感じになりそうです。
本当はめちゃくちゃ書きたいんですけどね。特に日本の戦国時代あたりの転生戦記もの。
でも自分の頭とものぐさ太郎ぶりじゃ無理でしょうね。
ところでヒロインは何人くらいがいいのかなぁと悩んでおります。
とりあえずは四人くらいの予定です。
増えすぎたらそれぞれの描写が少なくなってただのトロフィーになりますし、少なすぎたらそれハーレムなの?ってなりそうでどうにも…。




